半透明の世界   作:雀興梠

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雨漏りを受ける桶

昔、ある所に一つの魂が生まれた。

それは不思議な事に肉体を持たず"魂"として生まれていた、それだけなら問題はなかったが生まれた時の役割が悪かった。

存在にはそれぞれ役割がある、生物としてのジャンルだったり、人としての立場だったり。

その魂の役割は怨霊、怨みを持ち死した霊、あまりにも性質が違う存在であったが紛れもなくその魂の役割は怨霊だった。

けれど世界はそれを認めず魂を消そうとした、反発する程の自我もまだ持たない魂に抵抗する事など出来るはずもなく無抵抗のまま消されてゆく。

その時だった。

 

「ミツケタ…ミツケタ!!」

 

怨霊の一つが魂を見つけそしてその魂に吸い込まれていく、それがトリガーだったのか様々な所から怨霊が集まりそしてその魂に吸い込まれる。

次第にその魂は意思を持ち、肉体を持つようになる、意志とは関係なく世界中の怨霊を吸収し続け力を増大させ続けるただの"怨霊"ではなくなってしまった"何か"、世界にとってはイレギュラーであり存在そのものが不都合な何か。

あまりにも存在が大きくなり過ぎたその何かを世界は最早消すことは出来ず、だが野放しにする訳にもいかず。

最果ての場所、力のないものを拒む渾沌の谷

、その端にある小さな洞窟に世界は魂を鎖で縛り封印した。

 

⿴⿻⿸⿴⿻⿸⿴⿻⿸⿴⿻⿸⿴⿻⿸⿴⿻⿸⿴⿻⿸

 

想像を絶する話だった、この子が閉じ込められている理由は私が聞いたところでどうにか出来るものではなくて、何と言っていいのか…

あ、いや、結界は壊したので閉じ込められていた、ですが……

 

…あれ!?

 

「…あの、私が壊した結界って森羅万象が作った結界だったんですよね?」

 

いやいやいやいや、私程度で森羅万象が作った結界を壊せる訳が…

 

「うん、そうだよ」

 

「マジですか」

 

「うん」

 

あ、なんかきょとんとして頷いてるこの子可愛い…

そうじゃないな私?

 

「いや、あの結界割と脆かったですよ…!?」

 

「もう…えっと、数億年?は経ってるし脆くもなるんじゃないかな」

 

「成程…それなら納得……」

 

…出来ませんよ!?何億年閉じ込められてたんですか!?

 

「君は何歳なんですか…?」

 

「あー…えっとね…」

 

「…あ、いやあまり女性に年齢を聞くものじゃないですね」

 

「え?」

 

ん?

 

「いや失礼だったかな…と思ったんですが…」

 

「??…なんで?」

 

もしかして億単位で閉じ込められていたせいでそこら辺分からないんですかね?

 

「…あ、もしかして僕のこと女性だと思ってる…?」

 

「へ…?」

 

「…男…何だけど…」

 

!?!??

 

…こ、ここで骸の容姿を一から見てみましょう、腰まで伸びた艶やかな黒髪、大きく宝石の様に綺麗な瞳、華奢で色白な肌、幼さを残してはいるものの整った容姿…

 

「美少女じゃないですか…」

 

「??」

 

よく分からなくて首を傾げてる姿も可愛い…

 

「本当に男なんだけど…」

 

「…大丈夫ですよ!分かってますって」

 

可愛いなぁ…

 

「…何か信じてもらえてない気がするんだけど…」

 

 

⿴⿻⿸⿴⿻⿸⿴⿻⿸⿴⿻⿸⿴⿻⿸⿴⿻⿸⿴⿻⿸

 

「落ち着いた?」

 

「…すみません、お手数お掛けしました」

 

ここまでで、分かったことを少し私の中でまとめましょうか。

まず彼は何億年も生きていてそしてここに閉じ込められていたという事、彼は怨霊を吸収するという事、彼は…

世界に必要とされていないという事。

 

それは私如きじゃどうにかなるものではないけれど、私は彼の話を聞き私は彼の過去を知ったのだ。

だからか私は今彼を支えたいなんて考えていた、自分らしくない考えだ、太上老君としてなら今までなら選ぶことの無かったであろう考え、だけど今私は確かにそう考えて、そうしたいと思っていた。

 

「君は…これからどうしたいですか」

 

「どうしたい?」

 

「そうです、何が食べたいとか何処か行きたいとか何でもいいんです、何かないですか?」

 

「何か…」

 

彼が何億年もたった一人でこの場所に居たのだとしたら、それは私には想像さえできない苦痛なのだろうと思う。会ったばかりの相手が何故深入りする、烏滸がましいと思われるかもしれない、そんな事は分かっている、それでもそう思うのだからもう仕方ない。

 

「何も…ないかな」

 

そう言い骸は笑う、

何も無い、それを彼は当然だと言うように笑う。彼が何をしたという訳ではなく、存在を悪とされ閉じ込められてなお、彼はそれを怨むどころか何も無かったかのように。

 

「…そうですか」

 

「なら…私とならどうですか」

 

「君と?それはどうい「変な事は駄目ですよ」…何もしないよ?」

 

「それはそれで何かイラっとしませんか?」

 

「いや…僕男だし同意求められても….」

 

あ…、そうでしたね。

あまりにも可愛らし…ん"ん"ッ、可愛いので忘れてました。

 

「それより私としたいことです、何かないですか?どんな小さなことでもいいんです」

 

 

 

「君としたいことか…」

 

 

 

 

何か

 

何か一つだっていい

 

それが何でもなくてもいい

 

だから

 

だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やっぱり分からないや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ

 

あぁ

 

充分だ

 

私の中に君がいて

 

君の中にも私がいるのなら

 

私は

 

「それなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のしたいことを聞いてもらってもいいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方と私は傍にいられる

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