本部に似つかわしくない小さな影を追いかければ、黒い髪の少女。
「おォ~~ユイちゃん。こんなところで何してるんだい? ここは一応、本部だから遊んじゃダメだよォ~~」
「あ、ごめんなさい!」
慌てたように頭を下げるユイは、ガープを探してそうだ。
いつものようにガープの元に遊びに行ったら、ガープが仕事をサボってどこかに行ってしまったらしく、ボガードも手が離せず代わりに探すように頼まれたそうだ。
「そうだったんだね~~なら、わっしも手伝うよ~~」
「え!? いいんですか!?」
小さな体を抱えあげれば、驚いたあと人懐っこい笑顔を向けた。
「ここ、ガープさんのところに似てたから」
ここは、海兵に癒しを与えるための休憩室で、今は襖で区切られているが、襖を取れば宴会も開けるような大部屋だ。
ガープも確かに似たような作りの部屋を使っている。
「ん~~でも、ガープさんはここにはあまり来ねぇからなぁ~~センゴクさんは今いねぇから……鍛錬場とか見に行ったかい?」
「まだです」
「じゃあ、そこから行こうか~~」
部屋を出ようとすれば、ちょうど入ってきたコワモテの男。海軍大将のひとり、赤犬ことサカズキだ。
「ん? なんじゃい。そのガキ」
「ユイちゃんだよ~~ほら、テディちゃんとクザンが預かってる」
「あぁ……あの小娘のか」
ギロりと睨まれれば、ユイも自然とボルサリーノをつかむ手に力が入る。
「それより、君は何しにきたんだい?」
「盆栽の様子を見に来たんじゃ。たまには手入れをせんとな」
気を利かせた誰かが、緑を増やそうとして盆栽を置いたことから、徐々に増え続けており、サカズキも増やしている人物のひとりだった。
長期任務の時には、海兵たちが大将の盆栽だけは枯らしてはいけないと、手入れしているのもよく見かける光景だ。
「おォ~~そ~~かい。がんばってね~~」
サカズキと別れると、ユイが不思議そうに首をかしげた。
「お姉ちゃんと先程の……えっと」
「サカズキ。あとは赤犬って呼ばれてるね~~」
「サカズキさん、は、仲が悪いんですか?」
「あ~~……仕事の関係でね~~立場上仕方なくだよ」
海賊を悪だと決め、徹底的に排除しようとするサカズキに対し、テディは世界政府にとって都合の悪い人間を抹殺する。それは、政府にとって都合が良ければ、海賊だろうがなんだろうが擁護するということだ。
衝突は、正直数が多かった。
「ここにもいねぇかぁ」
鍛錬場にもいない。
なら、次は、
「おつるさんのところだねぇ~~」
屯している場所は大抵決まっている。
「……」
「テディちゃん? どうした?」
あらぬ方向を見ているテディに首をかしげれば、テディは「なんでもない」といって、また書類に目を落とした。
「おォ~~いたいた」
ボルサリーノの予想通り、ガープはつるの執務室にいた。
「なんだい。ユイまで連れて」
「いや~~ガープさんを探してるっていうから、手伝ってたんですよ~~」
ユイを下ろせば、ガープにボガードが探していることを伝えるものの、全く動く気配がない。
「ガープさん!」
「休憩じゃ! 休憩!」
「ボガードさんから、絶対休憩っていうからちゃんと連れてこいって言われてるんです!」
さすが、慣れている。
ボルサリーノとつるもそのふたりの言い争いを眺めながら、会話を交わす。
「そういや、悪魔の実を見つけたって話だよ」
「悪魔の実ぃ? なんの実ですかい?」
「未確認だそうだよ」
海軍が回収した悪魔の実は、そのほとんどが一度世界政府か海軍の管理に置かれ、戦力増強を目的に名指しされた海兵が食すが、カナヅチというデメリットから拒否する海兵もいる。
その内の一部は世界政府に回収され、海軍とは別の組織へ渡ることもある。
「悪魔の実?」
「なんじゃ、知らんのか? テディも食っとるじゃろ」
そういえば、合点が言ったのか声を上げた。
「チョウチョになるやつですか?」
「そうじゃ。まぁ、能力もいろいろあってな。動物系、自然系、超人系つって、テディのは動物系ムシムシの実の蝶人間。他にも、そこの黄色いのは自然系ピカピカの実を食っとるし、おつるちゃんは超人系のウォシュウォシュの実を食っとる」
「いっぱいあるんですね……」
「ここに集まってるだけだよ。なかなか見つからないから、見つかればみんな欲しがって取り合って戦いだって起きる。悪魔の実図鑑ってのもあるよ。ほら」
つるが差し出した本を開けば、形だけなら果物は思えるが、模様や色が食べられるとは到底思えない果物ばかりが並んでいる。
その中には、写真があるものと名前と能力のみが書かれているものがある。
「それは海賊が使っていたから、名前と能力だけがわかってるんだよ」
「あ! お姉ちゃんのってコレ?」
さすがにCP9が持っていただけあり、写真がしっかりある。形はチェリーのようだが、真っ青で特徴的な渦巻き模様。
「まずくてな。食った海兵ほとんど一口で吐いとる」
「いや~~アレは本当にまずいんですって」
「知っとるわ。吐き捨てたわ」
「人の残したの食ってよくいうよ」
つるが一口でやめたのを、気になったのか、ガープもその後食べたが、口に入れた瞬間吐き出していた。
勝手に食べて、吐き出すなど失礼にも程があるが、正直見ている身とすれば、食べた人間が軒並み青白い顔になる味など気になるのだ。
「……おつるさん」
小声でつるを呼ぶユイに耳を寄せれば、
「悪魔の実の元の果物、苦手ですか?」
「そんなことはないけど、どうしてだい?」
つるがのぞき込む中、ユイは少しだけ困ったように眉を下げながら言った。
「お姉ちゃん、チェリーパイだけあんまり好きじゃなくて」
「……」
なんとなく気持ちはわかるような気がした。
このメンバーだと、完全ジジババ孫談議(笑)
平和でよろしい。
テディですが、一応ユイの傍に蝶を一匹飛ばしているので、状況はなんとなく分かっています。その上で、「なにしてんだ? あの人たち」とか思っています。