テディベアの傍らに   作:こっここーまん

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13話 タネタネの実

 モモンガは島の港へ軍艦を止め、部下を後ろに控えさせたまま、蔓と睨み合っていた。

 この島へ逃げ込んだ海賊シード。タネタネの実の能力者であり、残虐非道。人へ種を植え込み、それを発芽させる。種を植えられた生き物は、種が発芽すると養分を吸い取られ、最後には、植物の苗床となる。

 そのため、すぐにでも島の住人を避難させなければならないのだが、問題は目の前の地面。

 踏み込んだ海兵が、足元から急激に育った蔓に絡み取られ、頭上で吊るされている。

 

「ぅ゛……う゛ぅ゛……」

 

 罠の張られた場所の向こう。村には口から目の前の蔓と似たような蔓を生やした住人が見えていた。おそらく、村中同じ光景が広がっているだろう。

 早く行かなければならない。だが、進むにも罠がある。

 

「モモンガ中将」

「テディ中尉? どうしてここに」

 

 突然現れたテディは、モモンガの前にある蔓を一度確認すると、そのまま進む。

 

「テディ――――」

 

 モモンガの慌てる声と共に急激に育つ蔓。しかし、その蔓にテディの姿はなく、村に置かれた樽の淵に足をかけ、降りた。

 

「問題ありません。先行します」

 

 特に感情も変化させず、進んでいくテディにモモンガは数秒絶句していたが、すぐに気を取り戻すと、

 

「全員、ここで待機! 私だけで向かう」

 

 部下に命令を出すと、テディの後を追いかけた。蔓に捕まらなければいいだけで、罠を作動させてはいけないわけではない。モモンガひとりであれば、罠の回避は無理ではなかった。

 

 テディに追いついた時には、テディは小さく震える口から太い蔓を生やしている男のことを確認していた。

 

「助かるのか?」

「能力者を気絶させても無理ですね」

 

 種は発芽し、その根は内臓を蝕んでいる。悪魔の実の能力は、能力者が気絶すれば発動させていたもの全てが無くなるものと、残るものがあるが、前者であったとしても目の前の男は助からないだろう。

 

「やはり早く捕まえなければ」

「えぇ」

 

 しかし、テディは急ぐわけではなく蔓の先へ目をやっている。

 

「何をしているんだ?」

「タネタネの実の能力者は記録がありません。殺害、捕縛のどちらにしても能力について知っておいて損はありませんし、今後のためにも多少調査は必要かと」

 

 投獄されたとしても、数十年後には悪魔の実として復活し、またそれを食べた人間が海賊になる可能性だってある。その時のためにも、今この場で能力を知っておくことは重要だった。

 モモンガもテディの言葉そのものには同意できたが、その冷静さに表情を強ばらせた。若くして中尉というなら、確かに冷静さは持っているのだろうが、その武勇の噂を聞いたことがない。

 

「それで、わかったことはあるのか?」

「ここまでに確認してきたものでは、感圧式の罠と生物に植え込まれたものの2種。自然系か超人系かは、判断がつきかねます。それから、植え込まれた生き物には、これと同じ種ができます」

 

 テディの指さす先には確かに大きな種ができていた。戦闘報告にあった、シードが種を食べると、突然戦闘能力が上がるという、記述。

 

「まさか、これを!?」

「そのようですね。犬や猫にも植え込まれていたのは、種にも種類があるからか……」

 

 なら、限りがあるはずだ。新世界から命からがら帰ってきたような男がすぐに島を襲ったのも、種のストックがなくなったからだろう。

 

「補充される前にケリをつけるぞ」

 

 モモンガもつい刀を握る手に力が入る。テディも立ち上がり島の中央へと目をやった。蔓の生えた人間を追っていけば、シードの元に辿り着くだろう。

 

「ところで、テディ中尉。どうやってここにきたんだ?」

 

 それはずっと疑問に思っていたことだ。海に囲まれた島に、突然現れた。軍艦もなければ、小舟のひとつもなかった。もちろん、最初から乗っていたなんてことはないし、クザンがいたということもない。

 それこそ、忽然と、当たり前のように現れ、周りにいた海兵でさえ、モモンガが気がつくまで誰一人、海軍大将の副官であるテディの存在に気づいていなかった。

 

「あぁ、それは――」

 

 テディが振り返ろうとしたその瞬間、

 

 目の前に無数の蝶が舞った。

 

 

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