テディベアの傍らに   作:こっここーまん

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18話 東の海

 海の香りに波の音。久々に感じる船独特の揺れ。

 

「うわわっ!」

 

 慌てるユイの声は、ユイを抱え上げた初老の男に向けられたもので、そのまま肩車をされている。

 

「ハハハッ! よく見えるじゃろ!」

「はい! ありがとうございます」

 

 楽しそうにしているユイを眺めていれば、隣で同じようにふたりを眺めていた、ハットを被ったボガードはその様子を微笑ましそうに眺めている。

 

「孫だな。完全に」

「そうですね」

 

 今、テディとユイはガープの船に乗り、東の海に来ていた。

 ここに至る経緯は、あまりにも簡潔で、簡単なものだった。

 ユイがガープに事を話し、すぐに行こうと強行された。以上。

 

「噂には聞いたが、大丈夫だったか?」

 

 ボガードが心配するのは、ガープが東の海へ強行する数日の間の出来事だ。

 センゴクにはガープがムリヤリ任務として通し、一時的にテディがガープに同行。ユイは、途中の施設のある島で降ろし、帰りにまた回収することになっている。

 テディもクザンもそれを聞いたのは全てが終わったあとで、止める暇すらなかった。

 だが、問題は出撃許可ではなかった。

 

「一応、頼まれた分の修正はしてきましたが……どうなるかは」

 

 クザンの書類仕事のことだった。

 世界政府の航路を使えるとはいえ、東の海にいくには少し時間がかかる。素早く済んでも10日。普通なら14日は考える必要がある。それだけの間、クザンへの書類を片付けていた副官がいなくなると聞いた海兵は、テディの元へ駆け込んできた。

 

「大将への書類の締切、5日早めといてくれ!」

 

 といった書類の締切を早めるようにと。

 ちなみに、センゴクにも同じことを言われた。

 なんでも、テディが来る前には当たり前のように行われていた行為で、どうせ締切を守らないのだから、早くしておこうということらしい。

 

「大将も締切りが早められていたことは知っていたそうですから」

「まぁ、知ってるよな……」

 

 それも含めて締切を守っていなかったような気がする。

 

「中尉が来てからは締切は守ってるからな」

 

 だから、出発前に駆け込んできたのだろう。

 

「それにしても、ガープ中将のこういったことはいつものことなのですか?」

「あぁ。いつものことだ」

「そうですか」

 

 ため息をついたテディに、ボガードも慣れてきたとはいえ、釣られそうになる。

 

「あ、アレですか?」

「おぉ! そうじゃ。よくわかったの」

「お姉ちゃん! 見て! 見えてきた!」

 

 テディは軽く会釈すると、ユイの元へ歩いていった。

 

「今、お姉ちゃんっていってました?」

 

 残されたボガードに後ろからそっと声をかける海兵に、ボガートも頷けば、海兵はユイとテディを見比べた後、似てないといった。

 

「っていうか、あの子ってクザン大将の隠し子って言われてる子ですよね?」

「そうなのか?」

「マリンフォードで噂になったんですよ。まぁ、そのあと、大将の書類が全て片付くって大事件のせいで聞かなくなりましたけど」

 

 港に軍艦が着くとユイとテディだけが降りた。港には、ひとりの若い女性。ここの施設を手伝っている女性だそうだ。

 

「あなたがユイちゃん? みんな、楽しみにしてたわよ」

「ホント!?」

「えぇ。では、お預かりします」

「お願いします」

 

 ユイは一度、テディに抱きつくと、

 

「お仕事、がんばってね」

「あぁ」

 

 手を振って送り出した。

 

 東の海に行くにあたり、言い渡された任務は、麻薬の密売グループの捜索、検挙。

 穏やかな気候のため、安定供給がしやすく、平和な海と呼ばれるだけあり海軍の数も少なく、目をくぐり抜けやすい。

 どうしてそんな犯罪の温床となりやすい場所を放置するか。答えは簡単で、人手不足だ。

 

「これほど情報がないというのも珍しいですね」

 

 ボガードが唸るのも無理ない。探していたグループは、東の海では破格の2000万ベリーの賞金首であるパパベリンがリーダーを務めているのだが、目撃情報は掴めても、足取りがつかめない。

 

「隠れやすい場所を探すか……それとも」

「内通者を探すか、ですか」

 

 テディの言葉に頷くガープとボガード。

 ふたりもすぐに内通者が情報を操作していることは察したが、隠れている内通者を探すのと、密売グループの隠れ家を探すのは同じくらい大変だ。

 

「いくつか当たりはついとる。テディ、内通者探し、できそうか?」

「はい」

「なら、わしとボガードはアジト、テディが内通者探しじゃ」

「ぇ、大丈夫なのですか?」

 

 内通者ならばそれなりの実力者の可能性もあり、見つかったと分かれば何をするかわからない。

 実際、何かしてきたところで、東の海でこそこそしているような賊がテディにかすり傷すらつけられることはないが、テディは頬をかいて微笑む。

 

「見つけても、ここは駐屯地ですから。手を貸してくれる方は多いでしょうし、慎重に探しますようにします」

「無理はしないでくれよ」

「はい」

 

 ガープだけが、そのくだらない会話を鼻をほじりながら聞いていた。

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