「どうしたんですか。」
「んー、」
「頭が重いんですが」
「そっかー」
生返事だ。
レギュラスはそう思いつつ、人の肩を勝手に借りて、唸る少女に視線を向けた。
昼下がりのベンチ。いつの日からか二人の定位置となったそこ。
別に約束するわけでもない。ただ、ふとした時にここにきて、タイミングが合えば顔を合わせる、そうでなければ1人で過ごす。それがレギュラスと理央のいつもの流れ。
ここは人の気配がなく、静かで、穏やかだ。本を読むのにちょうどいい。レギュラスは大抵本を読んでいるが、理央は本を読んでいたり、何か食べていたり、何かを書き込んでいたりする(japaneseだから書かれてる内容は分からない)。今日はそのどれでもなかった。
唸っている。と思ったら空を仰ぐ。人の肩に頭をグリグリ押し付ける。
奇行だ。それもいつもより酷いほうの。
「そういえばマルシベールと何かあったんですか?」
「!」
分かりやすく理央の身体が跳ねた。
これにレギュラスは驚いた。彼女は別に寮や家柄なんて気にしない、だから「あ、うん。実はね〜」なんて返ってくると思ったのに。
「なんで…」
「…彼に聞かれましたので。貴方のことを。」
「…そっか」
理央はそう言って、再び空を見上げた。
一体何があったのだろう。マルシベールに聞かれたのは理央がどういう人柄で、何が好きかくらいだけだ。質問の最中の彼は居心地の悪そうな表情で、あまり良好な関係とは思えなかった。この様子の理央を見ても、そう思う。ただいつもに増して奇行が激しい彼女に、これ以上何を聞いても望む答えは返ってこなそうだな、そうレギュラスは思った。
「レギュラス、私ね、正義の味方になりたいのかもしれない」
「は?」
ついに言動までおかしくなったか。
「でもね、やっぱりなれないの。多分それをしたら死んじゃうから。そういうもんでしょ?ナルトはネジ兄さん、承太郎は花京院だし、BLEACHに至っては沢山いすぎて泣けるっ…!」
「…でも、つまりそういうことなんだよ。やっぱ尺とか見せ場とか変な情とか、そういったものは基本ダメなんだよ。駄作か、打ち切りでいいんだよ。それが私の幸せだもん。」
何言ってるんだ、この人。
言ってることの半分も意味がわからない。
レギュラスは考えることを放棄し始めた。
レギュラスからなんだこいつ、みたいな視線を受ける当の本人は未だにあーだかうーだか唸っている。
一通り唸り終えた?理央は、何故かちょっと泣きそうな顔をしていた。
「ねぇ、レギュラス。私はいつでもあなたの味方よ。」
「え…」
「だからもし、趣味の悪いペンダントを壊したいなぁとか捨てたいなぁとか思ったら迷わず私に声かけてね。一人でやろうとしちゃダメよ?」
なんですか、それ。
そう口にする前に理央はレギュラスの肩に頭を置いた。少し、震えている気がする。
「どうしたんですか。」
「んー、」
「頭が重いんですか」
「そっかー」
「…これは貸しですよ」
レギュラスはそっと彼女の頭に触れた。
「…ありがと、レギュラス」