魔法少女リリカルなのはStrikerS ~困った時の機械ネコ~   作:エルン

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第39話 『斯斯然然』

 

 

 

 

 

 

「ネーコさんっ」

 

 

 はやてから説明を受け、そこにいた全員が気がつく間に歩く順番が入れ替わり、コタロウがいつの間にか先頭になっていた。

 そして、トレーに食事を載せたコタロウが窓際の二人席に着き「いただきます」を言おうとしたところ、スバルに呼び止められた。

 

 

「はい」

「こっちで一緒に食べましょー」

 

 

 新人たちの座る席へと誘われる。

 ぽんぽんと席を叩かれスバルの隣にトレーを置き座る。

 

 

「いただ――」

「ネコさん」

 

 

 彼女は大きな目をぱちくりさせて彼を覗き込んできた。

 

 

「はい」

 

 

 食事を遮られるくらいの近さなので、食べる動作を止めるため顔を上げてスバルと距離を取る。彼女は大きな瞳で単純な興味を示したときに見せる無表情さでコタロウを見ていた。

 ティアナやエリオ、キャロも彼を見るが、本人は気づいてないのか気にしていないのか目線をスバルから離さなずにいる。

 

 

「私を呼んでみてください」

「ナカジマ二等陸士」

 

 

 それほど疑問を持たなかったので即座に答えた。

 

 

『......』

 

 

 新人たちは無言のままじっとコタロウをみる。

 

 

「なんでですかぁ?」

 

 

 そして、一番に表情を崩したのは聞いた本人スバルであった。子どもが駄々をこねるように脱力のある声だ。

 

 

「何故、とは?」

「どうしてリイン曹長はリイン曹長で、私はナカジマ二等陸士なんですかぁ」

「ナカジマ二等陸士はリイン曹長ではありません」

 

 

 それは当たり前すぎる正論であるが、彼女からしてみれば不満が増えた。別テーブルでは、

 

 

「えへへへへ~。秘密です~」

 

 

 と、ヴィータ、シャマルに自慢と秘密を交互に表している姿ががみえる。シグナムとなのはが共に席を立ち、ヴィータたちと一緒にいるはやてとフェイトに「じゃあ、いってくるね」と会釈をすると、新人たちのところに近づいてきた。

 

 

「コタロウさん」

「はい。高町一等空尉」

 

 

 席を立ち敬礼をする彼を見て、眉を寄せて「はぁ」と息を漏らし「いってきますね」とだけ言うと、食堂を出ていった。そのときシグナムはコタロウと二言三言話をした。

 

 

「お気をつけて、いってらっしゃいませ」

 

 

 コタロウは彼女の背中に送り出す言葉を述べ席につく。

 

 

「では、いただ――」

「ネコさん」

「はい」

 

 

 不満げな顔をしているスバルの横にいるティアナが今度は彼の食事を止めた。

 

 

「別にな……かよくしようとは思っていませんけど……ここでもう長く一緒にいるじゃないですか」

「そうですね」

「私の、いえ、周りの人たちを名前(ファーストネーム)で呼んでもいいんじゃないんですか?」

 

 

 念を押すように私はいいんですけど。と語尾をつける

 

 

「それはある時から、自然とそうなると思います」

「でも、リイン曹長はリイン曹長って呼んでるじゃないですかぁ」

「それはリイン曹長がーー」

「ちょっと、スバル。アンタのその言い方ややこしくなるから!」

 

 

 スバルを遮りコタロウをじっとみて、

 

 

「聞いたところ、昨日までリイン曹長をリインフォース・ツヴァイ空曹長と呼んでたらしいじゃないですか」

 

 

 そのあと恥ずかしそうに瞳を左下に落としながら、

 

 

「も、もしネコさんがよかったら、そ、そろそろ私たちのことを名前で呼んでもいいんじゃないかな...って」

「......」

 

 

 そう言われて、彼はゆっくりと首を傾げた。

 

 

「私が、リイン曹長を昨日まで、リインフォース・ツヴァイ空曹長と...?」

 

 

 親指を顎に当て、コタロウは考えると「確かに」と頷いた。

 

 

「え、コタロウさん自分で気づいてなかったんですか?」

「リイン曹長の呼び方が変わったことに」

「はい」

 

 

 キャロとエリオの言葉にこくりとまた頷く。

 

 

「そういえば、昔トラガホルン両二等陸佐にも同じようなことがありました」

「……な、なんですか?」

「お二人と同居していたときのことです」

 

 

 今度はいただきますの後で淡々と話し始めた。

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

「苦しかってるじゃない! やめなさい!」

 

 

 ロビン・ロマノワは首を締め上げられているコタロウをジャニカ・トラガホルンから引き剥がしてぎゅっと抱きしめた。

 

 

「大丈夫、ネコ?」

「苦しいです、ロビン」

 

 

 首が胸かの違いでコタロウにとっては苦しさは変わらないようである。

 

 

「おい、ネコ!」

「けほ。なんでしょう、トラガホルン()()

 

 

 ロビンは彼から離れると、ジャニカの前に立ちふさがった。

 だが、声が届く限りはそれはたいした問題ではなくジャニカは声を大きく相手に届かせた。

 

 

「なんで、ロビン・ロマノワはロビンと呼んで、俺はトラガホルンなんだよ!」

「それはロビン・ロマノワはロビンで、トラガホルンさんはトラガホルンさんだからではないですか?」

「そうよ。あなた自分の言っていることに矛盾を感じないの?」

 

 

 ロビンはコタロウの言葉に語弊があることはわかりながらも彼に同意した。

 

 

「このやろう」

「なに?」

 

 

 睨み上げるジャニカにロビンは勝ち誇ったように彼を見下す。

 

 

「まさかお前ら……寝たのか?」

 

 

 この三人の住んでいる住居は三人が住むには十分は広さであり、部屋も何部屋かあった。ただ、寝室は二つしかなく、ひとつはシングル、ひとつはキングサイズのダブルベッドがおかれており、ダブルベッドにはいつもロビンとジャニカが寝ていた。

 

 

「何を言い出すかと思ったら、そんなこと」

「寝ましたよ」

『――っ!!』

 

 

 コタロウの発言に二人は驚く。そして、ジャニカよりロビンのほうが驚いたのだ。

 

 

(ネコが嘘を...?)

 

 

 さすがのロビンも一瞬動きが止まり、その隙を狙ってジャニカはコタロウに近づき胸ぐらを掴んで押し上げた?

 

 

「冗談にしては、タイミング悪く言ってくれるじゃないか」

「冗談ではありません」

「ネコ、びっくりしたけど私はーー」

「さぞかし、気持ちよかったろうなァ」

 

 

 魔力がひどくねじまがって練り上げられ、

 

 

「はい。たいへん気持ちよかったです」

「ネコ!?」

 

 

 その言葉に部屋の窓ガラスが衝撃ですべて割れた。

 

 

「手前ェ」

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

「あ、コタロウさん。今日のメンテについてお話が」

「わかりました」

「え! ちょ、ちょっと――」

 

 

 食べてる途中で止まってしまった新人たちに対し、食べ終わったコタロウはヴァイスと話をするために片付けようと立ち上がる。

 トレーの外にあるコップを戻し持ち上げようとすると、食べ残しはないはずなのに重みを感じた。重さを感じるところを覗きこむと、

 

 

「リイン、曹長?」

 

 

 死角になるところにぶら下がっているリインがいた。

 

 

「それから、どう、なったんです、か?」

 

 

 彼女を降ろすためにトレーを下げると、彼は再び口を開いた。

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

 ジャニカの瞳が小さくなり、身体に変化が起ころうとしたとき、

 

 

「昨日は早く帰れたこともあり、よく眠れました」

 

 

「……は?」

 

 

 ぷらぷらと彼に吊り上げられているコタロウはドスンと床にしりもちをつく。

 

 

「痛いです」

 

 

 お尻をさすりながら顔を見上げると間近にジャニカが覗き込んでいた。

 

 

「なに?」

「痛いです」

「じゃなくて、その前だ」

「昨日は早く帰れたこともあり、よく眠れました」

「……俺はロビンと寝たのか? ってきいたよな?」

 

 

 それにコタロウは(まばたき)きをする。

 

 

「トラガホルンさんは『お前ら、寝たのか』といいました」

 

 

 ロビンを見て、

 

 

「ロビンに確認を忘れていました。ロビンは昨日、眠らなかったのですか?」

 

 

 その問いを口にしたときジャニカとロビンはコタロウの言いたいことがわかった。

 

 

『……はぁ~~』

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

「その後、ジャンには手刀を、ロビンにはげんこつでこめかみを攻められました」

 

 

 それでは、とコタロウは頭を下げると食器を下げに歩き出した。

 取り残された新人と、実のところ最初から話を聞いていたはやてたち上官はたっぷり間を取った後、

 

 

『はぁぁぁぁ~~』

 

 

 たっぷりと大きく、そして肩を落としてため息をついた。といってもキャロとエリオは終始疑問符を浮かべていたが。

 

 

「えーと、なんの話をしてたんだっけ」

「ファーストネームを呼ぶ呼ばないの話でしょ」

 

 

 そうだったそうだった。とスバルは気がついたがもうその本人はこの場におらず、追及はできなくなってしまった。

 

 

「で、リイン。ネコに何かしたのか?」

 

 

 一方ヴィータはいい加減引っ張るのもいいだろうと言うように横目でリインを見ると彼女は考えたのち、

 

 

「ある程度予想はついたんですけど、もう一度試した後でもいいですか?」

「もう一度?」

「はい~」

 

 

 彼女はエリオとキャロの前まで飛び小さな声で

 

 

「お二人はネコさんに名前で呼ばれたいですか?」

「それは」

「はい。もちろんです」

 

 

 それを確認して、リインは二人に耳打ちする。

 

 

「え……?」

「それを……?」

「もちろん、無理にとは言わないです」

 

 

 まだ、他の人には言ってはダメですよ? 彼女はそういうと彼らから離れ、それを気にしている人たちだけ『なんだろう?』と首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのはStrikerS ~困った時の機械ネコ~

第39話 『斯斯然然』

 

 

 

 

 

 

 

 シグナムがなのはとシャッハの仲介役を果たすために運転手を申しでて、病院へ向っているとシャッハから少女が姿を消したという情報を受け取った。

 到着してから探し出すとすぐに見つかり、なのはと少女との間にシャッハが三階から飛び降りて割り込んだのを見ると、

 

 

(ああ、あのようにしてコタロウを思い込みで疑ったんだな)

 

 

 と確信した。

 

 

(コタロウとの話はいつ話したものか)

 

 

 どうやら、少女の名前はヴィヴィオというらしく身体に問題が無いことから一時的に六課隊舎で引き取ることになった。

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

「臨時査察って、機動六課に?」

「地上本部にそういう動きがあるみたいなんよ」

 

 

 フェイトははやてから査察の話を聞くと、その重い表情の理由を聞くまでも無く理解できた。時空管理局地上本部の査察は厳しく、機動六課の構成を考えても通過するのは簡単なことではない。彼女はここで改めてはやてと目を合わせ、職務として問いただすことにした。

 

 

「……六課設立の本当の理由、そろそろ聞いてもいいかな」

 

 

 査察対策も含めてフェイトは把握しておかなくてはならない。

 

 

「そやね、ええタイミングかな」

 

 

 はやてもそれに応えなければならず、いつかは話そうと思っていたと口を開いた。

 彼女はカリム・グラシアに状況報告をするために聖王教会本部に訪れるので、フェイト、なのはについて来てもらいたい。そこで全部話をする。とのことだ。

 

 

「クロノくんも来る」

「クロノも?」

 

 

 フェイトは自分たちの後見人の一人である自分の兄、クロノ・ハラオウンも同席することを聞き、核心に迫る重要さを認識した。

 

 

「じゃあ、なのはちゃんが戻ってきたら移動しよか」

「うん。もう戻ってきてるかな」

 

 

 パネルを操作し画面を開くと、隊舎ではまず聞くことのできない子どもの甲高い泣き声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

「このコはあなたのおともだち?」

 

 

 スバルたちはなのはを含め自分たちが泣いている少女一人に対して普段の訓練とは違う疲れと動揺を隠せないなか、部屋に入ってきたフェイトがまるで日常の一部であるかのようにその少女を泣き止ませたことに目を(しばた)いた。

 

 

「ヴィヴィオ、こちらフェイトさん。なのはさんの大事なおともだち」

 

 

 しがみついているヴィヴィオになのはは丁寧にフェイトを紹介して注意を促す。フェイトはヴィヴィオと同じ視線まで腰を下ろし、さきほど落ちていたうさぎのぬいぐるみを拾い上げて少女のはじめてのおともだちをピコピコと動かしていた。

 

 

[なつかれちゃったのかな]

[それで、フォワード陣に相手してもらおうと思ったんだけど……]

 

 

 なのはは困った顔のまま視線を流すと、申し訳なさそうに『すみません』と頭をさげるスバルたちがいた。

 フェイトはなのはに微笑むとヴィヴィオと目を合わせてぬいぐるみを自分の隣に持っていき少女の説得に移った。それがあまりにも手馴れたものなので自分たちが苦労していたのがなんだったのだろうかという程である。

 スバルは彼女と少女のやりとりをみながら、

 

 

[どうしてフェイトさん、あんなに手馴れて……]

[フェイトさん、まだちっちゃい甥っ子さんと姪っ子さんがいますし]

[――使い魔さんも育ててますし……]

 

 

 エリオとキャロが理由を説明するとティアナも気づいたように二人のほうを向いて、

 

 

[さらにアンタらのちっちゃい頃も知ってるわけだしね]

[『……うぅ。はい』]

 

 

 そのころの自分たちを思い出させた。

 しばらくしてフェイトはヴィヴィオの説得に成功しスバルたちに任せると、はやてたちはヘリで移動すべく、屋上へ移動した。

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

 なのはとフェイトの聖王教会教会騎士団騎士カリム・グラシアという女性に対する第一印象は物腰が柔らかいというもので、自分たちの想像する騎士筆頭であるシグナムとは比べることのできない風格を持ち合わせていた。お互いに自己紹介を済ませ久しぶりに顔を合わせるクロノとも挨拶を済ませると早速本題に入った。

 

 

「私の能力、預言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)。これは最短で半年、最長で数年先の未来、それを詩文形式で書き出した預言書の作成をすることができます」

 

 

 使える回数は環境も影響し年に一度で、正当性は解釈ミスを含んでよく当たる占い程度らしい。

 ただ、クロノが言うに聖王教会、次元航行部隊は必ず目を通しているとのことで、信頼性よりも起こりえる可能性に迅速に対応する、いわば注意喚起として採用しているものであるという。

 

 

「ちなみに、地上部隊はこの預言がお嫌いや。実質のトップ――レジアス・ゲイズ――がこのテのレアスキルがお嫌いやからな」

 

 

 ああいう人柄からかそれにいたるのは良くわかるとはやては首を横に振った。

 

 

「そんな騎士カリムの預言能力に数年前から、少しずつある事件が書き出されている」

 

 

 その内容の最新項にはこう書かれていた。

 

 

 

 

『太古イ結晶ト無限之欲望集イ

 交ワル地

 死セル王の下 聖地ヨリ彼ノ翼甦ヘル

 死者共ガ舞踊リ 

 中津大地之法ノ塔ハ虚シク焼ケ崩落チ

 其ヲ先駆ニ数多ノ海ヲ

 衛ル法ノ艦モ砕沈チル』

 

 

 

 

「ロストロギアをきっかけに始まる管理局地上本部の壊滅と、管理局システムの崩壊」

 

 

 正当性から考えるとよく当たる占い程度。ということであるが、裏を返せば解釈ミスをしなければ極めて高い確率で起こりえるものなのだ。数年前から表れ始めていることから解釈誤差は少ないとされ、聖王教会、次元航行部隊はかなりの警戒心をもっているという。

 

 

「――これが六課設立の理由なんだね」

「そや。今まで黙っててごめんな? 不確定要素の……いや、話さなかったのは変わらへんな」

「はやて……」

「全然大丈夫だよ」

 

 

 目を伏せるはやてにフェイトとなのはは任務上話すタイミングや話してはいけない事があるのは分かるため特に気にしてはいなかった。

 そのあと、報告事項も終わり主要な用件がすむと空気が和らぎ、気づけばカリムとも旧知であるかのように会話が弾んだ。

 

 

「またそういうこと言う……」

 

 

 などと、時々クロノがからかわれるのはこの場に男性が一人しかいないのであれば当然でもあった。

 

 

「さて、ではそろそろ」

「あら、もうこんな時間」

 

 

 彼が時計をみるとかなりの時間が経過しているのにカリムも気づいた。

 

 

「ほんなら、私たちも」

「うん」

「今日はありがとうございました」

「また機会があったら是非来てくださいね」

 

 

 なのはたちのお辞儀に会釈で応えると、お見送りを彼女にもさせようとカリムはパネルをたたく。すると、

 

 

「あのときは本っ当に申し訳ありませんでした」

 

 

 先ほどのなのはたちのお辞儀より深く頭を下げているシャッハがそこにいた。

 

 

「……シャッハ?」

「――っ!?」

「お話中でしたか」 

「あ、いえ、これは...」

 

 

 話し中であることに間違いはないし、それにたいして咎めることもないのだが、会話しているようには見えず、誰かに謝罪をしているのは明らかであった。

 席を立ち扉の前にいるなのは、フェイト、はやてとクロノからは画面は見えずにいるが、何かあったのだろうと小首を傾げる。

 

 

「そちらの方になにかなされたのですか?」

 

 

 それから一言二言問答を繰り返すとシスターの責であるならば私が謝らないわけにはいかないと言う展開になり始めていた。

 

 

「どうしたんや、カリム?」

「んー、どうもうちのシャッハがなにかしてしまったようで」

 

 

 いくつか言葉は濁しシャッハの性格なのか罪の深さなのかわかりかねたが、この謝罪のあと正式に赴き謝罪をするようであることがわかった。

 カリムはなのはたちに頭を下げて多少時間がもらえるのがわかると、立ち上がって身なりを簡単に整え、彼女はシャッハに断ることなくその回線に割り込んだ。

 

 

「突然の割り込み失礼いたします。私はこのシスター・シャッハの上司にあたる聖王教会教会騎士団騎士カリム・グラシアと申します。詳細はまだ伺っておりませんが、うちのものが失礼をしたようで……」

 

 

 そうして頭を下げた。

 

 

「もう一度確認するわ、シャッハ?」

「……はい」

「あなたはこの方に……失礼、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

 

 カリムは画面に映し出された男性に軽く会釈する。

 

 

「コタロウ・カギネと申します」

『――え!?』

 

 

 思わずなのは達は声に出してしまった。

 

 

「ん? なんだ、フェイトたち知り合いか?」

「知り合いも何も……」

「うん。私たちと同じ六課の局員やもの」

 

 

 はやてはフェイトとなのはの応えにこくりと頷く。カリムもその会話が耳に入り全員にわかるようにシャッハ、コタロウを映し出した。映し出されたシャッハは顔をゆがめて狼狽する。

 

 

「それで、シャッハ? 貴女はこの方に何をしたのですか?」

 

 

 周囲の目にさらすのは、なによりその罪に対する自覚をさせ羞恥ものとであってはならないためである。

 

 

「実は、()()くということがありまして……」

「……それで」

 

 

 起を話し、

 

 

「それで、然然(しかじか)になりまして……」

「……それで?」

 

 

 承になり、

 

 

「そのあと、加えて是是(これこれ)でありまして……」

「な……それで」

『……』

 

 

 転でカリムは笑顔のまま片方の眉が少し震えると同時に、なのはたちは「またか」と肩を落とし、

 

 

「それで、其其と……」

『……』

 

 

 結になると誰も何も言わなかった。

 

 

 シャッハはそれからは口を開かず、カリムが口を開くのを待った。

 

 

(……コタロウ・カギネ? どこかで聞いた……あ、エイミィがこの前言ってたな)

 

 

 クロノはこの間、妻であるエイミィと話したときに話題に出てきたことを思い出した。恩人であることは違いないが、どうも一見では判断のつきづらい雰囲気と性格の持ち主であるらしい。

 

 

[フェイト]

[ん、なに、お兄ちゃん]

 

 

 全員がカリムの眉を寄せて無言でいるあいだに、彼はフェイトに念話を送る。一応なのは、はやてにも聞こえるように。

 

 

[エイミィから彼のことは聞いていたが、本当にそういうことを起こす人なのか?]

 

 

 先ほどのシャッハの会話から彼は冤罪で逮捕されるも抵抗することなく、釈放よりも逮捕優先によって長時間の拘束でも怒ることない人間らしい。人によってはそれでも文句を言わないかもしれないが、画面越しの彼がまるで写真のように微動だにしないことに違和感を感じないわけにはいかなかった。

 

 

[えーと、うん]

[こんなの、しょっちゅうなんよ]

[にゃはは、話すと結構長くなるんだけど……]

 

 

 ある程度耐性のできている三人にとっては当たり前のこと過ぎて小事であるらしい。

 

 

[この人がねぇ]

[多分、見てればわかるよ]

[うん]

[せやな]

 

 

 自然と彼を見定めようとするのは提督という職業柄であるからだろう。少し顎を上げて彼を見直そうとすると三人は付け加えた。

 そうしてやっと、カリムが口を開いた。

 

 

「コタロウ・カギネ様、通信上で申し訳ありません。この度はうちのものが大変失礼をいたしました。許されるのであればカギネ様の時間をお借りし、必ず謝罪を含めてご挨拶にお伺いしたいと存じます」

 

 

 深々と頭を下げた。

 

 

「お顔をお上げになってください」

 

 

 コタロウの言葉に従いカリムは顔を上げる。

 

 

「詳細、把握いたしました。そして、謝罪のご挨拶は必要ございません」

 

 

 表情を特に変えることはなく、

 

 

「ありがとうございます。シスター・シャッハ・ヌエラ様、騎士・カリム・グラシア様お身体ご自愛ください」

 

 

 それでは、と目線を下げ回線を切ろうとした。

 

 

「ま、待ってください!」

「はい」

「あの、それは謝罪を受け取れないということでしょうか?」

 

 

 謝罪を受け取れないくらい立腹していると彼に対して抱いたのだろう。一本気のあるシャッハは食い下がる。

 

 

「いえ、受け取れないということではなく必要がないと申し上げたのです」

「どうしてですか?」

「……どうして?」

 

 

 コタロウは眉根を寄せ、

 

 

「貴女ご自身がご自分の信念に基づいて行動なさったことを、少なくとも私は把握したと考えています。ですので、謝罪を受け取る受け取らないのではなく、必要が無いと申し上げました」

『……』

 

 

 カリムは目を細めただけであったが、シャッハはこれ以上自分を責めることを憚られてしまい、声は出さずに口をぱくぱくと動かすことしかできなくなってしまった。

 それをみてはやてたちはクロノに念話で語りかける。

 

 

[こうなるんよ]

[こういうのもなんだけど私たちのまわりってさ、一致するじゃない? 仕事と信念?]

[コタロウさんは勘違いもあるけど、受け取るときは本当に正直に受け取るから……]

[特にシスター・シャッハの場合は]

[……修道女だから信念と行動が一致する]

 

 

 からこうなった。とシャッハの心中を察した。クロノも今まで誰も責めることができず、かといって自分にも非があるわけではない。ただ、心だけが落ち着かない気持ちになることは何度か経験があった。

 ただ、クロノもカリムも彼の態度をみて、多少の興味を抱いたのは間違いない。

 

 

「コタロウ・カギネ様、多大なる思慮のほどありがとうございます。また機会があるときにでもご連絡をしても構いませんか?」

「はい。カリム・グラシア様」

「いえ。それと様は必要ございません」

「わかりました、ミズ・カリム。それでは」

 

 

 と彼は通信を切る。

 しばらくの無言の空気ののち、

 

 

「さて、シャッハ?」

「……はい」

「皆さんのお見送りを」

「……はい」

 

 

 後で何かあるのだろうかわからないが、何も言わずに全員で通路にでて歩き出した。

 

 

「そうそう、コタロウさんな」

「ん」

「クロノくんより年上なんよ?」

「……は?」

 

 

 目を丸くしてはやてを見る。前を歩いているカリム、シャッハもピクリと反応した。

 

 

「エイミィさんと同い年だね」

「俺のひとつ上?」

「うん」

 

 

 人生経験云々から判断するわけではないが、クロノからすれば自分より上とは思わなかったようだ。

 

 

「はやて、彼の階級は?」

「ん? え、と、三士やな」

 

 

 その言葉に、今度は眉を寄せた。

 

 

「そんなわけないだろ」

「え、何がや?」

 

 

 フェイトとなのはもお互いに顔を見合わせた。

 

 

「いや、まあありえない話ではないが……彼は優秀か?」

「えーと、失礼やけど、今まで会った誰よりも優秀やな」

「うん」

 

 

 一度立ち止まり昨日の事件詳細や隊員情報パネルを開いて、

 

 

「昨日のこれ」

「この、高出力砲を割いたのが、あの」

「うん。コタロウさん」

「それでね」

 

 

 今度はなのはが代役し、パネルを叩く。

 

 

「この調査報告あるでしょ?」

 

 

 先ほどの会談中に出てきた書類であり、読みやすかったのを覚えている。それはカリムも同じであった。

 

 

「相手に逃げられた直後、ものの数分で書き上げたの」

「……これを?」

 

 

 もちろん、後から情報の付け加えで何点か修正はあったがそれもわずかである。

 

 

「なるほど。じゃあ、なおさらじゃないか。こんな人が三士、ありえるのか?」

「それは……」

 

 

 いくら保有資格がそれ相当でも確かにそれはおかしかった。

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

「査察の日程は決まったのか」

「中将のご依頼されていた人員を含め、確保しました。週明け早々に行います」

 

 

 レジアスは地上本部の高層からクラナガンを見下ろしながら確認するようにたずねると、オーリスは応えた。

 

 

「連中が何を企んでるやら知らんが、土にまみれ血を流して地上の平和を守ってきたのは我々だ。それを軽んじる海の連中や蒙昧な教会連中に、いい様にされてたまるものか」

 

 

 彼は目を細め、

 

 

「なにより、最高評議会は私の味方だ。そうだろう、オーリス?」

「……はい」

 

 

 振り向いて秘書のほうを向く。

 

 

「公開意見陳述会も近い。査察では教会や本局を叩けそうな材料を探して来い」

「その件ですが……」

 

 

 オーリスは目をそらすことなく少し節目がちに目線を下げると電子パネルを広げながら、

 

 

「機動六課について事前調査をしましたが、あれはなかなか巧妙にできています」

 

 

 そこには六課局員の顔写真が映っていた。

 

 

「さしたる経歴も無い若い部隊長を頭にすえ、主力二名も移籍ではなく本局からの貸し出し扱い。部隊長の身内である固有戦力を除けば、あとは皆新人扱い」

 

 

 そしてなにより、と付け加え、

 

 

「期間限定の実験部隊扱い」

 

 

 息をつくと、レジアスは鼻を鳴らし、

 

 

「つまりは使い捨てか」

 

 

 吐き捨てた。

 

 

「本局に問題提起が起きるようなトラブルがあれば、簡単に切り捨てるでしょう……そういう編成です」

「小娘は生贄か」

 

 

 オーリスの考察に考えるまでも無く彼は呆れたように口を開いた。

 

 

「元犯罪者にはうってつけの役割だ」

「……まあ、彼女はそれさえも望んだ道でしょうけれど」

「なに?」

 

 

 彼女の最後の一言は聞き取れなかった。

 

 

「このあと会見の予定が二件入っています。移動をお願いします」

 

 

 いえ、とオーリスの頭を振った態度にそれ以上聞くことはせず次の予定に考えをうつしていった。

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

「え、それじゃあ……」

「はい。私たちは派遣先によって階級が変わります」

 

 

 はやてたちが隊舎に戻っていたときにシャッハがカリムからお叱りを受けているのは余談として、コタロウとすれ違った際に査察の件もあり不備が出ては困るとはやては聞くことにした。

 

 

「どうしてなんです?」

「電磁算気器子部工機課の人間が派遣、出向先の課で誰かの上司であっては困るためです」

 

 

 命令を出すことに躊躇がないようにそのように工機課は特別措置をとられているというのだ。

 

 

「そしたら、本来の階級は何なんですか?」

「疑問に感じたことが無いので、調べたことがありません」

 

 

 ただ、ご安心をと彼は続けた。

 

 

「書類上の不備になることは一切ございませんので、皆さんのご迷惑になることはありません」

「わ、かりました」

 

 

 それ以上確認することが無いとわかると、コタロウは敬礼をしてその場を離れていった。

 

 

 

 

 

 

 それから臨時査察実施日まで日が無いということもあり、六課の職員は作業に忙殺された。コタロウは自分の領分を出ることなく依頼に対して作業を行い。仕事が円滑になるように努めた。しかし、書類の見落としがあった場合は彼はその場にいる上司に指示を仰ぎ書類を片付けていった。

 そして、いよいよ前日になると最後の確認のため、特に上司は確認作業に追われた。

 

 

「すみません」

「あ、コタロウさんすみません、これは私が済ませないといけない作業なので」

 

 

 と、なのはに断られ、

 

 

「テスタロッサ・ハラオウン執務官――」

「ごめんなさい、今忙しいので」

 

 

 フェイトは早足で各所に回り、

 

 

「八神二等陸佐」

「明日の査察乗り切るよぉ」

 

 

 はやての独り言から近づいてはいけないことはコタロウにもわかった。

 他のシグナムやヴィータたちも同様であった。

 

 

 

 

 

 

 ただ、日常を変えることはかえってこれからの任務に影響をきたすため、臨時査察当日の朝も訓練は行われた。

 

 

「今日はネコさんいないわね」

「そうね。シャーリーさんのところかなぁ」

 

 

 ティアナとスバルが言うように彼は必ず訓練に参加するわけではないことは全員わかっていたため特に疑問には思わなかった。

 訓練が終わり身なりを整えた後、スバルたちは食堂へ向かう。

 

 

「でもまさか、あんな理由で下の名前、あ、シャーリーさん、おはようございます」

「おはようみんな」

『おはようございます』

 

 

 そこにも彼はいなかった。

 

 

「あれ? ネコさんシャーリーさんのところじゃなかったんですね」

「え、うん。来てないけど」

 

 

 もう食堂に行ってるのかなぁと彼女たちは足を運んだ。

 だが、隊長陣が席に着き、ちらほらと職員が食事をしている食堂を見回しても彼の姿は見当たらなかった。

 

 

「いないですね」

「まあ、珍しいことじゃないし、早くご飯食べちゃいましょ」

 

 

 エリオがぽつりと息を吐くとティアナは先に列に並び始めた。

 新人達がそれぞれ全員分の食器や食料を役割分担しながら用意をし、いざ全員で席に着こうとしたとき、ティアナが先に彼に気づいた。

 

 

「あ、ヴァイス陸曹」

「ん、おぉ」

『おはようございます』

「あぁ、おはよう」

 

 

 彼は少し元気がなさそうである。

 

 

「どうかしたんですか? 元気なさそうですけど」

「なにか落としたり、なくされたりしたとかですか?」

 

 

 体の調子が悪そうには見えなかったのですぐに思いつく落ち込む出来事を述べてみる。

 

 

「いや、そういうわけじゃないんだが」

 

 

 すっきりした顔でいる新人達を見たヴァイスはぽりぽりと頭をかきながら、小さく息をついた。

 

 

「そうだよなァ。これくらいで気分落としてる場合じゃないか」

 

 

 査察日だしな。と付け加える。

 

 

「お前らも元気でいるんだし」

「私たち、ですか?」

 

 

 なんだろう。とお互いを見合わせる。

 

 

「え、私たちも関係あるんですか?」

「……書類に不備があったとか」

 

 

 それにしては(せわ)しない職員はいない。昨日の遅くには仕事は片付いているからだ。中には眠そうに話している職員もいるくらいである。

 

 

「え、っと、何ですか?」

 

 

 少し考えたくらいでは査察に関してくらいしか考え付かなかった。

 ヴァイスはそんなもんかねぇ。という具合に息を漏らし、

 

 

「コタロウさん今日からいないのに」

 

 

 ぽつりと言葉をはいた。

 

 

『……??』

 

 

 彼の言葉がうまく理解できない。

 

 

「出張、とか、ですか?」

「なぁにいってんだ、スバル……あ、お前ら知らなかったのか?」

 

 

 次の言葉も理解するまで数秒を要した。

 

 

「コタロウさん、六課の出向は昨日まで。昨日で最後だったんだよ」

『……』

 

 

 その言葉は隊長陣にも耳に入ったが理解が及ばなかった。

 頭に言葉がやっと浸透してくると、ぎ、ぎ、ぎとまるで錆付いた機械のようにゆっくりとスバルたちがなのはのほうを向く。

 なのはは新人たちに視線を浴びたのが理由でなく、彼女もまた、というよりフェイトにヴィータやシャマルも疑問がとけず六課部隊長はやてのほうを向くと、

 

 

「……」

 

 

 はやては血の気が引いて青ざめていた。

 

 

「はやて、たいちょう?」

「やがみ、にさ?」

 

 

 なのはとフェイトに呼ばれても聞こえているのかいないのか判断はつかない。

 

 

「リ、イ、ン?」やっと口を開く。

「はいです?」

「……コタロウさんの書類――」

「え、えーとですね、出向期限は三ヶ月で、延長する場合は事前に申請が必要みたいです」

「はやて、ちゃん?」

 

 

 リインは言われる前に電子データを出力し、シャマルは聞く。

 全員がまさかという顔ではやてをみた。だが、責めることができないのは上官ということだけが理由でなく、ここ数日の忙しさは誰が見ても明らかであったこともある。

 

 

「で、でも! 昨日までなら挨拶くらいしてもよかったですよね。まったくネコさんったら~」

『――っ!!』

 

 

 スバルがからかう程度にコタロウを責めてみると、隊長陣がビクリと肩を震わせた。

 

 

「……あれ?」

「いやな、スバル。コタロウさん昨日挨拶にいったんだよ」

「……え」

『……』

「あとは、察しろ」

「あ、ああ……」

 

 

 隊長たちはいつもならきっと聞き入れただろう。しかし忙しさゆえに後回しにしたことにスバルを含め新人たち全員が気づいた。

 

 

「んで、お前らに言わなかったのは多分、隊長(づた)いでいうなり、挨拶させてもらえたり。そういう指示を仰ぐことも含んでたんじゃねぇかな」

「……な、るほど」

 

 

 本当に知らなかったんだな。と昨日自分だけ彼を送別したことはヴァイスは口には出さなかった。

 

 

 

 

 

 

「“直接ご依頼する場合は工機課まで”とも書いてあるです」

 

 

 臨時査察は今日から二日間午後の時間を利用し行われる。緊張感はあるが、それよりはやてはコタロウの出向期間を延長してしないことにどうしようもない焦りを覚えていた。

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

「あ、そういえば、そろそろだな」

「どうしたの、お父さん?」

 

 

 ゲンヤ・ナカジマはお茶をすすりながら部隊長室の壁にかかるカレンダーにそれとなく視線を上げた。

 

 

「ギンガ、覚えてるか? 八神に機械士のこと聞かれた後、『言い忘れ』たことがあるって言ったのを」

「え、あー、そういえばそんなこと言ってたね。それがどうかしたの?」

「ん、機械士ってのが有能であることに気づくか気づけないか。もし、気づくとして、だ」

「うん」

「有能なヤツをお前なら手元においておきたいか? それとも手放すか?」

「うーん。人事が希望通りにならないのは知ってるけど、もし叶うなら置いておくかな」

「だよな」

「でも、それが?」

「機械士が有能であることに気づいた上司のほとんどの場合、手放すんだよ」

 

 

 ゲンヤの期待している返答をしたのに、彼はどうもはっきりしないことをつぶやく。

 

 

「置いておきたいのに?」

「あぁ」

「……どうしてなの?」

「有能すぎるからだよ」

「え、と?」

 

 

 ギンガは言わんとしていることがつかめず、首を傾げる。

 

 

「そこにいるのが当たり前になって申請を忘れるんだよ。完全に部や課の一員でいるって錯覚する」

「そうなの?」

「まさかと思うだろ? あるんだよ」

「八神二佐が忘れるってこと?」

「臨時査察あるって言ってたしなァ。忙しさもあいまってもしかしたら忘れてるかもな」

「……なら連絡して注意すればいいのに」

 

 

 呆れるギンガに、不敵にゲンヤは笑う。

 

 

「なんでそこまで面倒見なきゃならん。そもそも施設整備のヘルプ要因だ。三ヶ月もすればハード面は最新ではないが新品同様に内外磨き上げられ、ソフト面も開発ではなくその人にとってもっとも使いやすくかつ汎用性のある物に変わってるだろうよ。ある意味扱えない最新のものより、よく扱える性能の高いものになってる」

「そんなに??」

「あぁ、そんなに」

 

 

 お茶を飲み干しておかわりを頼むと両手を後ろに回しソファに背中を預けた。

 

 

「忘れてたら、まぁ、直接イヌに電話でもするだろ」

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

 はやては食堂で部隊長、新人たちが見ている目をはばからずテーブルにエヘンではなくゴチンと額を打ち付けた。

 

 

「……わすれ……とった」

 

 

 

 

 

 

 

 

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