Girls und Panzar mit Boys 作:おっさま
今回は会話多めで追いにくいですがご容赦ください。
どっちが上か下かも分からない濁った水の中に私は漂っている。
そして声が聞こえてくる。ああ、またこの夢か
『君のせいで黒森峰は負けたんだ』
ごめんなさい
『名門校に泥を塗ったのは理解しているんですか?』
ごめんなさい
『貴方の戦車道は間違っています、貴女は…』
お母さん…
「私は…」
目がさめる。まだ見慣れない天井が目の前にある。
「ああ、もう家じゃないんだ」
時計を見るとゆっくりと朝の支度をしている場合ではないみたい。
「急がないと…」
まだ着慣れない制服に身を包む。私はこっちの制服の方が前の学校のものより可愛くて好きかな。
急いで身支度を整えて、朝ごはんを食べて家を出る。そろそろちゃんと自炊しなきゃ。
「行ってきまーす」
部屋のすぐ隣の階段を降り始める。
「あ、鍵しめなきゃ!」
あはは、まだ実家の習慣が抜けてないのかな、早く一人暮らしになれないと…
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突然だがみんなは好きなものがあるだろうか?
俺はある。サンドイッチだ。
だけど食パンのサンドイッチじゃなくてバケットのやつ。食べごたえがあって好きなんだ。そして今日も朝ごはんに俺はサンドイッチを食らう。
「毎度あり〜」
マンションから近いこのパン屋は開店も早いし、美味いし重宝してるんだよなー。
とか考えながらパン屋の袋を手にぶら下げて店を出る。
「わぁっ!」
「うおっ!」
不注意で誰かにぶつかる。やばい、相手が後ろに倒れそうになってる!
「っ!」
俺は思いっきり手を伸ばして相手の背中に回すようにする。
「っと、あぶねぇ、セーフ」
むにゅ
oh…ベリーマシュマロン…
ぶつかった相手は女の子だったらしく、俺はどうやら路上でいきなり女の子を抱きしめてしまっているらしい。
おうふ、俺捕まったわ、ごめんな、愛里寿…
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まだ歩き慣れない通学路、日々新しいことに気づいていく楽しさ、新鮮さが妙に嬉しく感じる。
「うーん、焼きたてパンのいい香り!」
こんなところにパン屋があったんだ、ちょっと覗いてみよう。
「わぁっ!」
「うおっ!」
丁度パン屋から出てきた人とぶつかってしまう、その拍子によろけて後ろに倒れてしまいそうになる。
「っ!」
だけど相手が咄嗟に手を伸ばし倒れるのを防いでくれる。
「っと、あぶねぇ、セーフ」
なんとか倒れずにすんだみたい、ちゃんとお礼を言わなきゃ…
相手の顔をみると放心してる。何で?アレ?この顔は…
「え、と、島田君?」
「え?に、西住?」
島田君の顔がさらに青ざめる… え、私何かしたのかな?
島田君は私の背中を抑えていた手を外し、頭をさげ、両手を合わせる。
「すまん、西住、わざとじゃないんだ、許してくれ!」
やっと島田君が青ざめた理由に気づく、でも怪我をしそうだったところを助けて貰ったのだから、私に怒る理由はない。
「ううん、大丈夫。島田君が手を伸ばしてくれなきゃ、怪我してたかも知れないし、ありがとう」
「おお、助かるわ、西住」
彼は手を伸ばしたときに落としたパン屋の袋を拾う。
「あの、私のせいでパン落としちゃったね、ごめんね、私がぼーっとしてたから…」
「大丈夫、大丈夫。中身フランスパンだからちょっとのことじゃダメにならないって」
「そう、なら良いんだけど…」
「そんなことより早く学校行こうぜ、遅刻してそど子に怒られると面倒だ」
「うん!」
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よかった、捕まらずに済んだわ、西住はいい子だったよ…
てか黒森峰でまほから聞いた妹って、目の前の西住なのかな…?
まあ西住なんて沢山いるだろうしたまたまだろう。
「てか、西住としっかり話すの初めてかもな」
「そうだね、私は2年からこっちに来たから、友達いなくて…」
まだ上手く馴染めてないからなのか少し落ち込んでいる。
「まあ、大丈夫だろ。昨日も放課後に武部と五十鈴さんが西住ってどんな子なんだろうって話してたぜ?みんな興味持ってるし、すぐに友達も出来るって」
「ほんとうに?私、頼りないってよく言われるから不安で。」
「おう、本当だって。だからしょげた顔してないで新しい学校楽しもうぜ。」
「うん!」
西住が笑顔になる。なにこの守ってあげたい小動物。かわいい。
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「はい、鮎川君出席ね」
今日も出席だけで学校が終了する。
サンダースにいた頃の単位が膨大すぎて、大洗で受ける授業がなくなってしまい、いつも出席だけで学校が終わってしまう。
前までならすっごい暇だったんだけど、今は違う。
蒼が持ってきたコメット巡行戦車を参考にしながらこれから始まる戦車道に向けて戦車の整備のメソッドの確立や追加で必要な道具を調べて発注などをしないといけない。
僕以外の自動車部の人達は普通通りに授業があるから日中は一人で頑張っている。
新しく戦車倉庫と名付けられた倉庫の扉を開く。
「あれ?」
倉庫に置いてあるソファで誰かが寝ている。
近づいて様子を見るとウチの女子生徒らしく制服を着たまま寝ている。このまま放置も出来ないので声をかける。
「おーい、おきてくださーい。」
返事がない。
「おーい、起きてー」
返事がない。
「起きてよー」
返事がない!!!
もう知らない。自分の作業を始めよう。
今日のBGMは…
稲◯淳二のアレにしよう。たまにはホラーも悪くないよね。
スピーカーで稲◯淳二を流しながら作業を始める。
蒼からもらったコメットの書類を見ながらコメットの仕様を確認する。
コメットは第二次大戦当時、イギリスの機甲部隊はアメリカからレンドリースで借り受けていたM4シリーズを主に運用していたんだけど、ドイツの当時の最新機ティーガーやパンターに十分に対抗出来なかったんだよね、だからドイツ戦車に対抗するために17ポンド砲を搭載した巡行戦車として開発されたんだ。
コメット自体は巡行戦車クロムウェルを元に開発されているんだけど、一番の売りはヴィッカーズ社の77mm戦車砲HVだね、この砲はパンターの主砲70口径7.5cm戦車砲KwK42に匹敵するレベルだとか…
書類を読み進めていると稲◯淳二の語りも佳境に入る、さっきの女の子のソファの横にあるスピーカーからしきりに「怖いな〜、怖いな〜」と聞こえてくる。
書類に飽きてきたので聞き入ってしまう。
「怖い!!!」
さっきまでぐっすりだった女の子が突然起きてスピーカーの音量を落とした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
人間には勝てないものがある、睡眠欲に代表される三大欲と幽霊だ。
先程誰かに声をかけられてから眠りが浅くなり、周りの音が聞こえてくる。眠いので関係なかった。
…ということもなく、よりにもよって私の天敵稲◯淳二の語りが聞こえてくる。
やめろやめろ怖い怖い、それ以上語るんじゃない。
眠気はとっくに醒めていた、もうこの語りを止めるしかない。
「怖い!!!」
私の近くにあったスピーカーの音量を落とす。
そこで私は彼と目が合う。
「えっと…、やっとおきたのかな?」
「誰だ?」
今まで日中はこの倉庫は誰もいなくてとても寝やすかったんだが…
「僕は整備科2年の鮎川君尋、君は?」
ああ整備科か今年からこの倉庫も使われるのか、新しい昼寝場所を探さねば…
「2年、冷泉麻子」
「冷泉さんはどうしてここに?」
「この倉庫は日中誰もいないからな、昼寝だ」
「そっか、僕がその邪魔をしちゃったんだね、ごめんね」
「いや勝手に使っていたこちらが悪い、また新しい場所を探す」
「別に大丈夫だよ、日中は多分僕しか来ないし一人じゃ大掛かりな整備もできないから対して音も出さないと思うよ。」
「そうか、だがアレは流すんだろう?」
私はスピーカーを指差す。
「こういうのダメだった?」
「ああ、幽霊は苦手だ。」
幽霊だけは本当に無理だ。
「じゃあ今度からは別のものにするよ。」
「たのむ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
冷泉さんとのやり取りを終え、また書類を読み始める。
「なあ、鮎川君。何でこの倉庫は戦車があるんだ?」
「昔この大洗学園で戦車道が活発だったみたいだね、その名残だよ。そして今年から戦車道が復活するみたいだよ?冷泉さんは戦車道に興味あるの?」
「ない。寝る時間が減りそうだ。」
「そうなんだ」
どんだけ寝たいんだ、冷泉さん。
昼休みの始まりを告げるチャイムがなる。
冷泉さんは倉庫の入り口に向かって歩き始める。
「鮎川君、私はまたここに来ても良いのか?」
「大丈夫だよ、冷泉さんさえよければ」
「わかった、次は落ち着く音楽がいい」
そう言って彼女は倉庫から出て行く。
なんだか冷泉さんって猫に似てるかも…
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午前中の授業が終わってお昼休み…
朝に島田君にああ言われたもののやっぱりまだ私は一人…
悲しいなぁ…
「なぁ、西住」
「ヘイ、彼女!」
「ふぇっ!?」
同時に二手に声をかけられてびっくりして机のものを散らかして床に落としてしまう。
「蒼、いきなり声かけるから西住さん驚いてるじゃないか」
「沙織さん、西住さん驚いてらっしゃいますよ?」
「え、ああ、すまん、西住」
「え、ごめんね、西住さん」
「えと…、島田君と武部さん?」
「おう」
「えー、覚えててくれたんだ〜」
「おら、蒼、ボーッとしてないで西住さんのペン拾えって」
「そうだよ、蒼」
「ほら、沙織さんもボーッとしてないで」
島田君と武部さん以外の三人が落とした筆記用具を拾ってくれる。
「ありがとう、原君と桜田君と五十鈴さん」
「俺らのことまで覚えててくれたんだ〜」
「嬉しいです」
「その、私転校してきたから早くクラスに馴染みたくて、みんなの名前覚えたから…」
顔がだんだん赤くなってきちゃった… うぅ、恥ずかしい…
「まあまあ、続きは飯でも食べながら話そうぜ?な、幸二、和樹?」
「あ、島田ずるーい。私たちが西住さんとお昼食べようとしたんだよ〜」
「まあまあ、沙織さん」
「じゃあみんなで食べたらいいんじゃないかな?どうかな西住さん?」
「私は全然大丈夫っていうか、むしろ嬉しいです!」
「じゃあ決まり!はやく行こう!学食混み始めるよ!」
武部さんが私の手を掴み食堂へ連れてってくれる。
「もう沙織さんったら」
「蒼、幸二もはやく行こうぜ」
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「おーい、こっちこっちー!」
運良く六人分の席が空いていたから、蒼と西住さんたちを誘導する。
「ごめん、お待たせー、桜田」
武部がそう言って俺の目の前に座る。そして隣に西住さんを挟むように五十鈴さんも座る。そして俺の隣は蒼が座り、五十鈴さんの正面に幸二が座る。
なんだこれ、合コンかな?
てか五十鈴さん、何だそのご飯の量。富士山じゃねーか。
「それじゃあ、みんな揃ったし食べようか」
おい、幸二。五十鈴メシにはノータッチかよ、てかお前もどんだけ食うんだよ!ピザにパスタとかお前イタリア人か!ジェラートつけてんじゃねぇ!
蒼、お前は何だそれ、昼からきりたんぽ食うのか!!!
ああもう知らね! あ、武部と西住さんは普通だ。
俺?俺はシュラスコだよ?美味しいじゃん、肉。
「「「いただきまーす」」」
みんな一斉に食事を始める。
にしても西住さん超いい笑顔だな。写真撮って飾りたいわー。
「西住さん、とても嬉しそうだね。」
俺の代わりに幸二が切り出してくれる。
「え!?そうかな?私、ここにきて始めてこんなに大人数でご飯を美味しく食べるから、それが嬉しくて…」
ちょっと赤くなってる、西住可愛い。
「じゃあこれからは一緒に食べよう?あ、そうだ!みほって呼んでいい?」
流石コミュ力おばけの武部だな。
「えー!何だか、友達みたい!大丈夫だよ!ありがとう、えーと…沙織さん!」
「みほさん、私も気軽に華と呼んでくださいね。」
「うん、よろしくね、華さん。」
何この空気なんだか和むな、あ、幸二がすごいイイ顔してる。
そういえば西住さんは転校してきたとか言ってたな?
「なぁ、西住さんはどうして転校してきたんだ?」
「え、えっと…」
「泥沼の三角関係に巻き込まれて!?」
武部、漫画の読みすぎ。
「それとも日本中を旅する流浪人だとか?」
幸二、何言ってんだ?
「もしかして骨肉の争いから逃れるために?」
五十鈴さん、あんた昼ドラ好きだろ?
「私…、前に黒森峰学園てところにいたんだけど…」
西住さんが言いにくそうに切り出す、ふと横を見ると蒼がとても驚いた顔をしていた。蒼は黒森峰学園を知っているのか?
「いや、西住、無理に言わなくても良い、誰にでも良いにくいことはあるって。なあ、和樹?」
「そうだな、別に大丈夫だぞ、西住さん。そういえば…」
この後、西住さんに色々聞いたり聞かれたりしながら談笑して昼休みを過ごした。結局西住さんの転校してきた理由は分からなかったけど。
みんなで笑いあいながらとても楽しい時間だった、ただ、蒼がときどき西住さんを何とも言えない顔で見ていたのが少し引っかかった。
ss書いてて思うんですけどやっぱりガルパンって中々に重いところもありますよね、だけどアニメはその重さをあまり目立たせず、すごく観る側が受け付け易くしているなと思います。
欲しいですね、文才…
感想・ご指摘ありましたら、是非お願いします。
次回もなるはやで頑張ります。