魔法少女まどか?ナノカ   作:唐揚ちきん

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番外編 ホスト、情操教育を考える

「ッ・・・ショウ!」

 

「そっちの二体は、杏子の動きに合わせて魔女を攻撃!反対側の四体は側面から魔女を攻撃しろ!残りの三体は俺の周囲に集まれ!」

 

俺、魅月ショウは現在、杏子と共に魔女と交戦中だった。

杏子に魔女の注意を引いてもらって、俺は能力で使い魔達を操り、魔女を側面から攻める。

 

『mvkrmermnv,srelp;dpffkrkflfd.flkvodfl』

 

魔女は形容しがたい声を上げて、杏子でも攻撃した使い魔でもなく、俺を(ねら)って襲い掛かってきた。

いくら化け物つっても、自分の使い魔が俺に利用されてんのが気に食わねえのか?

だけどな。

その考えは・・・命取りだぜ!

 

「魔女の面にぶちかませッ!」

 

俺の周囲にあらかじめ配置しておいた使い魔で、突っ込んできた魔女にカウンターをかけさせる。

 

『ldjrosd;sbnrti!!?』

 

魔女と激突した三体の内、二体は使い魔は消滅したが、魔女を(ひる)ませる事に成功した。当たり所がよかったんだろう。思った以上にダメージを食らわせられたっぽい。

 

「使い魔ども!集合して一緒に一斉攻撃!杏子はトドメを頼む!」

 

「おう。任せな!」

 

怯んでいる魔女に、俺は間発(かんはつ)入れずに七体の使い魔どもに一斉に攻撃させた。使い魔達は、何の躊躇(ちゅうちょ)なく、勢いをつけて魔女へ特攻していく。

 

魔女から使い魔を奪い、その使い魔で魔女を攻撃する。その事に俺は、ほんの少し罪悪感を感じるが、そんな事を言っても仕方ない。

俺はホスト。

生きるために『女』を利用する。それだけだ。それは使い魔でも変わらない。

 

ほとんどの使い魔が消滅した直後、猛攻(もうこう)で傷ついた魔女を杏子の槍が切り裂いた。

魔女は消滅して、歪んだ背景が元の風景に戻る。

杏子は魔女が落としたグリーフシードを拾うと、嬉しそうに俺の方に近づいてきた。

 

「楽勝楽勝。やっぱ、ショウがいると楽でいいわ。魔力もほとんど使わずにすむしな」

 

「そいつはよかった。……おい、残りの使い魔。自害し……」

 

俺は生き残った使い魔を自害させるために命令を下そうとした。こいつらは、放っておくと、人を食らって、魔女になるからな。魔女を倒したら、死んでもらわないといけない。

 

「ちょっと待て、ショウ。そのまま逃がしといてよ」

 

「……杏子。俺と約束したよな。グリーフシードに余裕があるときは使い魔も殺すって」

 

「っち。融通(ゆうずう)聞かねーな、ショウは。分かったよ」

 

やれやれと言った調子で杏子は(あきら)めた。

杏子はちゃんと理解していない気がする。

使い魔を逃がせば、人が死ぬ事を。それが自分と同年代や年下の子供かもしれないという事を。

『頭』ではなく、『心』で理解していない。

 

「使い魔ども、自害しろ」

 

「……あ~あ」

 

俺が使い魔を自害させると、杏子はもったいなさそうに声を出した。何度も(しか)ったが、杏子はいつもわざとそんな風に言う。

本当は悪い子じゃないのに、妙にこいつは自分本位なところが玉に(きず)だ。

 

自分が『社会の中で生きている』という意識が薄いのかもしれない。集団意識が薄いから、自分以外の人間がどうなっても関係ないと本気で思ってやがる。

 

「……杏子」

 

「何だよ。またお説教か?悪かったよ」

 

「いや、違う。お前、学校行け。金と手続きは俺がしてやるから」

 

「はあ!?何いきなり言い出すんだよ!」

 

杏子は今、学校に行っていない。年齢は自分でも覚えていないとか言ってたが、背格好からして中学生くらいだろう。

やっぱ、このくらいの年齢のガキは学校で協調性とかを身につけるべきだ。

 

「だ、大体アタシ死んだ事になってるから、戸籍だってないし……」

 

「じゃあ戸籍、用意したら学校行くんだな?」

 

「それは……」

 

杏子にしては、珍しく(うつむ)き、言葉を(にご)した。

ほ~。まったく、行きたくないわけじゃないワケだ。ゲーセン言ってるか、菓子食ってるだけじゃつまんねぇだろうからな。だったら、話は簡単だ。

 

「決まりだな。今週中にはお前を中学校に入れてやる」

 

さて、俺の『お得意様』のマダム達に頼んで、偽装戸籍を作ってもらうとするか。

ナンバー1ホストの腕の見せ所だ。

 

そうするとやっぱ学校は風見野か?でも、この辺の中学は私立ばっかだし。

……いや、隣の見滝原駅の近くに市立の中学校があったはずだ。駅に近い俺の家から考えれば、風見野の市立や公立よりもあそこの方が近いな。

 

「……いいのかよ」

 

ぽつりと小さな声で杏子が聞いてくる。

頼まなくてもでかい声ではきはき物を言うタイプのくせに、こういう時は無駄に萎縮(いしゅく)しやがる。

 

「いいんだよ。つーか、今まで戸籍もないガキを家に連れ込んでたの方がやべーよ。警察にばれたら、普通に捕まってたぞ」

 

「そうじゃなくて!……アタシはショウに世話になりっぱなしで、その上さらに学校まで……」

 

杏子が喋り終わる前に紅い綺麗な髪に指を突っ込んで、がしがしと頭を撫でる。

ったく、何でこいつは。

 

「ちょっとッ、人が真面目に話してる時に」

 

「俺は少なくとも、お前に俺ができる事をしてやりたいだけだ」

 

「ッ……」

 

「分かったら、素直にもっと迷惑かけろ、馬鹿」

 

カレンに、妹にしてやれなかった事を杏子にしてやりたい。

もう一度、『兄貴』としての義務を果たしたい。

それが俺にできるせめてもの償いだ。

 




杏子がそろそろ本編で書けそうです。

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