テディベアの傍らに   作:こっここーまん

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20話 救いと

「テディ中尉って、助けた孤児を引き取って、金銭的に厳しいところをクザン大将が事務処理に目を付けて引き受けたって話だぞ」

「センゴク元帥が見つけて声かけたんじゃないのか?」

「それはそうなんだが、クザン大将も事情を聞いて預かったって話だ。ほら、隠し子の噂があっただろ?」

「あぁ……そういえば」

「たまにはいいことするよな。大将も」

「”たまには”ってなによ。普段、なにもしてねーみたいじゃないの」

「「大将!?」」

 

 慌てて敬礼する海兵に、クザンも堅苦しくしなくていい。と気怠げな声で返せば、苦笑いされる。

 テディが戻ってきたのは昨日だというのに、たった一日で随分と広がった噂。

 

「……って、なにしてるの? テディちゃん」

 

 部屋に戻れば、椅子の足を見ていたテディ。

 

「海楼石の手錠で繋いで書類をされていたと聞いたので、気になりまして」

「あぁ……」

 

 最近がなかっただけで、かつては日常的に行われていた非道な行為だ。サボろうとすれば繋がれ、サボっては繋がれ。

 椅子を壊すのも気が引け、仕方なく椅子と一緒に逃げようとすれば、足が繋がれる。

 

「その時間で仕事を進めたほうが、自由に使える時間が増えますよ」

「だらけきった正義だからな」

「だらけるとサボるは違います」

 

 傷跡を見る限り、確かに何度も手錠がつけられた跡がある。ついでに新しい傷も。

 

「そういえば、また噂新しくなってねぇか? テディちゃん、メチャクチャ注目されてるじゃねぇの」

「そうですね。でも、これで一通り噂同士が繋がったので、これ以上の噂は起きません」

「わざとだった?」

「予想より早いですが……結果的に収まるところはほとんど変わっていません」

 

 多少の狂いはきっとガープのせいだろう。

 

「正直、もっと揉めると思いましたが……」

「CP9とやり合っといてよくいうな……」

 

 こちらを一度見たテディは今さらのように「そうですね」なんて言った。

 

***

 

 冷えたビールを一気に喉に流し込めば、こちらを見る視線。

 

「あらら……ユイちゃんはジュースだな」

 

 冷やしたジュースを渡せば、嬉しそうに受け取った。

 

「お姉ちゃん、まだ帰ってきてないですか?」

「あー……まだだな。ガープさん、また何かやってたみたいだし、巻き込まれたのかもな」

 

 すっかり慣れたのか、困ったように眉を下げて笑うユイに、クザンもかつてのことを思い出して笑いながらビールを喉に流し込む。

 

「……なぁ、ユイちゃん」

「はい」

「友達とずっといたいとか、思わなかったか?」

 

 ただの確認だったが、ユイは驚いたように口を開くと、すぐに頬をパンパンに膨らませた。

 

「え゛!?」

「むぅ~~~~!!! お姉ちゃんもクザンさんも、私のこと、邪魔なんですか!?」

「ち、ちげぇって! つーか、テディちゃん、やっぱ言ってたかぁ……」

 

 もしかしなくても、言ってるとは思った。

 しかも、ユイの様子から見て、いつも通り、淡々と聞いたのだろう。任務の時のように、感情を殺して。

 顔を覆うクザンに、ユイも何か察したのか膨らました頬を絞ませ、ジュースに口をつけた。

 

「ねぇ、クザンさん。お姉ちゃんは私を殺さないって、救うって言ったの」

 

 ビールを傾ける手が止まる。

 

「それって、お姉ちゃんは救われますか?」

 

 見上げる瞳は震えていた。

 ゆっくりとビールを降ろし、手をユイの頭へと乗せると撫でた。

 

「救ったよ。ユイちゃんは、テディちゃんを救ってる」

「私は何も……」

「テディちゃんの手を止めたのはユイちゃんだ。心を守ったんだ」

 

 自分の心を殺して、任務に遵守していたテディの手を止めたのは、紛れも無くユイだ。

 

「それは誰にでもできるもんじゃねぇ。ユイちゃんだからできたんだ。これからも、頼むよ」

「……でも」

「他のことは俺がなんとかしてやっから。というか、最初からそのつもりだしな」

 

 不安気に見上げる目に、強めに撫でれば、少しだけ痛そうに目をつぶった。

 

「なんつーか、アレだよな。アレ。テディちゃんは、妙に鈍感だよな」

 

 あれほどはっきりしているというのに、妙にズレてる。

 腕にかかる重さに目を向ければ、寄りかかりジュースに口をつけているユイ。

 

「クザンさんは、お姉ちゃんのこと、知ってるんですよね……?」

 

 ユイが自分からテディの過去のことを切り出すのは珍しい。聞かれたところで、わからないとはぐらかしていた。

 

「……あぁ。知ってる」

「……なら、嫌い?」

 

 不安だったんだ。

 テディがユイを守るためだと、口止めしたことは、きっとユイを命を守ることに繋がるが、それはユイを孤独にしてしまう。

 だというのに、この少女はテディのことを心配していた。

 だから、止められた。

 

「嫌いだったら、一緒にいねーよ。俺もユイちゃんと同じ。テディちゃんのこと好きだし」

 

 笑って見せれば、ユイも安心したように笑った。 

 

「とりあえず、俺にも笑顔と」

 

 口元に指を持っていくと、

 

「泣き顔が見たいな」

 

 これは内緒だからな。と言った。

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