テディベアの傍らに   作:こっここーまん

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22話 手合わせ

 目の前に迫る木刀を触れるギリギリで避ければ、切っ先が向きを変える。

 しかし、木刀を持つ腕の肘を抑えながら、左腕に持ったナイフほどの長さの木刀で脇に向かって突き立てようとすれば、右腕に重み。

 木刀が触れる前に距離を取られた。

 

「……何してるんですか」

「見りゃわかるじゃろ。手合わせじゃ」

 

 たまたまガープの元に来てみれば、オニグモとテディが戦ってるのだから、モモンガだって驚く。

 ふたりの手に持っているのは木刀で、手合わせだということはわかるが、響いてくる音が鍛錬とは思えない鋭い音ばかり。

 

「テディもたまには鍛錬せねば勘が鈍るじゃろ」

 

 どうやらガープのむちゃぶりだったようだ。

 とはいえ、今回はテディも同意していた。実際、ジャブラたちとの戦いの際に勘が鈍っていることは感じていた。

 最初はガープが相手をする予定だったが、たまたま居合わせたオニグモが「元CP9なら」と立候補し、現在に至る。

 

「能力を使っても構わないぞ」

 

 攻撃の手は緩めずオニグモが言えば、

 

「あくまで能力は奥の手です」

 

 確実に攻撃をいなしながらカウンターをいれるテディ。

 どちらも、示し合わせたわけではないが、六式も能力も使っていなかった。

 

「……」

 

 オニグモは手数の多いわりに速度は速く、重い攻撃。

 今は二刀だが、髪を使えばさらに増えるはずだ。いつ解禁するかわからないのが、手数が4倍になれば、さすがに全て対応し切るのは難しい。

 しかし、このままでは決着はつきそうにない。

 

 攻めるか。

 

 ギリギリではなく大きく膝を落とせば、視界に映るひじ打ち。

 

「!」

 

 軽い。

 すべての攻撃をいなし、確実に急所へ攻撃をするテディに当たるとは思っていない。

 すぐにもう片方の手に握る木刀の切っ先を変え、テディが倒れる方向へ突けば、ひじ打ちした手に絡む足。

 

「!!」

 

 迫る切っ先をギリギリで避け、腕の上へと上がる。テディの攻撃は全て急所だ。守る場所はわかる。

 動かそうとした腕を足で抑えられる。

 

「舐める、なッ!」

 

 後ろ髪を前に向かわせれば、あっさりと腕から飛び降りるテディに踏み込み、木刀を振り下ろす。

 ギリギリで短刀に防がれた。

 

「初めて正面で受けたな」

 

 こうしてはっきりと受け止められるのは、これが初めてだった。

 今までは流れを逸らし、腕の肘や手首といった稼働部分を抑えることが主だったというのに。

 どうやら追い詰めているようだ。押し込もうと力込めれば、刃を撫でるように滑らせると体を低くスライドし、懐に入り込まれる。

 

「ふっ……」

 

 短い呼吸音と共に、強く後ろへ踏み込む。

 風圧と共に突き上げられた拳。あと数瞬遅ければ、あの拳が腹へめり込んでいた。

 落ちていく短刀を蹴り上げられたが、それを手に取る前にもう一歩踏み込んでくるテディ。

 

「なんでもありなんですか?」

「そもそもテディが素手じゃしな」

 

 一通り武器は使えるが、自らの肉体のみで戦うことが多く、よく使う武器と言えばナイフだった。

 そのため、オニグモとの手合わせは一応もってはいたが、素手の方が得意のため、これでお互いひとつずつ手をだしたということになる。

 

「勝敗は有効打ですか?」

「そうじゃ」

 

 実力者同士の対決とはいえ、ここまでの手合わせはそうない。

 大将はもちろん中将にもなれば、指導はしても手合わせはあまりしない。それ以上の力を手に入れるなら、手加減のない実戦が一番となるからだ。それこそ、今のように、たまに腕が鈍るという理由で手合わせをすることはある程度。

 木刀と拳が触れ合うその瞬間、テディはその拳を少し上に上げると、木刀の交差する部分の上に振り下ろす。

 

「……!」

 

 微かにズレた中心。オニグモには、蹴り上げられていた短刀が落ちてくるのが見えていた。

 

「くっ……」

 

 髪に持たせた木刀で短刀をたたき落とし、増やせる最大の腕の本数で、テディを襲う。

 見開いた瞳孔に、乱れた風

 

「!」

 

 短刀を握るテディの足と肩に当たっている木刀。

 

「……私の、負けですね」

 

 有効打だ。

 離れて礼を言えば、オニグモは少しだけ眉をひそめた。

 

「テディ中尉。何故止めた」

「……」

 

 確認しなければいけなかった。

 最後の一瞬、テディは蝶で腕に弾き飛ばした短刀でオニグモの心臓を突けた。それを、途中で諦めたようにやめていた。

 

「『手合わせで殺しをしようとしたらそれは負け』今、私はオニグモ中将を殺そうとした。ですから、私の負けです」

 

 たとえ、手合わせとして勝てていてもそれは負け。

 手合わせと実戦の境界を踏み越えなければ、勝てないなら、それは実力として劣っていることになる。

 

「そうか」

 

 ふたりがガープとモモンガの座る縁側に戻れば、指を鳴らしているガープに稽古をつけると言われるが、もちろん揃って拒否。

 

「休憩などと息も上がっとらんクセによくいうわ」

 

 オニグモは微かに息を上げていたが、テディはいつも通り。本人としては、気を抜けば同じくらい息が上がっているのだが、そこは昔からの習慣で抑えていた。

 

「モモンガ中将はいかがです?」

「わ、私はすぐに戻らないといけないからな。今度……」

 

 ガープとの手合わせなど、先程の比ではないほどハードだ。誰もやりたくない。

 早々に逃げようと動いた時だ。こちらに走ってくる足音。

 

「あ、テディ中尉! ここにいた!」

「どうかしましたか?」

 

 若い海兵だ。クザンの部下で、テディとも知り合いだ。

 

「クザン大将が脱走して! 青チャリもなくなってるんです!」

 

 テディが来てからというもの、テディがマリンフォードにいる間は、連絡も書き置きもなしに青チャリでサボりに行くことはなかったが、ついに青チャリを出してきた。

 そもそもテディが目の届く範囲で仕事せずサボるなど許さない。ましてや、他の島に行くなど、強行手段を用いても阻止される。

 

「急ぎの仕事が入りましたか?」

「ぇ、あ、いえ……特に増えてはいませんが……」

「でしたら、今日明日分は終えていますから、問題ありません」

 

 つまり、仕事をしているならサボりは許容する。どこに行こうが、何をしようが。

 

「そ、そうなんですか……もしかして、大将からどこに行かれてるか聞いていますか?」

「いえ。知りません」

 

 安心したのかしていないのか、半々といった顔で若い海兵は仕事に戻っていった。





補足

テディの強さとしては、
能力、覇気、六式を使わないと、中将に負けます。
六式、覇気で中将と同等。勝てるかは半々。大将には負けます。
能力、覇気、六式と任務で暗殺となれば、大将と同等。


動物系の覚醒が、まだはっきりしてないのでなんとも言えませんが、インペルダウンの動物看守からして、おそらく覚醒したら”しぶとさ” ”生存本能”が跳ね上がるとして、一応書いています。(まだ特に関わってませんが)

テディは、(あるかはわかりませんが)半覚醒状態。生命帰還で、擬似的に能力の覚醒状態に持っていっている状態です。
なので、任務となれば、確実性を重視 + 格上相手には尋常じゃないしぶとさを発揮するので、”手合わせ”と”実戦”の差は大きいです。
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