ありふれた職業と人理の盾   作:やみなべ

47 / 48
マズイ。原作の方で聖剣…とついでに大樹の正体が明らかになってしまった……設定と今後の構想を変更しないとなぁ。まぁ、別に対して重要な要素でもないんですけどね。
具体的には、聖剣が「金髪ショタ」キャラで「天使の微笑みを浮かべながら苦悩する光輝を見てメシウマするドS」っていうだけなんですけど。

あと、「勇者」の要件が明らかになったわけですが……フェリシア、思いっきり適正あるなぁ。まぁ、「地球の勇者」が光輝で、「トータスの勇者」がフェリシアってことにしてもいいんですけど。その場合、エヒトを倒した後もフェリシアの苦労は続くことになりそうですが。あるいは、大樹の女神候補にするのも……というか、ユエの「神子」って、まさか“次期女神”って意味じゃないよね?


040

マシュとは教室の階が違うので途中で別れ、自分の教室へと向かう。

色々あって始業ギリギリになってしまったが、一応間に合ったことに安堵して教室の戸を開けると……

 

「遅い!」

 

仁王立ちしたジャンヌ・オルタに叱られた。

 

「遅刻ではないと思うんだけど……」

「五分前行動は社会の基本でしょう。何か一つトラブルがあれば、今頃遅刻です。分かってるのかしら、コイツ」

(なんだかんだ言って、根は真面目なんだよなぁ……)

「い、良いから早く席につきなさい! 別に心配したとかじゃないから、誤解しないで頂戴!」

 

しみじみと頷いていると、なぜか顔を真っ赤にして怒られてしまう。自分で言っておいて、心配したと思われるのが気恥ずかしかったらしい。

とりあえず、言われた通り自分の席に向かって荷物を下ろす。すると、両隣の席から声がかけられた。

 

「朝から災難だったな」

「あら、でも私は可愛いと思うわ。だって彼女、あなたが来ないんじゃないかってずっとソワソワしてたんだから」

「そのくせ、落ち着けとか言われると食って掛かってたな。お前も、面倒な奴に絡まれたもんだ」

「……まったく、マカリオスはわかってないわ。ね、あなたもそう思わない立香?」

「とりあえず、マカリオスはもう少し姉離れした方がいいと思う」

「なっ!? それと何の関係があるんだ! というか、別に俺は……」

 

困り顔のアデーレに乗っかれば、慌てて否定するマカリオスだが説得力はないに等しい。

線は細いが美形で気配りもできる男だ。実際女子にはよくモテるのだが、交際にまで発展したことはない。なにしろ、アデーレに寄り付く悪い虫を排除するので忙しい。だから、クラス中からの認識も以下の通りになる。

 

「マカリオスがシスコンだと思う人!」

「「「は~い」」」

「お前ら!?」

 

その後、始業ベルと同時に教室に担任のグレイロード先生が入ってくる。

キビキビと挨拶を済ませ、点呼を取り、連絡事項を伝えると受け持ち授業のある教室へ。相変わらず一切無駄のない、どこぞの軍人が如き簡潔さだ。でもその実、教室から出た瞬間彼女はその場にうずくまってしまった。

 

(うわぁぁぁぁぁ……またやってしまった。どうして私はいつもいつもこう……私だって、私だって本当は生徒たちと仲良くしたいのに。一緒にお弁当食べたり、青春の悩みを打ち明けてもらったり、みんなで夕日に向かって走ったりしたいのに~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!)

(おい見ろよ、先生がまた声にならない叫びをあげてるぞ)

(見た目に反して、熱血な人だからなぁ)

(う~ん、相談くらいはしてもいいんだけど、夕日を追いかけるのはちょっと……)

 

ヒソヒソとそんな言葉を交わし合う生徒たち。自由人ばかりのこの学校で、せめて自分くらいは生徒たちの範にならなければと気を張っていることは理解している。その結果、生徒との間に壁ができたように感じて悩んでいることも。

別に打ち解けることに文句はないのだが、昭和の学園ドラマみたいなことを望まれても困るのである。

 

まぁ、困ると言えば、この学校の先生の授業が独特過ぎるのも困るというか…厄介な点だ。

例えば……

 

「ソワカソワカ……さあ、では本日の保健の授業を始めましょう。教科書は閉じて。実践に勝る授業はございません。さっそく実技の方を……」

「「「チェンジ(帰れ)!!」」」

 

ちなみにこの授業、内容そのものはごく普通で何ら問題はない。だが、なぜか毎回授業が進んでいくうちに動悸、興奮、発汗、身体の奥底の疼き、欲求不満、慈愛に満ちたアルカイックスマイルなどの症状が現れてくる。

ついでに、男子生徒は漏れなくしばらく席から立ち上がれず、立っても前かがみになって女子から白い目を向けられる。おかげで、クラスの結束は毎度のように崩壊の危機に晒されている始末。

そのためPTAからは睨まれているが、これといった証拠が出ることはない。そんな学校屈指の要注意人物だ。

 

ちなみに、他の要注意人物としては……「私の肉体こそ最高の芸術なのさ♪」と突然服を脱ぎだしてデッサンをさせようとする某美術教師や、卑猥だったり下品だったりする歌詞の歌ばかり練習させる某音楽教師。そして、無茶な課題を出しては「出来なければお前の命を貰うまで」と脅迫してくる某体育教師などが上げられる。

さらに、図書室には思考や経歴などを地の解説文の如く表示させる多感なお年頃には悪夢のような真似をしでかす司書や、教頭という地位にありながら昼行燈を決め込み何か事件があった時だけ動くロクデナシなんかもいる。

……………………………多いな、要注意人物。

 

加えて、食堂には男子生徒には目の毒としか言えない裸エプロンの野生の(キャット)まで。

しかもこの獣、その格好に反して非常に身持ちが固い。うっかり誘惑に負けて手を伸ばそうものなら……

 

「タマモスラッシャー!」

 

と、不届きなその手をナマスにされる。

 

「キャットは身持ちの固い良妻ギツネ純情派。ご主人には喉を鳴らし、不届き者には去勢拳。肝っ玉をベットする覚悟は十分か?」

(((キュッ)))

 

食堂にいた男子生徒一同、一斉に内股になってガードの姿勢を取る。一糸乱れぬその動き、実に美しい。

 

「しか~し、賄賂のニンジン次第では応相談…なーどと言うとでも思ったか、イヌ紛らわしい! 貴様など、ブレストバレーに即没ッシュートだワン!」

「キャット、私の胸に生ゴミ入れないで!」

「業者が回収拒否、昨今は分別が厳しいのである。んー、炮烙(ほうらく)とかいっとく?」

 

炮烙とは、猛火の上に多量の油を塗った銅製の丸太を渡し、その熱された丸太の上を罪人に裸足で渡らせるというモノだ。まぁ、ほぼ確実に死ぬ。

 

「人間など所詮は燃えるゴミ、環境問題など知らぬ」

 

教育機関でその発言はまずいだろう。

 

そして、そんな職員たちの奇行に胃薬を欠かせないゴルドルフ校長に、今日も多くの寄付が寄せられるのであった。

 

とまぁ、そんな具合でとにかく騒がしいことこの上ない学校生活だが、“飽きる”という言葉とは無縁なのは間違いない。

立香ももう高3、受験を控え、卒業まで残すところ一年を切った。そう思えば、斜陽を受けて赤く染まる校舎を歩く足も、自然と重たくなるというモノ。

 

ふと思い立ち、何となく始めた校舎内の散策。気付けばあれだけいた生徒の姿はほとんど見かけなくなり、校庭にも人の気配がない。どうやら、完全下校時刻は目の前のようだ。

 

(そろそろ、終わりかな)

 

名残惜しくて目に焼き付けていた、というわけではない。ただ少し探し物…もとい、探し“人”がいたというだけの話。できれば会っておきたかったのだが、そろそろ潮時だろうか。……そう思ったところで、忘れるはずのない声が聞こえた。

 

「おや、どうしたんだい藤丸君」

 

振り向けば、そこにいたのは……

 

「……ドクター」

「マシュが探していたよ。そろそろ鍵も閉めるし、君ももう帰りなさい」

「おお、いたいた。てめぇこんな所に居やがったか」

「パツシィ……」

「おら、さっさと帰るぞ」

 

狼の顔で口角を二ッと吊り上げ、手を差し伸べる。

その手を取ってしまいたい衝動に駆られるが、辛うじて堪えて引っ込める。

 

「……ごめん。俺、もう行かなくちゃ」

「先輩!!」

 

先の言葉の通り、立香を探していたのか少し息の乱れたマシュが泣きそうな顔で駆け寄ってくる。

 

「どうして…どうしてですか! 先輩はもう十分頑張りました! たくさん傷ついて、苦しんで……やっとの思いで取り戻したものはみんな先輩を通り過ぎて行ってしまった。でもここなら!」

「そうとも。ここに居ればいい。ここには、君を傷つけるものは何もない」

「ああ。なくしたものも、こぼれていったものも、全てがある。お前は、幸せでいられる。それでいいじゃねぇか」

 

ああ、それはなんて甘い言葉なのだろう。確かにここにはすべてがある。置き去りにしてしまった両親も、道を拓いて消えて逝った仲間たちも、この手から零れ落ちた人たちも。

喪失も、罪も、苦しみも、全てをなかったことにできるのだろう。

 

でも、それは……

 

「まだ、やり残したことがある」

「君は、その身に負った責任を十分に果たしたよ」

 

違う。そもそも、責任なんてもののために進めるほど自分は強くなかった。

 

「どうしてですか? ここは全てがある理想の世界、足りないものなんて……」

 

それも違う。ここには“忘れてはならないもの”がない。忘れたく、ないんだ。

 

「世界を滅ぼした罪なんざ、背負わなくていいじゃねぇか」

 

いや、そうじゃない。忘れたことはないけど、罪を理由に進んできたわけではない。

 

そう、自分はただ……

 

「こんな俺を信じてくれたみんなに、応えたい」

 

いつだって、それがすべての根本だった。

信じて送り出してくれた人たちに、胸を張れるように、その一心で進んできた。

もしここで足を止めれば……

 

「俺はきっと、もう“幸せ”になれないから」

「……ああ、それは。実に、君らしい答えだね」

 

その瞬間で、偽りの世界と偽りの大切な人たち、その全てが砕け散る。

割れたガラスの破片のように、世界の欠片が宙を舞う。その欠片がまた砕け、きらきらと光を反射しながら粉々になっていく。

最後に残ったのは真っ白な世界と、ストレートの髪を中分けにした森人族の女性だった。

 

「……いつから、お気付きに?」

「校門を見た時かな。もう会えない人が、いっぱいいたから」

「それでも、あなたは揺らがないのですわね。お見事です。甘く優しいだけのものに価値はない。与えられるだけでは意味がない。どれほど辛くとも、どんなに苦しくても、現実で積み重ね、紡いだものこそがあなたを幸せにする…など、あなたには今更言うまでもないことでしょうね」

 

慈愛に満ちた優しい声と表情。“どうか忘れないでほしい”、そんな切なる願いが込められていた。

すると思わず、こんな言葉が口をついていた。

 

「懐かしい人たちに会えて嬉しかった。いい夢を、ありがとう」

「まさか、この試練を受けてお礼を言われるとは思いませんでしたわ。……でも、どういたしまして」

 

目じりに浮かんだ涙を指先で拭いながら、晴れやかな顔で彼女は答えてくれた。と、そこへ……

 

「ほら見たまえ、私の言った通りだろう? 今更、彼がこんな夢に誑かされるはずがないってね」

「何を自慢しているか知らんが、それこそ当然だろう夢魔よ。この男は監獄塔を超えし我が共犯者、我らに道を示す者。それがこの程度で己が道を見失うようならば、我が恩讐の炎で焼き尽くしていたところだ」

「とか言いつつ、いつでも割って入れるようスタンバっていた彼なのであっ「マーリンシスベシフォーウ!!」ドフォ―――――ウッ!?」

 

どこからともなく飛来した白い塊が、マーリンの両眼を痛打する。

 

「目が、目が――――――――っ!? 何をするんだこの凶獣!」

「クハハハハ! よくやった、比較の獣よ」

「フォウ! フォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォウ!!」

 

そのまま、短い前足でマーリンの両眼を連打し続けるフォウ君。その度に苦悶の声を漏らすマーリンに、立香が“あっちゃ~”と額に手をやって呆れていると……後ろから、何やら熱いと息が漏れていることに気付く。

 

「ハァハァハァ……ああ、あんなに激しく……なんて羨ましい……」

(やばい、この人多分ティオの同類だ)

 

深入りしてはいけない気配を感じ、とりあえず現実逃避がてらエドモンの方を向く。

 

「そういえば、シオンとデイビットを見かけなかったけど、何か知ってる?」

「ああ、奴らであれば己が夢であると早々に察していたようだからな。だからこそ、お前の前に姿を見せなかったのだろうよ」

 

確かに、色々と特殊なあの二人ならそれ位できても不思議はない。

とそこへ、まるで頭に靄がかかるように意識がぼやけ始める。

 

「ん……あれ?」

「抗うな、夢から覚めるだけだ」

「そっか……」

「貴様が悠長にしている間、後輩たちはさぞ気を揉んでいたようだからな。精々、上手い言い訳を考えておくことだ」

 

その言葉を最後に意識が急速に沈み、間もなく途切れた。

 

 

 

  *  *  *  *  *

 

 

 

「ハッハッハッハッ!」

 

走る! 走る! 走る!

速度を緩めず、脇目も振らずひた走る。

 

本能と理性、双方が“死に物狂いで走れ”と訴えている。時に蛇行し、時に緩急をつけ、あるいは鋭角な方向転換。僅かでも躊躇すれば、瞬く間のうちに周囲を照らす眩い銀光に飲み込まれると知っているからだ。それを証明するように、寸前までフェリシアのいた空間が降り注ぐ銀羽に触れると同時に消える。ならば、足を止めるなどあり得ない。彼女はここに来たのは死ぬためではなく戦うため、自身の“敵”と対峙するためなのだから。

 

……ああ。だがそれでも、降り注ぐ光は恐ろしいほどに美しく……あまりの忌々しさに吐き気がする。

 

(遠方から見れば、まるで宗教画のような神々しさなのでしょうね)

 

らしくもない、皮肉気な思考が脳裏をよぎる。

きっと、この輝きに惑わされた者も少なくはあるまい。あるいは、今も泰然と天からフェリシアを睥睨する、女の形をしたナニカの美貌に心奪われた者もいるのだろう。

確かに、あの女の美貌には非の打ちどころがない。まさに“神の手による造形”という奴だろう。人形じみた無表情すら、その美を引き立てる一因であることは認めざるを得ない。神とそれに連なる者は人とは別格の存在である、それを端的に示しているかのようだ。

 

しかしフェリシアには、その“無欠の美貌”がどうしようもなく醜悪で、悍ましく思えてならない。

しかとその顔を目にしたのはほんの数秒。にも関わらず、脳裏に焼き付き離れないその貌が、筆舌に尽くし難い苛立ちを掻き立てる。そんな雑念、死地にあっては足枷以外の何物でもないというのに…どうしても捨てられない。

それは師より“己を厳しく律せよ”と教わり、今日までそう在り続けたフェリシアが初めて体験する類の感情だった。

 

「逃げてばかりとは興覚めです。それでも“主の眷属”なのでしょうか」

(ああ…気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い…気持ち悪い!!)

 

もっと他に考えなければならないことがあるはずなのに、頭の中がいっぱいになる。どうしても、煮え滾る嫌悪感が抑えられない。今すぐにでも胸を掻き毟り、頭蓋を砕いてこの嫌悪感を吐き出したくて堪らない。

類稀な自制心を有するフェリシアだからこそ、これほどの感情のうねりを彼女は知らない。

 

(あの顔が、姿が、声が! 何もかもが気持ち悪くて堪らない!!

 わかっているのに、こんなものは先入観と思い込みからくる不快感でしかない。そんなものは今すぐ捨てて、今為すべきことを、活路を見出すために全能力を振り絞るべきなのに!)

「ばら撒くだけというのも芸がありませんか。では、これならどうです“縛光刃”」

「くっ…この、“雷槍”!?」

 

今まで降り注いでいたものとはまた異なる銀の光がフェリシアに襲い掛かる。それを、後頭部や首筋に創り出した複眼で捕捉、最小限の挙動で回避する。

と同時に手元に雷の槍を生成、振り返ることなく人間の骨格ではありえない動きで神の使徒を名乗る“ノイント”めがけて投擲する。

 

「なっ!」

「苦し紛れ…いえ、それ以下ですね。後先を考えない、衝動任せの攻撃とは」

 

槍を無造作な翼の一振りで消し去ったノイントの言葉は正しい。

他ならぬ、フェリシア自身が自分の行動に驚いている。十把一絡げの雑魚ならいざ知らず、強敵…それも自身より格上の相手に、意味も狙いもないこんな雑な一手が届くはずがない。

だが、だからこそ分かったことがある。

 

(ああ、これが……“激情”というものか)

 

フェリシアとて感情がないわけではない。立香たちとの交流は楽しかった、ミュウが心開いてくれた時は嬉しかった。逆に、世界の真実を知った時には怒りがこみ上げ、カトレアの死は心が引き裂かれるような思いだった。

冷静さを失いかけたことなら何度でもある。しかし、そのどれでもフェリシアは最終的には自らを律することができた。精々、一言叫んで発散してやればそれでどうとでもなった。己が感情に名前を付け、それを制御する。フェリシアにとってはできて当たり前のことだった。

だが、ここにきてフェリシアは初めて己を突き動かす衝動の存在を知った。

 

(これは、確かに抗い難い)

 

正直に言えば、フェリシアは少しだけ自分以外の人たちが不思議だった。とりわけ、衝動的に犯罪に手を染めたり、他者と衝突したりする者たち、彼らのことが今一つ理解できなかった。

どうして彼らは、そんな場当たり的な行動をとるのだろう、と。意見の相違や追い詰められたとき特有の怒り・焦りは理解できる。しかし、それで後先考えずに行動したところで、事態が好転するはずもないことはわかりきっているはず。なのに、どうして彼らはその感情を抑えようとしないのだろう。感情を抑制し、己の目的・願いのためにどうすべきか考えて行動を選択すれば、最善とはいかないまでもより善い結果を手繰り寄せられるはずなのに。

 

幼い頃はそれが本当に不思議で、長じてからは“多くの人にとって感情の制御は容易ではない”のだと知った。そういえば、師からも“お前は心の制御が上手い、良いことだ”と褒められた。あまり、素直には喜べなかったが。

そう。どれほどの怒りも悲しみも、心のどこかに冷静に見定めている自分がいて、最終的には制御できてしまう。そんな自分のことを、“怒っているフリ”“喜んでいるフリ”をしているだけなのではないかと思ったこともある。

 

だが畢竟、そんなことは“どうでもいい”と結論付けた。

自分の感情、あるいは心が偽物であれ本物であれ些細なこと。真偽はともかく、抱いた願いも湧き上がる感情もすべては自分のもの。ならばそれでいい。むしろ、悲願を果たすためには“御せる心”というのは都合がいい。

そう、思っていたのだ……

 

「ハッ、ハハハハハハハ! ああ、神よ。生まれて初めて、あなたに心からの感謝を捧げましょう」

「どうやら、ようやく主の威光を理解しましたか」

 

フェリシアの言葉に興味を惹かれたのか、ノイントの攻撃の手が止まる。相変わらずその目に感情の色はうかがえないが、フェリシアにとっては都合がいい。

生まれて初めて知った、この持て余す激情との向き合い方を探る…のではなく、現状を正しく認識するために。

 

(この感情は私の手に余る。制御できないのなら、これ(激情)を活かすことに頭を使うべきでしょう。さしあたっては……敵の攻撃手段ですか)

 

ヒントは先の衝動に任せた布石ですらない一撃、だが存外読み取れたものは多い。天魔転変でいたるところに創り出した目から得られた情報も大きい。

使用された魔法は、威力・規模はともかく性質は既知のものと変わらない。ユエとの模擬戦を参考にすれば、対処は十分可能だろう。問題はあの“銀翼”、“雷槍”を何の反応も示すことなく消し去ったあれは、おそらく防御ではなくもっと攻撃的な何かだろうと推察できる。

翼から離れフェリシアを襲い続けた“銀羽”の様子から、ある程度遠隔で動かすことができる上に、着弾個所はまるで抉られた様にこれまた消え去っていることがわかる。触れればただでは済まないだろう。加えて、連射性は高く、残弾が尽きる様子もない。

結論、あの翼と羽には触れてはならない。空を自由に飛ぶという絶対的アドバンテージを有する相手に、なんという無理難題であろうか。フェリシアも飛ぼうと思えばできなくはないが、“自由自在”からは程遠い。遠距離攻撃の手段に乏しいフェリシアからすれば、最悪に近い相手だろう。

 

(……なるほど、これがハジメ殿の言うクソゲーというものですか)

「しかし、喜びなさい。あなたは既に主の盤上に不要な駒ですが、一つ役目を与えましょう。

 ……死になさい。無論、ただ死ぬだけでは足りません。この上なく無様に、滑稽に、です。

身の丈に合わない理想を掲げ、最後は何をも為すことなく躯を晒す。“道化”こそがあなたの役でした。にも拘らず、その責務を放棄した罪は万死に値します。

主の望みに反したあなたには、それ以上に愉快な演目を踊る義務があると知りなさい」

「……やはり、私たちの動向が漏れていたのは!」

「全知にして全能なる主の目を掻い潜るなど、あなた方にできるはずもなし。

漏れるはずのない計画が漏れ、それをキッカケに愚かにも内輪で争い、最後は内通の罪で捕縛され公衆の面前で断罪される。民衆は侮蔑と憎悪の視線と共に石を投げ、凌辱の限りを尽くして命を落とす。それがあなたの運命でした。そのついでに、イレギュラーの戦力評価もと考えたのですが…つくづく期待外れですね、あなたは」

 

無感情な筈の瞳の中に、心の底からの失望が滲む。

自分たちの背後で蠢いていた……いや、今も世界中の影で張り巡らされている策略の一端に、既に飽和していたと思っていた怒りと憎しみが燃え上がる。親友が死んだのも、その伴侶と腹心を手にかけることになったのも、多くの同胞に無惨な死を強いたのも、全ては“神”を僭称する愚物に端を発するというのなら……。

 

「一つ教えましょう。あなたの配下たち…彼らは死にましたよ。適当な嫌疑をかけ、証拠を作り、連座で一族郎党…女子どもの区別なく」

「き…さまぁ――――――――――――――――っ!!」

 

その瞬間、フェリシアを押しとどめていた最後の糸が切れた。思考は漂白され、弾かれた様に飛び出すと“空力”の込められたブーツで空を踏みしめ駆け昇る。

再度降り注ぐ銀羽を最小限の動作で回避。微かな被弾は無視し、その度に鮮血が舞うが即座に修復される。予想通り、展開された甲殻はほとんど意味をなさないが浅ければ支障はない。そのまま一気に距離を詰めようとするも、ノイントの表情にはかすかな焦りも見られない。

 

「“劫火狼”」

「“刻永”!!」

 

目の前を埋め尽くす超高温の炎の壁…いや、津波。フェリシアは1秒毎に1秒前の状態に再生させる再生魔法を発動すると、臆することなく劫火の中へと突っ込む。

肌を、髪を、目鼻口の粘膜が焼け爛れる痛みを認識する余裕すらない。そもそも、“熱い”とすらフェリシアは感じていなかった。ただただ目の前の敵は、正真正銘の“不倶戴天”。生きていることが、呼吸していることが、存在していることが許せない。噴火の如く無尽蔵に溢れる殺意が、フェリシアに一切の余分を許さない。

 

そうして、強引に炎の津波を突破したフェリシアは、大上段から渾身の一撃を振り下ろす。

しかしその一撃は、ノイントが頭上に掲げた右腕に握られた大剣に難なく防がれる。

 

「くっ!?」

「大振りですか…らしくもない。あなたは、もう少し冷静な振る舞いができると思っていましたが…底が見えましたね」

「……したのか」

「なにをです」

「殺したのかと問うている! 同志たちだけでは飽き足らず、無辜の人々を! それどころか、何も知らない子どもまで!」

「それが何か?」

「っ!?」

「この世の全ては主の遊戯盤。ならば、それを如何様に扱うかは主のご意思次第。玩具を戯れに壊したところで、一体何の痛痒がありましょう」

「……っ」

 

最早、非難の声も道理を説く言葉も出てこない。見誤っていたのだ、“まさかそこまでするはずがない”と。いくら命を軽んじていようと、大した意味もなく、無関係に等しい者達まで殺すなどという暴挙に出るはずがないと。

仮に出ようとしたところで、その時は……

 

「実行したのはフリードですよ」

「ま、さか……」

「神命は全てに優先し、必ずや果たさなければならない絶対の理。アレも、ようやく己が役割というモノを弁えたようです」

(殺させたのか、あの人に。無辜の民を、次代を担う子どもたちを、守るべき人々を……)

 

怒りと憎しみで埋め尽くされた心に、僅かな悲嘆が混じる。フリードであれば、徒に民を傷つけるようなことはしないと信じていた。同志たちの縁者だとしても、不自由はさせてもそのようなことはしないと。

しかし、ノイントの言葉が真実だとすれば…フリードは自らの手でそれを行ったという。それも、何らかの干渉や操作を受けた結果として。

師弟の心はとうに離れていたが、その一因にはノイント達神の一派の影があったのだろう。

 

(なんという、ことを……)

「隙あり…おや、これでは効果が薄いですか」

 

フェリシアが両腕の力を込めた一撃を軽々と右腕一本で支えながら、空いた左手に握った大剣が一閃される。

胴が横一文字に切り開かれ、半ばまで断たれた背骨と背中の皮で辛うじて上半身と下半身がつながった状態。通常なら問答無用の致命傷…だが、既に人の身から遠く離れたフェリシアが相手ではその限りではない。

ブラリと垂れ下がりそうになった下半身を即座に繋げ直し、敵の胸を踏みつける。寸でのところで引き戻された大剣の腹で防がれるが、距離を取ることに成功。空力で宙を踏みつけながら、僅かに冷静さを取り戻した頭で何が起こっているかを確認する。

 

(恐るべき斬れ味…というだけではありませんね。恐らく、あの羽と同種の魔力で剣を覆うことで攻撃力と防御力の双方を底上げしている)

 

事実、鋼鉄を上回る硬度を誇るフェリシアの表皮を難なく…それこそ一切の抵抗なく斬り裂くなど、そうでなければ考えにくい。

大剣の腹を踏んだ右足の靴底から伝わる感触も、左と僅かに違う。踏んだ瞬間に、靴底をかなり消されてしまったのだろう。

要は攻撃にしろ防御にしろ、触れるのはリスクが高いということだ。愛槍は一級のアーティファクトなだけあり、敵の魔力にもある程度対抗できているのが数少ないプラスの判断材料か。

 

「……なるほど。軽傷、あるいは破損範囲の狭いダメージは実質無効……神代魔法をよく使いこなしていますね。

 であれば……これならどうです」

「っ!」

 

ノイントが大剣の切っ先を向けた瞬間、白銀の光の塊がフェリシアの視界を埋め尽くした。

咄嗟に空力を解除することで自由落下、何とか射線から逃れる。しかし、避けた先には待ち構えていたように銀羽が展開され逃げ場を封じられる。そこへ……

 

「分解範囲が広ければ、復元も間に合わないようですね」

 

確信を得たと言わんばかりに次の砲撃が放たれる。

 

ノイントの読み通り、フェリシアの再生魔法で復元できる範囲には限度がある。軽傷であれば問題ないし、四肢を斬り落されたとしても手足さえ残っていれば再接続には一秒もかからない。通常の戦闘であれば、それこそ重症であったとしても問題はない。

しかし、ノイントの固有魔法“分解”の前では無力だ。アレは、触れた存在を問答無用で分解し消滅させる。掠めた程度の傷であればまだしも、大々的な部位欠損となればフェリシアの手に余る。“悪鬼変生”も、強化・再構成する部位がなければ意味をなさない。変成魔法で造った万能細胞で補填すれば復元も可能だが……

 

(そんな猶予を与えてもらえるとは思えない。ならば!)

 

このまま棒立ちでいれば悪くて全身、良くても身体の3割以上が消し飛ぶ。そう判断したフェリシアは、自ら四方を覆う銀羽の囲いの一点に突っ込む。被害を最小限に抑えるべく、“波城壁”で自身を水のドームで包む。とはいえ、羽が着弾し消滅した箇所が周囲の水で埋められるまでにはわずかなタイムラグがある。その一瞬の間隙を抜け、ドームを突破した羽がフェリシアの身体を削り取る。

 

「良く避けるものです。ですが……」

(このままではジリ貧……受けに回れば押し切られる以上、何とか攻めに回らなければ!)

 

避けた先には次の砲撃、さらにその周囲にはまたもや銀羽の囲い。同じことを繰り返していけば、最後に待つのはフェリシアの死だ。

“逃げる”のではなく“肉薄”するため、意識を切り替える。銀羽に身体を抉られ、迫りくる砲撃に顔の右側面を削り取られながらもノイント目指して疾駆する。その間にも次々と銀羽と砲撃、魔法が放たれるが最小限の防御と回避にとどめ、左半身を前に向ける形で半身になって接敵を優先。結果、気付けば復元を負傷のペースが上回り全身血まみれの無惨な有様だ。

脳を守るために掲げた左腕は至る所が穴だらけ、抉られた胴からは内臓が零れ、削られた左足の骨が露になっている。

 

だがそのおかげで、頭と右半身は比較的軽傷だ。

あと一側の間合いまで迫ったところで構えを変える。槍を手にした右腕を大きく引き絞り、右足に渾身の力を込めて空を踏む。放たれた矢のようにまっすぐノイントの喉元めがけて槍を突き出す…その直前、フェリシアは自らの失策を悟った。

 

(しまった、こんなところで……)

「動きが単調になっています」

 

フェリシアのねらいを読んでいたノイントの大剣が一閃される。

槍の穂先がノイントを捉えるまであと数センチというところで、フェリシアの右腕が高々と宙を舞った。

 

「消えなさい」

「“聖絶”!」

 

斬り上げた左の大剣の切っ先から放たれた砲撃で宙を舞う右腕を消し飛ばし、流れる動作で双大剣がフェリシアの肩を袈裟懸けに斬り伏せる。

辛うじて間に合った光属性最上級防御魔法が双大剣を受け止めてくれた。とはいえ、衝撃までは如何ともし難く、叩きつけられるようにし石畳に激突。そのまま数度のバウンドの末、フェリシアの動きは止まった。それにやや遅れて、ノイントの直下に消え残ったフェリシアの槍が突き刺さる。

 

「カ、ハッ…ハッハッ」

「まだ立ちますか」

(急げ! 急いで右腕を復元……)

「させるとでも?」

 

宝物庫から復元用の肉塊を引き出そうとするも、その前に雷光が襲い掛かりそれを阻む。

フェリシアが何をしようとしていたか知っているのか、あるいは知らないまでも自由にさせる気がないだけなのか。いずれにせよ、腕をはじめとした重症箇所の復元は容易ではない。

いや、本当の問題点はそんなことではない。

 

(頭に、血が上っていた。あまつさえ、それを“御する”のではなく“利用する”と言って身を任せたのが間違いだった)

 

未だかつてない激情に、抑えることを放棄してしまったのがそもそもの過ち。

生まれて初めて我を忘れるような激情を抱いた者が、その怒りに身を任せればどうなるかなど…考えるまでもないことだったというのに。

せめて冷静さを失っていなければ、ここまで一方的に追い詰められるようなことはなかっただろう。

 

しかし、全ては後の祭り。

フェリシアは怒りに身を任せ、その結果片腕を失っただけでなく全身重傷。変成魔法と再生魔法で失った血をはじめ可能な限りの回復が図られているが、“分解”という敵の固有魔法との相性の悪さから効果は薄い。その上、獲物まで失っていると来た。対して、敵はほぼ無傷。いっそ滑稽なほどに一方的だった。

だが、悪いことばかりではない。大量の血を流したからだろうか、あるいは激情に任せた結果痛い目を見たからか。先ほどまでと違い、随分と頭が冷えた。

 

「…………」

「存外呆気ないものでしたが、これにて終演とさせていただきます。ご安心を、まだ殺しはしません。この世界の行く末、イレギュラー達の末路、それを特等席でご覧に入れて差し上げます。あなたは主の無聊を慰める小夜啼鳥、存分に歌うがよろしいかと」

「……ハッ。よもや、もう勝ったつもりですか? 片腕を消し、血達磨にした程度で?

 神の使徒も詰めが甘い。私にはまだ左腕がある、脚も動く、頭は冷えた。勝利を前に気を抜くのは、三流のすることですよ」

「挑発のつもりですか? 生憎と、私に感情はありません」

「ただの事実です。私であれば、到底気を抜ける状況ではないと言っている。神の使徒とは、随分と楽観的らしい」

「……いいでしょう。ならば、試してみなさい」

 

“来る”そう思うと同時に、フェリシアの周囲に銀羽が降り注ぎ逃げ場を封じる。一度ならず何度となく成功した戦法だ、繰り返すのも当然だろう。何しろ、当のフェリシアが馬鹿のように何度もそれに引っかかったのだから。

しかし、頭の冷えた今は違う。むしろ、先ほどまで良い様に翻弄された自分の迂闊さに呆れてしまう。

 

確かに有効な戦法だ。手堅く、確実で、隙が無い。距離を取りながら俯瞰視点で攻められるというのも、大きな利点の一つだろう。

だが、だからこそ…“読み易い”。銀羽の動きを見れば、フェリシアをどこに誘導したかがわかる。構えてはいなくても、そこに向けて砲撃を撃つつもりであることは明らかだ。

ならば話は簡単、それを逆手に取ってやればいい。

 

(先ほどまでと変わらず、銀羽の薄い箇所狙い。誘導されているとも知らず……)

 

そう考え、同じように砲撃を放つノイント。だが、そこからが違った。

フェリシアは砲撃回避のために銀羽に突っ込むでもなく、回避と並行して強引に距離を詰めるでもなく、ヒラリと砲撃を回避してから悠々と砲撃の進行ルートを遡る。

 

「っ!」

(簡単な、とても簡単な話。魔力に接触した対象を消し飛ばす能力だというのなら、それはより強力な魔力が込められた砲撃に触れた羽も消滅するということ。つまり、砲撃が消えた後の進行ルート上は一時的な空白地帯、これ以上ない安全圏!)

 

焦るあまり見落としてしまった、あまりにも単純な対処法。

しかし、先の失策も完全に無駄だったというわけでもない。何しろ、フェリシアが易々と嵌められたからこそ、ノイントもまたそのことを失念していたのだから。

 

(この好機、逃すわけにはいかない!)

 

空白地帯を埋めなおすように銀羽が動くが、フェリシアは左腕を無造作に一振り。同時に、腕から鱗のようなものが飛び出し銀羽と触れてともに消滅していく。確かに“分解”の固有魔法は危険極まりないが、“触れた対象を分解する”というのなら、代わりのものをぶつけて身代わりにしてしまえばいい。

変成魔法により自在に体を操ることのできるフェリシアにとって、表皮を変質させた鱗の生成など容易い。流石にサイズが小さいので完全に消滅させることはできないが、幾分か削るだけでも大違い。

 

被害を最小限に抑えつつ距離を詰めていく。無論、ノイントとて手を拱いているわけではない。

フェリシアの変化を即座に受け入れ、銀羽と砲撃だけではなく最上級魔法に匹敵する魔法を織り交ぜて弾幕を張る。加えて、身体全体を銀色の魔力で覆うと威圧感が跳ね上がった。

 

(“限界突破”か、それに似た能力ですか……)

 

“天魔転変”と“悪鬼変生”を併用した状態でも、基本性能はあちらが上だった。そこにさらに基本性能の上乗せがされたとすれば、得意とする近接戦ですら分が悪い。複数の目でも影を追うのが精いっぱいの速度で動き、角度と質を変えた弾幕が間断なくフェリシアを飲み込まんと襲い掛かる。生成した鱗を囮に使い、間近まで引き寄せてから迎撃することで対処しているが、このままではいずれ飽和する。

遠距離攻撃の手段に乏しい以上、何とか近接戦の間合いに持ち込まねば。とはいえそれも、先ほどの打ち合いでは冷静さを欠いていたとはいえ、その剣の冴えはフェリシアと同等以上と思い知らされた。

 

不利な要素ばかりが積み重なっていくが……フェリシアの顔には微かな笑みが浮かんでいた。

確かに圧倒的不利な状況だ。しかし、格上との戦闘には慣れている。サーヴァントたちに手合わせを求めたのは、決して無駄ではなかった。

 

(確かに目では追いきれない。でも、動きは予測できる)

(また、こちらを見ている。まさか、私の速度に対応している?)

 

影を追うのがやっとな速度で移動するノイントだが、その実フェリシアの視線を振り切ることが出来ずにいる。故に、距離を取ったまま死角からの決定打を狙おうにも寸でのところで対応されてしまう。感情を持たないと自称する通り、焦れているわけではないが……

 

(よろしい。ならば、試してみましょう)

 

自身の絶対的な優位性への確信。近接戦に持ち込んだところで、敗北はないという確たる自信があるからこそ、ノイントはあえて自らフェリシアとの距離を詰める。

あるいはそれは、先ほどまでの怒りにかられたフェリシアの印象が完全に拭いきれていないからこその選択だったのかもしれない。

 

「見えているのなら、防いで見せなさい」

 

背後に回り、大剣を振り下ろす。見えていても、距離が近ければ対応にはわずかに時間を要するからこそ、フェリシアの動きが間に合わない。

無論、ただ斬っただけではフェリシアへの効果は薄い。だからこそ魔力を纏わせ、斬った周辺の組織を丸ごと分解する。そのつもりで放たれた一閃はしかし、あまりにも呆気なくフェリシアの身体を両断した。

 

「まさかっ!?」

「別に、防ぐだけが対処法ではないでしょう?」

 

右肩から股下へ、両断されたはずの身体。その左半身に残った頭部が嘲弄を漏らす。

ノイントも気づいている。なにしろ、あまりにも“手応えがなさ過ぎた”。

 

フェリシアが得意とする変成魔法による身体操作。それを応用し、自分の身体を半身のまま生存可能な状態にして別つという荒業だ。ノイントはフェリシアの身体を両断したのではなく、別れた身体の間を空振りしたのである。

 

予想外の一手にさしものノイントも即座に体勢を整えられず身体が流れる。その隙をフェリシアが逃すはずもない。

別れた身体を戻す手間すら惜しみ、反転しながら残された左の貫手で首を抉る。

 

「はぁぁっ!」

「その程度、防げないと思っているのですか」

 

完全に隙をついたはずの一撃が、逆の大剣の柄で打ち払われる。

 

「まさか。ところで、これで手詰まりと言った覚えはありませんよ」

「っ!」

 

払われたその勢いすら利用し、左足を鋭く蹴り上げる。

重ねて虚を突かれたノイントは身を引いて辛うじてそれを回避するが……

 

「甘い」

 

足先から噴き出した血が固まり、刃となってノイントの右腕を斬り飛ばした。

 

追撃を警戒し、そのままさらに後退を図るノイント。欲を言えばこのまま追撃を仕掛けるべき場面だろう。しかし……

 

「……たがいに右腕を失って痛み分け、といったところですか」

 

切り離した右半身を戻し、左手で宙を舞うノイントの腕をつかみながら零した一言。

だがその実、痛み分けなどとんでもない。一度は距離を取ったノイントだが、腕を落とされたことにプライドを傷つけられたのか、先ほどまでよりさらに激しい魔力を纏っている。

引き換え、フェリシアの魔力の波動は弱々しい。当然だ、戦闘が開始されてからというもの、フェリシアはずっと全開で魔力を消耗し続けていた。天魔転変と悪鬼変生の併用、さらに欠損した身体の復元、襲い掛かる最上級魔法に匹敵する弾幕への対処。どれも、決して魔力の消費量は安くない。

 

フェリシアが追撃しなかったのは、単純にガス欠が目前にまで迫っていたからだ。

そしてそのことに気付かないノイントではない。

 

「主の使徒たるこの身を傷つけるとは、なんという不遜。なんという不敬。千度殺してもなお飽き足らぬ大罪です」

「今日日、子どもでも怪我の一つでそこまで騒ぎ立てませんよ。器が知れるのでは?」

「……いいでしょう。所詮はそこまで、確かに驚嘆に値する力ではありますが、脅威足りえないのもまた事実。

死力を振り絞ることで辛うじて私に傷をつけることはできても、そこがあなたの限界です。それではあなたに勝機はない」

 

ノイントの言葉は正しい。持てる有りっ丈を振り絞ることで何とか一矢報いたものの、フェリシアにはこれ以上打てる手がない。魔力も体力も底をつく寸前、あとはもう為す術はない…にも拘らず、フェリシアは笑っていた。

清々しく、嬉しくてたまらないとでもいう様に。

 

「……何がおかしいのです」

「別に、おかしくて笑っているわけではありませんよ。これは、嬉しくて笑っているんです。

 確かに私の力はあなたを倒すにはまだ足りない。でも、私の牙は確かにあなたに届いた。お前たちは、決して届かない存在ではないと証明された! これは大きな収穫です、嬉しくない筈がないでしょう?」

 

その言葉に、それまで微動だにしなかったノイントの表情筋が動き、僅かに眉根を寄せる。“不愉快だ”と言わんばかりに。

 

「届いたからどうだというのです。あなたにはもう打つ手がない。次などない、ここで終わりです」

「そうですね。あなたの言う通り…もう十分です。ですので、()()()()()()はここまで」

 

そう言って、握っていたノイントの腕を自身の右腕の断面に合わせる。残り少ない魔力で変成魔法を発動し、自身の腕の代わりにノイントの腕を接続。その感触を確かめるように手を開閉させ、続いて新たな右手を懐に入れる。

 

「ああ、一つお礼を言っておきましょう。この腕、存外悪くありません。有難く、頂戴します。

 そして、これでさようなら」

 

懐から取り出したのは、ステータスプレートにも似たカード。

ノイントから見える面に描かれたのは、髑髏の面に短剣を装備した痩身の男の図柄。

ノイントがその意味を図りかねる中、フェリシアの朗々とした声が響き渡る。

 

「―――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。人理の寄る辺に従い、我が身に宿れ―――アサシン」

 

その瞬間、フェリシアを中心にわずかな光と共に一陣の風が渦巻いた。

それはほんの一瞬の出来事、風が吹き抜けた後には赤いフードに軽鎧を身に着けて立っていた。

 

「それでは、あまり時間もありませんので……さぁ、ついてこれますか。時のある間に薔薇を摘め(クロノス・ローズ)

「っ!」

 

その瞬間、フェリシアだった者の姿が掻き消えた。いや、違う。消えたのではなく、高速で移動したのだ。それこそ、ノイントですら目で追うことが困難なスピードで。

 

(このスピードは…いえ、早いのではない。これは……)

 

そのスピードの意味を、一瞬遅れてノイントは理解する。単純なスピードとは異質な身のこなしの速さ、視認できないまでも迫りくる脅威を感じ取って回避動作に入る。それが、無意味であることを悟りながら。

 

「時間加速…再生魔法をここまで!?」

「惜しい。ですがまぁ、似たようなものですよ」

 

何とか近づけさせまいと、銀羽と魔法で応戦する。それはさながら白銀の壁、通常であれば下がることでやり過ごすことはできても掻い潜ることなどできるはずがない。

にもかかわらず、まるで子どもの投げるボールをよけるかのように回避されてしまう。

 

当然だ、なにしろとお互いの生きる時間の流れそのものが大きく隔たっているのだ。その隔たりは約五倍、つまりノイントが1秒を過ごす間にフェリシアは5秒分動いている。どれほど早い魔法であろうと、普段の1/5まで速度が落ちてしまえば対処のしようなどいくらでもある。特にフェリシアは、先ほどまで通常の時間の流れの中でノイントの魔法に対処していたのだ。

いきなり速度がガタ落ちになれば、当然回避など容易い。ましてや、基本速度が先ほどまでより劇的に向上しているとなれば尚更に。

 

「くっ!」

 

立場は逆転し、先ほどまでの苦戦が嘘のようにフェリシアはノイントの至近に迫る。

ノイントは双大剣を神速で振るうが、今のフェリシアにはあまりに遅すぎる。

 

迫る大剣を潜り抜け、伸びきったノイントの二の腕の内側にナイフを一閃。

続いて太腿、さらに脇腹、回り込んで背中と首。

大剣を振るうのでは遅すぎると判断したのか、銀光を纏った翼を広げて広範囲を薙ぎ払う。当たれば瞬く間に分解される死の翼だが、フェリシアは宙に身を躍らせて回避しつつその根元にさらに一閃。

最後に、トドメとばかりに心臓に向けていつの間にか持ち替えたコンテンダーが放たれた。

 

「がはっ!?」

 

その結果を見届けることなく、自らノイントと距離を取るフェリシア。

それを油断と取ったのか、あるいは好機と取ったのか。そもそも、幾度となく攻撃にさらされたにもかかわらずダメージらしいダメージがない。そのことにかすかな疑問を抱きつつ、ノイントはフェリシアめがけて特大の砲撃を放つべく魔力を回す。

 

「その驕り、死を以て贖いなさい!」

「忠告ですが、あまり…魔力を使わない方が良いですよ」

「なにを……っ!」

 

魔力の流れが臨界に達したその瞬間、“ドクン”とノイントの胸の奥が不自然に脈動した。

だが、ノイントがそれを認識できたかは定かではない。何しろ、脈動と同時にノイントは全身の毛細血管から血を吹きだし、真っ逆さまに墜落を開始したのだから。

 

結局、地面に激突するまでノイントは身動ぎ一つすることはなかった。恐らく落下中…いや、落下を開始した時点ですでに意識はなかったのだろう。

神秘轢断(ファンタズム・パニッシュメント)であれだけ切りつけたところへ、魔力を全開で回したのだ、さもありなん。あのナイフと銃弾は対象の魔力の経路を出鱈目に繋ぎ直し、暴走状態を引き起こすことで内側から破壊する悪辣極まりない代物だ。あの結果は、必然というべきだろう。

 

「……………………………ふぅ」

 

そして、使徒の失墜を見届けたことでようやくフェリシアも緊張を解く。

同時にそれまで彼女を覆っていたフードも軽鎧も消え去り、元のフェリシアが姿を現す。

 

「リツカ殿とハジメ殿、お二人には感謝しなければなりませんね」

 

噛み締めるように紡がれた呟き。

ハジメから貸与されたアーティファクトがなければ、空中のノイントとまともに戦うこともできなかった。立香がフェリシアのために用意したカードがなければ、一矢報いたところで命運が尽きていたことだろう。

フェリシアは、この勝利が自分一人のものだとは思っていない。これは今までに出会い、自分を支えてくれた多くの人たちがいたから得られたもの。誇る気にはなれず、ただただ感謝ばかりが浮かんでくる。

 

「っとと。感傷に浸っている場合ではありませんね、急いでメルドを回収して逃げなければ」

 

ノイントが行動不能になったことで結界も消失したらしく、王城関係者が駆け付けるのも時間の問題だろう。まだメルドを襲った犯人たちが近くにいる可能性もある。

正直、今のフェリシアは満身創痍だ。ノイントとの戦闘による負傷と消耗ももちろんだが、そこに加えて己が身にサーヴァントを降ろしたことによる負荷が積み重なっている。とてもではないが、これ以上の戦闘行動は不可能だ。

 

故に、急ぎこの場を離脱するという判断は全面的に正しい。正しいのだが……

 

(死亡は…確認しておくべきでしょうね。万が一にも生きていれば、厄介なことになる)

 

敵戦力を減らす好機というのもあるが、逃げようとしたところで背中を狙われてはたまらない。あれだけの難敵だ、どれほど弱体化していても油断はできない。

まだ息があるようなら、確実にとどめを刺してから行くべきだろう。大して時間もかからないし、その方が確実だ。

 

そう考え、残り少ない魔力で空力を維持しながら降下する。得物を回収してから、慎重にノイントの様子を伺いつつ距離を詰め……槍の投擲で止めを刺す。幸い、既に絶命していたようで反応はなかった。

ならば、あとはメルドを回収するだけ……と思ったところで、一つの考えが脳裏をよぎる。

 

「念のため、回収しておきましょうか……あれ?」

 

自身の宝物庫に躯を収容しようと近づいたところで、足がもつれたように転んでしまう。

咄嗟に手をついて倒れ込むことはなかったが、これだけ消耗しては無理もないことかと思い自身の足に目を向ける。そこには……あるはずの右足首から先がなくなっていた。

 

「……え? 私の、足…どうし、っ!」

 

疲労のせいか、頭の回りが遅い。だが、その状態でも流石にその異常性に気付く。

同時に、絶大なプレッシャーが上空から降り注ぎ反射的に天を仰ぐ。そこには……

 

「どうして、貴様がそこに…確かに、殺したはずなのに」

「ええ、確かにノイントはあなたの手によって討たれました。驚嘆に値します」

 

すぐ目の前で無惨な躯を晒すノイントと全く同じ顔をした理不尽がフェリシアを睥睨していた。

 

「……使徒は、一体ではなかった」

「察しが良いのですね。神の使徒、エーアストと申します。

ノイントだけで十分、後詰めなど不要と思っていましたが…考えを改めましょう。あなた方は最優先で排除すべき脅威であると、故に……この機を逃すことは致しません。速やかに消えなさい」

 

その宣言と共に、燦々と輝く銀の光が降り注ぎ…フェリシアの視界を埋め尽くした。

 

 

 

  *  *  *  *  *

 

 

 

夜の静けさを取り戻した王城の一角、主の居なくなった部屋から外の様子をうかがっていた二つの影。

その片方、やや小柄な影は事態の終息を確認してゆっくりと口を開いた。

 

「いやいや、なんだかすごいものを見ちゃったねぇ」

「……」

「ま、終わり良ければ総て良し、と。それにしても、あのとんでもなく強いお姉さん何だったのかなぁ?」

「……」

「結局“彼女”倒されちゃったし、あのままだと僕たちも危なかったかもねぇ。ほら、なんか以前雫がやったのと似たようなことやってたし、南雲の関係者だったのかなぁ?」

「……」

「だとしたら団長さんも抜け目ない人だよね。異端者認定された奴と、密かに繋がってたって言うんだからさぁ」

 

小柄な影が饒舌に話すのとは対照的に、体格のいい人影…檜山大介は顔を蒼くして黙り込んだままだ。

自分たちに手を貸していたノイントを思い出してか、あるいはそのノイントを打ち破ったフェリシアのひと睨みが効いているのか。

共通しているのは、どちらも理解不能な存在であること。比較するのも烏滸がましい隔絶した実力差。

敵に回してはならない。目が合った瞬間、どちらもそう思い知らされた。今は心に湧き上がる恐怖心を振り払うのに精いっぱいだった。

 

「おいおい、まさかまだ怖がってるの? いくらあのお姉さんがおっかなかったからって、もう死んじゃったんだよ? そんな調子で、香織を取り戻せるのかなぁ?」

「う、うるせぇ! べ、別にビビッてなんかねぇよ!」

「そうかい? それならよかった。ちょっと予想外の事態にはなったけど最大の障害はクリアしたし、厄介な雫と愛ちゃんは本山。

 ふふっ、これはいよいよ僕ってば神様に祝福されちゃってるみたいじゃない? いやいや、意地の悪い神様もいたもんだよね」

「……これでもう、邪魔者はいねぇんだな」

「もちろんさ。国王様も宰相さんも頭ぶっ飛び中だし、教会は最初からこっちの味方。団長さんを落とした今、僕を止められる…ううん、止めようとする人なんているわけじゃないか」

 

狂気の滲んだ声。同じ穴のムジナであるはずの大介ですら、無意識に後退ってしまうほどの悪意。

 

「ああでも、せっかくだからあのお姉さんの死体も残しておいてくれればよかったのに。そうすれば、良いおもちゃが手に入ったんだけど…まぁ、今回は団長さんが手に入っただけ良しとしておこうか」

 

視線の先にはクレーター状に抉られた元石畳の無惨な姿。そこにはフェリシアの姿も、ノイントの残骸も残されてはいない。

いっそ執拗なまでの抹消の意思。駒風情に破れた使徒の存在を許さず、不遜にも神に楯突いた駒などいなかったとそう示すかのように。

 

だが、人影はその事に畏怖も嫌悪も抱いていないかのように嗤う。

むしろ、人の死体を弄ぶことに対して一切の躊躇を見せないその姿は、一種異様ですらあった。あるいは、あまりの自然さに幼子のような印象さえ抱かせる。

いや、ある意味その通りなのかもしれない。下手な悪人よりも、子どもの方が残酷なものなのだから。

 

「……」

「おい、どうした。さっさと済ませてずらかるぞ」

(……術の掛かりが悪い? まぁ、死んでからちょっと時間が経っちゃってるみたいだし、仕方がないのかな?)

「おい!」

「はいはい、そんなに急かさないでよ。よし、これでオッケー。さ、明日も早いし戻るとしようか。僕らの望んだ未来のために、ね」




もう学校に到着する頃にはこれが夢であることに気付いてた立香。“もう会えない人”のオンパレードでしたからね。同時に、懐かしい顔がいっぱいだったのでついつい長居してしまった次第。とはいえ、一応放課後を期限に設定して、あるいは会えるだけ会ったらすっぱり終わりにしようと思っていました。家に帰るまでではなかったのは、もう一度両親に会ったら振り切れないかも…と思ったからですね。
他の面々は現実との齟齬に怒りを抱いたのが脱出のきっかけだったわけですが、立香はむしろ感謝しています。このあたり、経験値の差でしょうか。


ちなみに、フェリシアの所有しているカードが誰かは言うまでもないですよね。あ、ノイントが見たのはサーヴァントそのものの図柄ではなく、象徴するクラスの図柄ですのであしからず。

この二人「目的のために手段を択ばない」「自分の手を汚すことに躊躇しない」とかその辺に関して共通点があり、そこそこ親和性があります。
とはいえ、性格的な相性が良いかは別問題。多分、顔を合わせればお互い蛇蝎の如く嫌い合うと思います。同族嫌悪ですねぇ……。
余談ですが、他にも相性のいいカードはあったんですが、高潔なタイプが多いので引け目を感じてしまったというのが一番の理由かなぁ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。