高野理央はこの世界の住人ではない。
彼女は、気づいたら禁じられた森に放り出されていた。それ以前の記憶は曖昧で、というか考えるより前に森の魔法生物達に襲われ、ダンブルドアに保護された。
そうして自身の置かれた現状に悩み、苦しむも、彼女は答えを見つけ、その際にねだった一つがこの家だった。
こじんまりとした、ごく普通の一軒家。ところがどっこい。ドアを開けると広い玄関ホール。廊下をぬければでっかいソファーとテレビが備わったリビング、大理石を使用したオープンキッチン、その隣の扉を開ければジャグジー付きの大浴場が。2階は自分用の寝室の他に、空き部屋が3つ。おまけに地下には特製の修行部屋。
全くもって外観と内装が伴わない。
これこそ魔法クオリティー。
ちなみに資金の出所は敬愛なる校長のポケットマネーである。
「みんな~ご飯出来たからおいで~」
長期休みに入り、お泊まり会初日から早一週間。最初は理央の家に驚いていた仕掛人達も今ではなんのその。リリーとセブルスに至っては今さらである。
「今日のメニューは?」
「さばの味噌煮とご飯、味噌汁、卵焼き」
「ミソニ?」
「俺チキンが食いてぇ」
「唐揚げか~。じゃ、気が向いたらね」
此処に来てから各々が自由に学び、休み、遊んでいた。リリーとセブルスは魔法薬を中心に、魔法薬学が苦手なリーマスもそれに参加。ジェームズとシリウスは専ら防衛術、時おり理央に決闘を申し込むが今のところ全敗中。ピーターは理央に防御メインの防衛術を習っている。家主の理央は家の家事をメインに行い、空いた隙間時間で皆に混じっていた。
「ん!美味しい。リオのニホンショクはとっても美味しいわ」
「じゃあリリーも明日は一緒に作ってみる?」
「ええ、勿論!」
「あぁリリー!!僕にも君の愛情の籠った食事を食べさせてゲフッ!」
「煩いわよ!貴方はナットーでも食べてなさい!!!」
「ふん、食事中くらい静かに出来ないのかポッター」
「はい喧嘩しない。したら二人とも明日の朝食は納豆オンリーだから」
ちなみにこの中で納豆を食べれたのは一人もいない。ピタリと動きを止めたジェームズとセブルスは大人しく食事を再開させた。
夕飯を食べた後は当番制で皿洗い、その後は順番にお風呂に入る。就寝前は全員が気ままに過ごした。 テレビを見たり、課題をしたり、お喋りしたり。だから、その日がいつもと違うと理央が感じたのは入浴後。リビングに全員が集合し、リーマスが紅茶を入れていて、ソファに一人分ぽっかり空いた席を見たときだった。
「やぁリオ。一緒に紅茶でもどうだい?」
ジェームズがやたらいい笑顔で、招き入れる。
理央は素知らぬ顔だった。
別に驚くことではない。誘った時から予想していたし、元よりそのつもりだった。
「ありがと、で、何が聞きたいの?」
率直。
「君が隠していること、全部」
ジェームズも、また。
「また随分抽象的ねぇ…」
「君は好きだろう?こんな言葉遊びが」
「なにそれ」
「ねえ、あの時怒ったのがリーマスだけだとでも思っているのかい?」
ジェームズの声色が変わった。彼にいつもの飄々とした笑みや挑発的な視線はなく、ただ静かな怒気を含んだ瞳をしている。理央は、そんなジェームズの顔を見て、バツが悪そうに視線を下にした。
「僕も怒ってる。君が無茶をしたことも、心配かけたことも、シリウスを利用したことも。」
「……」
「…ジェームズ…」
「君はなにも知らないシリウスを利用した。訳を知ったら傷つくことを分かっていた筈なのに。ーーーリオ、君は僕の親友を傷つけた。仕返しに、今すぐに君に呪いの一つや二つかけてやりたいよ」
「………ごめんなさい」
「…謝る相手が違うんじゃないか」
ジェームズは淡々と理央を責める。その光景を見て、いつもの逆だとリリーは感じた。
「シリウス…ごめんなさい」
「っ、……………いや、もういいよ」
「おや?パッドフット、それだけでいいのかい?あれだけ凹んでいたんだ、もっとリオにーー」
「ジェームズ、もういいって言ってるだろ」
「…失礼。よかったね、リオ。我が相棒は今ので君を許したらしい。僕は違うけど」
「………」
「…リーマスから聞いただけだ。僕は、僕らは君から何一つ言われていない。そんな状態で、僕は君を許すことなんて出来ない。」
「それは…そうだね」
「話してほしい、リオ」
長い夜が、始まる。