政夫デレる
これは暁美これは暁美これは暁美これは暁美これは暁美これは暁美これは暁美これは暁美これは暁美これは暁美。
「この前にまどかと一緒に行ってみたそこの通りにあるお店にしようかと思っているのだけれど、……政夫?」
僕が今、手を繋いでいる女の子は暁美だ。暁美なのだ。ほんのりと甘い香りが漂ってくるが気のせいだ。
もう何回も手を握り合った仲だ。故に今更、変に意識する必要も照れる必要もない。皆無だ。
お互いの手のひら同士を密着させ、指を絡め合う
なぜなら、相手は暁美だからだ!
人の家に無断で窓から侵入し、平然と鹿目さんにストーキング行為をしてくる上に、僕に数回ほど銃を向けてきた女だ。
脳内でひたすら自分に言い聞かせていると、自然と揺らいでいた精神が統一される。
ほ~ら、こう考えればさっきまであたふたしていたことが嘘のようだ。心に平静が戻ってくる。
「政夫!」
ぐいっと腕を引かれて、僕は身体ごと横を向かされた。
「ちゃんと私の話聞いていたの?」
薄紫色のワンピースに三つ編みと眼鏡が飛び切り似合う女の子が、僕の身体にぴったりとくっ付いていた。
責めるような上目遣いと僅かにむっとした口元は男心をくすぐる小悪魔のようで非常に魅力的だった。
正常に戻り始めていた僕の思考は再び、急激にかき乱れる。
「き、聞いてたよ。鹿目さんと一緒に行ったお店、だったよね? うん、い、いいね。行ってみよう」
言葉自体は耳にしていたので何とか答えられたが、僕の心臓は爆発的に心拍数を増やす。
「聞いているのなら反応してくれないと分からないわ」
「ごめんね。ほ、ほら、女の子とデートしているから緊張しちゃってさ」
去年は彼女と付き合っていたのでデート経験はあるが、ここまでタイプの女の子とするのは初めてだ。
それに元彼女とデートする時はいつも僕がリードしていたので、主導権を握られているデートもまた初体験だった。
「……まどかと二人だけでカラオケに行ったって聞いたけれど?」
「あ、あれはそういう
何だろう。まるでこれでは恋人に浮気を誤魔化している彼氏みたいだ。……全然違うのに。
というか、そもそも僕が弁明する必要なんてないんじゃないだろうか。
「そうかしら? まどかからは貴方もとても楽しそうだったって聞いたのだけれどね」
「それはまあ、僕も僕で色々疲れてたし、いい気分転換にはなったけどさ。でも……」
じっとした視線を僕に向けていただが、僕が本気で否定し始めると暁美は小さく笑みを漏らすと元の柔らかい表情を戻した。
「冗談よ。本気にしたかしら?」
「……酷いな。こっちは真剣に君の機嫌を損ねたのかと心配したのに」
「あら、それは貴方が私の話に無反応だった理由を言い訳したからじゃない?」
そう言って、僕の胸板にこつんと頭を預けた。
僕は何も言えなくなり、素直に謝罪の言葉を述べる。
「…………すいませんでした」
「よろしい。じゃあ、行きましょうか?」
……この人、僕が今まで出会った中で最強なんじゃないかと思えてきた。
暁美に連れてこられた店の店内は内装のカラーリングがピンク系統で統一されており、ぬいぐるみが所狭しと並んでいた。
第一感想は、中高生くらいの女の子が好きそうだな、だった。一応はカフェのようだが、少なくても僕はこの店には一人なら絶対に入らなかったと確信できる。
暁美も普段のストレートでむっつり顔だったのなら、この店には合わなかっただろう。
普段の暁美ならば。
対面する席に座るとメニューを眺めている暁美をじっと見つめる。
三つ編みで眼鏡をかけており、かつ表情の柔らかい今の彼女は見事にこの店にマッチしていた。
すごく可愛いと素直に思う。今回が初対面だったら、一目惚れしていたかもしれない。
でも、何だろう。今日の暁美はどこかぎこちないというか、少し無理をしているように見える。不自然なまでに僕好みの女の子を演じているような感じがどうにも否めない。
「このお店は少し変わっていてね。メニューに……」
「ほむらさん」
店の説明をしてくれようとした暁美の言葉を
「無理してない?」
「え……?」
驚いた表情。けれど、それは予想外なことを言われたというよりは、悟られないようにしていたことを指摘されたような顔だった。
「む、無理なんかしていないわ。変な事を言うのね、政夫」
すぐに取り
正直に言えば、それは嬉しい。
僕の好みの女の子になってくれたことについてではなく、僕を喜ばせるためにそこまでしてくれた暁美の心意気が嬉しかった。
だが、一方的に彼女が気を遣って楽しめないのなら、デートの意味がない。それではただの接待だ。
「ほむらさん」
僕は手を伸ばして、暁美の眼鏡を優しく外した。
「あ……」
テーブルの上に眼鏡を置いて、にっこりと笑いかけた。
「僕は普段のほむらさんとデートがしたいな」
「……いいの? いつもの私で」
柔和な、でもどこかぎこちなかった暁美の微笑みの仮面が眼鏡と同時に
普段の無愛想なむっつりした表情が懐かしく感じられた。
「うん」
「可愛くないわよ」
「それを決めるのは僕だよ」
「愛想もないわ」
「君が不器用なことくらいとっくに承知さ」
「眼鏡とこの髪型、好きなんじゃなかったの?」
「好きだよ。はっきり言うと心奪われた。顔を合わせてからどきどきしっぱなしだよ」
「なら……」
何でそれを止めさせようとするのか。そう聞きたいのだろう。
言わなくても手に取るように分かった。だから、僕はこう答えることにした。
「僕は今日、『暁美ほむら』とデートをしに来たんだ」
無理に僕の好みに合わせている君は『暁美ほむら』じゃないと、そういう意味合いを込めた台詞。
好き嫌いではなく、僕は暁美とデートがしたかった。
彼女が望むような楽しいデートを過ごさせてあげたかった。
「……せっかく、貴方の好きそうな仕草を勉強して来たのに無駄になったわね」
「無駄じゃないさ。すごく嬉しかった。でも、君が楽しめないデートなら僕はここに来た意味がない」
「頑固ね」
「知らなかった?」
「知ってたわ」
諦めたように溜め息を吐くと三つ編みに編んでいた髪を普段のストレートに戻した。
ファサっという擬音語が似合うほど、豪快に髪をかき上げる。
「場所も変えましょうか。政夫、着いて来て」
座っていた椅子から立ち上がるとテーブルの上の眼鏡と髪を結っていた紫色のリボンを掴み、暁美は店の出入り口の扉へときびきびとした動作で歩いて行く。
これが暁美だよなと思う反面、もったいないことしたなと後悔する自分が居た。
そんな自分の内心に苦笑いをしながら、暁美の後ろを歩いて、店内から出た。
それにしても、入るだけ入って何も注文せず、店から出ることが本当に多い。もうこの店には来ないと思うが、店員さんにそういう傍迷惑な客だと思われるのは嫌だな。
次に入った店はある意味で僕と暁美に馴染みのある、あのファミレスだった。
この店にはいい思い出がない。何より、ここに来ると何一つ料理を食べられないというジンクスが生まれてしまった。
けれど、暁美とのデートにここほど『らしい』店はない。
このファミレスは、暁美と初めて面と向かって会話した場所だ。もう少し言葉を彩れば、暁美の内心に触れた場所とも言える。
「この店、覚えている?」
「覚えていない訳ないでしょう? 私、ここで貴方に泣かされたのよ?」
「……その言い方には語弊があると思うよ」
暁美は、さっきの眼鏡姿とは打って変わって、僕の家に来る時のように自然体でリラックスしていた。
やはりこっちの方が彼女らしい。下手に媚びているよりもふてぶてしいくらいの方がしっくりくる。
……ただ不適切な発言のせいで、他の客に僕が白い目で見られてしまったが。
一番奥の窓際の席に腰掛けると、暁美は思い出したようにふっと笑った。
「ちょうどこの席だったわね。あの時の貴方は私をおちょくっているとしか思わなかったわ」
「実際、君から情報を聞きだすためにわざと挑発的に言ってたからね。ここなら銃も取り出せないと思ったから、少し
「人を危険人物みたいに言わないで」
不本意だと言わんばかりに暁美は口を僅かに
だが、僕がこいつに銃を向けられた回数って結構多かった気がする。いや、そもそも一回だけでも十分おかしいのだけれど。
ストーキング、住居不法侵入、銃刀法違反、爆発物所持、殺人未遂……。犯罪行為だけ箇条書きすると、相当危険な人物であることは紛れもない事実だ。
自分でも、なぜ友達をやってられるのか不思議に思えてくる。
二人とも適当にメニューから注文して、ウェイトレスさんが立ち退いた後、僕らは再び話し始めた。
「あの時の話、ちょっとしていいかな?」
「構わないわ。私と貴方が面と向かい合って、言葉を交わしたのがあれが始まりだったわね」
思い出と言うには少し新しすぎるが、間違っている気はしなかった。きっと、それはあの時と暁美への感情があまりにもかけ離れたからだろう。
まず、最初に暁美に言っておかなければならないのはこれだ。
「ほむらさん。僕は君のことが――心の底から嫌いだったよ」
「………………え゛?」
聞いたことないほど濁った暁美の声を聞いた。口を半開きにしたまま、凍りついたように硬直している。
そんな声も出せるのかと感心しつつ、僕は言葉を続ける。
「同じ空間で呼吸をすることさえ、嫌で嫌で仕方がなかった。ほむらさんが初めて僕の部屋に来た時なんかは、君が帰った後に消臭剤を部屋にぶちまけたよ」
あの後は部屋中、消臭剤の臭いが充満して眠れなかった。勢いで行動すると悲劇を招くと学ばせてもらった。
「あの、政夫……私、ひょっとして貴方に嫌われていたの?」
愕然とした顔から、徐々に正気を取り戻してきた暁美が尋ねてくる。
その問いに、僕は問いで答えた。
「逆に聞くけど、ほむらさんはあの頃一度でも僕に好かれるようなことしたっけ?」
両手を顔の前で組んで五秒ほど考え込んだ暁美は、渋い表情で悔しそうに声を絞り出す。
「…………ないわね」
「だろう?」
僕が暁美の容姿に好感を持つような男だったら違ったのかも知れないが、残念ながら僕は暁美の容姿には苦手意識しか持たなかった。
むしろ、容姿がいいからこそ、何をしても許されると勘違いしているんじゃないかと思っていた。
数値で表すならば、『-500』くらいだろうか。とにかく
「でも、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないかしら……?」
「銃口向けてきた人に好意を持つのは流石にちょっとね……。あの時だけで二回はされてたし」
「それは……その、ね。は、話を変えましょう。ほら、ここに来て私が別の時間軸から来た事やまどかとの関係について話したじゃない?」
強引にも、無理やり話題を変更してきた。よほど嫌悪を持たれた話が聞きたくないと見える。ならば、いいだろう。
「あの話を聞いて僕は君に対する感情が変わったよ」
「そ、そう?」
「うん。嫌悪から軽蔑に変わった」
「酷くなっているわよね、それ!?」
珍しく
だが、そんなことを言われても事実に暁美への印象が下方修正されてしまったのだからどうしようもない。
「いや、違う世界の鹿目さんのことをすべて同一視していたから、『ああ、こいつ。鹿目さんのためとか言いつつ、この世界の鹿目さんも自分の罪悪感を晴らすための記号のように扱っているんだな』って思っちゃって」
「……まあ、それについては私も反省すべき点だと思ったけれど。でも、軽蔑って……」
暁美はがっくりと肩を落として溜め息を吐く。
思った以上に落ち込んでしまったので、ここらで評価を上げたエピソードを挙げるとしよう。
「その軽蔑が変わったのが美樹さんと上条君の件だよ。あの時の君は、僕に美樹さんを傷付けたことに対して本気で怒ってた。鹿目さん以外がどうなろうが構わないって言っていた君がだよ? あのビンタは心に響いたね」
左頬を撫でながら、しみじみに回想に
友達のために本気で怒れる人間は素晴らしいと思う。もっとも、あくまで僕の価値観だが。
「あれは、ただイライラしていただけよ」
「その後も、美樹さんの告白が終わるまで心配そうにじっと待って……」
「も、もうその話はその辺でいいわ!」
恥ずかしそうに慌てる様は素直になれない子供そのもので可愛らしい。
優しい心を人に看破されるのが本当に苦手なようだ。クール振っているくせにこういう時だけ乙女らしい。
本音を言えば、眼鏡と三つ編みの彼女には未練はあるが、こっちの暁美との会話も十分楽しい。
「あれから、僕はようやくほむらさんのことが分かり始めたんだ。本当は優しい女の子なんだ、ってね」
「政夫……」
しんみりとした穏やかな雰囲気が僕と暁美の周りを流れる。
何だか少し気恥ずかしくなったので、それをあえてぶち壊す。
「まあ、この前、いきなり呉先輩に銃を向けたのを見て、再び君の株価は大暴落したんだけど」
「……政夫」
「いや、本当にあれはないよ。本気で気が狂ったのかと思ったし」
「仕方ないじゃない。私にも事情があったのだから」
言い訳するように呟くと、暁美は僅かに
少しいじめ過ぎたか。でも、何一つ嘘は吐いていない。すべて偽らざる僕の本音だ。
どうしようかと考えていると、ウェイトレスさんが注文した料理を運んできた。
僕の方はトマトのパスタで、暁美の方はリゾットだ。昼前なのでお互い、軽めのものを頼んでいた。
二つの皿が僕らの前に置かれると、ウェイトレスさんは去って行った。恐らくは雰囲気で何か察したのだろう。空気の読める人だ。
「じゃあ、食べようか?」
「……ええ」
僕はフォークにパスタを巻き付けるとそれを自分の口元ではなく、暁美の方へ向ける。
「はい。あーん」
「え……え!? ど、どういう事なの!?」
軽く落ち込んでいた暁美は大げさなほどうろたえた。
上条君とのデートしているところを見たから分かってはいたが、暁美は男に本当に免疫がない。今まではずっと鹿目さんのことだけを考えて右往左往していたらしいから無理もないか。
「どういうことって……デートらしい食事作法?」
「それにしたって、は……恥ずかしすぎるわ!!」
真っ赤になって大きな声を上げる暁美。
しかし、そのせいで他の客の視線が集中することになっていまい、返って恥ずかしい思いをするはめになる。
まったく。そこまで騒ぐことかと呆れて、ふと窓に目をやると外の見知らぬ人までが僕ら凝視していた。
否、知り合いだった。
呉先輩が窓の外で噛り付くようにこちらを見ていた。よく見ると巴さんと織莉子姉さんも居た。
何でこんなところにと驚愕したが、呉先輩が掴んでいる物体が目に入った。
先輩が掴んでいるぐったりとしたそれは、最近僕の家で保護しているマスコット、ニュゥべえだった。
「政夫。暁美ほむらと今何をしていたんだい?」
ファミレスの店内に入ってきた三人は僕の隣に呉先輩が、暁美の隣に巴さんと織莉子姉さんが席が座ると、呉先輩が開口一番僕にそう尋ねた。
笑顔ではあったが、貼り付けたような不自然極まりない笑みで正直に言って、ものすごく不気味だ。他の二人も似たような表情を無言で浮かべている。
ニュゥべえは尻尾を呉先輩に握り締められながら、僕に申し訳なさそうに俯いていた。
その様子から察するにデートの件を呉先輩に流失させてしまったのはニュゥべえのようだ。
「……俗に言う『あーん』ですかね?」
ここで嘘を吐く意味はなかったので素直に答えると、呉先輩は小刻みに震えながら再度質問をしてきた。
「それは、何でかな?」
「何でと聞かれましても……。デートしているので、それらしいことをしようかと」
「まず、それだよ! 何で暁美ほむらなんかとデートをしているのかを聞かせてよ!! こいつは政夫の彼女じゃないって……あの時の話は私を守るために吐いた嘘だって言ってたじゃないかっ!?」
火山が噴火を起こしたかの如く、猛烈に激昂する。
暁美が僕の彼女という嘘は、織莉子姉さんたちと和解した後に解いておいたのだが、それが逆に今回悪い方に作用してしまったようだ。
順を追って、今回のデートのことを伝えようと僕は口を開くが、言葉を発する前に暁美が喋り出す。
「貴女に何の関係があるの? 呉キリカ。私と政夫が付き合っていようといなかろうと口出しされる
「な……な……何をぉぉ!? 関係ない事あるか! 私は、政夫の事をこの世で一番愛してる! 誰よりも誰よりもだ!」
暁美が要らない挑発をし、呉先輩がそれに乗る。
険悪なムードが形成され、二人を包むが、今まで黙っていた織莉子姉さんが会話に加わる。
「キリカ」
この場をまるく収めてくれるのかと思い、僕は安心した面持ちで聞いていると織莉子姉さんは静かに語り出した。
「まー君を一番愛しているのは他でもない私よ。考えてもみて。貴女はまー君を異性として愛しているけれど、私は弟として愛しているわ。つまり、家族愛よ。恋愛感情とは比べものにならないわ」
堂々とそう話す織莉子姉さんに僕は落胆と
何を言ってるんだろう、この人。久しぶりに会った時は大人びて見えたんだけどな。
「まあまあ、皆落ち着いて。ほら、夕田君が困っているじゃない」
混沌とし始めていたところ、織莉子姉さんの隣の巴さんが取り成してくれた。
やはり、困った時に頼りになるのは巴さんだ。
「言い争って喧嘩するよりも、ここはひとまず皆で楽しくどこかに遊びに行きましょう。ね、暁美さん」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。私と政夫は今……」
「暁美さん、ここは皆で仲良くした方がずっと楽しいと思うわ。美国さんも呉さんもそう思うでしょう?」
暁美の静止の声をやんわりと受け流し、巴さんは二人へと会話のバトンを回す。
「いいですよ。そうしましょう」
「私もマミにさんせー。じゃあ、どこにする?」
織莉子姉さんも呉先輩も賛同し、今度はどこに行くかをすでに話し始めていた。
三人の勢いに押されて、暁美は諦めたように溜め息を一つ吐く。
「分かったわ。なら、今日のデートはこれで……」
「あの、すみません」
そう言いかけた暁美の言葉を遮り、僕は三人に言った。
「今日は僕とほむらさんはデートしているんですよ」
「ええ、そう聞いたけど。でも、せっかく集まったのだから、ここは五人で遊びましょうよ?」
巴さんの言葉を聞いて、僕は頭を下げる。
「それは大変嬉しい申し出なのですけれど、このデートは二日前から約束していたものなんです。だから、今日一日はほむらさんだけのために使いたいんです。申し訳ないですけど五人で遊ぶのはまた今度ということにお願いできませんか?」
巴さんたち三人はお互いに顔を見合わせた後、小さく頷くと了承してくれた。
巴さんは苦笑い、織莉子姉さんはどこか昔を懐かしむような顔、呉先輩は露骨に不機嫌そうな表情をそれぞれ浮かべて、店を出て行った。
ニュゥべえも尻尾を掴まれたまま、逆さまに連行されて行ったが、僕に小さく手を振っていた。
「はぁ、何だかちょっと疲れちゃったね」
椅子に掛け直して笑いかけると暁美は、さっきよりも俯いていた。
理由が分からなかったので尋ねようとしたが、その前に暁美が顔を上げた。
注文したパスタに入っている完熟トマトのよりも、顔を朱に染めた彼女は悔しそうに呟く。
「貴方って……本当にずるい男ね」
パスタを巻きつけたフォークを暁美の口元まで差し出して、その台詞ににやっと笑ってこう答えた。
「――知らなかった?」
いや、何と言うか結構長くなりましたね。でも、それなのにあんまりデートシーン多くないという状態……。
それと、政夫って狡猾なくせに無駄に誠実なところがあるせいで、もっと楽に幸せになれる道があってもそれを選べないんだろうなと書いていて思いました。
IF政夫「外見で選んで何が悪い!」