「ッ・・・ショウ!」
「そっちの二体は、杏子の動きに合わせて魔女を攻撃!反対側の四体は側面から魔女を攻撃しろ!残りの三体は俺の周囲に集まれ!」
俺、魅月ショウは現在、杏子と共に魔女と交戦中だった。
杏子に魔女の注意を引いてもらって、俺は能力で使い魔達を操り、魔女を側面から攻める。
『mvkrmermnv,srelp;dpffkrkflfd.flkvodfl』
魔女は形容しがたい声を上げて、杏子でも攻撃した使い魔でもなく、俺を
いくら化け物つっても、自分の使い魔が俺に利用されてんのが気に食わねえのか?
だけどな。
その考えは・・・命取りだぜ!
「魔女の面にぶちかませッ!」
俺の周囲にあらかじめ配置しておいた使い魔で、突っ込んできた魔女にカウンターをかけさせる。
『ldjrosd;sbnrti!!?』
魔女と激突した三体の内、二体は使い魔は消滅したが、魔女を
「使い魔ども!集合して一緒に一斉攻撃!杏子はトドメを頼む!」
「おう。任せな!」
怯んでいる魔女に、俺は
魔女から使い魔を奪い、その使い魔で魔女を攻撃する。その事に俺は、ほんの少し罪悪感を感じるが、そんな事を言っても仕方ない。
俺はホスト。
生きるために『女』を利用する。それだけだ。それは使い魔でも変わらない。
ほとんどの使い魔が消滅した直後、
魔女は消滅して、歪んだ背景が元の風景に戻る。
杏子は魔女が落としたグリーフシードを拾うと、嬉しそうに俺の方に近づいてきた。
「楽勝楽勝。やっぱ、ショウがいると楽でいいわ。魔力もほとんど使わずにすむしな」
「そいつはよかった。……おい、残りの使い魔。自害し……」
俺は生き残った使い魔を自害させるために命令を下そうとした。こいつらは、放っておくと、人を食らって、魔女になるからな。魔女を倒したら、死んでもらわないといけない。
「ちょっと待て、ショウ。そのまま逃がしといてよ」
「……杏子。俺と約束したよな。グリーフシードに余裕があるときは使い魔も殺すって」
「っち。
やれやれと言った調子で杏子は
杏子はちゃんと理解していない気がする。
使い魔を逃がせば、人が死ぬ事を。それが自分と同年代や年下の子供かもしれないという事を。
『頭』ではなく、『心』で理解していない。
「使い魔ども、自害しろ」
「……あ~あ」
俺が使い魔を自害させると、杏子はもったいなさそうに声を出した。何度も
本当は悪い子じゃないのに、妙にこいつは自分本位なところが玉に
自分が『社会の中で生きている』という意識が薄いのかもしれない。集団意識が薄いから、自分以外の人間がどうなっても関係ないと本気で思ってやがる。
「……杏子」
「何だよ。またお説教か?悪かったよ」
「いや、違う。お前、学校行け。金と手続きは俺がしてやるから」
「はあ!?何いきなり言い出すんだよ!」
杏子は今、学校に行っていない。年齢は自分でも覚えていないとか言ってたが、背格好からして中学生くらいだろう。
やっぱ、このくらいの年齢のガキは学校で協調性とかを身につけるべきだ。
「だ、大体アタシ死んだ事になってるから、戸籍だってないし……」
「じゃあ戸籍、用意したら学校行くんだな?」
「それは……」
杏子にしては、珍しく
ほ~。まったく、行きたくないわけじゃないワケだ。ゲーセン言ってるか、菓子食ってるだけじゃつまんねぇだろうからな。だったら、話は簡単だ。
「決まりだな。今週中にはお前を中学校に入れてやる」
さて、俺の『お得意様』のマダム達に頼んで、偽装戸籍を作ってもらうとするか。
ナンバー1ホストの腕の見せ所だ。
そうするとやっぱ学校は風見野か?でも、この辺の中学は私立ばっかだし。
……いや、隣の見滝原駅の近くに市立の中学校があったはずだ。駅に近い俺の家から考えれば、風見野の市立や公立よりもあそこの方が近いな。
「……いいのかよ」
ぽつりと小さな声で杏子が聞いてくる。
頼まなくてもでかい声ではきはき物を言うタイプのくせに、こういう時は無駄に
「いいんだよ。つーか、今まで戸籍もないガキを家に連れ込んでたの方がやべーよ。警察にばれたら、普通に捕まってたぞ」
「そうじゃなくて!……アタシはショウに世話になりっぱなしで、その上さらに学校まで……」
杏子が喋り終わる前に紅い綺麗な髪に指を突っ込んで、がしがしと頭を撫でる。
ったく、何でこいつは。
「ちょっとッ、人が真面目に話してる時に」
「俺は少なくとも、お前に俺ができる事をしてやりたいだけだ」
「ッ……」
「分かったら、素直にもっと迷惑かけろ、馬鹿」
カレンに、妹にしてやれなかった事を杏子にしてやりたい。
もう一度、『兄貴』としての義務を果たしたい。
それが俺にできるせめてもの償いだ。
杏子がそろそろ本編で書けそうです。