2.0
「馬鹿なやつらだ」
そこには
男性と女性の
銃で撃たれた無残な屍があるのみであった。
何度も何度も殺すためではなく、いらだちをぶつけたかのようにその屍は無残であった。
しかしかろうじで見ることのできる死に顔は安らかなものだった。
愛娘に残酷な裏切りが待っているとも知らず
魅入られすぎた凶人は一体何を引き起こすのだろうか?
一族碑文抜粋
《かつて、炎の天女を呼ばれた天女が我が土地でと舞い降りた。
その土地の豪族として名を馳せた我が一族は、その名前を名乗らない彼女のことをこう呼んだ。
フェリア と。
まるで炎そのままのような紅い髪に紅い瞳の天女は、この世のものとは思えないほど美しく我々を魅了した。
我々とその不思議な力でもって助け、その歌声はわれらを癒した。
ーーーー[一部飛ばし]
彼女の加護を永遠にするため、地に貶めよう。
彼女の 力の源ー我々は、羽衣と呼んだーを隠し、この地上に縛りつけよう。
彼女のその血が永遠にわれらのものであることを祈って 》
2.1
"フェリア"いや彼女は
無意識に口に出していた。
『本当に、人間は愚かだ。
自らも弱いのに大切な者を心も体も守ろうと
する。
守られる側のことも考えずに』
綾乃は天女のことを知らなかった。
彼女が鬼凜に冷たく接したのは、一度拒絶したから、
自分から遠ざけた。
自分で自分が信じられなかったから
鬼凜に何もしないと。
そして、恐れた。
大切な娘をもう一度傷付けることを。
一度でも信じてそのうえで裏切られる方がつらいと思ったから。
彼女は、自分から
鬼凜から
逃げた。
悠馬は知っていた。
この儀式の存在を
そして、"適合者"がどんな目に信じた一族の
者に遭わせられるかを。
なぜなら、彼の叔母がそうだったらしいから。
そして驚いた。
当時の写真の叔母と鬼凜
あまりにも類似点が多すぎて、年をおうにつれて、
彼女が一瞬変えた姿の写真の瞳と
鬼凜の瞳が重なった
そんなハズはない、彼はそう思いたかった。
適合者は奥之院に閉じ込められる。
そして、一生、一族の子を
産み続けなければならない一族の男に犯されながら
望んでもいない子を。
そして、子を産めなくなれば、殺される。
脱走しても、蹂躙され殺される。
逃げ道などない。
それなら‥
と彼は思った。
彼女を一族に連れて行かなければ、
関わらさなければ、
でも何か理由が必要だ。
と。
だからこそ、鬼凜を避け続けた。
彼女の心も体も
護るために。
たとえ理由は違っても
2人は、守ろうとしていた。鬼凜の心も体も。
どんなに自分が嫌われようと。
何故彼女が知っていたか?彼女は、ずっと鬼凜の中にいた。
意識のほとんどが眠りについていても、
彼女の中の力(チカラ)は
周りを把握し続ける。
そして、それだけの情報で人の心を掴む。
誰よりも
人を
子孫を
愛した彼女だから。
そんな彼女の本当の姿を
本当の名を
本当の心を
知る人(ヒト)はもう
いない。
彼女は、なんの変哲もないただ誰もいない公園の隅の木へと寄り掛かった。
彼女は考えた。
鬼凜の前のはいつだったかそう30年程前だ
彼女の前の宿主が
最期を遂げた場所
幸か不幸かそこは
鬼凜が降りたあの場所のすぐそばであった。
わずか"18"であったのに
『これで何人目だったっけ宿主は。』
彼女は知っている。
自分が輪廻を続ける理由を
『本当。あの人達は、いつの世も変わらない。
あの子達の
苦しみも
悲しみも、
痛みも
憎しみも
すべて無視し、なかったものとする。
いつか変わってくれる。
そう信じてた
でも変わらなかった。
何百年も何千年も
“私”が宿らなくなればいいんだけど
あれが見つからないとね』
“彼女”は本当に綺麗に
優しく、
この世の慈愛のように
聖母のように
微笑った。
パキン
木の枝が折れる音がした。
「追っ手か…?誰だ」
初めてのいうならば、憑依に近い状態だ。
鬼凜にも限界はある。
憑依はただそこにいるだけで体力を消費する
から。
“彼女が気にしなければ別だが”
辺りはいっそう暗闇に近くなっている。
街灯によって相手の姿が照らされる。
金茶色の髪が光る
藍色の瞳
年は12程の中性的でどちらかと言えば少女のよう
[(誰が?<黒微笑>)(すすいません)]な顔立ち。
今日、車から鬼凜を助けた少年だ。
「何してるわけ?」
その質問に答えることなく緊張が解けたせいか
限界に達した鬼凜の躯は崩れ落ちた。
その口元からは声にならない音が流れただけだった。
声にならない"言霊"は
空気の中へと溶けて行ったただ一人、その声
に、言霊に反応したものを除いて…