東方携帯獣〜幻影の覇者が幻想入り〜 作:通りすがりのめいりん君@すきょあ
上も下もわからない謎の空間で、私は抵抗もせずに浮かんでいた。
どうしてこうなったかは解る。
ウルトラホールの遡航中の衝撃でボールが主人の手元から離れたせいだ。
私はどこへ行くのだろう?
抵抗するだけ無駄なのはわかっているので、ただただウルトラホール内を揺蕩っているが、一向に助けが現れる様子もない。
始めこそ、もしかしたら主人がソルガレオに乗って助けに来てくれるんじゃないかと期待していたが、それももうやめた。
主人とともになんどか遡航を繰り返したことがあるが、このホールには決まった道というものがない。
例え主人が同じように進んで来ても、私の位置にたどり着くことはないだろう。
ならば一度ウルトラホールから出て元の世界に帰る手段を探した方が早いかも知れないと考えた私は、近くの出口とは逆方向に技を放ち反動を使って強引に出口へと身体を滑り込ませた。
出口の先には森が広がっており、また、斜面である事から山の中だと言う事が解った。
アローラにはこのような山が無かったので、もしかしたら別の地方に出たのかも知れない。
そうだとすればなんて運がいいのだろうか。
ここが、元いた世界ならば帰るのは然程難しいことではない。
なんなら主人の伝手を辿ったって良い。
その為にもまずは、人が何処にいるのかを確認した方が良いだろう。
私は木に登り、辺りを見渡す。
すると、山を下った先の方に町か里のようなものがあるのを確認できた。
そして、更にここから山を下ると途中には神社もある。
既に陽も傾いているので、ひとまずは山の中腹にある神社を目指すことにした。
少し罰当たりかも知れないが、修行僧に化けて一晩泊めさせてもらうとしよう。
神社へたどり着く頃には真っ赤に輝いていた夕日も沈かけ、辺りには夜の帳が降り始めていた。
完全に陽が落ちてしまった後に伺うのはまずいので私は慌てて幻影をまとって境内へと入る。
境内は薄暗く、参拝道を見やると今まさに陽が沈みきった所だった。
惜しいものだ。後少しだけ早く来ていれば素晴らしい景色が見えただろう。
「妙な気配がすると思えば、狐の修行僧とは珍しいな」
不意に声をかけられた私は驚いて飛び上がりそうになった。
油断していたとはいえ、すぐ後ろに人がいて気づけないなんて、それに話す前から正体がバレているではないか。
「よく、わかりましたね。私が狐だと」
「早苗ならともかく、その程度の術は私に通用しないよ」
声の主は青い髪を持ち、赤い服に身を包み、その胸には鏡を下げた女性だった。
まるで神様の真似事でもしているかのような格好だが、瞬間的に私の正体を見破った事から察するに、そういった力を持っているのかも知れない。
「それで、わざわざ守谷神社に何用だ?もし化かしに来たのだとすれば悪いけどお引き取り願うよ」
なんとなく下手な言い訳は全てバレる気がした私は、あえて本当のことを伝えた。
ウルトラホールを漂流し、たまたまこの近くに降り立ったこと、修行僧に化けていれば一晩泊めさせてもらえるかもと考えたこと、疲れているので休みたかったことなど。
それほどまでに、目の前に凛と立つ彼女からは高位的な気配を感じたのだ。
話を聞いた彼女は私の目を見て、
「嘘じゃなさそうだ」
と言って私を神社へ招き入れてくれた。
「いつまで、その姿で居るんだ?」
そう言われた私は幻影を取り、本来の姿を晒す。
自慢の漆黒の毛並みに真紅の
「へえ、それがお前の姿か」
その言葉に違和感を感じつつ、私は彼女の後を着いて居間へと入る。
畳張りの今には大きめの座卓があり、その座卓を囲むように二人の少女が座っていた。
「あ、加奈子様おかえりなさーい。さっきは急に飛び出してどうしたんですか?…って黒い狐?」
「境内で修行僧に化けてたから連れて来た。一晩泊めてやることにしたから、早苗には悪いが食事を一人分増やしてくれ」
『すいません。突然お邪魔してしまって』
「いえいえ、全然大丈夫ですよー」
早苗と呼ばれた緑髪の巫女は、親指を立てて私に突きつける。
なんとも陽気な娘だ。
「ん?あれ、今その狐喋りませんでした?」
『テレパシーですよ』
「ああ、そっかー、テレパシーかぁ!………テレパシー!?」
そんなに驚くような事だろうか?
確かにテレパシーをつかうポケモンは珍しいかも知れないが、探せば会えるくらいには居ると思う。
特にエスパータイプだったり、長年生きて居るようなポケモンならそう珍しい話でもないだろう。
「なんなんです?特に妖気も感じないし、かと言って霊気とかもないし……」
「私に聞かれても解らんよ。本人に直接聞いてくれ」
この時、私は彼女が私の正体に気づいて泊めたわけでないことを気づいた。
いや、気づいたというよりは確信を得たのだ。
ここに来るまでの距離は短かったが、青々と茂った草木、清らかな渓水、豊富な土壌。
これだけの自然で野生のポケモンに出会わなかったなんて、偶然では済まされない。
おそらくは、ポケモンの居ない世界に来てしまったのだろう。、
そして、その考えは正しかった。
『幻想郷、ですか』
「そう、忘れられて幻想になったモノが流れ着く最後の楽園。それが幻想郷よ」
食事をしながらこの世界の事を説明してくれたのは、目のついた奇妙な帽子をかぶった金髪の少女で、この中では一番幼いように思う。
『私は忘れられてしまったという事でしょうか?』
「いや、さっきの話を聞く限りはそのウルトラホールってのがたまたま
「ところで、加奈子は事情を聞いたらしいけど、私と早苗はまだ聞いてないんだよね。聞かせてもらえるかな?」
私は先ほど、青髪の女性に伝えた事と同じ事を他の二方に教える。
すると、緑髪の巫女がポケモンと言う言葉に反応を示した。
何かヒントが得られると思った私は、巫女に追求するとポケモンは外の世界で人気の“ゲームキャラクター”だと言う答えが返って来た。
そんなはずはない。現にこうして私はここに居る。
しかし、この世界にポケモンが居ないのは間違いなさそうだ。
ホールの出口はすでに閉じた。他のポケモンも居ない。この先どうすれば良いのだろう。
「ふむ、なにやら辛気臭くなってしまったな」
「早苗があんなこというからだよ」
「え?え?わ、私のせいですか!?…あ、あのー、お稲荷さんおかわりしますか?」
おずおずと、私に聞いて来る。
その姿を見てると無下に断るのも憚れるので、ご厚意を頂くとしよう。
なんでもこの世界では狐の好物が油揚げなんだそうだ。
確かに美味しいし、気持ちはわからないでもないかな。
「そういえば、お前の名は何ていうんだ」
『?ゾロアークですが』
「話を聞いてた感じだと、それは個人名と言うよりは種族名のようなものなんだろ?私はお前の名を聞いているんだ」
つまり、ニックネームを聞かれていると言うことか。
『私はギート、ゾロアークのギートです』
主人に付けてもらった名を、私は初めて名乗った。
自ら名乗ることで存在を誇示し、人に認識してもらう。この時初めて私はこの世界に足をつけたのかもしれない。
「そうか、これからよろしくなギート。わたしは加奈子、この神社の神様をやってる」
「はいはーい、私の名前は諏訪子だよ。よろしくねー」
「わ、私は東風谷早苗と申します。不束者ですがよろしくお願いします!」
青髪の女性が加奈子。金髪の少女が諏訪子。緑髪の巫女が早苗。
…うん。覚えた。
『皆さん。よろしくお願いします。…と言っても一晩だけですが』
「なに言ってんだ。ここを出て行っても当てなんてないんだろ?うちにいればいいさ」
『良いのですか?一応、私は雄ですよ?』
「私は構わん」
「別に私も気にならないかな。早苗は?」
「ふぇ?お二人が良いなら私は言うことありませんよ?」
こうして私は幻想郷に流れ着き、この守矢神社と呼ばれる山奥の神社に住み始めた。
To Be Continued…
次回「幻想郷の神様」
—おまけー
ゾロアークについて。
ゾロアーク
ばけぎつねポケモン
あくタイプ
高さ:1.6m(基準)
重さ:81.1kg(基準)
イリュージョンは劇場版並みで、その気になれば幻想郷全域を幻影で包むこともできます。
所詮は幻影ですけどね。
ただし、ここだけ独自設定。
ギート自身が変幻する場合は、実体のある姿とさせてもらいます。
どう言うことかは今後をお待ちください()