Blood Eye~混沌~   作:yatenyue

3 / 11
《壱》総ての始まり、総ての終わり~覚醒~1.2

1.2

 

自宅に帰って鬼凜が目にしたのは、礼服を着ている兄・戒

 

そして40代ほどの男女であった。

 

「…お母さん、お父さん…」

 

女は、その声を嫌そうに、どこか哀しそうにした。

 

女性の名は、刈野綾乃。

 

男性の名は、刈野悠馬。

 

戒と鬼凜のれっきとした両親である。

 

ただし...鬼凜が信じているのは兄だけ...と言いましたが、それは、

 

 

「あぁ、もう嫌だ。こんな子を本家に連れて行かなきゃならないなんて、恥さらしだわ。こんな悪魔の子なんて。」

 

 

母である綾乃は言う。

 

鬼凜は、生まれる前は"凜"と名付けられるはずだった

しかし、"鬼凜"と名付けられた。

 

それは、"鬼子"。

 

私達の"凜"を殺した"鬼子"という、 忌み名。

 

 

 

鬼凜自身は覚えておらず、兄に聞いただけだが、

鬼凜が生まれたとき、泣いたりしないときは、ちゃんと黒瞳であったらしい。

しかし、泣いたとき、赤い瞳に変わった。

 

最初のうちは、気のせい,目の錯覚だと、両親は思ったらしいが、

 

徐々にその時間が増えたらしい。

 

そして、1才を過ぎる頃には黒になることはなかった。

 

 

両親特に母綾乃にはそれが娘の"凜"が、悪魔か何かに汚がされるように思ったらしい。

 

今では、赤が朱に変わってきている。

 

まるで炎か血のように。

 

であるからして、10も離れた兄が面倒を見、育

てたようなものなのだ。

 

 

 

「本家に行くの?戒兄。」

 

"本家"

 

 

もう今では、そういう言葉を使う者は少ないだろう。

 

別名"宗家"

 

鬼凜の家の本家である神野家のことである。

父悠馬が神野家の血を引く者である。

 

 

まぁ、ただし、ひどく薄いが(系図の端っこにちょこっと乗るくらい…)

 

昔から、時代の時々で、暗躍している家で

影宮-影の天皇家-

 

とも言われている。

 

そんな家に

 

「こんな系図の端っこに少し載るだけの家が。どうして…」

 

「どうでもいいからついて来なさい」

 

(どうしてなのかなんて私も知らないわよっ!)

 

 

鬼凜には、声無き声を聞く力があった。

 

人の心の声

 

死んだ人-霊-の声、姿

 

自然の声

 

昔はそれと、普通の声の区別がつかなかった。

 

どちらも同じように聞こえているから。

 

 

今も昔も

 

だから余計に気味悪がれたのである。

 

今は一応これをある程度は制御出来るようになった。

 

そして、彼女はだからこそ悟っていた。

 

 

 

人は醜く、弱い。

 

弱いからこそ、人は、同族を自然を傷付ける。

 

寂しいからこそ、支えてくれるものを作るということを。

 

神野-影神(カガミ)-家本家についた。

 

鬼凜がここに来るのは初めてだ。

 

「よく来たね。鬼凜ちゃん。16歳おめでとう」

 

鬼凜にとっては知らない人であった。

 

年は、父の少し上程度。

 

「..兄さん。その子に関わらない方がいいですよ。」

 

父・悠馬が言う。

 

「こんにちは。どうもありがとうございます。」

 

鬼凜はとても他人行儀に言った。

 

「その子がお前の娘の鬼凜か?悠馬。」

 

「...はい。父上」

 

厳格そうな鬼凜の祖父だと思われる人。

 

(なんで、分家の血筋の私の家がこんなに本家

に?)

 

鬼凜は不思議に思った。

 

 

 

一人の老女と老人が来た。

 

年は80は超えているだろうしかし、その目は、鋭くなっていた。

 

「こ、こら鬼凜ちゃん

頭を下げなさい。」

 

鬼凜の叔父は言う。

 

「あの二人は本家宗主神野弓様とその夫神野秀様だ」

 

このような高齢は神野家では希少であった。

なぜなら、分家では、少なくなってきたが、本家では、

 

血族婚がいまだに行われ、普通の結婚の方が少ないらしい。

 

理由の1つには、普通の結婚の子供の出産率が、血族婚に比べ非常に少ないのが挙げられるのだとか。

 

現に、弓と秀は、血縁上従兄妹だが、結婚し、孫までいる。

 

今でこそこうだが、江戸時代には、兄妹でとかひどい時は親子でということも多々会ったという。

 

(もちろん周りが強引に)

 

 

「刈野鬼凜のみついてくるように」

 

秀の低く重厚な声が響く。

 

秀と弓と共に鬼凜は家の奥深くへと入る。

ついたのは地下室。

 

隠し扉の後ろにあった階段の先にそこはあった。

 

そこにおいてあったのは、机と、2.3人の一族

の者らしき人間。

 

「鬼凜よ。この箱を開けて見よ。」

 

 

 

 

  "開けてはダメ"

 

 

 

 

鬼凜の脳裏に小さな声が響く。

 

鬼凜は箱を開けた。

 

中に入っていたのは、

 

赤黒い何かで濡れたリボンらしきもの。

 

それは

 

 

             "血"。 

 

 

 

 

“ドクン”

 

 

 

鬼凜の中で、心臓とは別の鼓動が響いた。

 

その音は、どんどん速く大きくなる。

 

血は燃えるように熱く、

 

汗は吹き出て、

 

身体のバランスが崩れる。

 

鬼凜の内(ナカ)の異物が何かを気絶するように。

 

リボンは燃え、鬼凜の黒髪は、炎のような赤銅へと変わる。

 

 

 

「な‥何これ...体が熱い…」

 

鬼凜は途切れ途切れに言う

 

「素晴らしい!

 

適合者だ。あれの」

 

その場にいる者達が口々に言う。

 

 

 

 

  “逃げなさい”

 

 

 

 

鬼凜の耳に女の人のような少女のような声が…。

 

訳の分からない恐怖に支配される。

 

 

「..何をするつもりですか?

 

あの血はいったい…?」

 

「おや..気を失わないのかい。

 

記録では、適合者は皆気を失ったらしいが…。

 

彼女の時もそうだったし」

 

(‥『適合者』?さっきもそんなこと言ってたよね。

 

いったい何の?)

 

鬼凜はわずかな間で自己分析する。

 

 

「.何の適合者?」

 

鬼凜の疑問に秀は答える。 

 

「まぁいい、いずれ知ることになるのだから。

 

わが神野いや影神家は、天女の血を引く家系なのだよ

 

そして、天女の恩恵を受け続けて来た。

 

適合者というのは、天女の血を色濃く受け継いだ者のことだ。

 

正直、君に期待はしていなかったのだがね。

 

16を向かえた一族の少女はすべて、これを受ける。」

 

 

(天女…。また‥非現実的な…)

 

しかも恩恵?

 

「もし何か力があるとしても、私があなた達に

恩恵?

 

そんなのありえないわ」

 

鬼凜はこう吐き捨てる。

 

「ふん。恩恵というものは、力づくでも手に入れるものだよ。

 

鬼凜。

 

さぁ眠りなさい。」

 

秀の声が小さくなる。

 

鬼凜の意識は遠ざかって行った。

 

 

意識を失ったハズの鬼凜の躯は、宙へと浮き上がる。

 

赤銅色に染まっていた髪は更に色みを増し、

まるで炎のよう。

 

その瞳は、朱の混ざった赤。

 

 

「な..何なんだ。これは!?」

 

秀の声に他の一族の者達が集まり始める。

 

「刈野鬼凜は適合者よ!

 

拘束しなさいっ!」

 

宗主の弓の声が響く。

 

 

 

      ニンゲン

  『バカな人間ね』

 

 

 

 

麻酔銃を持っている人間は何かに弾き飛ばされる。

 

父・悠馬が言う。

 

「鬼凜…なのか?」

 

『あぁ。今度の躯の主は、そういう名だったわね。

ワタシは、鬼凜であり、鬼凜ではないわ。

 

鬼凜という人格はただ、周りに応じて出て来ただけ。(人はみんなそうだけど)

 

まぁ、この躯はとてもいいわね。

 

今までで一番相性がいいわ。

 

相性が良すぎてこの者の躯にも影響があったみたいだけど。』

 

 

鬼凜の形をした何かが信じられないことを言う。

 

 

 

「まさか"炎の天女"なのか?」

 

 

それは、

一族に伝わる血の原種。

 

 

 

"炎の天女"

 

そして、それの名は、

 

 

 

「フェリア?」

 

懐かしい名(コトダマ)に一瞬歩を止める。

 

 

真名(マナ)でも

 

仲間うちで呼ぶような名(メイ)でもなく、

 

わが子達に 

 

わが夫に

 

名付けられた名前。

 

呼ばれた名前。

 

 

でも…

 

 

 

『…わが子達が、わが子達を傷つけ、汚し、自分の利益のみを優先する。

 

それはもう見たくないのよ

 

せめてこの子だけは、幸せでいて欲しいの』

 

それは、彼女の願いであり心。

 

「‥他の者が気を失っているうちに逃げて下さい」

 

母・綾乃は悠馬の言葉に続けて言う。

 

「それが私達があの子にできる最初で最後の贈り物ですから。」

 

綾乃も悠馬も儚く笑う。

 

「あの子をどうかよろしくお願いします。」

 

2人の心が見える。

 

もう、自分の死を覚悟している瞳。

 

彼女が何度も見続けて来た瞳。

 

綾乃の心と声が重なる。

 

(何度もあの子を拒絶し続けた。

 

これは私達が背負う十字架[トガ])

 

「そして一言伝えて下さい“生きろ。幸せになれ”と」

 

鬼凜は、いやフェリアは

 

飛翔した。

 

 

 

 

 

 

運命は流転し続ける

 

 

どうなるのか

 

 

それは神すら知らない

 

ヒトの欲望は果てしないものだから

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。