グラスには氷たっぷり、1/3までウイスキーを注ぎ、あとは炭酸。マドラーで数回混ぜれば完成。
つまみは枝豆。そこがナッツではないのは、単なる好みだ。ハイボールにお洒落さは求めてない。
一口飲んで息を吐く。時計を見ると、時刻は午前2時を回ったところだった。皆に話を終えたあと、私はどうしても眠ることが出来ずこうして起き続けてしまっている。未成年飲酒はご愛嬌。今更だ。
「……なんだか、なぁ〜…」
独り言が予想以上に響いてしまった。あらやだ恥ずかしい。センチメンタル?なんて、自身を小馬鹿にするように笑おうとして、失敗。
らしくもなく沈んでいる。そう自覚した。
途中まではよかった。
ピアスのことや、体質のことを話しているまでは。
"「リオはマホウトコロにはどうして通わなかったんだい?」"
この質問から、ダメだった。
"色々あってね、色々って?、色々だよ。それは話せない、リオは家族と仲が悪かったりするのかい?、え?''
"「不躾な質問だったらごめん、でもそうなのかなって。君は休暇中、家には帰らないだろう?だから家族には会いたくないのかなって。」"
バツの悪そうなジェームズの顔。横を見るとリリーが不安げに此方を伺うように見ている。ああそうか。彼女もこう思っていたのかと、その時気づいた。
するとなんだか苦しくなって、本当にスルリと、何も考えずに言葉を吐いてしまった。
"「そんなわけない。会いたいよ。」"
"「ならどうして」"
"「でも会えない。会いに行けない。きっともう私の家族は私が死んだって思ってるんじゃないかな。」"
"「え……」"
"「失踪して何年くらいで死亡届って出るんだろうね〜。分からないけどさ、お父さんもお母さんも妹もきっと諦めちゃってると思う。笑っちゃうよね、私、こうして生きてるのに。」"
生きている、筈なのに。
一度吐き出した言葉は止まらない。下手くそな笑顔の私に対して、皆の表情はどんどん曇っていく。当たり前だ、こんな内容。やめろやめろ止まれ止まれ私の口。こんな顔をさせていい筈がない。知らなくていい、分からなくていい。何も知らないままでいて欲しい。ほーら、落ち着け私。心が荒ぶってるぞ私。吸って、吐いて、そう。いつも通りに。
と、まあその後はなあなあに。
いつも通り何食わぬ顔で話を切り上げて、その場はお開きとなった。
そうして皆は寝静まり、私は絶賛反省中というわけだったのだが。
「……随分と早起きだね。オハヨ、シリウス」
「…偶々目が覚めたんだよ。」
背後に気配を感じて、振り返らず声をかける。
近づいてきたシリウスの手元には暖かいティーポットとカップが2つ。
シリウスは紅茶注ぎ、これまた優雅な所作で、カップを私の前へと置いた。
飲めということなのだろう。
「……ん。あったかくて美味しい…」
「…俺が淹れたんだから当然だ」
「ふっ…そうだね」
静かだった。
その一言だけ、あとは何も言わずシリウスは隣に座り紅茶を飲んだ。机の上のアルコールにも触れず、私に何かを言うこともなく。ただずっと隣に座っていた。
横目に見える表情はいつも通り、ただハンサムな顔だなあって思うくらいで。
ほんの少し、涙が出た。