「何ボーッとしてるんだシリウス!!リオを助けに行くよ!!」
あの時、そう叫んだのはジェームズで。彼奴はリーマスの話を聞いて直ぐに、弾かれる様に駆け出して用具室の箒を取った。俺は茫然とその場に立ってることしか出来なかった。握り締めるピアスが自棄に重くて、足が鉛のように重かったのは覚えてる。
それ以外なにも考えることが出来なかった。
「リオって、なんなんだろうね」
勉強していたジェームズが、ポツリと横で呟いた。その言葉に、俺も、リーマスもピーターもペンを持つ手を止める。
「……なにが?」
「分からない」
「はぁ?」
「前の怪我とかあの体質とか、それもあるけど……。こう、なんて言うか、同じところにいるのに僕らとは違うところにいる気がする。」
「ジェームズ、言うことが難しくて僕分からないよ」
ピーターがそう言った。
「リオは時々、何処を見てるか分からないような目をするんだよ」
その言葉に、誰もが口を閉ざす。
俺自身心当たりがあったから、多分みんなもそう思ったんだろう。
「改めて考えるとさ、僕らってリオのこと全然知らないよね。本人が話してこないからって云うのもあるけど、何処に住んでるだとか、家族の事とか、ニホンには"マホウトコロ"っていう学校もあるのにどうしてホグワーツに来たとかとか、そういうの何も知らない。結局体質のことだってリーマスから又聞きしただけで、リオ本人から何も言われてないし。」
「多分……僕が狼人間だってことがなかったら、リオは体質のことも話さなかっただろうね」
リーマスはソファに寄り掛かり、ぼんやりと空中を見ながら呟いた。その言葉は、恐らく真実だった。
「なあどう思う?我が相棒パッドフット」
ジェームズが羽ペンで俺を指してきた。必然的に他の二人の目も俺に集まり、どうも居心地が悪くて顔を背ける。
「さっきから一言も喋ってないけど?君。」
「…………別に」
「なら言わせてもらうけど、君、あの事件からリオのこと避けてるよね?責任でも感じてるの?」
「っ、」
「僕は責任なんて感じる必要ないと思うけどね。むしろ、悪いのはリオだ。体質のこともピアスのことだって、何も言わずにシリウスを利用した。もし知っていたら君は外さなかっただろう?」
ジェームズはくるくると器用に手先でペンを廻している。
「君らしくないね。ウジウジと溜め込むなんて」
「溜め込んでなんかねぇよ。ただ……」
「ただ?」
「俺らがもっと強ければ……あいつは、あんな事しなくて済んだんだ……」
あの時、俺らと戦い続けることより一人で逃げた方がいいとあいつは判断した。それはつまり
「そうだね。あの場で僕らはリオにとって【足手まとい】だった。」
"足手まとい"
そう理解した瞬間、俺は何も考えられなくなった。内蔵が鉛になったんじゃないかって思うほど重くて、足が床に縫い付けられたかのように感じた。
あいつに対して怒りも沸いてる、責める気持ちだってある。でもそれ以上に、グルグル身体中を這い廻る、この言い様のない感情に吐き気がしている。
「だからさ、シリウス。僕に名案があるんだけど」
俯く俺の肩に手が乗った。顔を挙げると、ジェームズがいつもの悪戯が思い付いたような笑みを浮かべている。
「名案……?」
「そう。これは僕らの魔法技術も上がるうえ、リオの事だって知れる名案さ!!!」
ジェームズのニヤリとした口元から、その"名案"を聞いた俺とリーマスとピーターが、口を揃えて「はあ!?」というのは直ぐの事だった。