綺麗な笑顔だと思った。
不自然なところなんて欠片もない。
ーーーあぁ彼女はこんな風に嘘をつくのか、と。
その笑顔があんまり普通だったから、僕も僕以外のみんなもリオになにも聞けなかった。多分聞いたとしても、何も答えてくれないのだと分かってしまったから。ーーそれくらい、"いつも通り"の笑顔だった。
また、だ。
また僕は知らなかった。
彼女とはもう5年の付き合いなのに、知らない事が多すぎる。
例えば彼女の体質。
僕の狼化を止めた、あの不思議な魔法。僕らと気質の違う、魔獣や闇の勢力に狙われる魔力。確かにそれは強大な力だったけれど、実際は諸刃の剣だった。ーーあの日、あの後彼女は倒れたらしい。聞くと、魔力を使いすぎたことが原因だった。狼化を抑えられる力、僕にとっては喉から手が出るほど欲しい。でも、その為に友達を傷付ることなんて出来ない。それならあの暗い部屋で一人耐えた方がマシだ。
後日彼女を説き伏せて、僕のために力を使わないことを約束させた。リオは納得しなかったけど、僕だってこれに関しては引けない。それに、もう充分救われたから、これ以上君に苦しんで欲しくなかった。
例えば彼女の嘘。
僕は"あの怪我は魔獣に襲われたのかも"と考えていた。彼女の体質によって、狙われたんじゃないかって。それなら僕達に怪我を秘密にする理由も分かる。でもそれにはリオがピアスを外す理由と、魔獣に襲われるような場所へ行った理由が必要だ。
ーー僕らが"たまたま"忍びの地図を絶対に見ない日に限って、そんな場所へ行った理由が。
彼女には秘密が多い。
僕も秘密を持つ嘘つきだから分かる。暴かれるのが怖い、知られることが恐ろしい、ーーそんな恐怖と僕ら嘘つきは常に闘っている。だから無理やり聞くことも問いただすことも出来ないんだ。
でも、僕は秘密を持ち続けるのは気力が必要で、嘘をつくのは心苦しいことだと知っている。周りを欺き、時には自分自身すらも騙し通して、偽りの自分を演じている。それは、とても息苦しい。心を擦り減らして罪悪感と戦い続けるのは、想像以上に孤独なんだ。
だからこそーーその秘密を受け入れられたときの喜びと幸福は計り知れない。僕は、その幸せも知っている。
僕はね、リオ。
君をもっと知りたいんだ。
だって君は僕のかけがえのない友達だから。
そうして、僕はその日また彼女の知らないところを知った。
「僕に触るな!!この穢れたーーッッ!?!?!?」
ーーーこんな風にブチ切れるのかと。