あくる日の休日。
1人の女と1人の男がそこにいた。
「お師匠、この屋敷お化けがでそうです。」
「貴様…、その呼び方はやめろと言ってるだろう。」
「じゃあムディちゃんで」
「…………………やめろ」
「じゃあお師匠で」
「………」
「お師匠、私の警戒網に引っかかって紛らわしいんで殺気出さないでください。」
うっかり殺気を漏らしていたお師匠こと、マッドアイ•ムーディ。
理央がこの世界に来て2番目に会った人物だ。そして理央の魔法を教えた張本人でもある。これまで幾度となく彼女に魔法をかけ、時には大怪我、時には三途の川に足を入れかける程に鍛え上げた。それでもこの笑顔と軽口は変わらない。今も昔も、理央は理央のままだった。マットアイは思う。彼の周囲はよく彼を'イカれている'と表現するが、彼にしてみればこの自称弟子の方がよっぽど’イカれている"。
「二手に分かれて探しましょう。あぁ見つけても指輪に触れちゃダメですからね」
「…ふん、若造の呪いなどどうとでも…」
「あー、ダメですって。ダンブルドアそれで死んでますし。」
理央は極めて重要な未来をケロリと口にする。
だがそれは必要なとき、必要な部分だけであって、詳細は伝えられない。それも、いつものこと。
「……わかった。」
彼女はなによりも己の知る情報が漏れることを恐れているのだ。「自分以外に1人が知ったことは、それはもう秘密じゃないんですよ。」そう言われて、マッドアイ自身記憶を消されている。
閉心術を習得する際、彼女の記憶を彼も見てしまったからだ。
マッドアイは思い出す。初めて理央と会った日を。
私に魔法を教えてくださいーーーそう頭を下げる少女がいた。
妙な雰囲気があった。子供と呼ぶには些か違和感がある、まるで中身と入れ物が合っていない、そんな印象を持たせるほどの。
「……ありましたね」
「…あぁ」
「じゃ、壊しますよ……えいっ!」
出会ったその日からマッドアイと理央は修行の毎日だった。
魔法のコントロールを教え、呪文を教え、防衛術を教え、閉心術を教え、そうして最後の方はおよそ修行と呼ぶには生温い、拷問を行った。理央がそれを望んだからだ。
「あとはレプリカを置いて…うん、これでよし」
「終わったのか」
「はい!これでこの指輪は大丈夫です。あー、よかった。」
ありがとうございました、お師匠ーーー理央は笑う。
あの頃と同じ笑顔で。
「あ、でもまだ闇の陣営皆殺し大作戦は続くんで協力お願いしますね!」
「………物騒な作戦名だな。」
「また文句、…ごほん。じゃあ世界救出大作戦とかにします?…うーん、でもそれだと微妙ですよねぇ、なんか正義の味方みたいになっちゃう。」
高野理央。グリフィンドールの6年生。
軽薄な態度と口調で一見すると普通に見える、歪でイカれた少女。
それがマッドアイの見解だった。
すみません、ストックが切れたのでまた少し更新が遅れます。
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