誤解を解けぬまま青山は河合荘の管理人である住子さんの手伝いに行ってしまい、美咲先輩と仁さんもそれに続くように居間から出ていった。
「ちょっ!?だから違うんですって先輩!」
「うさくんも男の子だもんね」
「女子から言われて傷つく台詞べすと8に入る事を言われるなんて!羨ましいようさ君!」
「あんたはちょっと黙っとれい!!!」
河合先輩に精神的ダメージを受けたうさ君に何故かシロさんが羨ましそうにしている。
それを見て俺は思わずうさ君に共感してしまった。
(あぁ…こいつも苦労してるんだな)
と。
「そんな苦労してるんだなって同情するような目で見ないで!」
どうやら顔に出ていたらしく、それが余計にうさ君にダメージを負わせたらしい。申し訳ない。
ふと視線を外し赤坂達の方へ向けるとなにやら不穏な空気が流れていた。
「やだ〜可愛い〜。こんなに可愛いのにゲーム作れるなんて彩花尊敬しちゃうな〜、メアドとか交換しない?」
「結構ですよ?龍之介には私がいますから、それに龍之介があなたなんかに返信しませんよ。どうせメイドちゃんに阻まれて終わりですから」
「私〜、そういう器用な人って素敵だと思うんだよね〜年下も可愛いみたいな?」
「あら、それは自身が素敵だと言ってるんですか?そんなゴテゴテのメイクして、女の顔はキャンパスと言いますがあなたの場合土木建築でしょう?」
「うぇ〜ん、なんだかこの人怖ーい。赤坂くーん助けて〜…誰が土木建築だこの無駄乳(ボソッ)」
「そこからは近寄らないでくださいね?ここから先は私しか入れない龍之介のパーソナルスペースですので、後、自身にないモノを人が持ってるからって妬むのは心の汚さの表れですよ?慎ましくてもいいんじゃないですか、パッドでも」
バチバチと言うよりはギスギスしている。龍之介が助けろと俺に視線を送ってくるがそっと視線をズラした。
「おいおい…なんだあいつら…女って生き物はなんでこんなにこわいんだよ…」
麻弓さんがそう言って二人にドン引きしている。
「なあ神田。メイドちゃんってなんだ?あの陰気そうな奴もしかして金持ちとか?」
「いえ、赤坂がつくった自動メール返信システムのことです。ちょっと待ってくださいね…」
麻弓さんがそう聞いてきたので俺は自分の携帯を取り出してそれを見せる。
「ほら」
『どうも初めまして!龍之介様に開発してもらった天才メール返信システム"メイドちゃん"です♪以後お見知り置きを〜』
それを見た麻弓さんは何故か引いていた。
「え、どうしたんですか?」
「いや、なんでわざわざメイドなの…?そういう趣味?」
そう言われるとそうだと思った。今みでは慣れすぎて当たり前だと思っていたがよくよく考えてみたらメイドである必要はなかったのではないか?
そう思い赤坂に視線を向けると睨み返されてしまった。
「どうでもいいだろう…これ以上詮索するようなら神田のPCの数学問題集のファイルを個人情報もろとも全世界に発信する」
「やめろ!というかなんでお前がファイルのこと知ってんだ⁉︎」
「神田は馬鹿か?ハッキング以外に何がある?」
「サラッと当たり前のように言ってんじゃねぇ⁉︎」
『空太様のファイルにはポニーテルとストレートロング、生足の傾向が主に見られます』
「余計なこと言わないで貰えるかな⁉︎」
椎名やリタからは変な視線を浴びているが、麻弓さんだけは慰めるように語りかけてくる。
「おいおい神田、そう恥ずかしがることじゃないぞ?うさの部屋なんて白付き無修正の巨乳本が山程あるんだから」
「ねぇよそんなもん!?」
「え?呼んだ?」
「あぁ悪い悪い、シロ付き無修正のエロ本か…うさは両刀使いだったな」
「あ、その話詳しく〜」
「違いますから!俺は普通ですので彩花さんは引っ込んでて…勝手に人の性癖決めつけるのやめてくれますか⁉︎後シロさんも呼んでないから引っ込んでて!」
「ちなみに俺はドSな女の子に縛られたいなぁ…あ、18歳未満はNGだけどね?」
「「誰もあんたの性癖なんて聞いてねぇよ⁉︎」」
「おお〜!お前ら息が合うな!ツッコミ役が二人もいるといじる方も楽しいな!」
「うさ君が二人いる感じ〜♪空太君は変処理二号だね♪主にシロさんと麻弓さんの」
「おい、今なんで私入れた?」
変処理という謎のワードが出てきた。なんだろうとうさ君に聞いてみようと思ったら真っ青な顔をして首を横に振っている。
まるで聞かないでくれと言わんばかりに。
「さくら荘の住人も変人が多いからな、それを対処するのが神田の役目だ」
赤坂が当たり前のように何か言っているが、別に俺は対処したくてしてるわけでもなんでもない。対処しなければならない状況に陥るから対処しているのだ。
俺が「お前もだぞ」と赤坂に言うと聞こえていなかったのかPCを取り出して何やら作業を始めた。それも赤坂らしいと思い、恨み半分で後はリタに任せると次は椎名が近寄ってきた。
「空太」
「ん?なんだ?」
「生足がいいの?」
「ぶふっ⁉︎だから何言ってんだお前は⁉︎」
「ポニーテール…」
「いやだからその話はもう…」
「七海のこと?」
「は?なんでそこで青山が出てくるだよ?」
「…知らない」
「え?ちょっ椎名?」
「空太のバカ」
椎名はムッとしたままリタの方へ向かってしまった。
「なんなんだよ…」
「生足ねぇ…」
「へ?」
ボソッと漏らした独り言に重なるように後ろから重々しい声が聞こえた。
恐る恐る後ろを見ると、そこにはエプロンをきて鍋を持った青山がいた。
「ど、どこから…?」
「数学問題集のファイル辺りかな?」
かなり前からだったらしい…なぜ気づかなかったのだろうか。
青山の笑みに段々と影が深くなっていく。
「あ、青山さん?」
「神田君…あんまこっち見んてもらえる?」
「い、いや違う…」
「変態」
「………」
もう声にもならなかった。青山が完全に冷めきった目で見ている。
「後、ポニーテールの画像は消しといてね」
「へ?えっと…それは…」
「消、し、と、い、て、ね?」
「は、はい…」
今まで見たことも無いような青山の笑顔に俺はこくこくと首を縦に振った。
翌日、青山が赤坂に依頼して俺の数学問題集のファイルは消されていたのは別のお話だ。