未来日記〜1st、リリカルに行く〜 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
パンッ
乾いた音が辺りに響く。
「それじゃあ」
僕は脳天を撃ち抜かれた屈強そうな男の髪から手を離し、立ち上がる。
「うっ……」
少し立ちくらみがする。
ヤバイ、久しぶりにこんなことやったから、所々怪我してるな、貧血っぽい。
特に片足。
ここを最初に撃ち抜かれたのはどちらの意味でも痛かった。
幸いサブマシンガン持ってる人いたからかなり相手できたし、日記で発砲のタイミングを狙って動くにしても、掠って血が垂れ流しだ。
「ホント、ヤバイな」
僕はそう言いながら二人の少女へ近寄る。
由乃は、昔両親から折檻をされていた。
そして、由乃はある時、両親を折檻した。
由乃は、自分で自分の両親を殺した。
まぁ、あんまり今は関係ないけど、この子達は危害を加えないみたいだし。
救って損にはならないはずだし。
「ヒッ…」
「こ、来ないでよ!!」
二人の少女は僕の姿を見て恐れる。
だが、僕はそんな事はお構い無しに、二人の手首につけられていた手錠を拳銃で撃つ。
ガキンッ、という音と共に彼女たちの鎖は弾ける。
ちなみに根元周辺でやっておいたから、怪我はない。
「じゃあ、しっかり帰るんだ…………」
その言葉と共に僕は、意識を手放した。
「なんて事だ」
俺の現場についての一言が、それだった。
あったのは、無数に転がるスーツを着た男たち。
その誰もが死んだかの様に、倒れている。
「これは……」
父さんも後から追いついてきて一言。
「父さん、これは……」
「あぁ、死んでいる」
俺は手に持った抜き身の真剣を強く握ってしまう。
「一体、誰が……」
「もう、いないという可能性は?」
「いや、それはない。
おそらく、これは1人でやったのだろう。
倒れている位置で大勢ではない事が分かる」
俺は注意深く見てみると、父さんの言ったことがわかる。
人の倒れ方は一定の感覚が空いていて、その誰もが少ない銃弾で殺されていた。
これは、多人数ではまずない。
多人数の場合では1人に無駄な弾が何発か放たれているのだ、足止め用に。
「でも、この手際、殺し屋か?」
「いや、そんなバカな、こんな街に」
「でも、連れ去られたのは、あの二人だ」
そう、連れ去られた二人……アリサ・バニングスちゃんと、月村すずかちゃんだ。
この二人は共にかなり良いとこのお嬢様だ、それもかなり規模の広い会社の、だ。
「じゃあ、中に入ってみるか」
父さんが裏口の扉に手をかける。
「分かってるとは思うが、外の連中を見る限り相手は銃を所持している。
対して私たちは近接戦でしか、相手を倒す事ができない」
「だから、勝負は一瞬」
父さんは俺が言うと、俺の顔を見て静かに笑みを見せる。
そう、俺と父さんが持っている武器は、抜き身の真剣が二刀ずつ。
それに、その刀は俗に言う小太刀、というもので、長さは普通の刀より心もとない。
そして、俺らは一気に集中する。
「「………………」」
音もなく中に入ったが、中の光景に言葉を失ってしまう。
そこにあったのは、外にいた連中と同じ黒スーツを着た男たちがいた。
ただし、全員倒れていて、だが。
父さんは無言のまま近づき、喉元に手を当てるが、
「…………」
首を横に振った。
俺は父さんが工場の中を調べ始めたので、アリサちゃんとすずかちゃんを探す事にした。
声は出さずに、周囲の警戒を怠らないようにしながら探していると、泣き声が聞こえてきた。
「アリサちゃん!!すずかちゃん!!」
思わず叫んでしまう。
「ほら、恭弥さんが来たわよ!!」
隅っこから聞こえたのはアリサちゃんの声。
俺は声のする方へ走って行くと、
「2人とも!!」
2人はそこにいた。
「恭弥さん!!」
「…………」
アリサちゃんは俺の顔を見て、表情が明るくなったが、すずかちゃんは黙ったままだった。
「すずかちゃん?」
俺がすずかちゃんの事をじっと見ると、すずかちゃんの腕の中に何かいる事が分かった。
「すずかちゃん、それは……」
「えっと、この人、私たちを助けてくれて倒れちゃって……」
アリサちゃんの返答に俺は驚く。
た、助けてくれただって?!
いや、でも、何故…………、と考えていると、
「恭弥さん……どうしよう……」
すずかちゃんの腕の中で眠っていたのは、すずかちゃんと同じくらいの年の、男の子だった。
「嘘、だろ…………」
「んっ」
僕はいつもは感じない体の痛みで目覚める。
「ここ、は?」
僕はいつの間にかベッドの上で寝ていた。
まだ目覚めきっていない頭で眠る前の事を思い出す。
「あ、そっか、怪我しすぎて気を失ったんだ……」
僕は額に手を置き、いつもの癖でケータイを開こうとするが、
「?」
僕の左手にはケータイがなかった。
いつもなら、僕はストラップを手首につけているため、落とすはずがない。
という事は、
「奪われたっ!!」
「キャッ!!」
僕が勢いよく起き上がると、膝の辺りから声が聞こえた。
「………………」
僕はいきなりの事に頭がついていかず、硬直していると、僕を看病していてくれたと思われる紫色の髪をした女の子は、僕と目を合わせたあと、少し恥ずかしそうに俯き、
「あ、あの、大丈夫ですか?」
と聞いて来た。
僕はそれよりもケータイを探さなければいけなかったので、質問に答えるよりも先に、
「あのさ、僕のケータイ知らない?」
と聞いてしまった。
女の子はキョトンとして、僕の顔を見る。
まぁ、事情を知らないからなのもあるけど、ケータイが壊されると僕が死んじゃうんだよなぁ……
ようやく冷静になってきた頭で、まず何をするべきなのかを考えていたが、
「えっと、ケータイなら……」
女の子はケータイー差し出す。
それは、間違いなく僕のケータイであり、傷一つなかった。
「あの、そのケータイって……」
「も、もしかして中身見たの?」
僕は動揺する。
もし、未来日記のことを見られてしまえば、僕はどうやって言い訳していいのか分からない。
僕の頭の中では必死に未来日記の存在を隠すための言い訳を考える。
「いえ、中身のことじゃなくて」
「あぁ、そっか……」
僕は女の子が未来日記を見ていないことに安堵するが、
「そのケータイ、大事なんですか?」
質問されてしまったのでその質問のことを考える。
「えーと、強いて言うなら、これは僕にはなくてはならないものだし、僕の思い出の品、だからかな?」
前の自分ならこんな話はできなかったな、と昔を思い出していると、
「大丈夫ですか?」
女の子が僕にハンカチを差し出した。
「?」
僕が不思議そうに女の子の顔を見ると、女の子は、申し訳なさそうに自分の目を指差す。
そこで、僕は自分の目元に手をやる。
「あっ」
僕の目からは涙が流れていた。
涙なら神になった時に嫌という程に流したのに、まだ泣けるんだ。
でも、それだけじゃないな。
「僕は、……人を殺したのか……」
僕は自分にしか聞こえないような声で言う。
すると、その言葉を聞いたかのようにビクッと女の子は驚く。
あれ?聞こえたのかな?
あ、きっと声に出ちゃったんだな。
「あ、ごめんね、怖がらせちゃって……」
「…………いいえ」
僕が謝ると、女の子は申し訳なさそうに答える。
「「……………………」」
多分、このままはいけないと思う。
女の子の顔から表情が消えてきている。
これは、かなり気まずい雰囲気だ。
どうにかしないと……
「入るわよ」
すると、ドアが開いて金髪の女の子が入ってきた。
その女の子の食事が乗ったお盆があり、食べ物を持ってきてくれたようだった。
「あっ……」
女の子はどうやら僕の存在に気づいたようだった。
「えっと……」
やばい、更にやばい感じになった。
どうあがいてもこの思い空気を変えれる気がしない……
僕が日記を見ようとすると、
「あの、食事を持ってきたんですが、食べますか?」
金髪の女の子は口を開いた。
「あ、ありがとうね。
いただかせてもらうよ」
僕は笑顔で答えると、金髪の女の子は僕の寝ているベッドの隣にあるテーブルの上に置く。
やっぱり、日記の使用は控えた方がいいな、危ないし、もうDEADENDフラグもたってるし。
僕は金髪の女の子が持ってきてくれた食事をチラリと見る。
どうやら、おかゆのようだった。
その湯気と美味しそうな香りのせいで、僕の腹は一気に空腹を訴え始める。
幸いにも腹がならなかっただけ良かったが、
「------」
「----」
「--------!!」
「……--」
2人の話を聞いていなかった。
「あ、あの…………」
「ん?なに?」
僕は空腹に耐えつつも、紫色の髪の女の子の話に耳を貸す。
「あの、えっと……」
「はぁ」
紫色の髪の女の子はもじもじしているため、何を話しているのか分からない。
それを見ていた金髪の女の子は、はぁ、とため息をつき、
「行くわよ、すずか」
と言って、紫色の髪の女の子の首根っこを掴み、部屋を出ようとした。
「あ、この部屋にあるものだったら自由に使っていいから、ちょっと待ってて」
僕は、なんで紫色の髪の女の子……すずかちゃん?が引っ張られたのかよく分からなかったが、僕はその言葉に頷いた。
デウスさんって『時間と空間を司る神』で、因果律を操れるんだって(他人事