魔法少女まどか?ナノカ   作:唐揚ちきん

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一日、遅れてしまいましたが唐揚ちきんからのクリスマスプレゼントです。

最初は『輪になって踊ろう』というタイトルにしていたのですが、合わない事に気付いて『そして誰も居なくなった』に変えました。


特別番外編 if百六話『そして誰も居なくなった』

~まどか視点~

 

 

「教えてあげるよ、元同胞(インキュベーター)。エントロピーを超えた力がどこからやってくるのかを……誰かのために何かをしたいという気持ちが時には大きな力になるって事を!」

 

 そう叫んだニュゥべえが政夫くんの魂をソウルジェムに作り変えて、身体の外側へと引っ張っていく。

 身体の中から取り出されたソウルジェムは澄んだ黒色の輝きを放ちながら引きずり出された。

 私は彼の手を強く握って、祈った。

 ――お願い、政夫くん。戻ってきて!

 体温が少しずつ冷めていくその手のひらに温もりが帰ってくる事を願う。

 もう一度目を開けてほしい。いつもみたいに笑いかけてほしい。

 こんなにも何かを祈った事なんて今までなかった。そして、これからもないと思う。

 

「これで……政夫の魂は…………っ!? な、何で!?」

 

 ニュゥべえのツインテールの髪の先に包まれた黒いソウルジェムは煌々(こうこう)と光を放っていたかと思うと突然、その輝きを点滅させ始めた。

 

「ニュ、ニュゥべえ!? どうしたの!? 政夫くんのソウルジェムに何か起きたのっ!?」

 

 顔を引きつらせたニュゥべえに私は不安になって尋ねるが、彼女が答えを返してくれるその前に――政夫くんの黒いソウルジェムが跳ねた。

 ニュゥべえの髪から離れたソウルジェムは政夫くんの胸のちょうど真上の空中まで跳ね上がると、そこに固定されたようにピタリと動きを止める。

 そして、まるで空気を入れられた風船のようにその大きさを膨らませていく。

 十倍、百倍そのさらに上の倍率まで膨れ上がった黒いソウルジェムは政夫くんよりも遥かに大きくなり、目を瞑ったままの彼の身体をその卵型の球体の中へと引きずり込んだ。

 

「政夫くん!?」

 

 私が声を声を上げた瞬間、美国さんの家の中だった周囲の世界が一変した。

 そこは黒と白で統一されたモノクロの世界。私やニュゥべえたちが居る場所には、真っ黒い床に白い座席がいくつも置いてある観客席のように変わっていた。

 目の前にあるのは白い幕を下ろされた舞台のように見える。

 私はこれに似た光景を知っている。そうここは……。

 

「魔女の結界……何故っ?」

 

 胸に怪我を負った状態で美国さんが戸惑った声を出した。その後ろに居るほむらちゃんも呆然とした顔をしている。

 

「嘘だ……」

 

 ぽつりと私の目の前にしゃがみ込んでいたニュゥべえが呟いた。

 

「ニュ、ニュゥべえ……これって」

 

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだ……」

 

 私の声も聞こえておらず、壊れたラジオのように同じ言葉をぼそぼそと紡ぎ出し続けている。

 

「ニュ、ニュゥべえ!!」

 

 肩を揺すって正気に戻ってもらおうとするけれど、ニュゥべえは見開いた目を濁らせて同じように喋り続けるだけだった。

 

『無駄だよ。まどか』

 

 振り向くと私のすぐ近くの座席の上にキュゥべえが尻尾を揺らして座っていた。

 心なしか、私の目には今の状況を喜んでいるように見えた。

 

『彼女は失敗したんだ』

 

「失敗……?」

 

『ああ、そうだよ。ボクに任せておけばこんな事にはならなかったのに。意地を張ったばかりに……見なよ、ほら』

 

 ニュゥべえが尻尾で指した方を向くと、白い幕が上がって、その奥にあった白い舞台が露出した。

 スポットライトに照らされた舞台には真っ黒い何かがこちらを向いて待っていた。

 それは手足の生えた卵型の真っ黒い生き物だった。

 その身体の色よりも少しだけ濃い燕尾服とズボン、それからシルクハットを被っている。白い手袋で覆われた手には飾りのないマジシャンが使うようなステッキが握られていた。

 テレビでももうなかなか見られない古典的な手品師の格好に私の目には映った。

 

『あれは、政夫だったものだよ』

 

「え……え?」

 

 初めは言われた意味が分からなかった。

 政夫くんと目の前の舞台に立っている手品師姿の化け物とが繋がらなかった。

 キュゥべえの言葉に反応できたのは後ろの方の座席に居た美国さんとほむらちゃんだ。

 

「それは……まー君が魔女になってしまったという事?」

 

「嘘、そんなはずはない。だって政夫は!?」

 

『魔女、ではないね。通常の魔法少女システムではなく、無理やりソウルジェムを造り出したために起きた暴走だから、あれには新しい名前が必要だ』

 

「そんな事を聞いているんじゃないわ!?」

 

 叫ぶ美国さんにキュゥべえは取り合わず、私を静かに見つめる。

 

『どうする? まどか。ボクと契約してくれれば政夫を元に戻せるよ』

 

 私はその言葉を聞き、人ではなくなってしまった政夫くんを見た。

 のっぺりとした顔には目も口もなく、ただ光沢のない曲線だけがこちらに向いている。

 攻撃してくる様子はなかったけれど、そこに友好的なものも感じられない。まるで中身の人が抜け出した着ぐるみのような無機物感を漂わせている。

 ニュゥべえを一瞥するが、今も身体を震わせ、呆然と「嘘だ」と呟きを吐き続けていた。

 もう、魔法少女になるならないなんて言っている場合ではなかった。政夫くんを一刻も早く元に戻してあげたい。それ以外の事は頭になかった。

 

「……分かったよ。キュゥべえ、私の……」

 

 私は覚悟を決めて、キュゥべえと契約しようとしたその時。

 結界の後ろの方、観客席の後ろにある扉が砕かれ、そこからマミさんが姿を現した。

 マミさんはこちらを向いたと、ほとんど同時にほむらちゃんに黄色いリボンを飛ばして、身体を縛る。舞台の方に完全に気を取られていたほむらちゃんは成す(すべ)なくそれに捕まった。

 

「マミ……!?」

 

 マミさんが私の元に降りてくると、それに続くようにして扉からさやかちゃんや杏子ちゃん、それに呉さんも皆、魔法少女の格好になって武器を構えている。

 そして、私の前に来て安心したようににっこりと笑いかけてくれた。

 

「遅くなっちゃったけど、鹿目さん無事? 暁美さんが貴女を殺そうとしているってメールが来たけれど……」

 

 そう言いながら、マミさんはほむらちゃんを怖い顔で睨む。

 

「くっ、早くこれを解きなさい! 今はこんな事をしてる場合じゃないのよ!?」

 

 ほむらちゃんはマミさんを睨み返すが、それに取り合わず私を守るにように立つと、視線も向けずに冷たくあしらった。

 

「そうね。……あなたの処遇は後で決めるわ。今はあの魔女をどうにかしないと。行けるかしら、皆?」

 

 さやかちゃんと杏子ちゃんがそれに頷いた。

 

「大丈夫です。連戦ですけど、ソウルジェムもまだほとんど濁ってませんから」

 

「任せなよ。ちゃちゃっと終わらせようぜ?」

 

 呉さんもそれに続く。

 

「そうだね。もっとも私は魔女よりもその馬鹿を切り刻みたいけど」

 

 三人の答えに満足したマミさんは小さく微笑んで、リボンをマスケット銃の形状にしてそれを構える。

 

「それじゃ、行くわよ!」

 

「ま、待って、それは……」

 

 マミさんたちの登場で一瞬忘れかけたけれど、あの化け物は政夫くんなのだ。止めないといけない。

 しかし、私のそんな思いも空しく、マミさんたちは化け物になった政夫くんが居る舞台まで観客席から跳んで行ってしまう。

 

「ま……待ちなさい、くぅっ……」

 

 美国さんも呼び止めようとするが、胸の傷が深すぎて立ち上がる事さえできずに膝を突いた。持たれかかった白い座席に垂れた血液が滴り落ちて、赤い染みを作る。

 

「美国さん!?」

 

 近付こうとする私を美国さんは手で制して、舞台を指差した。

 息も絶え絶えな顔で私に向けた瞳には、政夫くんへの攻撃を止めさせてほしいという想いが込められている。

 

「……分かりました。政夫くんは必ず私が助けます」

 

 その言葉を聞くと美国さんは安心したようにその場に倒れ込んだ。

 私はマミさんたちに声を届かせるため、舞台の方まで走り出そうとしたところ、それをほむらちゃんに呼び止められた。

 

「待って、まどか」

 

 ほむらちゃんは私の顔を泣きそうな顔で見つめて頼み込む。

 

「貴女に頼み事を言う資格がない事は十分に分かってる。けれど、このままじゃ政夫がマミたちに倒されてしまうわ……。この拘束を外してくれれば私なら時間を止めて向こうにまで行ける」

 

 私を殺そうとしたほむらちゃんのその言葉に複雑な気分が湧き上がってくるのを感じた。

 はっきり言えば、こうなったのも全部ほむらちゃんが原因だ。恨んでいるし、憎んでいる。

 もう友達とも思えない。信頼もできない。

 けれど、その政夫くんを助けたいという思いだけは信用できた。

 今は迷っている場合じゃない。ここはほむらちゃんと一緒に行った方が確実だ。

 

「分かった。でも、どうすればいいの?」

 

「ありがとう。そこに私がさっきまで持っていた銃が転がっているはずよ。探してみて」

 

 ほむらちゃんに従って、足元を見ると拳銃が落ちていた。私の命を奪おうとした、そして、政夫くんを撃った銃。

 恐る恐る拾い上げると、ほむらちゃんは私に次の指示を出す。

 

「その銃でこのリボンの中心にある、錠前を撃って」

 

 見れば、ほむらちゃんを縛っているリボンの真ん中あたりに装飾の施された錠前がぶら下げられていた。

 これを壊せば、リボンの拘束が解けるのだとほむらちゃんは言う。

 

「で、できないよ。私銃なんて……」

 

「早くして! 政夫が助からなくなってもいいの!?」

 

 そうだ。早くしないと政夫くんがマミさんたちに倒されちゃう。

 その事を思い出した瞬間、銃を人に向けて撃つ恐怖もなど心の奥から消し飛んだ。

 手には震えもなく、私は集中して引き金を引く。

 初めて撃った弾丸は見事に錠前の中心に命中した。

 錠前は砕け、それと同時にほむらちゃんを拘束していたリボンは溶けるように消えていく。

 解放されたほむらちゃんは私の手を掴むと、彼女の手に付いている楯を弄った。

 周囲の動きが何もかも停止し、音さえも聞こえなくなる。

 ほむらちゃんと一緒に私は観客席の座席を跨いで駆けて、舞台の方へと進んで行った。

 舞台では今まさに化け物の姿になった政夫くんとマミさんたちが相対しているところだった。

 私とほむらちゃんは政夫くんとマミさんたちの前に立つと、ほむらちゃんは楯を再び弄り、時の流れを戻した。

 

「なっ、鹿目さん!? それに暁美さんも!?」

 

「どうしてこっちに来たの、まどか!?」

 

 マミさんとさやかちゃんは私たちが来た事に驚いていた。杏子ちゃんも呉さんも同じように目を見開いている。

 私はそんな皆に声を上げて叫ぶ。

 

「待って! 待ってください!! これは、この魔女は政夫くんなんです!!」

 

「え? それってどういう事……?」

 

「ニュゥべえが……あそこに居る白い魔法少女が死にかけた政夫の魂をソウルジェム化した際に暴走してしまったのよ」

 

 ほむらちゃんが補足するようにそう付け足した。

 それを聞くと、マミさんたちの顔色が見る見る内に変わっていく。

 

「じゃあ、これは……」

 

「政夫、なの?」

 

「嘘だろ……?」

 

「そ、そんな……」

 

 ニュゥべえと同じように茫然自失になった皆はそれぞれの武器を舞台の上に落とした。

 今まで微動だにしなかった化け物になった政夫くんはゆっくりと動き出し、ステッキを持っていない方の大きな手でそっと私を抱き上げた。

 

「あ……」

 

 僅かに驚いたが、その手付きは優しげで安心感が持てるものだった。黒い身体に柔らかく押し付けるように私は抱えられる。

 

「ほら見てください。姿は変わっても政夫くんの心は変わっていませ――」

 

 そう言って、下のマミさんたちを向こうした時にぐしゃりと何かが潰れる音が聞こえた。

 音のした先には黒いステッキが振り下ろされて、その下に潰れた赤い水溜りができていた。

 

「えっ?」

 

 その場所にはさっきまでマミさんが居た『はず』だった。けれど、そこには赤い水溜りと黄色いひしゃげた何かがあるだけだった。

 

「ま、マミ、さん……?」

 

 マミさんのすぐ隣に居たさやかちゃんが震える声で、潰れたそれに声をかける。ぐちゃぐちゃに潰れて、元の形も分からなくなったそれを……マミさんと呼んだ。

 赤い水溜りの上には金色のロールが浮いている。頼りになる、先輩のトレードマークの髪型に似ていた。

 

「う、うそ……?」

 

 マミさんが政夫くんに――殺された。

 その事実が脳に染み込むまで一分ほどかかった。

 

「政夫、お前……マミを、マミを殺したのか!?」

 

 杏子ちゃんが政夫くんに怒声を浴びせる。

 政夫くんはそれに何も答えない。ただ、マミさんを潰したステッキを軽く振り上げただけだった。

 

「お前ぇぇぇぇえええ!!」

 

 槍を構えて、宙へ跳んだ杏子ちゃんの姿が一瞬にして数十人に増えた。

 叫びながら、その槍の穂先を全て政夫くんに向ける。

 それに慌てる事なく、政夫くんはステッキを持つ方の手でパチンと指を鳴らした。澄んだ音が舞台に響き渡る。

 空中に居た杏子ちゃんの姿は一人になっていた。

 

「なっ……ロッソ・ファンタズマが!?」

 

 驚愕してバランスを崩した杏子ちゃんに政夫くんはステッキを振り降ろす。

 

「呉さん!」

 

「分かってる!」

 

 そのステッキをさやかちゃんが剣で受け止めた。その隙に杏子ちゃんの身体は呉さんが抱きとめて助ける。

 だが、政夫くんの握っていたステッキは黒い大きな布へと変化し、さやかちゃんの身体に覆い被さった。

 

「何、こ……」

 

 さやかちゃんに被さられた布はひらひらと舞台へ落ちていく。何の凹凸もなく、床に広がった黒い布にはさやかちゃんの姿は影も形もなくなっていた。

 

「さ、さやか!?」

 

「消えた……?」

 

 さやかちゃんが姿が見えなくなった事で動きを止めてしまった二人へ、政夫くんは被っていたシルクハットを取って投げた。

 宙を滑るように飛ぶシルクハットは杏子ちゃんと呉さんを一纏めにして、すっぽりとその中に吸い入れてしまう。

 布と同じように舞台へ落ちたそれを政夫くんは持ち上げ、逆さまにすると中から出てて来たのは吸い込まれた二人ではなく、赤と黒の二羽の鳩だった。

 飛び出た二羽の鳩は観客席の、ニュゥべえと美国さんの方へそれそれ飛んで行き、彼女たちの肩に停まるとそこで爆発した。

 爆風と煙が晴れた先には誰も居ない観客が客席だけが残されている。二人の姿も二羽の鳩ももう居ない。

 

「……何なの、これ……」

 

 やっと、私が搾り出した言葉はそれだけだった。

 皆、消えていなくなっていく。もう、ここに居るのは私と……そうだ。ほむらちゃんがまだ居るはずだ。

 

「ほむらちゃん!」

 

 政夫くんの手の中から下を見つめると、そこにはほむらちゃんが居た。

 ほむらちゃんは政夫くんの足に縋りつくようにして涙を流している。

 

「ごめんさい。私のせいで貴方はこんな姿になってしまって……でも、大丈夫よ。私は貴方がどんな姿になっても愛しているから」

 

 政夫くんの黒い革のような靴にそっとキスをした。そして、うっとりとした様子で頬擦りををする。

 私はそれを見て、心底ぞっとした。

 信じられなかった。理解ができなかった。

 ほむらちゃんは皆が居なくなった事なんか、心からどうでもいいと思っている事が伝わってきたからだ。

 ほむらちゃんは政夫くんの事以外見えていない。マミさんの事も、さやかちゃんの事も、杏子ちゃんの事も、呉さんの事も、美国さんの事も、ニュゥべえの事も、見てすらいなかったのだろう。

 そうでなかったら、あんなに穏やかな顔はできる訳がない。

 ――狂ってる。まともじゃない。

 私は魔女や今の政夫くんよりもよっぽどほむらちゃんの事が恐ろしく感じられた。

 

「政夫、私は貴方の事を……」

 

 ほむらちゃんが最後まで言い終わらない内にその言葉は途切れた。

 いつの間にか新しいステッキを握っていた政夫くんがその杖先でほむらちゃんを潰したからだ。

 これで私以外の皆が政夫くんに殺されてしまった。

 もう恐怖も感じられなかった。脳のどこかがそのまま、切れてしまったような不思議な気分。

 これ以上に狂っているのに、私は自分の家に居るかのような安心感に満たされたいた。

 

「あはっ、あはははははは」

 

 笑い声が聞こえた。

 女の子の笑い声だ。

 とても近くから聞こえる。

 聞き覚えるその笑い声。

 ああ、私だ。

 笑っているのは――私だ。

 どこからか聞こえたそれは私の口から吐き出されたものだった。

 

「あはははははははははははははははははははははははははは!!」

 

 もうどうでもいい。何も考えたくない。何もかもなくなってしまえばいい。

 正気じゃない。誰も彼も。嫌嫌嫌嫌。

 

『まどか、ボクと契約すれば皆助けられるよ』

 

 舞台に居たキュゥべえが何か言っている。でも、私の心には響かない。

 

『ボクと契約し……』

 

 黒いシルクハットがキュゥべえの上に降って来た。

 その上から、ステッキが突き刺さる。

 キュゥべえの声も舞台の上からなくなると、私の笑い声だけがこだまする。

 政夫くんに抱き締められたまま、私は目を瞑って笑う。

 それなのに目から流れているのは涙だった。

 

「あはははは、ねえ、政夫くん……私も、わたしも殺して……」

 

 政夫くんはそれを聞き入れてくれたように、燕尾服のボタンを外し、胸元を開いた。

 そこには黒々とした大きな穴が広がっていた。奈落の底のような、この世界の何よりも黒い穴。

 私はそこへ喜んで飛び込んで行く。

 深い深い闇のような黒は私を優しく迎え入れてくれた。

 




バッドエンドの一つです。誰も幸せにならないエンドですね☆

政夫の魔王になった姿。
『エリックヤンハヌッセン』。奇術師の魔王。その性質は『必然』。

使い魔を持たず、人間を食べない。そのために『魔女の口付け』のシンボルはない。
魔法や奇跡を許さない魔王には魔法は効かない。こいつに殺された魔法少女の奇跡はその時点で消滅する。(さやかの願った奇跡が消えて、上条君の左手は再び動かなくなる)さらに魔女もまたその憎悪の対象であり、こいつに倒された魔女はグリーフシードごと消える。
『魔女』ではないため、女神になったまどかの奇跡では消し去る事ができない。

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