魔法少女リリカルなのはStrikerS ~困った時の機械ネコ~   作:エルン

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第44話 『優』

 

 

 

 

 

 

 毎日ある程度のサイクルで訓練を行えば筋力や体力がつき、順応してくる。そして、コタロウ・カギネのそれも当てはまっているようにティアナ・ランスターは感じていた。それは彼基準の判断で認められない限り同じ練習が続くからだ。

 しかし、どの一日をとっても身体は順応することはなく、訓練終了後には前のめりに倒れ、彼にケアをされることによって目が覚めるのであった。そのあと、彼女は自身の足で汗を流しに行き、部屋に戻る――ドアを開けた後の記憶がない日も多い。

 

 

「ン……」

「あ、ティアおはよー。昨日もお疲れさま」

「私、昨日は大丈夫だった?」

 

 

 ロフトから降りる足音で目が覚めたティアナはちゃんと自力でベッドに戻っているかの確認をスバルにすると、彼女は頷いた。

 

 

「ちゃんと自力でベッドまで歩いていったよ」

「そっか。あ、スバルおはよう」

 

 

 その言葉に安心し、伸びをしてベッドから出た。

 そうして支度をしているとき、スバルはふと昨日の様子を見てティアナのほうを向く。

 

 

「ティアー」

「んー?」

「やってることは知ってるし見たことあるけど、ネコさんの訓練ってそんなにハードなの?」

 

 

 コタロウの訓練を受け始めて、かなりの時間が経過していた。

 

 

「私の実力ないのもあるんじゃない?」

「んー、そうじゃなくてさ」

 

 

 もうティアナは自分の実力をしっかりを受け止めていた。

 

 

「ほら、なのはさんの訓練もハードだけど段々と考えながらするようになってきてるじゃない?」

「あぁ、私がいつもあんな感じに帰ってきてること?」

 

 

 毎日なのはの訓練内容を教えてるスバルはコクリと頷く。いくらなんでも順応していないことが不思議でならなかった。もう少し余裕が出てきてもいいはずである。

 

 

「私も不思議なのよ」

「へ?」

「ネコ先生の訓練メニューは同じことが多いんだけど、終わるといつもああなのよね」

 

 

 まあ、こうやって次の日に疲労がそんなに残ってないのも不思議なんだけど。と身体をねじってティアナはけろりと答える。

 

 

「さ、今日もやりますか」

 

 

 傾げるスバルをよそにティアナは支度を終え、スバルを急かした。

 

 

「うーん」

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

 新人たちが訓練場につくと、なのはとコタロウが話をしているのが分かり、

 

 

「え、今日から合流、ですか?」

「はい。私の訓練は昨日で基準を満たすことができました」

 

 

 今日からスバルたちとともに訓練に加わってよいということらしい。

 なのははコタロウから毎日彼女の報告を受けており、成長を言葉や映像から判断していた。

 

 

「でも……」

「でも?」

 

 

 ただ、本人は自分の中で確かなものが少ないのか、コタロウの言葉に不安を覚えているように見えた。毎日成長していると信じていても、自分の今の状態からコタロウの訓練をものにしているとはどうしても思えなかったのだ。

 

 

「前よりは自分を受け止めてますが、少し不安もあります」

「ふむ。不安……」

 

 

 コタロウはティアナの言葉を復唱する。

 

 

「誰と比較をしてそのような判断をしたのかわかりかねますが」

 

 

 そして、一つの可能性に行き着いたのか、顎に当てていた指を離し、離していた目線を再びティアナに戻す。

 

 

「トラガホルン両二等陸佐には劣り、成長速度は最底辺なのは間違いありません。ですが、私が当初に計画していたを3度変更しました。三番目の私の生徒は『秀』の次の『優』と評価したいと考えています」

 

 

 彼が必要以上に褒めたり、おだてたりしないということはわかっているが、訓練の成果から得るものが微々たるもので不安がぬぐえなかった。

 

 

[コタロウさん]

[はい]

[こういうときはですね――]

 

 

 そのやり取りを見ていたなのはから念話が入ってきた。一連の二人のやり取りを見ていて、不思議な感覚を得ていた。彼女から見たら、コタロウもティアナも先生であり、生徒に見えたのだ。昔、先輩からこういうことを教わっていたのを思い出す。

 

 

『良い先生は良い生徒を育て、良い生徒は良い先生を育てる』

 

 

 二人はまさにそれに当てはまっていた。これは教導官として長く、多く生徒を見て養われた目のためだ。そして同時にトラガホルン夫婦のコタロウを長い目で見る気持ちがわかる気もし、つい助言してしまった。

 彼は頷き、口を開く。

 

 

「ティア」

「は、はい」

「世の中に完全に物事を修めることはできません。ただ、今の成果を見せればいいのです」

「はい……」

 

 

(あぁ、コタロウさんにこやかになんてできないから、かえってよくわからないことに……)

 

 

 アドバイス間違えたとコタロウの後ろでなのははまずいという表情をする。それをティアナは見逃さなかった。

 

 

「ふふ。先生」

「はい」

 

 

 笑顔になった彼女に少し目を大きくさせる。

 

 

「先生に恥、かかせないように頑張ってきますね」

「恥?」

「いえ、なんでもないです!」

 

 

 深くお辞儀をして、ティアナはスバルたちと一緒に行ってしまった。

 

 

[なのはさん、顔に出てましたよ? ネコ先生のことありがとうございます]

 

 

 これでよかったのだろうかとコタロウはなのはを見ると、彼女は顔に手を当てて頬を軽く揉み、微妙な表情をしており、疑問符を抱かずにいられなかった。

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、改めて。みんな、久しぶり」

『はい!』

「お帰り! ティア!」

「た、ただいま」

 

 廃墟設定の訓練場はティアナにとって久しぶりであり、スバルたちは元気よく迎えた。

 

 

「なんか、今までいなかった私が言うのもなんだけど、今日の訓練内容を見る限り、私が後方支援でみんなに指示をする。大丈夫?」

『はい!』

「オーケー!」

「もし、私の指示よりいいのがあれば各自判断で動いてね」

 

 

 ティアナは今日の訓練内容が自分をチームになじませるためものだとすぐに気が付いた。とっさ判断を要求されるものが多い。

 

 

「じゃあ、開始と同時に散開して、撃破していくわよ」

『了解!』

「エリオとキャロはペアで行動すること」

『はい!』

 

 

 そうして、準備完了の合図を送ると、なのはは右手を挙げる。

 

 

「それじゃあ、訓練開始!」

 

 

 と同時に、ガジェットⅢ型が目の前に姿を現した。

 

 

「こんな奇襲……なのはさんもティアが帰ってきて嬉しいみたいだね」

「本当ね」

 

 

 全員が身構える中、ティアナは一歩進みガジェットに対峙した。

 

 

「スバル、遅いわよ。『平時のときに万事に備え』は鉄則」

「え、ティア……?」

 

 

 既にクロスミラージュをセカンドモードにしているティアナは瞬時に魔力を生成し、下から上へガジェットを切り裂いた。激しい金属音が鳴り響き、二つに割れる。

 

 

「兵器なのに遅いのね、ネコ先生なら的確に私のココを撃ち抜いてルワ」

 

 

 トントンを自分の眉間を人差し指で叩き、セカンドモードを解いた。

 

 

『……』

「なにしてるの! さ、散って!」

 

 

 ティアナの言葉にワンテンポ遅れて全員散開した。

 

 

[スバルさん]

[う、うん。ティア、以前と違う]

[すごい、落ち着いてましたもんね]

 

 

 走る速度も以前と違い、しなやかで速く、当然のように壁を二足で駆け上がっている。魔力の使い方がまるで違っているのだ。

 それに、とスバルはティアナに倒されたガジェットを見る。爆発せずに残っている。回路が外からの力によって干渉されていない証拠だ。ひしゃげる部分がなく、確実に「切った」といえる。

 しかし、ガジェットは爆発した。切ったとはいえ、近くの回路が漏電したのだろう。あらゆる面で以前のティアナとは違うことが分かった。

 

 

 

 

 

 

 一方ティアナはこの訓練について、すぐに自分の実力に気が付いた。まだ、集中力を高めていないのにも関わらず、ガジェットが遅く見えるのだ。事実、この訓練の中何度かガジェットと遭遇したとき、その攻撃がよく見え、ぶれることなく撃ち抜いた。

 

 

(よく見える、というか身体が別人みたい。酸素欠乏訓練もしてたせいか、呼吸も乱れないし……)

 

 

[エリオ、三時の方向! 3秒後遭遇、2体! スバルは次のを撃破したら合流して]

[はい!]

[了解!]

[出会ってからの相手の攻撃は――]

 

 

 これまではこんなそれぞれに指示を出すときは頭の中で考えを切り替えて行っていたが、今は並行で行っている。これは隊舎内でも事務作業でも思っていたことだが、このような場合でも生かされていた。

 

 

(なんか、不思議。余裕がありすぎてもっとできそう)

 

 

 そこで、ふるふると首を振った。

 

 

「余裕が油断に変われば、意味がない。と」

 

 

 作戦完遂に注力することに努めることにした。

 

 

 

 

 

 

 なのはは隣にいるデータ収集をしているコタロウを意識せずにはいられなかった。

 

 

(たった数週間でこんなに、ティアナが変わるなんて)

 

 

 訓練の映像や報告を受けていたが、こんなにも反映されるとは予想以上であった。ティアナの周りを見る目は余裕をもって行われており、ガジェットを破壊されるたびにティアナのなかで自信が確信に変わっていくのが画面越しでもわかるほどであった。

 

 

「嫉妬しちゃいますね」

「……どういうことでしょうか」

 

 

 思わず口に出たことに対しかぶりを振る。

 

 

「え、あぁ、ティアナがこんなに成長しているのを見ると私よりコタロウさんのほうが教導にむいているのかなぁ。と」

「……」

 

 

 それに対し、コタロウは少し考えると上官に身体を向けて、

 

 

「失礼ながら、それは要素の一つでしかないとおもいます」

「要素の一つ?」

 

 

 こくりと彼は頷いた。

 

 

「成長はより自己認知が高いほど、好きと思えるほど、信用できるほど高くなるのはよく知られています。ティアが伸びたのは第一に高町一等空尉との信頼関係が確実なるもの故にできたのは間違いないです。私はその成長過程が高町一等空尉の次にいた。それだけであると考えます」

「……はぁ」

 

 

 コタロウの言うことは正論でもっともである。だが、

 

 

「それだけじゃないと思いますよ?」

「……もちろん、様々な要素はあると思います」

 

 

 おそらくティアナはなのはに見せず、スバルには見せる。そして、コタロウにはスバルに見せるのに近い表情を見せているのは彼女の視点から見ても明らかであった。ティアナはコタロウに自然に近い喜怒哀楽を示している。

 

 

(うーん。コタロウさんて仕事とは別に、そういう機微ってわかってるのかな)

 

 

 画面に目を落としている彼は特に変わったところは見て取れない。

 

 

 

 

 

 

 新人たちは全員合流し、襲い来るガジェットと敵対したとき、開始時のティアナがまだ全力でないことが分かった。

 

 

「スバル、この先のを撃破したら終了よ!」

「了解!」

「エリオとキャロは私が援護するからこのポイント撃破を!」

『了解!』

 

 

 スバルは加速し彼女たちから離れると、ティアナに言われた地点を目指した。その一時の間の後、スバルの進んだ通路以外の三方向からガジェットが6体現れた。2体同時なら問題ないがそれ以上の、同時破壊は現在のエリオにはできなかった。

 

 

「――っ!」

「エリオ、ひるまない! キャロ!」

『は、はい!』

 

 

 エリオは構え、近くの2対を破壊し、キャロはほかのガジェットにバインドを展開するが、

 

 

「……え?」

 

 

 キャロのバインドは4つのうち3つは機能をなさなかった。

 

 

「こっちは残り1体、スバル!」

「オーケー」

 

 

 ティアナはエリオの破壊した爆炎のなか――最後の一体はエリオが破壊した――見えにくい視界の先のスバルをみて、クロスミラージュを構えていた。そして放つ。

 それはちょうど、ガジェットに挟み撃ちされたスバルの背後のそれに当たった。

 

 

 

 

 

 

 訓練が終わりなのはが新人たちの前に降りると、新人たちが集合する。

 

 

「みんな、お疲れ様。久しぶりの全員そろっての訓練はどうだった?」

「え、っとぉ」

「……すごかったです」

 

 

 なのはは自分の考察を話す前に、新人たちに尋ねると、スバルは言いよどみ、キャロはエリオの言葉に頷いて答えた。

 

 

「そう? そんなに難しい内容じゃなかった気がするけど」

「いや、そうじゃなくて」

「すごいのはティアナさんですよ!」

「そうです!」

「え、私??」

 

 

 みんなの視線がティアナに注がれた。

 

 

「完全にセカンドモード使いこなしてたじゃん!」

「動きも早くて」

「なんていうか、圧倒してました!」

 

 

 口々にティアナの感想を言う。

 

 

「ま、まぁ余裕もってできたかな」

「私も見ていたけど、ティアナ」

「は、はい!」

「見違えるほど成長したね」

「ありがとうございます!」

 

 

 不安で始まった訓練はティアナの大きな不安を大きな確信を与える内容であった。

 

 

「みんなも、今日はティアナの指示を引いてもミスなく動けてた。今後もこの調子でね」

『はい! ありがとうございます!』

 

 

 この後、朝の訓練の終了をなのはが告げ隊舎に戻る際、新しくできた課題やもっとよくできないか新人たちは相談をはじめた。早く動くためには、伝達するためにはと個人では解決できない課題を話し合っている。

 

 

「あ、先生!」

「朝の訓練、お疲れさまでした」

「はい! あの……」

「どうかなさいましたか?」

「私なりに今の成果を出してきました」

「はい」

 

 

 ティアナはコタロウを見つけると小走りで駆け寄り、彼は気づかないであろうが、ほかの誰が見ても目を輝かせている表情で話しかけた。

 

 

「……?」

 

 

 コタロウの性格をわかり始めているのか、自分がずっと見続けることで相手に疑問を与えていることが手に取るように分かった。

 

 

「私の『優』は取り消されていませんか?」

「与えたものに変わりはありません」

 

 

 だが、次の言葉は出しにくかった。

 

 

「……これで、私、先生の訓練はおしまいですか?」

「はい。訓練方法や今後のメニューデータはクロスミラージュに転送しておきました。ティア、いえ、『ランスター二等陸士』ご自身の力によって伸びていくでしょう。初めに申し上げた2分という限界値も今は余裕ある2分になっています」

 

 

 もどかしそうに見るティアナと違いコタロウは彼女自身の自主自律を疑うことなく答える。ティアナにとっては訓練ももちろんであるが、名前の呼び方が元に戻ってしまったことに心が沈んだ。

 

 

「あ、あの、今度時間があった時、自主練に付き合ってもらえますか?」

「それは問題ありません、ランスター二等陸士」

「ありがとうございます。ネコせ、いえネコさん」

「それでは」

 

 

 彼は会話が終わったと判断するとなのはに先ほどの訓練について報告をしに彼女を通り過ぎた。

 

 

「ネコさんて、やっぱりネコさ……」

『……』

 

 

 スバルたちは近くでそのやり取りを見ていて、見計らって彼女の顔を覗き込むとぎょっと息をのむ。

 もどかしさ以上に言葉を出そうにも出せないでいる。そんな表情をスバルは見た。

 

 

「あ、さ、さぁ支度してご飯でも食べに行きましょ」

「え、うん」

 

 

 すぐさまティアナはいつもの表情に戻し、伸びをして隊舎に向かって歩き出した。

 

 

[スバルさん]

[ん?]

[ティアナさんのあの顔……]

[うーん]

 

 

 スバルは前にも数回あの顔を見たことあると二人に語り掛けた。

 

 

[お兄さんの話をするときね、時々あんな顔しての見たことあるんだ]

[『……あ』]

 

 

 いつも過去の話をするとき、ティアナは悔しそうな表情をしながらであったが、ごくまれにスバルでないと見落としてしまいそうな表情を見せるときがある。兄ティーダ・ランスターの死後の思い出じゃない、それ生前の彼を思い出した時だ。

 

 

[変な、気づかいしないでよ]

[わ、ティア!]

[私の表情のこと言ってたでしょ、3人して]

[『す、すみません!』]

 

 

 いいわよ別に。と彼女はひらひらと手を振った。

 

 

[顔には出しても、言葉には出さないから、勝手な想像はしないこと]

[うぅ、ティア~。でもあれでしょ、おに――]

[はい。スバルは今日一人で書類書き上げるのね]

[え、ちょっと! ひどい!]

 

 

 ティアナは知らんぷりをして足を速めた。

 

 

(なのはさんのこと、言えないなぁ)

 

 

 

 

 

 




すみません。エルンです。

久しぶりのせいか、書き筋がものすごく変わってしまっています。。。

他にも変えたところがありまして、サブタイトルを間に挟まずに投稿してみました。
文章量が短めになったためです。
本当はもう少し書きたかったのですが
すみません
文体が変わってしまったことと、文章力がひどく落ちてしまったためです。
これから書き慣れていければなと思います。

オフのほうがやっと慣れてきまして、書く余裕が出てきました。
一年……長かった。
また、イレギュラーが入ると期間空いてしまいますが、休日に書き進めることができればなと思います。

しばらく、変わった文体になってしまい
読みづらいせいでどんな結果をもたらすか予想はつきますが、書いていこうと思います。

文章短めでスパン短く投稿できて、慣れていけるよう頑張ります。
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