「リリー!セブルス!いる!?」
「!!」
「リオ!」
「………………………………お邪魔しました~」
理央は勢いよく開けた扉をそっと閉めた。後ろにいる仕掛人(主にジェームズが)何事かと覗こうとするが全力で阻止する。理央は焦っていた。ーーだってリリーとセブルスが抱き合っていたのだ。え?まさかのセブリリ?最早ハリー産まれないじゃん。
「ちょっ、リオ!なんで閉めるの!?」
「何も見てない何も見てないよ~」
「あからさまに目を逸らしてるけど!?僕のリリーが!!」
「…………誰があなたのよ、」
リリーって魔法で分裂とかしないかなぁ。理央が割と本気で考えてたところで、後ろの扉が開いた。ひょっこり顔を出したリリーが少し赤くなった目元でジェームズを睨む。夫婦漫才(仮)が始まる前に理央はリリーに声をかけた。
「リリー、話せた?」
「………そうね、全部が全部納得できたわけじゃないけど」
「うん」
「……でも、セブは変わらず私の大切な幼馴染みよ」
そう言って、リリーは目元を和らげてそれは綺麗に微笑んだ。隣のジェームズが見惚れてるのを他所に、なんだかんだで心配していた理央はそこでやっと胸を降ろす。
("幼馴染み"か、どうやらまだハリーの道は残されてるようです。頑張れジェームズ。)
リリーが大丈夫なら今度はコッチだ。
理央は扉から奥を覗き、セブルスを見る。笑顔で手を振る理央に、ギョッとした顔のセブルスはすぐに目を逸らした。「セブルスー」次は声をかけてみる、無視だ。「セブルスさーん」近寄ってみる、顔すら見ようとしない。「スネイプ先生ー」徐に彼の髪を三編みにしてみる、手を叩かれた。
「めんっどくさ!!」
「貴様なにをする!!」
うっかり頭を叩いたら倍の力で殴られた。
「いった!!酷い!殴ることないじゃん!」
「お前が最初に殴ったからだろう!!」
「殴ってないもん叩いたんだもん!」
「屁理屈を言うな!!」
「さっきまで拗ねてたくせに!!」
「拗ねてなどいない!!」
「うえーんリリー、セブルスが酷いよー」
「泣き真似をするな!!」
「ばれた?」
「開き直るなああああ!!」
あっはっはーと満面の笑顔を浮かべる理央にセブルスは怒髪天で掴みかかる。そんな、いつも通りの光景にリリーは安堵したようにホッとした表情を浮かべた。対してジェームズは複雑そうにシリウスは不機嫌そうに眉を顰めている。これもいつものこと。ちなみにピーターはオロオロしていた。かわいい、「何処を見てる!」理央が余所見してたらまたセブルスに頭を叩かれた。
「………………それで何の用だ」
「あ、うん。なんかヴァジュラ?がホグワーツに侵入したらしいくて」
「「なっ!?」」
ここにきてやっと本題。理央の発言に驚き、おののくセブルスとリリー。
「そういう事だからリリー、僕達と一緒に寮に戻ろう。」
「え、ええ……。でもセブが…」
「こいつはスリザリンだ。俺達とは方向が違う」
『じゃ、セブルスは私と寮に行こっか』
「…リオもグリフィンドールだろ」
『だからセブルスを送ったら寮に帰るんだよ』
「はあ?」
「お前についてこられなくとも一人で僕は帰れる」
『またまた~照れ屋さいたたたたたっ足、足、足踏んでる!』
一触即発とまではいかないが、安定の険悪ムードな三人。ほんとよくやるよなあ。懲りてないし、もう面倒くさい。理央が顔に出さずとも心の中で呆れたところでーー
背中に強烈な悪寒が走った。
「ひっ…!!」
「?どうしたんだよ…ーーー!」
その感覚を、理央は知っていた。これは以前、彼女がこの世界に来たとき、禁じられた森で感じた"アレ"だ。野性の勘、生物に与えられた本能ーーー死への恐怖。自然と身体が震え、冷や汗が流れる。ジェームズが息を飲んだ。リリーが怯えるように声を漏らした。ピーターが私の背中越しの"なにか"に、絶望を映した視線を向ける。
ーーああ、そうだ、思い出した。
確か2年の夏頃、[最も危険な魔法生物]の本で見た。
猫科の、トラに似た容姿をもつ最凶最悪と言っていい魔法生物だ。2メートルを超える巨体、俊敏な動きで敵を翻弄し、背中から生えたマント状の器官から強力な電撃を放つ。非常に攻撃的な性格で出会ったら即逃げるべきとされる、肉食の魔獣。
理央の視線先に、ヴァジュラがいた。