突如河合荘に訪れたのは、水明技術高校の学生寮の一つ、"さくら荘"に住む学生さんだった。
「いつの間にこんなの計画してたんですか?」
さくら荘の住人の一人、神田先輩が出会いがしらにラリアットを決めて来た上井草先輩に聞いている。
「ふっふーん♪聞いて喜ぶがいいよこーはいくん!なんと河合荘にいるみんなは"銀河猫ニャボロン"に来てくれてたんだもーん!」
「え!?ほ、本当ですか⁉︎」
「あー、今日行った学園祭でやってたゲームのこと?あれ凄かったよな〜」
「うんうん、彩花、ゲームのことよくわかんないけど、高校生なのにあんなゲーム作れるなんて尊敬しちゃな〜」
麻弓さんがそう答えて、彩花さんががゲームを褒めると神田先輩がもじもじとし始めた。
「お、こーはいくん照れてるな?私も嬉しいぞ!直に感想聞けると私の嬉しいセンサーがビンビンに反応してるもーん!」
「え⁉︎あれって先輩達が作ったんですか?」
俺は驚いてついそう聞いてしまった。
「そうだな、脚本は俺、プログラムは龍之介で声優が青山さん、美咲にましろちゃん、リタさんがアニメイラストをやって、ディレクターとしてみんなを纏めたのが空太だ」
メガネをかけたイケメンの三鷹先輩がわざわざ説明してくれたのだが、この先輩、何故か服の襟にキスマークがついてる。そういう柄なのだろうか?
「ん?これは本物だよ?」
視線がそこに向かっていたのに気づいたのか三鷹先輩は笑顔で答えてくれた。…え、本物?
「けど何処で知り合ったんですか?会場いっぱいにお客さん来てましたけどお客さんに関わるようなことなかったと思うんですけど…」
「私もー、今日客が来るって知らなかったしこいつらとも会ったことないぞ?」
ポニーテールが特徴的な青山先輩が思案顔でそう聞くと麻弓さんもそれに手を上げた。
そして、それに答えたのが意外にもシロさんだった。
「えーと…ちょっと恥ずかしい話になるんだけどね」
「はい」
「警備さんに職質受けちゃって、そこに美咲ちゃんが話しかけて来てくれたんだよ」
「シロさんスイコーでも職質受けてたんすか⁉︎」
なんというか、意外というかむしろしっくりくる理由だった。
「その後に住子さんが迎えに来てくれてね」
「巻き込まれるのは嫌だったもの、うふふふ」
住子さんも何気に酷い事を言っている。
「いやぁ、ほんとありがとね美咲ちゃん。何故か警備のおじさんが美咲ちゃんをみて逃げるように何処か行っちゃってさ」
シロさんの流石の変態っぷりもアレだが、上井草先輩の変人度は警備員すら遠のけてしまうらしい。
「シロろんなんか紙袋被ってて面白かったから声かけてみたんだもーん!」
理由も類を探していた変人だ。
「空太、ご飯」
「ん?あぁ、そういえばそうだったな…あまりの衝撃で腹の虫も鳴きやんで忘れてたわ」
「私は忘れてないわ」
「椎名は食いしん坊だな」
「今日はピンクよ」
「誰がパンツの色を覚えていろと言った⁉︎」
神田先輩となにやら漫才をしているのが椎名先輩だ。まるで人形のような人だが何処か抜けている節もある。神田先輩の彼女なんだろうか?
「神田先輩、神田先輩」
「ん?あー…えっとうさ君だったか?
どうかしたのか?」
「神田先輩と椎名先輩って付き合ってるんですか?」
「な⁉︎お前何を!」
聞いていてふと気付いてしまったのだが、こんな話をして麻弓さんが反応しないだろうかとチラと後ろを見るとマリーちゃんを抱いてにこやかに笑っている麻弓さんがいた。
これはやばい
「あ、やっぱいいで…」
危険なのでこの話を終わらせようとすると椎名先輩が答えてしまった。
「空太は私の飼い主よ」
「…飼い主?」
「何言ってんだ椎名⁉︎」
「空太は私の飼い主よ」
「聞こえなかったわけじゃないからね⁉︎」
「か、神田先輩…」
「い、いや違うんだ!これには訳があってだな?まずはそれを聞いてから…」
「空太」
「…なんだ?」
「二人の時はましろって呼んで」
「今この状況でそれ言ったら余計ややこしくなるからやめてね⁉︎」
どうやら二人は行ってるところまで行っているらしい。こんなのを見せられて麻弓さんは大丈夫なのだろうか、そう思った矢先肩を優しく叩かれた。
恐る恐る振り返ると麻弓さんが何故か憐れむような目で俺を見ていた。
「まあなんだ、うさ…一年しか歳が変わらないのにこんなに大差つけられて辛いのもわかるが、その…元気出せよ?」
「おいどういう意味だ」
「お前は寂しく一人エロ、神田は楽しくペットとエロ」
「韻踏んでんじゃねえ⁉︎」
「ちょっ⁉︎違うますからね!!?俺としい「二人の時はましろ」…ま、ましろはそんな関係じゃ…!」
「神田君…不潔…」
「…うさくん近寄らないで」
「「違うんだーーーーー!!!!」
「お腹空いたわ」
河合荘に二人の男子が悲痛で泣き、誰かのお腹が可愛らしくクゥと鳴いた。