ーー雨の音が聴こえる
ーーポツリポツリと大地を叩く音
ーーあぁ、これはきっと
ーー僕が二度と聴くことが出来ない音だ
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「ここら辺でしたよね…?」
辺りを見回す、うーん、入り口になってそうな場所はないような…
ん?あれは…
「彼処の岩…少しだけ前に出てますね」
何の変哲もないただの大きな岩、だがそれが私には少し不自然に浮き出て見えた
「これはもしかして…痛ッ」
「何ですか!?この波紋は!」
これは…結界…?何でこんな所に…
まるで何かを閉じ込め…!?
「…あぁなるほど…封印…ですね…?
たまたま偶然爺さんの依頼場所に封印があった、なーんて…」
ないな、ないない、これは完全に嵌められた…何が偵察ですか、アレじゃないですか割かしヤバそうじゃないですか
「仕方ありませんね、手荒ですが…」
「壊しましょうか!!」
仕方ないです、仕方ないんです、これを見越して私をここに寄越したんでしょうし……多分。
ま、まぁ、いいとしましょう、私が。
「…まずはこの結界の性質を調べますか」
少しだけ仙術で力を手に流し結界に触れる、土地に宿った力による結界なら結界を破壊すればいい、誰かが作った結界なら…まぁ、術者を潰すした方がいいですが…
「ん…?あれ?この結界かなり膨大な術式で出来ているのに、なんて言うか…薄い?感じがしますね?」
「…でも、この程度の結界なら」
さっきと同じように手に力を流し結界に触れる、そして指先から広げるように結界に力を流す。
これだけ脆くなった結界だ、力を流しただけで勝手にバランスが崩れてくれる。
「やっぱりだ」
力を流した後パキパキと音を立て結界にヒビが入ってゆく
「思ったより脆い結界でしたね、まぁ、これなら中の存在も大したことはないでしょ」
そう気持ちを軽くし私は中に踏み入った
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「中は完全に洞窟ですね」
「少し寒いですね…仙術を使いましょうか」
寒いから仕方ないです、無駄使いなんかじゃないんです。
…まぁ、そんなことは置いておいてです
「静か過ぎませんか…?この洞窟は」
虫の足音やコウモリなどの羽音、水が落ちる音さえしない。湿気が殆ど無いので恐らく此処には水源の類はないのでしょう、そして恐らく虫などの生き物もいない。
「もしかして生物じゃないんですか?」
なにそれ逆に怖い、こんな環境で住める生物なんて神ぐらいじゃないですかね?
うーん…何なんですかね…?神器とか?なら偵察の必要性が分からない、呪いで暴走したりするんですかね?なにそれこわい
「ぐだぐだ考えても仕方ないですね、腹を括りましょう」
私割と強い筈ですし大丈夫な筈です…よね?そもそもあの爺さんもある程度考えて依頼を…してなさそうですねあのジジイ、帰ったらぶっ殺してやる。
「おっと…あれですかね」
少し先に開けた空間が見えた、
多分、彼処に居るんでしょうね。
「はぁ…早く帰りたいです……」
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「思ったより広いですね」
洞窟の一番奥、少し開けた場所に辿り着いた訳ですけど…
「何も無いですね」
壁の所々にあるよく分からない鉱石が青白く発光しているお陰でそこまで暗くはない、
確かに洞窟としては些かおかしな場所ではあるが何を見に行けと…
…いや、奥に何か居ますね……
「…みつけた」
何かの気配を感じて奥に進むと壁にもたれかかるように座っている少女?を見つけた、
動く気配ありませんね…?目も瞑っていますし…
「寝てるんですかね?」
このままじゃ偵察も何も分からないですね…もう少し近寄って……
パチッ
「……君は…誰…?」
…どうやら起こしてしまったらしい、
いや、失礼なんですけど、こんな場所に居る人だから窶れてがりがりの見た目をしているのだろうと想像してましたが…そうでもなさそうですね?少し華奢な感じはしますけど。
それより、ここは返事をしないと失礼ですよね。
「あー、私は太上老君です、
君の名前を聞いてもいいですか?」
「僕の名前は骸、君は……
あぁ、いや、頼まれたんだね…亀に」
「…知り合いなんですか?」
「そうだね…そんなところかな
…それより君はどうやって此処に入って来たの?」
どうやって…?あ、あー、そういえば結界ありましたね、拍子抜けだったので忘れてました。
ん?という事は…やっぱりこの子は結界で閉じ込められてたってことになるんですよね…?多分
「えっと、結界みたいなのを壊して入って来たんですが…」
そういうと少女は目を皿の様に見開いてこちらを見た、やはり何か訳あり何だろうか、何も聞かされていない私には分からないことなのだが。
「…そうか…やっと…やっと僕は……」
今度は目を伏せ譫言の様に何かを呟いている、大丈夫だろうか、…もしかして結界壊しちゃ駄目だったんですかね…?
「…僕は…開放されたのか…」
「あの…どうかしたんですか?」
声をかけるとビクッと身体を震わせこちらを見る、口をワナワナと震わせては何かを言おうとするが何一つとして聴こえてこない。
「えっと…君は何をしにきたの…?」
何かの感情をごちゃ混ぜにしたような、何も感情を抱いていないようなそんな表情で彼女は問う
「私はカッサパに頼まれて貴方を見に来たんです」
「そう…なら、もう用事は終わったの?」
「え、えぇ、そうなりますが…」
「…なら、帰った方がいい」
「…え?」
この子は何を…いや、おかしな事じゃない、依頼は偵察だ、なら私はもう帰るべきなんだろう、偵察なら見つかっちゃダメだったかもしれないですけど…
「君は、僕の事を知ってここに来た訳じゃないんでしょ?」
「まぁ…そうですね」
「なら、早く帰った方がいい」
全くもってその通りなんだけど、私には何故彼女がそれを促すのかがどうも引っかかっていて。それが理由なのかは分からないけれど私はその理由を知りたい、今確かにそう思っていた。
私らしくないなと何処かで思いながらも、それが気になっているのも私で事実には他ならないのだ、それに此処から離れた後彼女を知ることが出来なくなるのではないか?そんな気がどこかでしていたから。
「…君は、此処に閉じ込められていたんですか?」
私は彼女を知ろうと思った。
「うん、そうだよ」
「何で…何でなんですか?」
「…」
目を逸らし何処かを眺める骸、私にはこの子の目に何が写っているのか分からない。
「君は、それを知りたいの?」
「…えぇ」
「そう…でも「教えて下さい」…分かったよ」
我ながら強引だとは思う。
だけど私は今言わないといけないような気がして、大事な何かにもう二度と届かなくなるような…そんな気が何故かしたから。
「なら…話す前に一つ、お願い…じゃないんだけどさ」
「何ですか?」
「…君がこの話を聞いた後、僕をどうしても構わない、それだけ頭に入れておいて」
「はい?いやいや、何を…」
「聞かなくてもいいんだよ、知る必要なんてない話なんだから」
何を…とは言えなかった、聞き返すにはあまりに彼女の放つ空気は重く、そして私はそれを理解するには彼女を知らなさ過ぎた。
「…分かりました、話してください」
「うん…それじゃあ、僕が此処に閉じ込められていた
その理由を話そうか」
そういった骸の表情はやっぱり私には読めなかったけれど、私の目には輝く宝石の様にとても綺麗に写った。
骸(むくろ)
黒髪ロング、薄茶色のワンピースの様な長袖の服を着て、棺桶の形をしたネックレスをしている。
見た目は可愛らしい少女のようだが…