Girls und Panzar mit Boys 作:おっさま
モノを食べる時はだな、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなくてはダメなんだ。独りで静かで豊かで……
などと考えながら私は目の前の激辛カレーを頬張る。辛い。
人間は心理的であれ五感的であれ強い刺激を受けるとそのことだけで頭がいっぱいになってしまう。 そして私は心理的な事情から一時的に逃避するために目の前のカレーで痛覚と味覚を刺激している。 辛い。
辛さに耐えられなくなってきて水の入ったコップに手をかけようとするが、妹の顔がチラついてしまい、もう一度カレーを頬張る。辛い。汗が止まらなくなってきた、たぶん涙も出ているだろう。 それでも私はカレーを食べる手を止めない。 ひたすら食べる、辛い、辛い、辛い…
ああ… ついに食べ終えてしまった。
「みほ…」
このカレーの辛さは私を遠くに逃がすことは出来なかったようだ…
涙が出る、でも何の涙なのかわからない… 涙は止まらなくなってくる…
「あの… 大丈夫ですか…?」
隣の席にいる亜麻色がかった髪の男に声をかけられる
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「ミカ!お前!どんだけ!弁当くうんだよ!金無くなるだろうが!」
「お金?それは本当に大事なものなのかな?」
ポロローンじゃねぇ、人の金を何だと思ってやがる。弁当5個目だぞ…
これから天下一武道会でも行くのかよ…
にしても、ミカのやつ服装気合い入ってんなぁ
落ち着いた春らしい色のワンピースに北欧を思わせる模様のストールを羽織りいつも通りのチューリップハットを被っている。とてもよくに似合っているが行動が色々とアレなせいで素直に言えない、黙ってれば美人なんだけどなぁ
俺たちは大洗の学園艦から出て今本土の電車に乗って現在黒森峰学園の学園艦が停泊している港を目指している。
「大事だろうが!なんでいつも金もってこねぇんだよ!」
「余計なものは邪魔なだけだろう?」
「お前なぁ…」
前途多難である。
「にしても何で黒森峰に行くんだよ、ミカ?」
ペットボトルのお茶に口をつけ喉を潤す、車窓から外を眺めると港が近くなっていることと、線路の脇に桜が所々咲いていて春を感じる。
「ただ風が呼んでいるだけだよ」
出たよ、このフレーズ。
「じゃあ何で俺を連れてきた?」
「私と一緒は嫌かな?」
「んなっ、そういうわけじゃねぇけど… ただ何かしら目的があんのかと思ってさ」
「そうだね、蒼には私の代わりに行ってもらいたい場所があるんだ」
「え、ミカは行けないのか?」
一緒に行動するんじゃないのな。
「私も行かなければならないところがあるからね」
どうせどこに行くか聞いても教えてくれないから聞かない
「ふーん、で、どこに行けばいいんだ?」
「カレー屋」
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俺は今、黒森峰学園艦にただ一軒あるカレー屋の前にいる。
ミカは行くところがあるからと学園艦に入った途端消えてしまった。
何でだ、何でカレー屋なんだ、ミカァッ!
カレー屋の中には店員らしきおっちゃんと一人くらいしか客がいない。おっちゃんと目が合う、にこやかな笑顔を返してくれる。なんだか急にカレーの良い匂いにやられてお腹がすいてきた。入ろう。
「らっしゃい、ここの席に座ってねー」
と言われ、女の子のとなりの席に案内される。 あ、カツカレー美味そう。
「カツカレーください」
カツカレーを注文しボーッとしていると隣の女の子のカレーが運ばれてくる。
「いただきます」
女の子は行儀よい態度も束の間で一心不乱にカレーを口に運び始める、カレーが辛いのか時折手が止まるが水を口に入れる事なく食べ続ける、汗もかいている。
なんかスッゲェなこの人とか思ってると俺が注文したカツカレーも運ばれてくる、美味そう。
「いただきます」
あ、やっぱり美味い、来てよかったなカレー屋。
とか考えながらマイカレーも中盤に差し掛かって来た頃
「…ほ……」
隣から聞こえたのでチラッと見ると先程の女の子が汗とか涙とか色々垂らしながら微妙に女の子としてアカン顔をしていた。
「…ッヒグ…グスッ」
えぇ… 本格的に泣き始めたよこの子、ヤベーやつだよ。店主がこっちを見てお前が声をかけてやれと言わんばかりの顔をしている。笑顔で親指たてんな! こっちみんな! ええい!ままよ!
「あの…大丈夫ですか…?」
やや茶色がかった短めの女の子はこっちを向く、ヤバイ、涙でスゴイ顔になってるよ。
「大丈夫…だ…」
えぇ… 嘘だろ、明らかに大丈夫じゃないよ
「よかったらこのハンカチ使ってください」
「すまない…」
そう言ってカレー娘はハンカチを受け取り、涙を拭き始める。でも涙は止まらずしばらく目を拭っていた。
カレー娘が落ち着いて来たころ、店主がサービスだと二人分のコーヒーを淹れてくれた。俺と彼女の間を流れる微妙に張り詰めた空気をコーヒーの良い香りが解きほぐしてくれる。
「みっともないところをみせた、すまない」
「大丈夫ですよ」
彼女の声はさっきの様子とは全く違う落ち着いた大人びた声をしていた。目元はまだ赤く腫れているがいつもの彼女であろう凛とした表情が見つめてくる。 つい見入ってしまう。
「このハンカチも弁償したいのだが」
「いや良いですよ、そんな高いものでもないですから」
「そういうことではなくてだな」
「お礼が欲しくて貸したわけでもないですから、大丈夫ですよ」
カレー娘は納得出来ないという顔をしている、たぶん何かしら返さないと彼女は満足しないだろうな
「じゃあこの学園艦について教えて貰えますか? 今日来たばかりでよく知らないんですよ」
彼女は一瞬キョトンとしたがまた凛とした顔に戻って答える。
「ああ、わかった」
目を細め微笑みながら、君は変わってるなと言いながら彼女は語り始めた。黒森峰学園は戦車道でも有名だが全国有数の進学校だとか、学園艦はドイツをイメージしていて速度制限のないアウトバーンがあったり、ノンアルコールビールが有名でとても美味しいとか、他にも色々と教えてくれた。
ノンアルコールビールはちょっと気になるな、アウトバーンは君尋が喜びそうだ。
「君は何故私が泣いていたのか聞かないのか?」
とカレー娘はいきなり切り出す。
「人間誰しも話したくないことはあると思います、それが泣いてしまうほどなら尚更ですよ」
ちょっと気になるけど。
「そうか…」
ふと愛里寿のことが頭をよぎる。泣きながら戦車道をやりたくないと言った日のことを、長い間誰にも相談出来ずに一人で抱え込み続けた従妹のことを思い出す。本当にもし目の前の彼女がかつての愛里寿と同じだったら、俺は…
「俺に話して楽になるなら聞かせてください、俺にはあなたが辛そうに見えます。」
「近しい人より素知らぬ他人の方が意外と話せることもあると思います」
俺に彼女を放っておくことはできない。
カレー娘は少しの間躊躇するが決心したように口を開く。
「じゃあ…聞いてくれるか?」
二人のカップに二杯目のコーヒーが注がれる。
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私は目の前の亜麻色の髪の彼に話した。
戦車道、またその家元の娘であることや、妹のみほの名前を伏せながら、去年の戦車道大会のことを話した。
決勝で妹が命の危機にあった仲間を自分を顧みず助けたこと、そのせいで試合に負けてしまったこと、そのあとは家元である母からだけではなく、他の西住流の人間からも責められたこと、結果妹は黒森峰だけではなく実家にも居づらくなり他の学校に転校してしまったこと、自分は守ることも助けることも出来なかったこと、自分は妹も十分に守れないどうしようもなく弱い人間であること全てを話した。
喉が渇き、コーヒーを喉に流し込んだ。 どうやらコーヒーはだいぶ温くなってしまったみたいだ。
「私はどうしようもなく弱い人間だ…」
自嘲的な笑みがこぼれてくる。
「そんなことは…」
「良いんだ、私自身がよくわかっている」
「本当にこのことは誰にも?」
言えるわけがない。事実は知られているにしても弱音を吐くことは家元の娘として許されない。
「ああ… 私は人をまとめる立場の人間なんだ、こんな弱音を吐いて良いわけがない、強くなくてはならない」
「それは違いますよ、確かに貴女が妹さんを守れなかったのは強くなかったからかもしれない、だけどその強さは自分の弱音をひた隠しにすることじゃない、そんなんじゃ貴女がいつか潰れてしまいます。」
「私は潰れたりしない」
私が潰れてしまったら本当に黒森峰も西住流も終わりだ、なによりみほの帰る場所がなくなってしまう。
「嘘だな、現にアンタは泣いていたじゃないか」
彼の口調が変わる。
「それは…」
そんなことはわかっているんだ、でも私が潰れてしまったら…
「アンタはアンタの仲間が悩んでるときどうする?」
なんでそんなことを…
「たぶんアンタは力になろうとすると思う」
でも私は悩んでるみほを助けることが出来なかった…
私には力がなかった…
「だからそんなアンタの部下達はアンタが困ったら死ぬ気で助けてくれると思うぜ」
私は…
「本当のアンタの思いを明かすべきだ、アンタを弱いだなんて笑う奴なんて誰もいない。きっと受け止めてくれる。妹さんが命をかけて助けた仲間なんだ、信頼してやれよ。あとはアンタがどうしたいかだ。」
「私は…、私は妹の守ったものを守りたい、妹が間違っていないことを証明したい、黒森峰を妹が胸を張って帰って来られるように変えたい!」
「おう、アンタは一人じゃねぇんだ、きっとやれるって」
そう言って彼は笑うが急に取り乱しはじめた。
「いやっ、その何か、話を聞くだけだったのに、偉そうに語っちゃってすいません、本当にごめんなさい…」
さっきの男らしい口調とはうって変わって、丁寧な口調に戻り凹み始める。なんだか面白いな。
「ああ、大丈夫だ。むしろお礼を言いたい、ありがとう。お陰で進むべき道がわかったよ。それと口調はそのままで構わない」
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俺に向けられた彼女の微笑みはとんでもない破壊力で目を逸らしてしまう。可愛すぎだろ…
至福に包まれることも束の間、ポケットの中のスマホが軽快なメロディを流しながら震え始める。
「その、少しごめん」
「ああ、大丈夫だ」
彼女は微笑み返してくれる、いやまじでやめて、惚れる。
俺は逃げるように店を出てスマホを見るとミカからの着信だった。
「やあ、蒼。黒森峰のカレーはどうだったかな?」
「うまかったよ」
「それは良かった。だけどそろそろ時間だ。急いでさっき別れた場所に来られるかい?」
「え?まじ?わかった、すぐ行く」
「待っているよ」
と言われミカに電話を切られる。
カレー娘と店主のおっちゃんに挨拶して急いで行かなきゃな。
俺は店にもう一度入り直す、あ、彼女の名前知らないや
「おかえり」
彼女は冗談っぽく言う、さっきまでの表情と違いとても良い表情をしている、幸ニにデッサンしてもらいたい。
「おう、ただいま、でももう帰らなきゃ行けないんだ、だから最後にアンタの名前を教えてくれないか?」
彼女は一瞬ためらいの表情を見せるがすぐに元の表情に戻る。
「西住まほだ」
黒森峰。西住。まほ。まじか…戦車道の名門西住流の人じゃん。 しかもさっきの話聞いてると家元の娘か… じゃああの決勝と妹さんってのは…
「どうかしたか?」
「いや、何でもないんだ、まほ」
「じゃあ君も名前を教えてくれないか?」
あー、逃げられないやつだ、コレ。まほに回り込まれまくってるよ。まあ俺のこと話してないし、大丈夫か…
「島田蒼」
「蒼か、素敵な名前だな。」
あ、バレてない、よし!
「ありがとう、まほ。じゃあ俺行かなきゃいけないから。アンタの戦車道応援してるぜ!おっちゃん、ご馳走様!」
そう言って急いで店を出る。
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蒼との電話を切り、待ち合わせの場所に向かいながら今日の出来事を思い出す。
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蒼が例のカレー屋に行っている間、私は黒森峰学園にいた。
学園に着くと同時に待ってたと言わんばかりに応接室へ通され、待ち人に問いかけられた。
「あなたが島田千代の使いとしてきたということは、あなたはもう知っているのかしら?」
戦車道西住流の家元西住しほである。
「そう思ってくれて構わないよ」
「わかったわ、じゃあ島田千代に伝えて頂戴、佐伯流が動き始めたわ。今日本の大小問わず経営の厳しい学園艦に戦車道のというより男子戦車道の補助金の斡旋が文部科学省から行われているの。そしてそのバックには佐伯流がいたわ。」
私は特に言うこともないので黙って聞いている。
「みほとあなたの従兄弟が通う大洗学園も斡旋を受けていたわ。私からはあとは特にはないわ、島田千代から何かあるのかしら?」
「大学選抜の主導が佐伯流に移動したことぐらいかな?」
「島田千代は?」
「大学選抜の顧問としては残ってはいるけど、後援会などのほとんどが佐伯流に抑えられているね」
「そう、報告ありがとう」
あとのことはどうでもよくてあまり覚えていない、ただ、私たちはまた佐伯流に翻弄されることになるのかも知れないとだけ思っていた。
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遠くから蒼の走ってくる姿が見える。
「ミカー!」
ああ、どうかこの心地の良い音楽が再び止まらないように…
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結局あの日以来、蒼に貸してもらったハンカチは私の手元にある。ハンカチのどこか不思議な紋様は私の進む道を思い出させてくれる。
キレイに畳んであるハンカチを握りしめる。人に自分の本音を打ち明けることは勇気のいることなんだな、なかなか口が開かない。
「大丈夫ですか、隊長?」
銀髪の副隊長が心配をしてくれる。
「大丈夫だ、エリカ、ありがとう」
再び黒森峰戦車道の全隊員に向き直る。
「みんな、聞いてくれ。私は…」
伝えよう、私の進みたい戦車道を。
ミカって何考えてるかわからないから、マジで心中文書くの難しスギィ!!!
いよいよアニメ本編に突っ込んで行きたいです。
すとらっぷさん感想ありがとうございます。
私生活をもう少し整えて更新速度あげたい、切実に