7話 バジリスク殲滅作戦①
5年生になった。つまり今年はOWL試験、通称フクロウ試験がある。まいった、本当に参った。天文学はまだ良い。普段のやる気/Zeroからほんのちょっぴりやる気を出せば良いのだ。なんとか赤点スレスレくらいはいけるだろ(慢心)。問題は魔法薬学、なにを隠そう大の虫嫌いな私。夏場にGが出ようものなら阿鼻叫喚、ゴキジェット片手に戦争に駆け出した過去は懐かしい。そんな虫を分解したり刻んだりすり潰したり……拷問か。クルーシオ受けた方がよっぽどマシです。魔法薬学を習い始めて早5年、ちっとも慣れないし慣れたくないと思っている。
閑話休題。
「そんなわけでフォークスと組分け帽子を貸してください」
「なにがどういうわけなのか分からんのう。理由を教えてくれ、リオ」
「害虫駆除に使います」
「ふむ。駄目じゃ」
校長室を追い出された。
「あの糞爺~」
「リオ、機嫌悪いわね。」
そんなリリーの言葉を余所に、教員テーブルの真ん中で夕食を食べるダンブルドアに視線を向ける。こっちには目もくれずマクゴナル先生と談笑する姿がなんとなく腹立たしい。この食えない爺さんめ。私も食えない奴なんだろうと思うけど。
「それにしても、毎年この日はカボチャばっかりだね」
「そうね、流石に口の中が甘ったるいわ」
「カボチャの煮物とか天ぷらなら甘くないんだけどね〜」
「ニモノ?テンプラ?」
「あー日本…ジャパニーズフードだよ。」
そう、今日はハロウィーン。合法的に悪戯が許される日、そうなれば黙っていないのが我らが悪戯仕掛け人達だ。
朝から仕掛け人達はホグワーツ中にありとあらゆる悪戯を仕掛け、そのせいでリリーは一日中ピリピリしている。今年から監督生になった彼女はグリフィンドールの問題児に手を焼いているようだった。
「……ねえリオ」
「ん?」
「ポッター達、テーブルにいないわ。何か知らない?」
「さあ?」
素知らぬ顔で目の前のカボチャパイにかぶりつく。それをジト目で見てくるリリー、怖いですリーマス助けて…あっ目逸らした。
ちなみに男子の監督生はリーマスがなった。その為か流石に実行部隊には参加していない、作戦会議には参加していたのにね。ん?なんで知ってるかって?HAHAHA聞いちゃいけねえぜ。
ーー暫くして上空に現れた巨大なカボチャランタン。それはみるみる膨れ上がり、轟音と共に破裂したところで、部屋中に降り注いだ淡いオレンジ色の光の粒。その幻想的な光景に生徒は勿論、教師陣まで感嘆の声をあげていた。リリーもこれには怒りよりも感動が勝っていたようで、笑顔を浮かべている。後でジェームズに教えてあげよ。「「「Happy Halloween!!」」」と叫んだ仕掛け人達は、大成功の悪戯にガッツポーズを決めていた。ーー子供らしくて微笑ましい。幸せな光景だなあ。
うって変わって静まり返った夜、私は今校長室の前にいる。既に耳のピアスは外していて、目くらましの術・隠密行動・気配察知をかけている。
ダンブルドアには止められた。でも、どうしても私は今夜行動に移したかった。合言葉を告げ、校長室へと入る。当然ながらダンブルドアは此処にはいない。今頃ぐっすり眠っているだろうーーーあのランタンが爆発すると同時に、彼のかぼちゃジュースの中に睡眠薬を入れたのだ。あの稀代の魔法使いも、まさかマグル式の薬の味や匂いに気づけるとは思えない。
「おいおい。生徒がこんな時間になんのようだあ?」
「こんばんは、眠ってるところ悪いけどちょっと付き合ってね。フォークスは?」
「ああん?フォークスは寝室でダンブルドアと寝ているぜ。嬢ちゃん、俺らの貸し出しは止められているんじゃあなかったか?」
「ええ。だから朝にはちゃんと返すわ。ーーどうしてもグリフィンドールの剣が必要なのよ」
流石にダンブルドアのいる部屋に侵入して、バレない自信はない。仕方ない、フォークスは諦める。要は攻撃を受けなければいい話だ。
組み分け帽子を手に入れ、次に向かったのは大広間の2階トイレーー嘆きのマートル、そして秘密の部屋の入口がある場所。
バジリスクを倒すには、今夜しかない。
蛇語を勉強して1年ちょっと、ゆっくりとした発音ならばなんとか聞き取れるレベル、発音に至っては「開け」「閉じろ」だけ完璧になった、他は…齧る程度に。そうして秘密の部屋へ行く手段を手に入れ、いつ決行するかを考えた時、彼ら仕掛け人の顔が浮かんだ。ーー寮を抜け出し歩き回る中で、一番厄介なのが忍びの地図だ。私の居場所が彼らに筒抜けになる。しかも彼らすら知らない秘密の部屋だ、地図上でどう描かれるのかすらも分からない。彼らに不審に思われることも、勘付かれるのも避けたかった。ならば、彼らが地図を見ない、もしくは見れない状況化で動かなくてはならない。そこで思い至ったのがハロウィンだった。毎年彼らはこの日が近づくと、毎日のように夜更かしして、当日が終わると全員その日は早くに寝る。眠っているならば地図は見ない、つまり確実に気づかれることなく秘密の部屋に行けるのは今日しかなかった。
………それなのにあの爺さんは。
分かっている。あの人はただ私を心配してくれているだけ。でも、でもですね、私も、あなたを心配しているんですよ。
「こんばんは、マートル」
「ん………、なあにリオじゃない。こんな夜更けに……どうしたの、あんた」
「え?」
「こっわーい顔してるわよ。初めて見たわ、あんたのそんな顔」
マートルとは、少し前から良好な友人関係?を築いている。こんなにトイレは暗いのに、普段の私とはかけ離れた表情に気づいたようだった。私はそれに軽い笑みを浮かべて、マートルに向き直る。
「あのね、マートルにお願いがあるんだけど」
「はあ?何よいきなり」
「今夜見たこと起こったことは誰にも話さないで。あなたは今日私に会ってないし、何も知らない、何も見ていない。」
「何?また悪さでもしようって?あんた悪戯仕掛け人と仲がいいらしいわね」
「ふふっ、まあそんなところ。それで朝まで私がここに戻らなかったら、明日の朝ダンブルドアに知らせて欲しいの。」
「話すなって言ったり知らせろって言ったり、ワケ分かんないわよ。あんた」
「お願いね、マートル」
フンッと鼻息を荒くして、彼女は奥の個室へと入ってしまった。彼女はなんだかんだで優しい、これでもし”万が一”があっても大丈夫だろう。
手に持つ帽子に視線を向ける。頭で強く「抜けろ!」と念じると硬い柄の感触が伝わった。
『開け』
蛇語で口にすると、重い音を挙げて開かれた秘密の部屋への入り口。
深呼吸を一つ。右よーし、左よーし、ピアスよーし、グリフィンドールの剣よーし。
ーーーー準備は万端!!そう意気込んで私は穴へと飛び降りた。