ざわざわと辺りが騒がしくなる。皆がなにやら怯え、泣き出す子までいた。先生達も顔色が悪い。全員が全員、パニック状態ーーー大広間は恐怖で支配されていた。
ヴァジュラってどんなのだっけ?
だけど、正直ヴァジュラがなんなのか分からない私はイマイチその波に乗れなかった。授業でやった気はする。ただ自他ともに認める防衛術以外みそかっすな私は覚えてなかった。一人だけ取り残された気分で地味に寂しい。どうせ侵入するならトロールにしてよ!それなら分かるから!
そんな私を他所に、我先にと逃げ出す生徒たち。見かねたダンブルドアは、一喝しすぐ様指示を出した。
「監督生は自寮の生徒を連れ、寮に戻るのじゃ。決して一人で勝手な行動をしてはならんぞ」
…………最後の一言は何故かわたしに向けて言われた気がする。気のせいかな。ええー私ってそんな危険に突っ込むキャラですか?んな馬鹿な、座右の銘は漁夫の利です。
ところがどっこい、偶然か必然かこの大広間にリリーとセブルスがいない。まるで賢者の石のハーマイオニーの役位置だ。正直、嫌な予感がする。
私は先生達の目をすり抜けて、こっそり大広間を抜けたーー
「っ!?」
ところで肩を捕まれたような感触を受けた。
物凄く驚き肩を見るが、そこにはなにもない。
……………………え?幽霊?
「リオ」
「…………ジェームズ」
なんっおま、透明マントかよ~~~~。びぃくりしたあ~。もう心臓バックバクだよ!
気まずそうに目線を逸らすジェームズとシリウス、その横にピーター、リーマスがいないのは監督生だからかな?兎も角この三人もわたし同様に大広間を抜け出してきたようだった。
「…君は、何処に行くつもりなの?」
「リリーが空き教室にいるの。ホグワーツに魔獣が侵入したって知らないから、教えてあげようと思って」
「一人で行く気かよ…」
「危ないよ、先生と一緒の方が…」
「先生達だって人手が足りないだろうし…直ぐ済むから大丈夫よ」
三人と会話するのは本当に久しぶりだった。ぎこちなさは感じるが、久しぶりに話せたことにわたしの頬はだらしなく緩む。そんな私にジェームズとシリウスはどう反応したらいいのか分からないのか、頻りに目を泳がせていた。
「リリーがいるなら僕も行くさ」
「…俺も行く。」
「あっほんと?じゃあ忍びの地図でリリーの場所確認してくれない?セブルスも一緒にいるから」
「「はあ!?」」
「え?」
一人だけ反応がずれたピーター。可愛い~久しぶりの癒し~。そんな風に考えてたらジェームズが私の肩を鷲掴みしてきた。物凄い剣幕で、力も強くて若干痛い。おい、どうした。
「どうしてあの二人が…!あいつがまたリリーに何か言ったら!!」
「その件でリリー自身が話したいと、セブルスを呼び出したんだよ。その結果何言われようが何されようがリリーの責任、少なくとも私達が出ていい幕じゃない」
「ーーっ!ふざけるな!!リオはリリーが傷ついてもいいって言うのか!?」
「そうじゃない。リリーはセブルスと分かり合うために一歩踏み出したってことよ。それはとっても勇気のいることなの。私達が邪魔していいものじゃない。ーー言った筈よ、"押し付けるな"と」
そこで漸くジェームズは押し黙った。
おっといけない。このままだと前の二の舞だ。
歯噛みするジェームズを他所に「兎に角、リリー達のところに行かなきゃ」とシリウス等に声をかける。地図によると、どうやら変身術の教室にいるようだった。駆け足気味で教室へと向かう。静かな廊下に響く人数分の足音。全員無言の微妙に重苦しい空気。ーー気まずい!!
「……まだ怒ってるの?」
「…怒ってるのはリオの方だろ」
「失礼な、私は怒ってないわよ」
返答したのはシリウス。
ちなみに私はほんとうに怒ってない。八つ当たりはしたけど。
「暴力を使ったのは悪いと思ってる、ごめんなさい。でもああでもしなきゃ三人とも止まらないと思ったから」
「……チッ」
「スニベリーに対しては、リリーにあんな事言ったんだからいい気味だったよ」
「セブルス、よ。ジェームズあなたまだそんなこと言ってるの?私は貴方達とセブルスが良い友達になれると思ってるのに」
「はああ!?そんなわけないだろ!あいつは闇側の人間だ!!」
「だからそれは既成観念ってね。そもそも、私が闇側の人間と関わるわけないじゃないーーー遠くない未来、あなた達の敵になる奴等なんかと。」
隣でヒュッと息を飲む音がした。私としては今更これ言う必要ある?的なノリで吐き捨てたんだけど……ええー、まさか気付いてなかったの~?私普段からあんなに愛を提供してたのに~(自己満)
「私はね、みんな大好きなの。そんな私が、あなた達の不利になるようなこと、絶対にしない」
これは絶対条件、わたしの揺るぎない一線だ。
全てに於いての念頭といってもいい。なによりの最優先事項。この子達が健やかに強く逞しく成長できるように、だって子供を守るのは大人の役目でしょう?
「……ははっ」
「どしたの?」
「…いや、君はそーゆー子だったなって思い出しただけ」
「?」
「…………はあ。僕の負けだよ、リオ」
なんか知らんがわたしは勝ったらしい。
ジェームズは諦めたように、脱力したように、でもなにかに喜ぶような優しい笑みを浮かべていた。
「ここまで強烈な告白されちゃあ仲直りせずにいられないね、そう思うだろう?我が友パッドフット」
「……あぁ」
「そんなわけだから仲直りしてほしいな。リオ」
「喜んでだよ」
満面の笑顔で差し出された手を握る。ジェームズは照れたように、シリウスに至っては顔も見せてくれなかったけど、二人ともわたしとは違うゴツゴツした男の人の手をしていた。
5年前とは違う、成長した手。この先も子供達は成長して、この大きな手で色んなものを掴んでいくのだろう。生きて、生きて、幸せな未来を得られるようにーーその為ならわたしはなんだって出来る気がするんだよ。