ありふれた職業と人理の盾   作:やみなべ

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対ベヒモス戦。
マシュとっても頑張ります、身を削って頑張ります。
でも、頑張りが報われるとは限らないのが世の常なわけで……。


003

(マシュがクラスメイト達と姿を消して、早半月か。

 未だにこれと言って進展はなし。やれやれ、流石にこれは私でも堪えるね)

 

かつての旅路も果てしなく遠く険しいものだったが、それでも少しずつ進んでいる手応えがあった。

しかし、今の状況にはそれすらない。

数多の苦難を共に乗り越えてきたタフな職員たちにも、疲労の色が濃い。

 

肉体的な疲労のピークと言う意味では通り過ぎている。

失踪から一週間ほど経ち、安否は分かれど座標の特定ができないことが判明したあたりで、連日の徹夜による強行軍で肉体的には限界を迎えていたからだ。

状況打開の妙案がない事もあり、所長代理命令でしっかり休憩を取ることが厳命された。

一応、その前から休息は進められていたのだが、結局誰一人として自発的に休もうとしなかったことから、彼らがどれだけマシュの身を案じていたかわかる。

 

とはいえ、結局何の進展もないまま時間だけが過ぎていく現状に、今度は精神的な限界が近い。

せめて何か一歩でも進展があれば、それを足掛かりにもう一度進むことができるのだが。

 

(一応、当てがないわけじゃない。ただ、それには大きな危険も孕む。

 立香君(マスター)と離れ離れになっているあの子が“それ”をしなければならない状況も、“それ”をすることによる反動も、出来ることなら一切合切願い下げなんだけどなぁ。

 だけど、“それ”なしにはもう座標の特定は不可能と考えるしかない。

 悩ましいね……まさか、この(天才)が己の無力さを思い知る日が来ようとは……)

 

珍しく、本当に珍しいことにダ・ヴィンチは己の力のなさを自室兼工房の椅子に体を預けて噛み締める。

貴重な体験であるのは事実だが、正直全くうれしくない。

なるほど、世の凡人たちが天才を羨む気持ちが少しだけ分かった気がする。

 

だが突如として鳴り響いたけたたましい警報が、痛いほどの静寂を引き裂いた。

 

「っ!? これは……!」

 

警報の意味を即座に理解したダ・ヴィンチは、椅子を蹴倒し、鍵どころか扉も締めずに自室を飛び出す。

やがて警報が治まると、続いて切羽詰まったアナウンスが建物内に発せられた。

 

『緊急事態発生! 緊急事態発生! 管制班及び解析班は至急持ち場についてください! 繰り返します、管制班及び解析班は至急持ち場についてください!』

 

アナウンスが発せられるのと時を同じくして、ダ・ヴィンチの懐の端末が振動した。

彼は走る速度を緩めることなくそれを探り当て、耳へとあてる。

 

「私だ!」

「所長代理、報告します!」

「この警報の意味なら分かってるさ。今管制室に向かっている。他に何か伝えることは?」

「ありません!」

「よろしい。では私がつくまでの間、拾い切れる限りのデータを拾うんだ! 取り零すんじゃないぞ!

それと、得られたデータはそのままでいいから解析班に回すように。いつ反応が途切れるかわからない以上、今はスピード重視、いいね!」

「了解!」

 

必要な指示を出し終え、わざわざ通信を切る手間も、懐に戻す時間すら惜しんで疾駆する。

直接戦闘向きではないとはいえ、それでも人類の超越者たる英霊の一角。

その走力は十分に人間の限界を超え、風どころか弾丸のような速度で廊下を駆け抜ける。

 

同時に、今の状況に対する複雑な思いもあった。

状況が動き出したことは朗報だろう。だが、同時にマシュがそれだけの事態に見舞われていることを示している。

とても、手放しで喜べる状況ではない。

 

(マシュ、あまり無茶するんじゃないよ)

 

決してはそう離れてはいないはずの管制室。しかし、今だけは1mが1km以上に感じられた。

そんな遥か彼方にも思えた管制室にようやく辿り着いたダ・ヴィンチは、自動ドアが動き出した瞬間、僅かな隙間へと体を滑り込ませる。

 

「待たせたね、諸君。この天才が来たからにはもう安心だ、得られたデータは片っ端からこっちに回しなさい」

「「「「はいっ!!」」」」

 

皆を叱咤するための軽口を飛ばしつつ、定位置の座席に腰を下ろすと、文字通り目にも止まらぬ速度で手元のキーボードをタイプしていく。

正面に映し出される10以上のモニター全てに忙しなく目を走らせ、一文字たちとも逃すことなく人類史上最高峰の頭脳に叩きこむ。

単純な計算や総当たりが必要な情報処理は機械に任せ、勘や直感が必要になる部分は自前の頭脳で処理。

 

カルデアの職員たちは、皆それぞれの分野においてはその道の超一流だ。

テロや襲撃のおかげで、慢性的な人不足の中過酷な任務を遂行してこられたのも、彼ら一人一人が極めて優秀なスタッフだったからに他ならない。

どんなブラック企業よりも過酷な勤務体制と、困難を極める任務の中で培われた能力はまさに百戦錬磨。

そんな彼らが10人がかりでなんとか処理していたデータを、ダ・ヴィンチはたった一人で捌いていく。

むしろ、それ以上の速度と効率で処理されていく光景には、慣れているはずの彼らでも苦笑を禁じ得ない。

 

これが英霊、これでこそ人理にその名を刻む英傑。

彼らとて、一般的に見れば十分「秀才」または「天才」と称賛される能力の持ち主だが、本物は格が違う。

正真正銘、人類史上で5指に入るであろう頭脳の怪物。『万能の天才』それがレオナルド・ダ・ヴィンチなのだ。

 

とはいえ、苦笑を漏らしたのはほんの一瞬。

そんなことは元よりわかりきっていたことだし、何よりも今は時間が惜しい。

ダ・ヴィンチのおかげで、処理効率は一気に倍以上になった。

この機を逃すことなく、彼らはそれまで手を付けられなかった領域のデータ処理に没頭する。

 

だが、それも長くは続かない。

彼らの処理能力が限界を迎えたためではなく、単純にデータ処理が終わったからだ。

飛び込んできたデータの質・量ともにでたらめなものだったが、時間的にはそれほどのものではない。

 

そのため、警報が発せられてからここまで実の所数分しか経っていない。

しかしそれでも、これは大きな一歩だった。

 

「さぁみんな、これから忙しくなるぞ。A班は解析班と協力してデータの解析を」

「はい!」

「B・C班は解析されたデータから座標の特定」

「了解!」

「DからF班はマシュとの魔術ラインを遡り再構築」

「お任せを!」

「G班は魔術ラインに沿って通信ラインの再設定。

終わったところから、魔術・通信ラインの補強を。

ここで見失うわけにはいかない、踏ん張りどころだぞ!」

「応っ!!」

 

手早く今後の作業の指示を出し、自身もまた担当する作業に集中する。

色々と懸念事項や不安要素はあるが、それでも事態が動き出したことに変わりはない。

ならば、懸念も不安も払拭するためにも、今はまずマシュとの魔術・通信ラインの確保が最優先だ。

とそこで、再度管制室の扉が開く。

 

(ははぁん、立香君も慌てて走ってきたってところかな?

 まぁ、いくら私がインドア派とはいえ、人間の彼よりかは足が速いから仕方ないねぇ)

 

加えて、立香とダ・ヴィンチとでは管制室までの距離が違う。

久しぶりの長期滞在という事で、マシュや立香の部屋は管制室からは離れた場所に設けられている。これは、極力カルデアの設備とは関わらず、ありふれた日常の中にいられるよう配慮された結果だ。

逆に、事実上の最高責任者であるダ・ヴィンチの場合、いつ非常招集がかかってもいいように、管制室まで15m程度しかない。この立地は、色々無理の効くサーヴァントであることも理由の一つだ。

 

なので、立香がどんなに急いだ所でダ・ヴィンチより遅れて到着することになるのは必然。

彼のことだから、事態が終わった後に到着したことに対し思うところもあることだろう。

ダ・ヴィンチは「やれやれ仕方ない」と保護者面するため、一度作業の手を止め、『あまりの天才っぷりに、感動のハグとかされちゃうかナー?』とか、頭の沸いたことを考えながら立香を迎えるべく振り向く。

そして、そこにいたのは……

 

「マシュ! マシュは無事なのですか、ダ・ヴィンチ殿!!」

「ドフォ――――――――ウ!?」

「なんで君が先に来ちゃってるかな湖の騎士(ランスロット卿)!!

 立香君はどうしたんだ、立香君は! 私渾身のキメポーズとドヤ顔、どうしてくれるんだ!」

「いったいなんのことでしょう? とりあえず、今日のあなたも絶世の美女ですが」

「うん、わかり切っていることだけど一応『ありがとう』と言っておこう。

 最近は立香君もマシュも擦れてきて、素直な反応を返してくれないんだ。寂しいねぇ~……ってそうじゃなくて、質問に答えてくれないか」

「マスターですか? そういえば、先ほど追い抜いた人影。もしやアレがマスターだったのでは?」

「おいおい、そこはしっかりキッチリ抱えてきなよ。それだったらまぁ私も妥協したっていうのに」

「む、申し訳ない。マシュの身に何かあったのかと思うと、いてもたってもいられず……」

(ギクシャクしていながらも、『我が子』『娘』として認識してるんだよなぁ、彼……というか、傍から見る分には思春期の娘と、邪険にされる女性関係にだらしない父親みたいな感じなんだよなぁ)

 

だからまぁ、取り乱して周りが見えなくなり、マスターを追い抜いていの一番に駆けつけてしまったのも、分からないではない。まぁ、ギルティ・オア・ノットギルティで問われれば、即断で「ギルティ」なのだが。

で、そんなすっかりパパな騎士にやや遅れて、立香が息せき切って管制室に飛び込んでくる。

 

「ダ…ダ・ヴィンヂじゃん、マジュは!?」

「ほらほら、まずはこれでも飲んで息を整えたまえ」

 

まともに呼吸もできていないせいで、言葉も不明瞭になっている。

まずは落ち着かせるために水を一杯飲ませ、一息つかせる。

 

「それで、マシュのことだが……とりあえず座標はある程度絞り込めた。やはり案の定世界の壁を越えているが、それでも場所は分かった。今はより詳細な位置情報の精査をしているところだよ。

 同時に、魔術及び通信ラインの確保と補強に努めている」

「マシュは無事?」

「今のところ詳細は不明だ。まぁ、今も微かだがラインが繋がっているし、命に別状はないだろう」

「そう…………よかった」

「マスター!」

 

安心して力が抜けたのか、膝から崩れ落ちる立香。

倒れそうになる立香をわきからランスロットが支え、手近な椅子に座らせる。

とはいえ、安心してばかりもいられないのが現状だ。

 

「確かに命に別状はないが、前にも話したろう? 今のマシュは霊基が不安定になっているはずだ。そんな状態で力を振るえば、どんな反動があるかわからない。

 そして、今回は彼女が力を強引に振るったからこそ、一時的にラインが活性化したことで辛うじてたどることができたんだ。つまり、彼女は相当な無理をしたという事になる。

 依然、予断を許さない状況だという事は理解してほしい」

「…………」

「とはいえ、それでも前進は前進だ。時間はかかるだろうが、マシュの位置情報の精査を終え、ラインの再構築と補強が済めば、いよいよ君の出番だ、立香君。

 今回はレイシフトを応用することになるだろうから、そのつもりでいてくれ」

「マシュを連れ戻すんだよね?」

「マシュ一人ならそれでいいんだが、今回の場合はね。

クラスメイトを残して一人戻ることを善しとするかと言えば……」

 

答えはわかり切っている。

 

「ありえません。ギャラハッドの霊基の有無にかかわらず、あの子がそれを善しとするはずがありません」

「お、流石に言い切るね。とはいえ、立香君も同意見だろ?」

「俺としては早く無事な姿を見たいけど、たぶんそうだと思う」

「なら、マシュだけを連れ戻すというのは最終手段だ。私としても、出来るだけあの子の意向は汲んでやりたい。なら、やることは一つだろ?」

「わかった」

「準備ができ次第行ってもらうから、今から準備をしておくといい。では、私は作業に戻らせてもらうよ」

「行きましょう、マスター。私も、僭越ながらお手伝いさせていただきます」

「うん。とりあえず、まずは必要になる装備一式と礼装の確認」

「あとは人間がいるのなら活動資金も必要でしょう」

「となると、換金性の高いものを持っていく必要があるな」

「問題は、こちらの貴重品があちらでも同じかどうかですが」

「だね。とりあえず……」

 

必要になるであろう物を相談しながら、立香たちは管制室を後にする。

マシュの身を案じる気持ちは変わらないが、準備ができたらすぐに動けるよう備えるのが最優先なのだから。

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 

 【オルクス大迷宮】

 

それは、全百階層からなると言われている文字通りの“大”迷宮。

このような大迷宮がこの世界には7つあるとされ、そのことから「七大迷宮」などとも呼ばれる代物だ。

 

とはいえ、大迷宮と呼ばれていながらも、この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気がある。

それはこの迷宮の特徴として、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現することが挙げられる。深く潜れば強力な魔物に出くわすが、逆に言えば浅い階層ならそれほど危険はない。このように難易度が階層と直結していることから目安が設けやすい事と、出現する魔物が地上の魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているからだ。

 

魔石とは、魔物の全てが体内に保有する物だ。逆に言えば、魔石を持たないものはどれほど異形で強力であっても、魔物とは呼ばない。

魔石は魔物の力の核と考えられ、強力な魔物ほど良質で大きな核を備えている。また、魔石は魔法の触媒として非常に優秀で、魔法陣作成の原料となる。ただ描くだけでも発動するが、魔石を用いることで飛躍的に言力が向上する。その効果は約三倍、驚くべき効果だ。

 

その他、日常生活用の魔法具などにも原動力として使われる。

魔石は軍関係だけでなく、日常生活にも必要な大変需要の高い品なのだ。

 

ちなみに、良質な魔石を持つ魔物ほど強力な固有魔法を使う。

固有魔法とは、詠唱や魔法陣を使えないため魔力はあっても多彩な魔法を使えない魔物が使う唯一の魔法である。一種類しか使えない代わりに詠唱も魔法陣もなしに放つことができる。魔物が油断ならない最大の理由だ。

同時に、魔力操作の技能をメルドが隠すよう指示した理由でもある。

 

そして、そんな魔物蔓延るオルクス大迷宮へ挑戦するため、マシュたちはメルド団長率いる騎士団員達と共に、宿場町ホルアドを訪れていた。

到着してすぐに迷宮に挑戦するようなことはせず、宿屋で一晩過ごし、翌朝から潜ることになる。

基本二人一組で部屋を取っているが、男女ともにメンバーが奇数なため、さすがに年頃の男子と女子を同じ部屋に押し込むわけにもいかず、ハジメとマシュはそれぞれ一人部屋をいただくことになった。

 

マシュもハジメに倣い、オルクス大迷宮に挑む具体的な日程が決まってからは、魔物に関する本にも目を通している。

所詮付け焼刃の知識だが、ないよりはマシだろう。それに、マシュとしては魔物関連の知識はハジメがメイン、自分は補佐くらいに考えている。

 

むしろ問題なのは、結局ハジメの同行を撤回させられなかったことだろう。

今回は潜っても精々二十階層までとのことで、戦闘向きではないハジメがいても十分カバーできるレベルらしい。

それ自体はまぁいいことなのだろうが、本当なら連れて行かないのが最善である以上、喜ぶことはできない。

 

何が起こるかわからないのが戦場だ。

それを知るマシュとしては、万が一もないように彼には残ってもらいたかった。

もし彼に何かあれば、間違いなく香織は深く傷つき泣くのだろう。

友人の涙と心の傷を想像するだけで、マシュは胸が苦しくなるのを自覚する。

それだけは、なんとしても防がなければならない。

 

「……少し、夜風に当たってきましょうか」

 

最早深夜と呼べる時間帯だが、マシュは気分を変えるためにカーディガンを羽織って自室を後にする。

夜風に当たって頭を冷やせば、嫌な想像も払う事ができると期待して。

 

この宿は王国直営という事もあり、中々に広く立派な造りをしている。

それなりの広さのある中庭もあり、マシュは隅のベンチに腰かけて星空を見上げた。

 

トータスに召喚されて二週間が過ぎた。

状況は一向に改善または変化の兆しもみられず、ただただ流されるままに訓練の日々を過ごしている。

オルクス大迷宮に来る前には、王都近郊で魔物ですらない獣や小型の魔物の討伐を経験したりもした。

マシュにとっては慣れたことだが、クラスメイト達にとっては初めての「生命の搾取」である。

ほとんどの者が罪悪感や恐怖心を紛らわせるため、不自然な形で気持ちを高揚させていたのが印象深い。

 

(できれば、あの時に気付いてくれればと思ったのですが……)

 

さすがに、そううまくはいかない。

野兎や狐のような魔物とはいえ、それでも生命は生命。

何か感じることがあればと期待したが、興奮してしまってそれどころではなかった。

 

とはいえ、全員が全員そういうわけでもない。

自他ともに認める最弱のハジメは、命を奪う時に沈痛そうな表情を浮かべていた。

数少ない冷静に状況を受け止めている雫もまた、生命を絶った時の表情は酷く苦いものだった。

それに気づいたマシュがフォローしたりもしたが、どの程度力になれたことか。

ちなみに、最近妙に仲の良い姿が目撃されることから、自称義妹(ソウルシスター)共には羨望と嫉妬の視線が向けられ、一部生徒から百合百合しい誤解をされていることを当人たちは知らない。

一応、親友を取られたような気持ちになった香織に妬かれたりもしたが、それは可愛いものだ。だって、背後に陽炎が立ち上らなかった、それだけで充分である。

 

「…………はぁ、あまり遅くなっても行けませんね。そろそろ戻りましょう」

 

夜風は気持ちよかったが、正直あまり心は晴れなかった。

懸念材料が多過ぎるくせに、安心材料はほとんどない。

手放しに喜べることがあるとすれば、雫やハジメとの距離感が縮まったことくらいだろう。

 

そうして自室に戻ろうとベンチから腰を浮かせたところで、マシュはとんでもないものを見つけてしまった。

 

「あれは…………白崎さん? なにをして……」

 

丁度ベンチとは中庭を挟んで反対側の窓の向こうに、長く艶やかな黒髪の美少女の姿。

続いてその正面の扉が開かれると、ハジメが姿を現した。

気が付くと、マシュは足音と気配を殺し、息をひそめてじりじりと近づいていく。

 

「こ、こんな夜中に何を……」

 

多少距離を詰めた程度では何を話しているかわからないが、二・三やり取りをした後、何とハジメは香織を部屋に招き入れてしまったではないか。

いくらマシュが世間知らずとはいえ、それでもその意味するところは分かる。つまりこれはいわゆる……

 

「これが日本の伝統文化『ヨバイ』!! お、大人です! 大人過ぎます白崎さん!!

 そして、それをあっさり受け入れるなんて、南雲さん実はケルトな人だったんですね!!」

 

香織がハジメに好意を抱いていることは雫から聞いていたし、応援する気持ちもあった。

とはいえ、これは流石に予想外。雫の話では好意を自覚していないとのことだったが、まさか一足飛びで行きつくところまで行きついてしまうとは……。

 

「…………御二人とも、どうかお幸せに」

 

勝手に想像して勝手に結論を出して戦慄するマシュは、これまた勝手に二人の前途を祝福する。

三つ目の良いことがあった。それは、クラスメイトが晴れて結ばれたことだ。

それが完全無欠の勘違いであることを指摘してくれる親切な人は、深夜の中庭には当然いない。

 

(これは、卒業の前にお二人の結婚式があるかもしれませんね。

 作法やマナーについて、エミヤ先輩に教えていただかないと。いえ、それこそ赤ちゃんができる可能性も……)

 

世間知らずと言うのも、困ったものである。

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 

そして明くる日。

まだ日も昇らない早朝、一行はオルクス大迷宮正面入り口の広場に集まっていた。

 

誰もが少しばかりの緊張と未知への好奇心を浮かべており、この点においてはマシュもまた例外ではない。

元々ごく限られた世界しか知らなかった彼女にとって、世界と言うのは驚きと発見に満ちている。

それが異世界ともなれば、なおのこと。

 

ただ、もし彼女がもう少し擦れていたのなら、また別の感想があっただろう。

なにしろ、博物館のようなしっかりした入場ゲートが設けられ、制服姿の女性が笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。広場には露店が並び、迷宮への挑戦者とは関係のない観光客までいる始末。

なんというか、「大迷宮への挑戦」という目的からするとイマイチ盛り上がりに欠けるのだ。

まぁ、それを心底残念に思っているのはハジメ位なものだろうが。

 

とはいえ、流石に迷宮内部まで観光地まがいのお祭り騒ぎではない。

むしろ、外の賑やかさとは打って変わり、迷宮の名にふさわしい静寂と緊張感で満たされている。

 

オルクス大迷宮は緑光石という発光する特殊な鉱物の鉱脈を掘って出来ているため、視界に問題はない。

基本的に通路は縦横5m以上あるが、集団戦を想定するなら決して広いとは言えない。

基本的には縦に隊列を組み、各人が前後左右それぞれの担当を警戒するのがセオリーらしい。

 

(二人並んだらもう手狭になりますね。上手く連携しないと、互いに足を引っ張ってしまう。

 後衛も視野を保ちづらいですし、距離の計り方や仲間の動きを正確に予想することが求められる。

 訓練に使われるというのも納得です)

 

迷宮内部の構造を見ながら、流石に実戦経験者らしい感想を抱く。

今マシュは、雫や香織と共に最前列の集団に参加している。生徒たちはいくつかのパーティに分かれており、最前列にいるのは現状最も優秀な者たち。

まず彼らに実戦を経験させ、後ろの者たちにそれを見せるつもりなのだろう。

 

やがて、天上の高さが7・8mほどあるドーム状の開けた空間にでる。

壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出し、物珍しげに辺りを見渡していた一行に緊張が走った。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうから、そのつもりでいろよ!」

「「「「「「「はい!」」」」」」」

「メルドさん、あの魔物は?」

「あれは……坊主、分かるか?」

 

光輝からの問いを、メルドはやや後ろにいたハジメへと振る。

彼が魔物について知識を蓄えていることは、すでに周知の事実だからだ。

 

以前、大介たちがハジメを訓練と称していたぶった時のこと。

香織たちが割って入ることで事なきを得たが、そこで光輝が持ち前の些か視野の狭い正義感を発揮し、「檜山たちも南雲の不真面目さをどうにかしようとしたのかもしれないだろ?」とか「訓練のない時は図書館で読書に耽っているそうじゃないか」とか「俺なら少しでも強くなるために空いている時間も鍛錬に充てる」とか言い出し、最終的に「もっと努力すべきだ」と締めた。

これにはさすがに幼馴染の香織や雫も黙ってはいられず「この世界のこと、戦うかもしれない魔物について調べることのどこが不真面目なの?」や「身体を動かすことだけが努力じゃないでしょ。光輝、あなたまさか勉強は努力の内に入らないとでも思ってるの?」と窘められた。

光輝としては、(幼馴染二人が揃ってハジメを擁護することに)釈然としないものがあるようで渋い顔をしていたが、実際にハジメが聞かれたことにスラスラ答えるところを見ては、流石に納得せざるを得なかったようで「不真面目」などの発言を謝罪した。

 

以来、香織や雫がこの世界のことや魔物について積極的にハジメから意見を求めるため、一部の生徒も以前のマシュとメルドのやり取りから思うところがあったらしく、ハジメに対しての風当たりがやや改善されつつあった。

メルドもその辺りのことは知っているので、あえて彼に話を振ったのだろう。

 

「あれはラットマンという魔物で、動きは早いけど力も耐久力も弱い筈です。みんななら落ち着いてやれば問題なく倒せる魔物じゃないかと」

「よし、まさにその通りだ。聞いたな、お前たち。ここで手間取るようじゃ、先が思いやられるぞ」

 

ハジメの言葉通り、ラットマンとの戦闘自体は特に山も谷もなく圧倒出来た。

ある者は剣で、またある者は拳で、時に魔法やアーティファクトの力を使って。

 

ただ、その外見が名前通りネズミっぽいくせに、二足歩行で上半身がムキムキだったのが問題だった。

八つに割れた腹筋と膨れあがった胸筋の部分だけ毛がなく、ぶっちゃけ気持ち悪い。

前衛の雫など、思わず頬が引き攣ってしまったほどに。

 

逆に、同じく前衛のマシュはケロッとしていた。

もっと気色の悪い魔獣やら腐臭を放つゾンビ、天を衝く肉柱に目玉がびっしりある様な存在なんかと対峙してきた手前、これくらいでは動じない。

まぁ、「気持ち悪いです」「フォウさんが懐かしい」とはもちろん思っていたが。

 

そうして、一行は順調に迷宮を潜っていく。

交代しながら戦闘を繰り返し、すっかり説明役、歩く辞書にされてしまったハジメは自分の番が終わってからもずっと最前列手前に居座る羽目に。

まぁ、回復役として同じく最前列手前が定位置になった香織はほっこりしているが。

ついでに、マシュと雫が二人揃って視線や身振り手振りで二人を焚きつけていたのはご愛敬だろう。

例えそれをメルドに見咎められ、軽く説教されてしまったとしても。

 

迷宮が危険な場所なのはわかっているし、TPOは大事だ。

だがそれはそれとして、友人の幸せも大切なのである。

 

そんなこんなで、一流の冒険者か否かを分けると言われる二十階層にたどり着いた。

現在の迷宮最高到達階層は六十五層らしいが、それは百年以上前の記録。

今では超一流で四十層越え、二十層を越えれば十分に一流扱いだ。

破格の能力を持っているとはいえ、初日にここまで来れるというのも大概だろう。

 

とはいえ、それが彼らの実力かと言えばそうでもない。

迷宮で怖いのは何も魔物だけではないのだ。最も怖いのはトラップ、致死性のものから地味に足を引っ張ってくるタイプまで、多種多様なトラップが仕掛けられている。

 

この厄介な見えない敵は、騎士団員たちが長年の経験と勘を駆使し、罠を見つけるための道具「フェアスコープ」で無力化、ないし避けて通らせてくれたことが大きい。

彼らが素早く階層を下げられたのも、騎士団員達の誘導あってこそだ。

メルドからも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われている。

 

とはいえ、こうまで順調だと気が緩む者が出てくるのも必定。

初めは緊張感で引き締められていた心身が緩み、余計な余裕を持ってしまう。

それが、致命的な事態を引き起こすことになるとは知らずに。

 

二十層にもなると一種類の魔物だけではなく、複数種類の魔物が混在したり連携を取ったりして襲ってくるようになる。これを経験することで、大迷宮初回の訓練の締めとする予定だった。

だが、所詮予定は予定。予定など、いくらでも覆るのである。

 

現在、四十七層までは確実なマッピングがなされ、迷う事もなければトラップに引っかかる心配もない……筈だった。

迷宮の各階層は数km四方に及ぶ広大なもの。マッピングが人間の手によって行われる以上、どれだけ万全を尽くしても、完璧にとはいかない。

それ自体は当たり前のこと。しかし、当たり前でありながらも滅多にハズレを引くことがないために、そのことを失念していしまうのもまた人間だ。

 

二十層の一番奥、二十一層への階段までたどり着くことが今回のゴール。

神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、また地道に帰らなければならない。

一行は若干弛緩した空気の中、ここでも縦列を組んで進む。

やがて、先頭を行くマシュ達やメルドが立ち止まり、訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入った。

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

メルド団長の忠告が飛ぶ。

直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。

壁と同化していた体は褐色となり、二本足で立ち上がる。

カメレオンのような擬態能力があるらしい。

 

「南雲君!」

「あれはたぶんロックマウント! 腕力が強いから気を付けて!」

「ありがと!」

 

最早皆まで言わずともわかるようになり、雫の要請を受け即座にハジメは情報を提供。

すっかりそういったやり取りも慣れたらしく、皆の動きも徐々にスムーズになっている。

 

だからではないが、戦闘自体は一応特に怪我人が出ることもなく終えることができた。

多少危うい場面もあったりしたものの、経験豊富なマシュが落ち着いて対応し、光輝が“勇者”らしく過剰火力で薙ぎ払う事で無事終結。

ただし……

 

「へぶぅっ!?」

「この馬鹿者が! こんな狭いところであんな技使って崩落でもしたらどうすんだ!」

 

メルドのお叱りを受け、バツが悪そうにする光輝。

周りに仲間たちが集まり、苦笑いしながら慰める。

 

その時ちょっとした、全てが終わった後から考えれば致命的なハプニングが起こった。

ふっと香織が崩れた壁の方をみあげると、そこには緑光石とも異なる輝きがある。

 

「……あれ何かな? キラキラしてるけど」

「ほぉ、あれはグランツ鉱石か。大きさも中々だ、珍しいこともあるもんだ」

 

白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。

まるでインディコライトが内包された水晶のような美しさだ。

 

グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石のこと。

特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気。

加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるようで、求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ3に入るとか。

そんなことを聞かされては、年頃の女子としては夢を見ずにはいられない。

 

「素敵……」

 

香織が話を聞いて頬を染めながらうっとりとする。

誰にも気づかれないよう注意しつつ、チラリとハジメに視線を向けた。

もっとも、雫やマシュにはバレバレだが。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

制止の言葉も聞かず、大介はヒョイヒョイと鉱石の場所に辿り着いてしまった。

メルドは急ぎ止めようと追いかけ、騎士団員の一人はフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。

そして、一気に青褪めた。

 

「団長! トラップです!」

「っ!?」

 

メルドも騎士団員の警告も一歩遅く……どうしようもなく致命的だった。

グランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。

鉱石の輝きに魅せられ不用意に触れた者へのトラップ。

この程度の罠にかかるものに、この先に進む資格なしと言わんばかりだ。

魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していく。

それはまるで、召喚されたあの日の再現だった。

 

「くっ、撤退するぞ! 急げ!」

 

皆は急いで部屋の外に向かうが……間に合わない。

部屋に光が満ち、視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

空気が変わった。

 

次いで地面に叩きつけられ、尻の痛みに呻き声を上げる者が多数。

それに対し、メルドや騎士団員達、一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。

 

(どうやら、先程の魔法陣は転移の類のようですね。

空間転移は魔法の域にある魔術なのに、それをやってのけるなんて……この世界の神代の魔法も侮れません!)

 

転移した場所は、巨大な石造りの橋の上。

ざっと100mはあるだろうか。天井も高く20mを超え、橋の下は全く何も見えない深淵の如き闇が広がっている。まさに、落ちれば奈落の底だ。

 

橋の横幅は10mくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらない。

足を滑らせれば掴むものもなく奈落の底へ真っ逆さま。

生徒達はそんな巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにそれぞれ奥へと続く通路と上階への階段が見えるのが救いだろうか。

 

「メルド団長、急いだ方が!」

「ああ! お前達、直ぐに立ち上がってあの階段の場所まで行け。急げ!」

 

マシュの嫌な予感はメルドも同様らしく、険しい表情をしながら指示を飛ばす。

生徒たちは疑問の声を上げる余裕もなく、わたわたと動き出す。

 

当然ながら、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。

階段側の橋の入口に現れた無数の小さな魔法陣から大量の魔物が出現しからだ。

更に、通路側にも巨大な魔法陣が出現。そちらから現れた一体の巨大な魔物を見て、メルドは呆然と見つめながら呻く様な呟きを漏らす。

 

「まさか、ベヒモス……なのか……」

「ベヒモス?」

「南雲さん!」

「ごめん、知らない! 少なくとも、20層とかそこらに出てくる魔物じゃないと思う!」

 

限られた時間の中で調べられる内容には限度がある。

そのため、今回の訓練で必要になるであろう範囲にハジメが重点を置いたのは、何も間違っていない。

 

その間にも、小さな無数の魔法陣からは骨格だけの体に剣を携えた魔物……竜牙兵に似た“トラウムソルジャー”が溢れる様に出現し続けていた。

空洞の眼窩からは魔法陣と同じ赤黒い光が煌々と輝き、目玉の様にギョロギョロと辺りを見回している。

その数は既に百体近くに上っており、なおも増え続けている。

 

だが、そちらにばかりに気を取られてもいられない。

メルドが“ベヒモス”と呼んだ魔物は、大きく息を吸うと凄まじい咆哮を上げる。

 

「グルァァァァァアアアアア!!」

 

体長10m級の体躯、太く逞しい四本の脚と頭部に兜のような物を取り付けた魔物。

もっとも近い既存の生物に例えるなら、トリケラトプスだろうか。

鋭い爪と牙を打ち鳴らしながら、頭部の兜から生えた角から炎を放っているという付加要素が付くが……。

 

そこからはもう大混乱としか言いようがない。

メルドは騎士たちを指揮し、ある者には生徒たちを率いて退路を切り開くよう指示を出しつつ、自身はベヒモスの足止めへと向かおうとする。

 

だが、ここで光輝の正義感が悪い方に働く。

急ぎ生徒たちを安全な場所まで撤退させ、その上で自分たちも退避するというのがメルドのプラン。

それに対し、光輝は「見捨ててなどいけない!」と踏みとどまろうとする。

なんとか光輝を説得しようとするも、そんなことはベヒモスの知ったことではない。

 

咆哮を上げながら突進してくるベヒモス。

ハイリヒ王国最高戦力が、全力の多重障壁でそれを阻もうと動き出す。

ここで止めなければ、撤退中の生徒たちに命はない。

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず、“聖絶”!!」」」

 

2m四方の最高級の紙に描かれた魔法陣と四節からなる詠唱、さらに三人同時発動。

一回こっきり一分だけの防御であるが、何物にも破らせない絶対の守りが顕現。

純白に輝く半球状の障壁がベヒモスの突進を防ぐ。

 

衝突の瞬間、凄まじい衝撃波が発生しベヒモスの足元が粉砕される。

橋全体が石造りにも関わらず大きく揺れた。

撤退中の生徒達から悲鳴が上がり、転倒する者が相次ぐ。

 

メルドの指示に従い撤退の支援に向かおうとしていたマシュは、時に転倒したものを助け起こし、時に斬りかかってくるトラウムソルジャーを阻み、時に前後の状況に視線を配る。

 

トラウムソルジャーは三十八層に現れる魔物。

今までとは一線を画す戦闘能力を持っているが、弱体化していても無理に攻めさえしなければ問題はない。

いなし、弾き、逸らし……確実に行ける時だけ大盾をぶつけて奈落の底に突き落としていく。

とはいえ、状況はあまりよろしくない。

 

(後方もそうですが、それ以上に階段側の混乱が酷い。騎士たちは連携を取れていますが、皆さんは冷静さを欠いてむしろ騎士たちの邪魔になっている。なんとか生命こそ無事ですが、それもいつまでもつか……)

 

マシュの脳裏によぎった選択肢は二つ。

一つは自身もまた階段側へと向かい、混乱の鎮静及び退路の確保に協力する。

一つは後方へと下がり、最大の脅威であるベヒモスの足止めに参加。代わりにメルドを階段側へ向かわせ、統率してもらう。

 

だが、どれも妙案とは言えない。

前者はマシュでは影響力に乏しく、おそらく焼け石に水だろう。トラウムソルジャーが相手では、彼女もそう無茶はできない。初期ステータスこそ高いが、未だレベルはようやく10を超えたばかり。既にステータスは並みの騎士を上回っているが、それでも技術や経験を込みで考えても、騎士数人分の働きが精々だろう。退路の確保に専念しても、効率は決していいとは言えない。

後者の場合、ベヒモスの攻撃をある程度防げる自信はある。だが、そう何度も止めることはできないだろう。メルドの抜けた穴をふさぎ切れるかと言えば、正直自信がない。

 

(なら、あとは……武装を展開して一気に押し切るしか、でもそれは……)

 

あまりにリスクが高い。現状、彼女が武装を展開し、デミ・サーヴァントとしての力を振るえるのは十数秒が限界だ。しかも、本来のそれとは比較にならないほど弱体化している。

具体的には、トラウムソルジャーたちを圧倒することはできるが、ベヒモスを仕留められるかは厳しい位。一時的優位には立てるだろうが、攻撃より防御に長ける分、倒しきれない可能性が高いのだ。

 

加えて、時間一杯まで力を使えば、恐らくマシュはしばらく行動不能になる。

これまで何度か検証してみた結果なので、まず間違いない。

 

ベヒモスを倒しきれればいいが、失敗すれば歩くのが精一杯の足手纏いを抱える羽目になる。こんな賭けはできない。

階段側ならトラウムソルジャーを確実に薙ぎ払えるものの、これまた十数秒のリミットがネックになる。

たったそれだけでは、か細い退路を通すのが限度だろう。そこでも結局足手纏いの出来上がり。

状況を考えれば、あまりにも分が悪い。

 

(せめて、私が動けなくなっても何とかなる状況の見通しが立たないことには……)

 

賭けに出ることすらできない。

とその時、マシュの視界の端で一人の女子生徒が後ろから突き飛ばされて転倒してしまう。

 

「きゃっ!」

「っ! この……倒れて!」

 

何とか助けに行こうとするが、立て続けに襲ってくるトラウムソルジャーを迎撃しながらだと厳しい。

ここでマシュが離れれば、この場所が崩れかねない。

また、それなりの距離があるため、人の波で隔てられているのも厄介だ。

 

「あ」

 

そんなマシュと彼女の目が合う。だが、どうやっても手は届かない。

その間にも一体のトラウムソルジャーが、彼女の頭部目掛けて剣を振り下ろす。

 

(ダメッ! 誰か、助けて……先輩!)

 

一瞬、マシュは少女が血飛沫を上げる姿を幻視した。

しかし、それは幻に終わる。

 

トラウムソルジャーの足元が突然隆起したのだ。

 

トラウムソルジャーはバランスを崩し、彼女から逸れた地面を叩くに終わる。

更に、地面の隆起は数体のトラウムソルジャーを巻き込んで橋の端へと向かって波打つように移動して行く。

その波は、やがて骸骨どもを奈落へと落とすことに成功した。

 

「今のは、錬成?」

 

戦う手を止めないまま、マシュは今の光景の意味を理解する。

視線を巡らせば、橋の縁から2mほど手前に座り込みながら荒い息を吐くハジメの姿があった。

ハジメは連続で地面を錬成し、滑り台の要領で魔物達を橋の外へ滑らせて落としたのである。

 

本来戦闘向きでない技能を有効に活用する。

それは、今日の訓練でも度々見られた彼ならではのアプローチだった。

道具とは、要は使い手次第であることを改めて思い知る。

 

ハジメは魔力回復薬を飲みながら倒れたままの女子生徒の下へ駆け寄る。

女子生徒の手を引っ張り立ち上がらせると、呆然としている彼女にハジメが笑顔で声をかけた。

 

「早く、前へ。大丈夫、冷静になればあんな骨どうってことないよ。

うちのクラスは僕を除いて全員チートなんだから!」

 

自信満々で背中をバシッと叩くハジメ。

そんな命の恩人をマジマジと見る女子生徒は、次の瞬間には「うん! ありがとう!」と元気に返事をして駆け出した。

 

「南雲さん!」

「キリエライトさん?」

 

ようやく周りの敵戦力をある程度減らせたところで、マシュは人波をかき分けてハジメと合流する。

 

「みなさん、混乱しています」

「うん。アランさんが纏めようとしているけど、上手くいってない。みんなパニックになりながら滅茶苦茶に武器や魔法を振り回している。このままじゃ、いずれ死者が出るかも……」

「はい。そうしている間にも魔法陣から続々と増援が送られてきて、状況は悪くなる一方です」

「何とかしないと……」

「なにか、方法はありませんか?」

「そう言われても、僕にできることなんて……いや、別に僕がやる必要はないんだ。必要なのは強力なリーダー、道を切り開く火力……これだっ!!」

 

何か妙案が浮かんだらしく、ハジメの表情にそれまでの焦りとは違う希望の色が浮かぶ。

ハジメは手短にマシュにその案を伝える。自分では妙案だと思うが、客観的な意見が欲しかった。

もし愚策を献策することになれば、本当に全滅してしまうかもしれない。

ならば、この用心は当然だろう。

 

「――――――なんだけど、どう思う?」

「策自体は良いと思います。ですが……危険です」

「危険なのはどこでも同じだよ。それに、他の場所じゃ役に立たないけど、あそこでならできることがある。それなら、ね?」

「…………………………白崎さんがあなたを好いている理由が、分かった気がします」

「え? あ、いや……」

「あなたは、少し先輩に似ている気がします。それに、私も友達が悲しむのは見たくありません」

「キリエライトさん?」

 

今マシュは、自分の力の使いどころがわかった気がした。

確かにハジメの策は有効だろう。しかし、リスクも高い。それに、失敗した時にも後がない。

だがマシュには、彼の策に対する修正案がある。

 

「南雲さんの策は有効ですが、より確実にベヒモスの動きを止める必要があるはずです。

そこでまず、私がベヒモスの動きを止めます。合図をしたら、そのタイミングで行ってください」

「で、でも!」

「私の天職は守護者だそうです」

「それは、聞いてるけど……」

「適材適所、違いますか? 私は私にできることをします。ですから南雲さん、あなたも」

「…………わかった」

 

僅かに逡巡した後、ハジメはゆっくりと首肯する。

彼とて、別に死にたいわけではないし英雄願望もない。

生き残れる可能性が少しでも高くなるなら、それに乗るのは当然だ。

 

とはいえ、マシュはどうやってベヒモスを止めるかを敢えて説明していない。

すれば確実に止められるし、納得してもらう時間が惜しいからだ。

 

ハジメはてっきり、今までの戦い方の延長として盾で防ぎ、その一瞬の停滞を利用するつもりなのだろうと思っている。

その勘違いを、マシュは利用したのだ。

 

「ではいきましょう。時間がありません」

「うん!」

 

二人は光輝達やメルドのいるベヒモスの元へ向けて走り出す。

 

ベヒモスは依然、障壁に向かって突進を繰り返していた。

衝突する度に壮絶な衝撃波が周囲に撒き散らされ、石造りの橋が悲鳴を上げる。

障壁も既に全体に亀裂が入っており砕けるのは時間の問題。

メルドも障壁の展開に加わっているが気休めにしかなるまい。

 

「くそ、もうもたんぞ! 光輝、早く撤退しろ! お前達もだ、早く行け!」

「嫌です! メルドさん達を置いていくわけには行きません! 絶対、皆で生き残るんです!」

「くっ、こんな時にわがままを……!」

「光輝! 団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」

 

光輝と違い、雫は状況がわかっているようで諌めようと腕を掴む。

とそこへ、一組の男女が光輝の前に飛び込んできた。

 

「天之河くん!」

「無事ですか、皆さん!」

「なっ、南雲!?」

「南雲くん!?」

「マシュまで、どうして戻ってきたの!?」

 

驚く一同。

ハジメもそうだが、盾役として皆を守るために先行したはずの彼女が戻ってきたことに驚きを禁じ得ないのだろう。

しかし、そんな皆の反応を無視してハジメは必死の形相でまくし立てる。

 

「早く撤退を! 皆のところに!」

「いきなり何だ? それより何でこんな所に……ここは君達がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて……」

「そんなことを言っている場合じゃありませんっ!」

「あれが見えないの!? みんなパニックになってる! リーダーがいないからだ!」

 

光輝の胸ぐらを掴みながら指を差すハジメ。

その方向にはトラウムソルジャーに囲まれ、右往左往しているクラスメイト達がいた。

パニックのあまり訓練の事など頭から抜け落ち、誰も彼もが好き勝手に戦っている。

スペックの高さが命を守っているが、それも時間の問題だろう。

 

「一撃で切り抜ける力が必要なんだ! 皆の恐怖を吹き飛ばす力が! それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ! 前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」

 

 呆然と、混乱に陥り怒号と悲鳴を上げるクラスメイトを見る光輝は、ぶんぶんと頭を振ると頷いた。

 

「ああ、わかった。直ぐに行く! メルド団長! すいませ……」

「下がれぇ――!」

 

光輝が振り返った瞬間、メルドの悲鳴と同時に遂に障壁が砕け散る。

咄嗟にハジメは前に出ようとするが、それより数瞬早く飛び出した人影があった。

 

「―――――――え?」

「武装…展開。シールダー、吶喊します!!」

 

マシュは手にしていた大盾を投げ捨てながら、障壁を張る騎士たちのさらに前に躍り出る。

その体を淡い光が包み込み、それまでの甲冑とは様相の異なる鎧が巨大な盾と共に顕現した。

 

「やぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

身の丈を超える十字架型の大盾を押しだし、ベヒモスから放たれる衝撃波の全てを受け止める。

本来、強力な防御障壁でもない限り防げないはずのそれを受けきるなど、尋常なことではない。信じがたい光景を目の当たりにし、どこからか「……スゴイ」と誰かが、あるいはその場にいた全員が、知らず知らずのうちに呟く。

とはいえ、マシュとて決して余裕があるわけではない。

 

(くぅっ! 『いまは遥か理想の城』(ロード・キャメロット)が使えれば……)

 

じりじりと、だが確実にマシュの守りが押され始めている。宝具を使えれば難なく防ぎきれるだろうが、霊基が安定していない現状では望むべくもない。それどころか、本来の性能の半分も発揮できていないのが実情だ。遠からず、マシュの守りも突破されるだろう。彼女が守りたいものを守るためには、更なる一手が必要だ。

マシュもそれを理解している。故に、霊基が安定していない状態では無謀と理解していながらも、敢えてその一歩を踏み込む。

 

 

「……宝具、偽装登録。『仮想宝具 疑似展開/人理の礎』(ロード・カルデアス)!!」

 

 

十字盾が光を放ち、前面に守護障壁が展開される。それは先ほどまでの危うさが嘘のように、微動だにすることなくベヒモスの突進とそれに伴う衝撃波の全てを受け止めた。

間もなく衝撃波が治まると、とっさに身をかがめていた皆は顔を上げ、ベヒモスの正面に佇むマシュに視線が集中する。

 

「みなさん、それぞれの持ち場へ! 天之河さんたちは階段に向かってください、早く!!」

「わ、分かった」

「メルド団長、詳しくは南雲さんに聞いてください。南雲さん、説明をお願いします。それと、くれぐれも私が合図するまで決して動かないでください」

「それは、分かったけど……まさかっ!」

「その、まさかです」

 

振り返らずに告げるマシュの言葉に、皆がその意味を理解する。

 

「やめろ、無茶だ! 死ぬつもりか!!」

「マシュ、やめなさい!」

「すみません、私には時間がないんです。いきます!」

 

皆の制止の声を振り切り、ベヒモスに向けてさらに前へと飛び出していく。

内心で、恐怖に震える己を奮い立たせるための言葉を口にして。

 

(マスター……私に力を!)

 

明らかに先ほどまでとは別次元のスピード。

雫も含めてこの場にいる誰よりも早く、ベヒモス目掛けて駆けていく。

そして、思い切り身体を引き絞り、渾身の力で大盾を振り抜いた。

 

「はぁっ!!」

「ルァッ!?」

「嘘だろ……」

「……スゴイ」

 

マシュの一撃を横っ面に浴びて、ベヒモスの体勢が大きく崩れた。

着地すると同時に前足を払い、落下してくる顎に向けて大盾を打ちあげる。

 

続け様の頭部への攻撃が効いたのか、ベヒモスの動きは鈍い。

マシュはこの機を逃さず、畳みかける様に攻撃を加えていく。

 

百年以上前、かつて“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかったはずの化け物が、たった一人の女の子に圧倒されている。

その光景に、豪胆なメルドも度肝を抜かれていた。

しかし、彼は間もなく気付く。一方的に打ちのめしていながら、辛うじて目で追う事の出来るマシュの表情には、全く余裕がない事に。

 

「まさか、あんな隠し玉があるなんて……」

「ったく、キリエライトも人が悪いぜ」

(いや、今まで使わなかったからには理由があるはずだ。

 恐らく、あの文字化けした技能が関係しているんだろう。限界突破のように、後から相当な反動があるに違いない。なら、いまは!!)

 

感嘆の声を漏らす雫や同パーティの坂上龍太郎に対し、メルドの思考は冷静さを取り戻していた。

 

「光輝達は急いで階段へ迎え! 嬢ちゃんが作った時間を無駄にするな! ボケっとしてないで急げ!!」

「「「は、はい!」」」

 

呆然と立ち尽くしていた光輝達だったが、メルドの叱咤を受けて大急ぎで駆けだす。

一瞬忘れかけていたが、今は決して余裕があるわけではない。

事実、階段側はいまも大混乱の真っ最中。いまこそ、勇者の力が必要な時なのだ。

 

「それで坊主、お前の策ってやつを聞かせてくれ」

「はい、それは―――――――」

 

ハジメは手短にマシュにしたのと同じ話をする。

それは、この場の全員が助かるかもしれない唯一の方法。

ただし、あまりに馬鹿げている上に成功の可能性も少なく、ハジメが一番危険を請け負う方法だ。

 

「そいつの成功率を上げるために、嬢ちゃんが戦っていると……」

「多分、長くは持たないんだと思います。明らかに、異常なレベルの強化ですし」

「同感だ。あの調子で戦えるなら倒せるだろうが、時間制限か何かでダメージを与えて弱らせるのが精々なんだろう。そこで、弱ったところをお前さんが足止めすると……」

 

メルドは逡巡するが、既に賽は投げられている。

最早、止めることも変更することもできないのだ。

 

「……やれるんだな?」

「やります」

「ま、女があそこまでやってんだ。やらなきゃ男が廃るか……にしても、まさかお前さんに命を預けることになるとはな。……嬢ちゃんと一緒に必ず助けてやる。だから……頼んだぞ!」

「はい!」

 

あと問題となるのはタイミング。マシュが言うには合図をするらしい。

その合図とやらがいつ来てもいいように、ハジメは全神経を目の前の戦いに集中させ、いつでも動き出せる体勢を整える。

そして、その合図の時はそう遠くない。

 

(くっ……体が、霊基が軋む。身体が今にも砕けそう……

もう限界時間は超えてるはずなのに動けるのは、多分……)

 

限界を超えたことと引き換えに、何かを削っているのだろう。

それでなくても全身の骨に亀裂が入り、筋線維が千切れ、神経にヤスリをかけたかのような痛みが走っているのだ。ハジメのため、すこしでも生存率を上げるためにダメージを与えているが、それももう……。

 

「南雲さん!! お願いします!」

「っ!」

「これでっ、倒れて!」

 

最後の一撃とばかりの打ち下ろしが鈍い音を響かせ、ベヒモスの頭部から鮮血が舞う。

しかし致命傷とはいかず、まだその四肢はしっかりと地面を捉えている。

出来れば倒しきりたかったが、そうはいかないらしい。

 

それでもマシュの一撃を受けて、ベヒモスの頭部は地面に向けて深々とめり込んだ。

と同時に、ハジメがベヒモスの頭に飛びつく。

いつの間にか赤熱化していた角の余波がハジメの肌を焼く。

だが、そんな痛みは無視してハジメも詠唱した。名称だけの詠唱。最も簡易で、唯一の魔法を。

 

「“錬成”!」

 

石中に埋まっていた頭部を抜こうとしたベヒモスの動きが止まる。

周囲の石を砕いて頭部を抜こうとしても、ハジメが錬成して直してしまうからだ。

 

「ご武運、を。必ず、戻って、きてくださ…い」

「はは、それフラグっぽくてちょっと怖いんだけど。まぁ、頑張ってみるよ」

 

息も絶え絶えのマシュは、最後の力を振り絞ってメルドの元まで戻る。

彼を目の前にしたところで力尽きたのか、倒れるように崩れ落ちる。

いつの間にか体を覆っていた見慣れぬ鎧も、十字架型の盾も消えていた。

 

「ったく、わからんことばかりだが助かったぜ! あとは坊主と俺たちに任せな!」

 

メルドはマシュを肩に担ぐと、自らの役目を果たすべく所定の位置へと向かう。

その間にも、ベヒモスは足を踏ん張り力づくで頭部を抜こうとしている。

しかし、今度はその足元が錬成され、ずぶりと一メートル以上沈み込む。

更にダメ押しとばかりに、ハジメはその埋まった足元を錬成して固める。

 

ベヒモスのパワーは凄まじいが、マシュが与えたダメージは相当なものらしい。

どれだけもがいても、小さな亀裂が石畳に入るだけ。

度重なる頭部への打撃のおかげで、上手く力が入らないのだろう。

ハジメに油断はなく、万全を期するため僅かな亀裂も錬成し直して抜け出す事を許さない。

ベヒモスは頭部を地面に埋めたままもがいている。中々に間抜けな格好だ。

 

メルドに担がれたマシュは、その光景を見てようやく安堵の息をついた。

 

(これなら、なんとか……)

 

無茶をした甲斐はあったようで、何もしないよりグッとハジメの生存率は上がったはず。

皆で生きて帰らなければならない、その一心で全身を襲う凄絶な痛みにも耐えた。

 

とはいえ、マシュももう限界だった。

 

「お前達! 今まで何をやってきた! 訓練を思い出せ! さっさと連携をとらんか! 馬鹿者共が!」

 

メルドの檄が飛ぶのと前後して、まるで電源が切れるかのように唐突に意識がブラックアウトする。

 

マシュが目を覚ますのは、これより数日後のこと。

全てが、そう何もかもが終わった後のことだった。

目を覚ました彼女を待っていたのは、あまりにもつらい現実。

 




結局ハジメは奈落の底へ。魔王爆誕フラグが立ちました。

マシュはある意味一番肝心な時に意識不明。超がんばった反動です。
ある意味、その場にいたのに意識がないって、一番精神的にきますよね。
別にマシュをいじめるつもりはないんですが、結果的にこんな感じに。

とはいえ、ここまでは原作の流れのまま。
次から少しずつ流れが「おや?」な感じに変わっていきます。いけたらいいなぁ。




ちなみに、カルデアがマシュのことを観測したのは、限界である十数秒を超えたあたりから。これやんなきゃ見つけてもらえないとか、どんだけハードなのやら……。
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