テディベアの傍らに   作:こっここーまん

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28話 共闘

 首に迫った蹴り。

 元から当てるつもりはないだろうが、確実に急所を狙ったその蹴りは防がなければ、殺されていた。

 

「なんのつもりだ」

 

 相手などわかっている。

 

「無駄に殺すな」

 

 淡々と答えられる前とは違う言葉。

 

「捕まったこいつらに価値はない。それに、俺たちにも任務がある。邪魔をするなら――死ね」

 

 振り返りざまに指銃で心臓を狙うが、予測していたように軽々と避け、懐に潜り込まれる。

 脇腹に打ち込まれそうになる肘を避ければ、腕をつかまれた。

 

「ッ」

 

 掴まれた左腕の肩に素早く叩き込まれた拳。

 小さな破裂音。肩が外れた。

 

「ここで死ぬつもりはない、ということか」

「悪いが今は死ねない」

「……」

 

 はっきりとした答えに、ため息をつくしかない。

 ここで手間取れば、海軍本部から将校が来て、ガレーラは大騒ぎになる。本来の任務のためにも、騒ぎが大きくなる前に片付けたい。

 目の前の女は、それもわかった上で来たのだろう。

 

「ここで戦ってもお前には不利益しかないだろ。ここでやめれば、ガレーラの船大工のメンツは保てたせる」

「……くだらねぇ」

 

 先程の衝撃だけで気絶したようなザコを、守る価値などないというのに。

 

「海兵は人手不足なんだ。早々に済ませよう」

「……仕方ねぇ」

 

 肩をはめながらテディの後に続く。

 

 プラントは火薬庫にいた。

 

「女、ひとり……だと?」

 

 でんでん虫の通話は数分前に途切れていた。そして、船に乗っている生きている気配も。

 海兵が交渉せずに乗り込んできたのかと、仕掛けた爆弾が爆発するまで時間を稼ごうとしたのだが、やってきた海兵は弱そうな若い女、ひとり。

 

「……」

 

 しかし、女の服は海兵のものではない。それが意味するのは将校ということ。

 

「そこで止まれ。他のやつもだ! 爆発させられたくはねェだろォ?」

「他のやつ? 残念だけど、私ひとりだよ」

「信じると思うか?」

「まっどっちでもいいけど。だってあのザコだったシードの兄弟分なんて、どうせ大したことないでしょ? 海軍もそんなザコのために時間も人員も割きたくないの」

 

 持っていた刀を遊ばせながら笑う女に、プラントも眉をひそめた。言動は軽薄だが、決定的な隙があるわけではない。

 海兵でも海賊でも、この手の人間は相場が決まっている。少し実力のある調()()()()()()()()

 

「おいおい、嬢ちゃん……ちょっと強ェかもしれねェが、新世界で戦う連中の恐ろしさってやつを知らねェな?」

「シードだって新世界の海賊だよ」

 

 女の目が少し細まり、遊ばせていた刀の動きも止まった。

 

「シードを捕まえたのはテメェだな?」

「YES」

 

 まるで楽しむかのように笑みを携えた女は、刀を構える。

 

「新世界の海賊を捕まえてようやく箔がついたんだ。助けに来た兄弟を芋づる式なんてラッキーだね」

「助けに、なぁ……ハズレだ」

「ハズレ?」

「俺はノコノコ逃げ出したシードの野郎を殺しに来んだからなァ!!」

 

 言葉と同時に踏み込み、動揺して反応の遅れた女の心臓に剣を突き立て――――

 

「!?」

 

 消えた。

 廊下にいたはずの女の姿が消えた。部屋にも、廊下もいない。

 

「どこにきえ……た……」

 

 言葉と共に首が落ち、転がった。

 

 転がって動かないプラントの頭と胴体を抱えると、火薬庫に入る。中には仕掛けを終えたテディが立ち上がっているところだった。

 ルッチは一番燃えそうな場所へ頭と胴体を転がす。

 

「どうして青キジを殺さなかった」

「あれを私が殺せると思うか? お前でも無理だ」

「……」

 

 あからさまに眉をひそめたルッチにテディは、少しだけ目を丸くしたが、すぐに息を吐き出した。

 

「ありがとう。ルッチには、まだ頼まれてもらうけど」

「任務ならこなす」

 

 思ったとおりの言葉。ふたりは一度目を合わせると、縄に火をつけた。

 

*****

 

 訓練船は逃げられないことを悟ったプラントが、火薬庫で自爆し、訓練船を包囲していたTボーン大佐率いる海兵が、訓練兵を燃える船から救出。

 犯人は全員死亡、訓練兵にも死傷者がでた。

 

「大佐。あとは任せても構いませんか?」

「了解しました。即時対応、感謝いたします」

「いえ。大佐の迅速な包囲と彼らの仲違いのおかげです。最後は……生きたまま捕まえることはできませんでしたし」

「生きている彼らがいるのですから良いではないですか」

「そうですね」

 

 たまたまガレーラにいた大将青キジの副官が、単独で交渉、乗り込み、早期解決された。

 あとのことは、Tボーンに任せて、本来の仕事に戻るようだ。

 目で追っていけば、カクと一緒にいた小さな女と何か話している。その目は、柔らかくて。

 

『テディは強くない。だが、大事なものを知ったら強い』

 

 知ってる。

 あいつの弱さは、心が矛盾してるからだ。

 俺が殺しに行って、もし負けるようなことがあれば、それはあいつが本気で死んではならないと思った時。

 

「……」

「なんじゃ、機嫌悪いのぉ」

 

 どうやらあの子供はテディに返したらしいカクが、こちらを呆れたように見ていた。

 

「ロリコン」

 

 肩に乗せたハットリの腹話術で一言返せば、何か言いたそうに口を開けたが、頭を抑え顔を横に振ると、後ろを指した。

 

「海軍が事件前に何かなかったか話を聞きたいらしい」

 

 めんどくさいと思っていれば、耳に入ってきたパウリーの声。

 

「ルッチのやつと喧嘩してたから直前のことはわけんねェよ」

 

 目を向ければ、こちらを指すパウリーに海兵もこちらを見ていた。どうやら話はすぐに済みそうだ。




微妙にチャラいテディちゃんたのしい。
CP9とあまり関わってはいけないキャラの都合上、あまり本編で会わせられないし、会ったらシリアスだけど、正直CP9とのほのぼの日常話書きたい……!

なんだかんだで、ルッチも含めてCP9が故郷にいざこざを持ち込ませないって言ってる辺り、仲間意識はあると思うんです。少なくとも任務外とか同世代に関しては。(新入りが倒されてた辺り、ある程度はシビアだと……)

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