ハリー・ポッターは2p完結でいい   作:りなむ

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11話 アフターケア

最初に見たのは家族だった。

しくしくと涙を流す母親、その肩を抱く父に、二人の後ろで佇む兄。彼等の目の前にはわたしの写真があったーー好きだった歌手のCD、好物のチョコレート、お気に入りだった作家の小説、はたまたアニメのブロマイドまで、まるで供え物のように置いてある。理央、と父が震える声で私を呼んだ。父は厳格な人だった。泣く姿なんて生まれてこの方数回しか見たことない。ただ、寂しがりやな人だった。実家に帰る度に「まだいい人は見つからんのか」と聞くくせに悲しい顔をするから、母とこっそり笑ったほどに。

 

暗転。

 

次に見たのはあの男。

男は杖の照準をジェームズへ向ける。私はこの光景を知っていた。この先に起こることも。

響く怒声、だけどろくに抵抗も出来ぬまま緑の閃光がジェームズに当たった。ーーやめてーー廊下で事切れた彼をまたいで、男はリビングへと進む。ーーやめてお願いーー赤ん坊を抱いた彼女は、男に命乞いをし、けれど、奴は嘲笑うかのように、呪文を

ーーーリリー。

名前を、呼んだ。目の前に彼女がいた。彼女だけじゃない、みんないる。温かい、生きている。ごめんね、大丈夫よ。絶対にあんな風にさせない。だからお願い、泣かないで。みんなみんな、笑っていて。

 

 

 

目を覚ましたのが5日後。

残り2日は絶対安静。

こうして私は無事日常へと帰ってきた。

 

 

 

「もうっ、心配しちゃったじゃない!一週間も医務室に篭るなんて~」

「インフルエンザだって?馬鹿ねぇもう」

「いやー!私自身もビックリだよね~。でも、アビーやサンドラにまで移ってなくて良かったー」

 

きゃいきゃいと寮の談話室で激励を受ける私は、この一週間インフルエンザに苦しんでましたーってことになっているらしい。そんなわけで私はノリノリでポンフリーがついた嘘にのっかかる。熱ってのは間違いじゃないんでね、というかウイルスに感染してたってほんとだし。ただちょっとグレードが、まんじゅうと高級マカロンくらい差があるだけで。え?分かりづらい?

 

「リオ、もう大丈夫なのかい?」

「あ、うん、リーマス。もう平気~」

「心配したんだよ」

「やっだリーマスやさし~い!」

 

バシーンと近所のおばさん宜しく彼の肩を叩いてみる。「痛いよ」と笑うリーマスはどこか影がかかっていた。まだ満月には遠い筈だけど…?

 

「皆もただいま~」

 

リーマスの後ろにいるジェームズ達にも声をかける。その隣に何故かいるリリーに首をかしげたが、気にするほどでもない。もしかしたらここら辺で二人の関係が変わり始めたのかなーとか思っただけで。ーーー反応がない。なになにみんな!私がいなくて寂しかったでしょ?寂しかったよね?もしかしてみんなとは仲の良いと思ってたの私だけ?無反応とか新手のいじめ!?それとも反抗期?

 

「リオ!」

「え!はい!なにシリウス」

 

 間。

 

「…………………………心配かけんな」

「あ、うん、ごめんね」

 

なんかわたし。すげー心配かけてたみたい。

適当に気遣う言葉とおかえりーとか貰えると思ってた私は、皆の反応に拍子抜けした。ジェームズもシリウスも眉を顰めてるしリーマスは苦笑いだしピーターは不安そうにしてるしリリーなんて目がウルウルしてる。いや、インフルエンザよ?んな大袈裟な。

 

「まっ、私はこの通り元気になったからみんな元気だして」

 

だからこの一週間分の授業ノート、貸してください。

 

 

 

 

 

「どこがインフルエンザよ」

「最近のインフルエンザは毛穴から血がでるらしいよ」

「なにそれ。馬鹿じゃないの?」

「手厳し~」

「……あんたあれでよく生きてたわね」

「しぶとさが売りのわたしだから」

「ふんっ」

「これお礼のお花。此処に置いとくね、じゃ」

「ちょっと」

「ん?」

「もしあんたが死んだら、一緒に此処に住ませてやってもいいわ」

「あはは!ーーーーありがとう。マートル」

 




時系列のミスに伴い若干修正を加えました。20180221
追記:この時代にインフルエンザは現代程主流ではない‥と思いますが、そこはフィクション。お許しください。

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