うーん、やっぱり私モテ期が来たのかもしれない。
青空を見上げて、ぼんやりと思いふけてみる。
膝の上で眠る、スリザリンの少年。
俗に言う、膝枕というやつだ。
遡ること数時間前。
「あ」
「!……チッ」
休日の昼下がり、人気のない茂みの一角で互いに顔を見合わせる。
あ、この人知ってる。
「……マシビエール?」
「マルシベールだ。穢れた血の分際で俺を呼び捨てにするな。」
そうそうマルシベール。セブルスと仲のいい子、そのくらいしか知らないけど。実際これまで話したことなんてなかった。
大抵え、え、エイブリー(だっけ?)とつるんでいるイメージがあるけど、こんな所に一人でいるなんて。
「そう、こんにちは。こんな人気のないところで何してたの?」
「貴様には関係ない」
こんにちはも言えないのか、コイツ。
「そう、私はちょっと一人になりにきたの。集団行動は苦手でね」
レイブンクローの王子様の一件のせいか、最近女子に囲まれる機会が増えたのだ。純粋な好奇心は勿論、嫉妬や妬みまがいの感情を束になって受けることだってある。まあ直接危害が加えられたってわけじゃあないけど、精神的にね、ちょっと疲れたなーって思う時もあるのよ。若い子のエネルギーにやられちゃうってやつ?あれこの台詞年寄りみたいだな。
「……貴様の都合なんてどうだっていい」
マルシベールは典型的なスリザリン生といった態度だった。眼鏡かち割ってやろうか。チョモランマ級のプライドで構成された傲慢な態度、自分達がこの世で一番偉いと思ってそうな、ほんとあの自分で帝王とか言っちゃう厨二病拗らしたゴミ屑ハゲクソ野郎みたいな……ゲホンゲホン。あら失礼。別に怒ってないわよ?こう見えても大人だもの。
「あはは、そう?…ってねぇ、顔色悪いけど大丈夫?」
「ッ、穢れた血が僕に触れるな」
まるで汚いもののように、思いっきり振り払われた。
………………。
ベタベタベタベタベタベタベタベタ
「ッ、貴様なにをする!!!」
「いやなんかムカついたからすげー触ってやろって思って。」
「おい!どこまで触って、!!ふざけッーーっ、う、!…」
「え、わ、ちょ、あんた大丈夫!?」
「黙れっ、、っーー」
「…悪ふざけしてごめんなさい、体調が悪かったのね。」
地面に膝をつき、苦しそうにえずくマルシベールの背中をさする。
今度は振り払う気力がないのか、されるがままだった。
ある程度収まったところで消失呪文をかける。地面に吐き出された汚物はあっという間に綺麗になった。胃の中のものを出して、少し楽になったのか、マルシベールが覚束無い視線でレンズ越しにこちらを見た。
「お、前…」
「…少し寝て休んで。ここにきたってことは医務室には行きたくないんでしょう?」
理由は分からないけど、野暮なことは聞くまい。
抵抗される前に杖を振るった。
で、冒頭に至る。
そよそよと心地の良い風が吹く。
この分だと午後の授業はまるまるサボりだなぁ。
空を見上げた後に、膝上へ視線を落とす。
膝の上ですやすや眠るマルシベールは、それは綺麗な顔をしていた。やっぱ凄いよな、ハリポタ世界。あっちもこっちも美男美女なんだもの。リリーの髪も綺麗だけど、この子も綺麗な銀髪してるなぁ。こうして寝てるとごく普通の少年なんだけどなぁ。この子も将来死喰い人になるんだよなぁ。
「…………ん、……」
「あぁ起きた?おはよう」
「!!」
「はい眼鏡」
膝の上で勢いよく起き上がったマルシベールに、割れないようにと(勝手に)取った眼鏡を渡す。唖然としている彼を置いて、今度は私は立ち上がった。「じゃあね」と軽く告げ、特に返事が返ってくるわけでもなく、さっさとその場を離れていく。
こうして、奇妙な会合は幕を閉じた。
談話室に戻るや否や、授業をサボったことにリリーからの雷が落ちたことは言うまでもない。