ていうかキャラが多いせいで政夫視点だけだと書ききれないので、このような感じになってしまいました。
~ほむら視点~
私は本当にこんな事をしていていいのだろうか?
ふと、そんな考えを脳裏に
今頃、政夫は土曜日だというのにマミのために時間を潰して、彼女を再び立ち上がらせるよう尽力している。それも私が相談したせいで、だ。
なのに、当の私はこうやって喫茶店でコーヒーを飲んでいる。自分のやっている行為が酷く無責任な事に感じられてならなかった。
「このお店初めて来たけど雰囲気が良いお店だね……どうしたの、ほむらちゃん?」
私の目の前に座って店内を興味深そうに眺めていたまどかが、私の顔を見て急に心配そうに声をかける。いけない。今はまどかと一緒に居るんだった。彼女の前で心配させるような顔をする訳にはいかない。
大体、政夫も電話で自分よりまどかの事を気にしろと言っていた。ここでまどかを余計な事で悩ませるなんて本末転倒もいいところだ。
「何でもないわ、大丈夫よ」
内心を悟らせまいとしたせいで必要以上に冷たい声が出てしまった。表情もいつもより硬くなっているかもしれない。
「そ、そう……ごめんね」
やってしまったと思った時にはもう遅かった。私のきつく聞こえてしまう言い方にまどかは申し訳なさそうに俯く。
まどかに余計な心配をさせないための台詞が逆に彼女を傷つけてしまう。本当に私は相変わらず、どうしようもない程コミュニケーション能力が低い。
重火器や爆発物の扱いは上達していっても、これだけは一向にうまくならないままだ。何か言って今の発言を補おうとしても何を言ったらいいのか、まるで浮かんできてくれない。
最近は学校の昼休みでも皆と喋っているから多少はマシになってきたと思っていたが、振り返ってみれば私は大抵受け答えするだけで能動的に会話に入っていっていなかった。それも大抵が政夫が振ってきたものばかり……。
今まで気付かなかったけれど、私が会話に入っていきやすいように政夫が話の流れを調整してくれていたのだろう。どこまでも気遣いばかりの男。きっと政夫の半分は気遣いでできているに違いないわ。
もし彼が私の立場だったら、今のまどかにどんな事言うのだろうか?
きっとこんな感じだ。
「気にしなくていいわ。でも心配してくれてありがとうね」
そう言いながら、私はまどかに少し嬉しそうに笑みを浮かべて見せた。
“魔法少女の秘密”を知ってからはいつの間に笑い方を忘れていたけれど、今では自然と浮かべる事ができる。誰も信頼できなかったあの頃と違う。私には心を許せる人が居る。
「よかった……。怒らせちゃったかと思ったよ」
ほっとしたようにまどかも顔を上げて、私に笑い返してくれた。この笑顔は多分いつも通りの私だったら向けてもらえなかったものだ。そもそも、まどかが私に
私は忘れていた。この笑顔を守るために私が魔法少女になった事を。
知らない間にまどかを救う事だけに必死になって、理由や目的を見失っていた。私にとってまどかがどんな存在なのか改めて理解できたような気がする。
「そんな事ないわ。ただ心配されるのになれてなくて、つい言い方がきつくなっただけよ」
「そっか。学校でもあんまり喋ってくれないから嫌われてるのかと思ってたよ。こうやってほむらちゃんと話せて本当によかった」
そんな風に思われていたのね……。いつもの時間軸よりはずっと仲良くやれている、なんて考えていた私は何にも分かっていなかった。
政夫はここまで理解して、まどかと一緒に遊びに行く事を進めたのかしら。
「それで今日は何で急に遊びに行こうって誘ってくれたの? あ、もちろん、嫌とかじゃなくて、ほむらちゃんがこういう風に誘ってくれるの初めてだからちょっとびっくりで」
「分かってるわ。誤解なんてしないから安心して」
ちゃんと向き合って初めて分かる事がある。私はまどかの事を理解していたつもりで実際のところは分かっていなかった。
ずっと目を背けて逃げていた。どうせ信じてもらえないと諦めていた。
でも、それでは前へ進めない。私の事を理解してもらうにはまずは話さなければならない。
私はまどかに全てを話した。私が魔法少女になった理由と私が見てきた絶望を。
話し終わった後、コーヒーカップを取って、口元へ持っていく。中身はすっかり
まどかは今にも泣き出しそうなほど、悲痛に表情を歪ませていた。
「そんな……あんまりだよ。そんなのってないよ……」
「本当に信じてくれるの? こんな話を」
全てを吐き出した今でもまどかに信じてもらえるか不安だった。仮に信じてもらえたとしても受け入れてくれるか分からない。
どれだけ取り繕ったとしても、私は魔女になった『まどか』をずっと見捨て続けたのだから。
「信じるよ……。ほむらちゃんのこと、嘘つきには見えないもん」
まるで当然のようにまどかは私にそう言った。
ずっと聞きたかった言葉が私の胸に染み込んでくる。視界が
「確証なんて何もないのよ……説得力だって」
「『魔法少女にならなくたって、できることぐらいいくらでもあるよ』」
「え?」
私の言葉を
しっかりと私を見据えて話すその姿が、最初の世界でのまどかを思い出させた。
「政夫くんがね、上条君が入院してた病院のグリーフシードを抜いてキュゥべえの背中に入れた時に私にそう言ってくれたの。だから、ずっと自分にもできることを今日まで考え続けて、ようやく答えが出たよ」
「答え……?」
「うん。私って鈍くさいし、何の取り柄もないし、私できることなんてほとんどないけど……それでも友達を信じることくらいはできる。だから、ほむらちゃんのこと絶対に信じるよ。それが私が魔法少女にならなくてもできることだから」
まどかは手を伸ばして私の手を取って握ってくれた。手のひらから温かさが伝わってくる。
優しく包み込むのではなく、ただただ
きっとこれが『この世界のまどか』の強さなんだろう。魔法少女としてではない、人間の強さ。
「……ありがとう、まどか」
「私の方がお礼を言う方だよ。守ってくれてありがとうね、ほむらちゃん」
「もうそろそろ映画上映する時間だよ」
まどかが携帯を開いて時間を確認する。
もうそんなに時間が経っていたのね。全然気が付かなかった。
もともと、この喫茶店に居るのは映画館での上映時刻まで時間があり、まどかが入りたそうな顔をしていたからだ。内装がピンク系統の色で統一されているファンシーな喫茶店だったので、正直に言うと私のような人間にはちょっと居心地が悪かった。
「それじゃあ、そろそろ行きましょうか。映画館は確かショッピングモールの方だったかしら」
「うん。あ、そうだ。映画見終わったら、お昼どうしようか?」
「まどかの行きたいところでいいわ」
「じゃあ、いつも皆で言ってるハンバーガー屋さんでいい?」
「構わないわ」
まどかと二人で並んで歩くのは、何故だかとても嬉しく感じられた。
『
私は今初めて、本当の意味でまどかと友達になれた気がした。
杏子とさやかたちの方は……書かなくてもいいですかね。じゃないと話が進展しなくなってしまいますし。
今回はまどかを書かないとタイトル詐欺になる恐れがあるので出しただけです。
おりこ出したいんですけど、これ以上キャラ増やしたら話が破綻しそうです。
ハッ、その場合は政夫に退場してもらえばいいですね!