魔法少女リリカルなのはStrikerS ~困った時の機械ネコ~   作:エルン

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第8話 『お好きなほう』 Bパート

 

 

 

 

 人間や動物が前に進むためにはある種共通的なものが何点か存在する。

 1つは重心を前に倒し、歩くこと。これは走るも同様のことである。

 もう1つは低く(かが)み込み、前述と同様に重心を前に倒しながら、思い切り跳躍すること。1度大きく屈んで小さくなるということは大変重要なことだ。

 では、その動き出す根源無しに切欠(きっかけ)はどうか。

 多くの人間は考えた末、2つの方法が前に進む切欠の大半を占めるという考えに至るだろう。

 それは、外力が加えられるか、そうでないかである。

 外力というのは何も物理的なものだけでなく、精神的なものも1つの要素であることはほとんどの人間が知っている事実だ。

 例えば、『押される』、『引かれる』、『進め』または『行け』等があげられる。

 もちろん『来ていただけませんか?』と誘われる事だってあるだろう。

 それは感情表現と同じように無数に存在するということに収束したい。

 そして、そうでないものとは実に素直で1つしかない。

 『自分の意志』である。これは揺ぎ無く、確固としている。途中で曲がってしまっても、曲がる前は揺らいでいないはずだ。

 では、これらは『2極化されるのか?』 であるが、そのようなことはありえない。

 外力の助けによっていずれ『自分の意志』となる『自分の意思』というものも存在するのだ。

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのはStrikerS ~困った時の機械ネコ~

第8話 『お好きなほう』 Bパート

 

 

 

 

 

 

「昨日、そんなことがあったんだ」

「うん。間違(まちご)うてることは何一つ言うてへんのやけど、なんかヘンやねん」

 

 

 フェイトが運転する車の中、先ほどコタロウが行った修理を()の当たりにしてから、昨日の『リインにツヴァイをつける理由(わけ)』の(くだり)を話しているようだ。

 

 

アイン(リインフォース)がいるからツヴァイ(リインフォース・ツヴァイ)がいる。かぁ」

「なんや、リインフォースに()うたことあるのは10年前のメンバーだけやのに、会うたことない他人(コタロウさん)にもリインフォースがいるって知って、正直嬉しかったんよ」

 

 

 助手席に座っているはやてはふとドアウィンドウに視線を送り目を細める。

 10年経った今でも、彼女の心の中では色あせることなく当時の情景が窓の外にぼんやりと移る。

 

 

「その2年後にリインが生まれて……っと、ごめんな。しんみりさせてもうて」

「ううん。あの時は、私やなのは、関わった人たち全員にとって大事な時間なんだから、気にしないで」

「……うん」

 

 

 あの時は。とフェイトも当時の嬉しかったこと、悲しかったことを思い出しそうになり、小さく頭を振って自分の中の『しんみり』を追い出し、話題を変えることにした。

 

 

「聖王教会騎士団の魔導騎士で管理局本局の理事官、カリム・グラシアさん、だっけ? 私はお会いしたことないんだけど……」

「ん、あ、あー、そやったねぇ。私が教会騎士団に派遣で呼ばれたのが切欠だったんよ」

 

 

 リインが生まれたばっかのはずやから、8年くらい前やね。と彼女も現実に帰ってきた。

 

 

「カリムと私は信じてるものも、立場も、やるべきことも全然ちゃうんやけど、今回は2人の目的が一致したから。そもそも、六課の立ち上げ、実質的な部分をやってくれたんはほとんどカリムなんよ?」

 

 

 フェイトは相槌を打つ。

 

 

「おかげで私は人材集めに集中できた」

 

 

 さもカリムのことを自分であるかのようにはやては胸を張って自慢する。

 

 

「信頼できる上司。って感じ?」

「んー。お姉ちゃんって感じやね。仕事や能力はすごいんやけど、あんまり上司って感じはせぇへんのよ」

 

 

 それを聞いてフェイトははやての表現から、『本当にそんな人なんだろうな』と思いながらふふっと笑った。

 

 

「まぁ、レリック事件が一段落したらちゃんと紹介するよ」

 

 

 きっと気が合うと思うよ、フェイトちゃんもなのはちゃんも。とはやても笑顔で返すと、

 

 

「うん、楽しみしてる」

 

 

 そう言いながらフェイトはじわりとアクセルを踏んでゆっくりと加速していった。

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ、ガジェット……新型?」

 

 

 カリムと会ってしばらく歓談を済ませた後、彼女は部屋を暗幕を引いて、空間モニタにいくつか資料を見せた時、はやてはその中の1つに、見たことのないガジェットと思われる機体に注目がいく。

 

 

「今までのⅠ型以外に新しいのが2種類、戦闘性能はまだ不明だけど、これ――」

 

 

 彼女はさらに、1つのモニタの画面を大きくしてはやてを促す。

 

 

「Ⅲ型はわりと大型ね。本局には正式報告はしていないわ。監査役のクロノ提督にはさわりだけお伝えしたんだけど」

 

 

 対象となる機体サイズの対比として一般人のシルエットを隣に出し、その機体サイズが人の身長を約1.5倍位であることがわかり、円形のためか会えばさらに大きいことが(うかが)えそうだ。

 はやてはカリムの話を聞きながらもう1つ別のものに注目した。

 

 

「これが今日の本題。一昨日付けでミッドチルダに運び込まれた不審貨物」

「レリックやね」

「その可能性が高いわ。Ⅱ型とⅢ型が発見されたのも昨日からだし」

「ガジェットたちがレリックを見つけるまでの予想時間は?」

「調査では早ければ今日明日」

 

 

 そこではやてはあごに手をやって考え込む。

 

 

「せやけど、おかしいな。レリックが出てくるのがちょい早いような……」

「だから会って話したかったの。これをどう判断すべきか、どう動くべきか」

 

 

 カリムの表情からもその言葉どおりに迷っているのが彼女の横顔から判断できた。

 

 

「レリック事件も、その後に起こるはずの事件も、対処を失敗するわけにはいかないもの」

 

 

 彼女が悩みだすと、深く、深く考えてしまうことをよく知っていたはやては、ボタンをたたいて、画面を閉じ暗幕を解き、

 

 

「……はやて?」

「まぁ、何があっても、きっと大丈夫。カリムが力を貸してくれたおかげで、部隊はもういつでも動かせる。即戦力の隊長たちはもちろん、新人フォワードたちも実践可能。予想外の緊急事態にもちゃんと対応できる下地(したじ)ができてる。そやから、大丈夫!」

 

 

 カリムの悩みを払拭させた。

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 着替え終了後――コタロウはシャワー室への移動中にアンカーガンの修理を済ませていた――新デバイスの紹介をおこなう予定だが、なのははすこし遅れるということで、途中ヴィータにも会ったこともあり、彼女が新人たちをラボまで連れて行くことになった。機械士(マシナリー)は最後尾を先ほどよりもさらに眠そうに付いてきていた。

 

 

「お前ェ等、新デバイスの説明しっかり聞いとけよォ」

 

 

 ヴィータがラボのドアを開けて、シャリオに挨拶すると新人たちはすぐに4つのデバイスに目がいった。

 

 

「これが――」

「私たちの――」

 

 

 新デバイス、ですか? と2人は感嘆で言葉を詰まらせる。

 

 

「そうでーす。設計主任私! 協力なのはさん、フェイトさん、レイジングハートさん、リイン曹長、コタロウさん」

 

 

 シャリオは出来上がったのをまるで自分のもののように大手を振って喜んで説明する。

 

「ストラーダとケリュケイオンは変化なし、かな?」

「うん、そうなのかな?」

「ちがいまーす! 変化無しは外見だけですよ?」

「リインさん」

 

 

 エリオとキャロが彼女に気がつくと、リインは元気に挨拶した。

 

 

「2人はちゃんとしたデバイスの使用経験がなかったですから、感触になれてもらうために、基礎フレームと最低限の機能だけでお渡ししていたのです」

「あれで最低限!?」

「本当に!?」

 

 

 リインの説明に2人は大きく目を見開く。

 

 

「皆が使うことになる4機は六課の前戦メンバーとメカニックスタッフが技術と経験の(すい)を集めて完成させた最新型。部隊の目的にあわせて、そして、みんなの個性に合わせて作られた文句なしに最高の機体です」

 

 

 彼女は自分の周りにその4機を集めて、

 

 

「この()たちは皆、まだ生まれたばかりですが、いろんな人の思いや願いが込められてて、いっぱい時間をかけてやっと完成したです」

 

 

 4人それぞれの手元に移動させる。

 

 

「ただの道具や武器と思わないで、大切に。だけど、性能の限界まで思い切り全開で使ってあげてほしいです」

「……この()たちもね、きっとそれを望んでるから」

 

 

 シャリオも作成者としてそれを願っているようだ。

 

 

[……なぁ、リイン]

[なんです、ヴィータちゃん? 念話なんかで]

 

 

 皆が機体に親しみを込めたり、少々考えることがあったりとそれぞれ見つめているなか、ヴィータが念話でリインに話しかける。

 

 

[その『いろんな人』っていうのはコイツも入ってるのか?]

 

 

 彼女はみんなの邪魔にならないよう、部屋の(すみ)でふわっとあくびをしているコタロウに視線を送った。

 はっきりいって、(にら)むに近い。しかし、ヴィータが思うのも無理はなかった。彼は終始眠そうであくびをしたり、目をこすったりと不真面目に見えることこの上なしなのである。

 

 

[ま、まぁ、協力といってもデータ収集がメインでしたけど、立派な協力者です」

[ふぅん。昨日のリインフォースの件もあったが、つかみどころが無ェヤツだな]

[それは、私も同じですぅ]

 

 

 また、彼はあくびをする。

 

 

[なぁ。一発、渇入れてもいいか?]

[そ、それは……]

 

 

 リインが頬を掻き、ヴィータが彼に近づこうとしたときにドアが開いた。

 

 

「ごめんごめん。おまたせ」

「あ、なのはさーん」

 

 

 突然の話題の切り替えにもってこいとばかりに、リインは彼女に近づく。

 

 

「ナイスタイミングです」

 

 

 シャリオは念話で聞いていないはずなのに、言葉は彼女たちにぴったりであった。

 

 

「ちょうどこれから機能説明をしようかと」

「そう。もうすぐに使える状態なんだよね」

「はい!」

 

 

 リインの言葉に合わせるように、シャリオは端末画面を開く。

 

 

「まず、その機たちみんな、何段階に分けて出力リミッターをかけてるのね。一番最初の段階だと、そんなにびっくりする程のパワーが出るわけじゃないから。まずはそれで扱いを覚えていって――」

「で、各自が今の出力を扱いきれるようになったら、私やフェイト隊長、リインやシャーリーの判断で解除していくから――」

「ちょうど、一緒にレベルアップしていくような感じですね」

 

 

 その説明を受け、ふと気づいたようにティアナがすこし視線を上げる。

 

 

「出力リミッターというと、なのはさんたちにもかかってますよね?」

「あぁ、私たちはデバイスだけじゃなくて、本人にもだけどね」

 

 

 新人たちが驚き、コタロウは舟をこぎ、ヴィータは片眉を吊り上げる。

 

 

「能力限定って言ってね。うちの隊長と副隊長はみんなだよ。私とフェイト隊長、ヴィータ副隊長とシグナム副隊長」

 

 

「はやてちゃんもですね」

 

 

 うん。となのはは頷き、『なんで、わざわざリミッターなんてかけるんだろうか?』 と新人たち数名は首を傾げた。

 

 

「ほら。部隊ごとに保有できる魔導師ランクの総計規模って決まってるじゃない?」

 

 

 話す相手に知っているように話しかけるが、スバルとキャロは苦笑いして頷く。

 

 

「1つの部隊でたくさんの優秀な魔導師を保有したい場合は、そこうまくおさまるよう、魔力の出力リミッターをかけるですよ?」

「まぁ、裏技っちゃあ、裏技なんだけどねぇ」

「うちの場合だと、はやて隊長が(フォー)ランクダウンで隊長たちは大体(ツー)ランクダウンかな?」

 

 

 なのはは指折り説明する。

 

 

「4つ!? 八神部隊長ってSS(ダブルエス)ランクのはずだから――」

「Aランクまで落としてるんですか?」

「はやてちゃんもいろいろ苦労してるです……」

「なのはさんは?」

「私はもともと(エス)クラスだったから、2.5ランクダウンでAA(ダブルエー)。だからもうすぐ1人でみんなの相手をするのは(つら)くなってくるかなぁ」

「隊長さんたちははやてちゃんの。はやてちゃんは直接の上司のカリムさんか、部隊の監査役クロノ提督の許可がないと、リミッター解除できないですし、許可は滅多(めった)なことでは出せないそうです」

 

 

 リインが肩を落とすのに応じて、新人たちも肩を落とす。

 

 

「まぁ、隊長たちの話は心の片隅くらいでいいよ。今は皆のデバイスのこと」

 

 

 なのはが話題を元に戻し、シャリオは端末に触れた。

 

 

「新型も皆の訓練データを基準に調整してるから、いきなり使っても違和感は無いと思うんだけどね」

「午後の訓練のときにでもテストして、微調整しようか」

「遠隔調整もできますから、手間はほとんどかからないと思いますよ?」

 

 

 それを聞いて、なのはは嘆息する。

 

 

「便利だよねぇ、最近は」

「便利ですぅ」

 

 

 便利という言葉にシャリオは思い出したようにスバルのほうを向いた。

 

 

「スバルのほうはリボルバーナックルとのシンクロ機能もうまく設定できてるからね」

「本当ですか!?」

「持ち運びがラクになるように収納と瞬間装着の機能もつけといた」

 

 

 それもまた便利だというようにスバルは感嘆し、彼女にお礼を言う。

 デバイスの一通りの説明が終わったところで、コタロウは説明開始から3回目のあくびをすると、ヴィータの彼に対する視線は片眉のつり上がりから睨みに変わった。

 

 

「おい、お前!」

「はい。なんでしょうか、ヴィータ三等空尉?」

 

 

 遅れてきたなのはを含め新人たちはヴィータの性格上、怒るのも無理はないと思っていた。

 今日のコタロウはいつも半目開きの寝ぼけ目がより一層閉じていて、傍目(はため)からみても眠そうなのは一目瞭然で、なのはやスバルが聞くと、彼は正直に『昨日はよく眠れなかったので』と、答えた。

 しかし、だれも心配や注意をしなかったのはその様な状態でも彼はミスすることなく、作業をこなしていたからである。その代表的な例が先ほどのスバルのローラーブーツとティアナのアンカーガンで、どちらも2週間前の状態に戻っていた。いや、なぜかその時より使いやすくなっていると彼女たちは動作確認することによりそれぞれ感じていた。

 

 

「お前のデバイスじゃねェから関係無ェかもしんねェけど。しっかり聞いとけ!」

 

 

 一気に場が気まずくなる。

 

 

「リイン、やっぱりちょっと言わせろ。 コイツ、不真面目すぎるだろう」

 

 

 昨日のこととは別だ。といわんばかりにコタロウに睨みをきかせるが、コタロウは特におびえるということはせず、逆に新人たちが肩をすくめた。

 

 

「……しっかりとお話は聞いていましたが、不真面目とはどういうことでしょうか?」

 

 

 表情を変えずに返答する彼に、ヴィータは言葉を無くす。

 

 

[ティア。えっと、コタロウさんって、ヴィータ副隊長怒らせようとしてるのかな?]

[わからないわよ。私に聞いたって]

 

 

 彼女たちは横目で目を合わせて念話すると、

 

 

[でも、コタロウさんってそんなことするような人には見えないんですが……]

[うん]

 

 

 エリオとキャロにもとばしていたらしく会話に参加する。ここ2週間彼と一緒にいて、そのような人間ではないことは明確であった。

 

 

「どういうことでしょうかァ? どう見ても(うつつ)だっただろうが! しっかり聞いていたんだったら、さっきのシャリオの説明もう一回やってみろ!」

 

 

 声を大にして命令すると、

 

 

「ヴィータちゃん、落ち着こう?」

「そうですぅ。新人さんたちが怯えているです」

 

 

 なのはとリインが彼女を(なだ)めたが、(むし)ろ彼女たちに飛び火した。

 

 

「なのはもなのはだぞ。こいつにしっかり注意を――」

 

 

 その時である。

 

 

「『そうでーす。設計主任私。 協力なのはさん、フェイトさん、レイジングハートさん、リイン曹長、コタロウさん』」

 

 

 コタロウを除くこの場にいる全員の頭に疑問符がでた。

 

 

「『……この機たちもね、きっとそれを望んでるから』

 『ナイスタイミングです』」

 

 

 一瞬、何を言い出すのかと思ったが、すぐに全員の疑問符が感嘆符になる。

 

 

「『ちょうどこれから機能説明をしようかと』

 『まず、その機たちみんな、何段階に分けて出力リミッターをかけてるのね。一番最初の段階だと、そんなにびっくりする程のパワーが出るわけじゃないから。まずはそれで扱いを覚えていって――』

 すみません、説明上高町一等空尉、リインフォース・ツヴァイ空曹長の言葉も入れさせていただきます。

 『で、各自が今の出力を扱いきれるようになったら、私やフェイト隊長、リインやシャーリーの判断で解除していくから――』

 『ちょうど、一緒にレベルアップしていくような感じですね』」

 

 

『(……これ、さっきの会話だ)』

 

 

 コタロウの口から出てきたのは、先ほどの説明云々ではなく会話そのものを復唱し始めたのだ。それは特に本人に似せているわけではなく、言葉だけであるが。

 

 

「おい、おま――」

「『ほら。部隊ごとに保有できる魔導師ランクの総計規模って決まってるじゃない?』」

 

 彼の復唱は止まらない。

 

 

「前後関係上、またリインフォース空曹長の発言を入れさせていただきます。

 『1つの部隊でたくさんの優秀な魔導師を保有したい場合は、そこうまくおさまるよう、魔力の出力リミッターをかけるですよ?』

 『まぁ、裏技っちゃあ、裏技なんだけどねぇ』」

「やめ――」

「『新型も皆の訓練データを基準に調整してるから、いきなり使っても違和感は無いと思うんだけどね』」

「や、やめろォーーー!!」

「『遠隔調整もでき……はい」

 

 

 コタロウはヴィータに目線を合わせるため、復唱をとめるとあごをすこしひく。

 

 

「……あの、私どこか間違えていましたでしょうか?」

 

 

 突然止められたことを不思議に思い首を傾げる。

 

 

「あ、あの、そうではなくてですね。コタロウさん、さっきの会話覚えてるんですか?」

 

 

 すこし肩で呼吸をしているヴィータの代わりにリインが質問すると、

 

 

「はい。そのつもりでした。ヴィータ三等空尉が『しっかり聞いとけよ』と(おっしゃ)っていましたので」

 

 

 間違えていましたか。と、息をつく。

 

 

「えと、ヴィータちゃんがそう言ったから覚えたということですか?」

 

 

 こくりと頷く彼が、ヴィータの初めの発言を真似ないところをみると、どうやら彼女の発言は覚えておらず、本当に彼女が『言ってから』覚え始めたらしい。

 

 

「ヴィータ三等空尉」

 

 

 コタロウはふっと顔を上げてヴィータへ向き直り、

 

 

「よろしければ、どのあたりが間違えていたのか教えていただきたいのですが?」

「…………」

 

 

 聞かれた彼女は押し黙った。

 

 

[おい、なのは]

[な、何、ヴィータちゃん?]

[コイツ、いつもこんななのか?]

[うーん。こんな感じ、かな? 態度、発言はともかく、不真面目じゃないの。むしろすんごい真面目なの]

 

 

 彼の発言で場の空気がまた変化しはじめたときであった。

 画面の表示が赤く表示されると同時に警報(アラート)が部屋に鳴り響く。

 

 

「このアラートって――」

「一級警戒態勢?」

 

 

 すぐになのはが反応する。

 

 

「グリフィス君!」

 

 

 彼女が画面に話しかけると、すぐに相手にアクセスし、画面の向こうにグリフィスが現れ、

 

 

「はい。教会本部から出動要請です!」

 

 

 その横の画面にはやてと通信がつながる。

 

 

「グリフィスか? こちらはやて。教会騎士団の調査部で追ってたレリックらしきものが見つかった。場所はエーリム山岳丘陵地区。対象は山岳リニアレールで移動中」

 

 

「……まさか」

「そのまさかや。内部に侵入したガジェットのせいで、車両の制御が奪われてる。リニアレール車内のガジェットは最低でも30体。大型や飛行型も未確認タイプも出てるかもしれへん。いきなりハードな初出動や。なのはちゃん、フェイトちゃん、いけるか?」

 

 

 どうやら、フェイトにも通信はつながっているらしい。

 

 

「私はいつでも」

 

 

 彼女の音声だけが聞こえてきた。

 

 

「私も」

 

 

 それになのも同意する。

 

 

「スバル、ティアナ、エリオ、キャロ。皆も大丈夫(オッケー)か?」

『はい!』

「よし。いいお返事や。シフトはA-3、グリフィス君は隊舎での指揮。リインは現場管制」

『はい』

「ヴィータは隊舎で待機できるか?」

「おう! 2次の緊急時はまかせとけ!」

「なのはちゃん、フェイトちゃんは現場指揮」

「うん!」

「ほんなら――」

 

 

 はやては自らも奮い立たせるために立ち上がる。

 

 

「機動六課フォワード部隊、出動!」

『はい!』

 

 

 すぐに隊舎にもどるから。と、通信は切れた。

 

 

「よし! それじゃあ新人ども、しっかりな」

『はい!』

 

 

 そうして、新人たちは急いでこの場を後にする。

 

 

「じゃあ、わたしたちもいくね!」

「隊舎のこと、おまかせしますです!」

 

 

 そう言って、部屋を出て行こうとする。

 

 

「高町一等空尉」

 

 

 リインは先に出て行き、なのはは振り向く。

 

 

「私はどうすればよろしいでしょうか?」

 

 

 彼女ははやてより、『その場にいる隊長、副隊長陣にコタロウの配備を一存する』ということは聞いていた。

 

 

(コタロウさん、かぁ……リインには現場管制に力を(そそ)いでほしいし、通信はシャーリーたちで対応できる。うん)

 

 

「一緒に来ていただけませんか? 現場近くでのデバイス遠隔調整をお願いできます」

 

 

 さすがに隊舎にきて初めての警戒態勢(ファースト・アラート)に、コタロウの眠気は一気に覚めた。

 

 

 

 

 

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