テディベアの傍らに   作:こっここーまん

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25話 ガレーラ

 少し強ばった気配。列車に乗ってる間から、ずっとだ。

 指先は少しだけ冷たくて、少しだけ強く握れば驚いたように振り返った。

 

「?」

「私、ついてきて、よかった?」

「……」

 

 出る前にこっそり、クザンさんになにかあったのか聞いたものの「まためんどくさい仕事押し付けちまってな」と言って、代わりに私とのデートと称した休暇を半日あげたらしい。

 けど、多分嘘だ。

 

「……あぁ。ごめん。いいんだ。大丈夫。少し、気が張ってただけ」

 

 思いっきり手を引っ張れば、抵抗もなく私の前に座る。

 

「本当だ。仕事が終わったら、ウォーターセブンを見て回ろう? 気になる店もあるんだろ?」

「うん。お姉ちゃんは? どこか行きたい場所ない?」

「私は……こういう場所には慣れてないんだ。ユイについていくよ」

「むぅー……じゃあ、お姉ちゃんが気になるものがあったら言ってね? 私もお姉ちゃんと一緒ならどこでもいいんだから」

「わかった」

 

 それからしばらく歩けば、すごく大きな水門やクレーン、倉庫が立ち並ぶ場所についた。

 のぞき込めば、大きな木を運んでいる人や削っている人、大砲なんかもある。

 

「船?」

「あぁ。造船所だ。ガレーラカンパニーって言って、ウォーターセブンで一番大きいんだ」

「すごーい……」

 

 お姉ちゃんは何かを探すように周りを見ていて、首をかしげれば、少しだけ笑った。

 

「ここで少し仕事がある。時間は掛からないだろうけど、どこか店で待ってて」

 

 そういうことかと見渡せば、ブルに引かれた水上の屋台がある。

 

「あそこは?」

「時間かからないとはいえ、1時間くらいはかかるかもしれないぞ?」

「大丈夫だよ」

 

 少しのお小遣いと屋台で買った水水あめを渡され、最後に肩に紫色の蝶が乗った。

 

「いってらっしゃい」

「いってきます」

 

 お店のオバサンはいい人で、時々話しかけてくれた。あめも変わった食感でおいしい。

 友達から聞いた、ウォーターセブンの名物とかお店を書いたメモを確認していると、何かに引っ張られる感覚。

 

「え?」

 

 ヤガラブルだ。食べかけの水水あめをかじって引っ張ってる。

 

「うわぁぁあ! ダメ!」

 

 腕につけたままで、引っ張られればそのまま水に落ちるわけで、慌てて腕から外そうとすれば、ヤガラブルの頭に落ちた手刀。

 

「コレ。やめんか」

 

 叩かれたヤガラブルは水水あめを諦めて、離れていった。

 先程、手刀を落とした人を見上げれば、鼻が長くて四角い人が、呆れたように離れていったヤガラブルを見ていた。

 

「まったく……卑しいな。大丈夫だったか?」

「は、はい。ありがとうございます」

「なに。気にするな。お前さん、アイスバーグさんに会いに来た海兵の連れじゃろ?」

「あ、お姉ちゃんのことですか?」

「お姉ちゃん……」

 

 少しだけ驚いたように目を瞬かせるが、すぐに笑みを作った。

 

「そうじゃそうじゃ! さっき、秘書のカリファが来ておったからの。もうちっと時間はかかるじゃろうが……そうじゃ。中でも見るか?」

「え゛!?」

「わしが案内しよう。お姉ちゃんが帰ってきてもわかるように、ガレーラの連中に話もしておく。どうじゃ? ここにおっても退屈じゃろ?」

「え、あ、でも……悪い、ですよ」

「わしは今休憩時間じゃし。なに、危ない場所には連れていかんよ」

 

 ちらりと肩を見れば、特に反応はない。

 

「……じゃ、じゃあ、少しだけ」

 

 頷けば、その人は大きく頷き、手を伸ばした。

 

「わしはカクじゃ。よろしくの」

「ユイです。よろしくお願いします」

 

 その手をつかめば、早速ガレーラカンパニーの中に入っていった。

 いろいろ見ていると、たくさんかけられる声。ふと陰るそれに顔を上げれば、柔らかい感触とポッポーという声。

 

「ふぶっ……」

「……」

 

 なんとも言えない表情で顔にぶつかってきた白いハトをカクさんが捕まえる。

 

「ハト?」

「あぁ……ハットリというルッチという奴が飼っとるハトじゃ」

「ルッチさん?」

「ルッチなら、向こうでパウリーと喧嘩してるぞ」

「またか……まったく飽きん奴らじゃの……」

 

 ハットリを離すと、頭に乗っかられる。

 

「……懐かれとるの。動物に好かれやすい体質なのかの?」

「どうなんでしょう……?」

 

 頭にハト、肩には蝶。なぜか、蝶とハトが威嚇し合っているようにも見えるけど、

 

「食べちゃダメ」

 

 ハットリに注意すれば、ポォ……! とひとつため息のような声と共に別の方向にむいた。

 

「おーい。カク。海軍の船が来たから、様子見てきてくれないか?」

「わかった!」

「あ、じゃあ、私戻って――」

「あ? さっきの海軍の嬢ちゃんの子供、か?」

「そんなところじゃ。退屈そうじゃったからの、見学させてたんじゃ。海軍の船っていうと、養成所の訓練船か?」

「あぁ。海軍の連れなら海軍の船の見学しても問題ないだろ。まぁ、カクの仕事中は大人しくしてないとダメだけどな」

 

 なんだか、このまま見学していてもいいらしい。

 カクさんにこっちだと手を引かれ、歩き出せば後ろから先程の人の声。

 

「世界政府への恩売りは任せたー!」

「任せとけー」

 

 顔を上げれば「冗談じゃ」と笑われた。

 しばらく歩くと見えてきた船。海軍の軍艦だ。

 

「外見だけは相変わらずきれいじゃな」

 

 なんでも訓練生が必ず清掃するように言われているそうだ。だが、内部は予算の都合や古くなった軍艦を訓練用にしている都合もあり、ボロボロらしい。

 

「それじゃあ、ワシは少し様子を見てくるから、邪魔にならない……この辺りに――――」

 

 そう言われた時だ。

 爆発音。

 何度も何度も鳴り響いた後、木がきしむ音と共に軍艦の帆が折れ、こちらに倒れてきた。

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