励みになっております。
前回のあらすじ:リーマスに殴られた。
えっ。
予想ではジェームズかシリウスかリリー。リーマスも考えなかったわけじゃあないけど、誰より先に殴られるとは思わなかった。しかもグーパン。容赦がない。彼の後ろにいるジェームス達も、まさか殴るとは思わなかったのか、目を見開いている。
「あー……ごめんなさい…?」
しまった、うっかり疑問形に。
「……僕は君が嫌いだ。」
「えっ」
この発言には割と傷ついた。少なくとも、未だじんじん痛むほっぺ以上に。
アホ面をかます私を他所に、どことなくふらりと近づいてきたリーマスは、私の目の前で止まる。そうしてそのまま私の肩に額を当て、もたれかかった。
「ーーー君の、そういうところが嫌いだ。君は分かってる。君は分っているのに分からないふりをするんだ。君が必ず大丈夫だって言うところも、それに対して僕らがどう思うのかも、君は知っていて直そうとしない。そうやっていつも通りなふりをして、大したことないって言って笑うんだろう?」
リーマスの、震える声で紡がれた言葉は、あまりにも的を射ていて。思わず目を見張った。
この子、まだ子供でしょう。すごい分析力だな。
「どこが「大丈夫」なんだ。君は女の子で、学生で、ちっぽけな”ただの人間”なのに。ーーーーお願いだからもう少し自分を大切にしてよ。このままじゃ僕の寿命が縮む…⋯」
頭の重みでズシリと左胸が重い。
はあ、と。吐き出された吐息が生温く感じる。
懇願するような声色に、じんわりと胸底から沸き上がる感情に、ほんのちょっぴり心が揺れた。
これがもし、私がこの世界に来たばかりの頃に言われていたのなら「うんそうだね」って素直に受け取れたんだろう。どろどろの砂糖みたいに甘い言葉を、喜んで丸飲みしたに違いない。続いていた筈の未来を閉ざされて、受け止めきれない現実に、茫然と地べたに座り込んでホグワーツ城を眺めていたあの頃に。もしそれを言ってくれたのなら私は、きっと。
「リーマス」
だからね、ちょっと遅かった。
自分ひとりで起き上がった。目の前に広がる幾つかの道筋から、丁寧に補整された道を選ぶことが出来なくて、深く真っ暗な泥沼を開拓することを選んだ。歩く度に足が縺れて、転んで、血が出るのも分かってた。目の前の泥沼が、いつか血の海に変わるかもしれないとも思った。それでも見て見ぬふりを出来なかったのは私だ。己に対する嘆きは辞めた。己に対する甘えは棄てた。囚われる足を動かし、泥水を啜り、たとえ血濡れになろうともーーーー生きて。そう、生きて。
後戻りはしないと、後悔しないと、もう決めてしまったから。
「心配かけてごめんね。」
ああ私はちゃんと笑えているだろうか。
下手くそな笑顔になってる気がする。なんだかとっても不安になって、然り気無く顔を隠すように俯いた。
ーー優しい子。
けれどその優しさを向けるべきは、私ではない。
その想いは受け取れない。
そんな余裕はとうの昔に捨ててしまった。
でも嬉しい。ありがとう。