「シリウス……それ……」
リーマスが呆然と、どこか恐ろしいものを見るような表情でシリウスの手元を見た。今度はダンブルドアが息を呑み、直ぐ様踵を返す。隣にいたマクゴナガルは慌てて彼の後を追った。
そうして教室に残された子供達は、リーマスから伝えられた真実に驚愕し。ーーーシリウスは己のしでかした事態に、茫然と立ち尽くすことしか出来なかった。
別に自分だけが頑張ればいいとか、犠牲になればいいとか、そんなこと思っちゃあいない。只単に「適任だった」だけ。私は囮として役に立つし、子供達を戦わせるより確実で、なにより鬼ごっこなら慣れている。客観的に考えて、ダンブルドアの到着を、あの場面で戦い続けるより私一人囮として逃げた方が良かったのだ。
でも、この子達は納得しないんだろうなあ。
あぁ人生ってままならない。
「ジェームズ、そろそろ降ろして。私高いところそんなに得意じゃないのよ」
「…まだヴァジュラは下にいる」
「ダンブルドアが拘束してる。それに私も"ちゃんと着け直した"から大丈夫よ」
夜空に浮かぶ二つの箒ーーシリウスとジェームズ、その後ろに乗らされた私。下には拘束されたヴァジュラとダンブルドア、リーマスとリリー。おまけにマクゴナガル先生までいる。
ジェームズは流石クディッチ選手と云えるような軽やかな動作で下に降りていき、地面に足を着けた。
「あなた達全員怪我はありませんか!?」
「僕とシリウスは大丈夫です。…………リオは知りませんが」
「ミス・タカノ!」
「あ、なにも……」
「あぁ……貴方がヴァジュラに追われていると聞いたときは心臓が止まるかと…!自分がどれだけ無茶をしたのか理解しているのですか!?」
「スミマセンデシタ」
マクゴナガル先生の力が強い。掴まれる肩がさっきからミシミシいっている。ヴァジュラじゃなくて先生のせいで怪我しそうです。
「リオ…本当になにもないのね?少し顔色が悪いけど……」
「あー、ジェームズの箒のスピードが速すぎて三半規管が……」
つまり、酔った。
だってだって、逃げていた廊下で、しかも後ろからいきなり腕掴まれて飛ばれたんだよ?ものっすごいスピードで。遠心力が凄いのなんの。ジェームズとシリウスが助けに来てくれたことより、速さの方に驚いた。あと、ついでに言うなら耳が痛い。シリウスに引っ張られて無理矢理ピアスを付け直されたせいだ。あーいたいいたい。
「兎に角、ミス・タカノは私と直ぐに医務室に。他は寮に戻りなさい。既に消灯時間は過ぎていますよ」
「、!先生、僕らも医務室にーーー」
「駄目です。あなた達は速やかに寮へ戻るのです。いいですね?さあミス・タカノ、行きますよ」
「あっはい」
ジェームズの進言をバッサリ切ったマクゴナガル先生は、有無を言わさず私を医務室へ連れていった。この時私としてはラッキーと思っていたけど、医務室でのマダムポンフリーの雷を受けた頃には全くラッキーと感じられなかったことだけは記しておく。
そんで翌日。
殴られた。