テディベアの傍らに   作:こっここーまん

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3話 シャボンディ

 海に一本の道ができていた。氷の道。自転車が通れる程度ではあるが、それでも初めて見る光景だ。

 そのままシャボンディ諸島にたどり着くと、クザンは一度海軍の駐屯地へ向かった。

 

「ちょっとここで待ってて」

「はぃ」

 

 人攫いは多いが、駐屯地の前なら警備もいるし、何かあれば防いでくれるはずだ。

 クザンは早々に仕事を済ませると、戻った。自転車に乗るユイの指に止まっている蝶。

 

「……」

「おかえりなさい」

「ただいま」

 

 言葉を交わせば、蝶が飛んだ。ひらひらと、それでもしっかりと飛んでいく。

 クザンもその蝶を見つめると、自転車に跨った。

 

 蝶についていけば、遊園地についた。人も多くいるし、海軍も多い。

 

「ぁ」

 

 後ろでユイが何かに気がついたように自転車を揺らしたが、影に隠れるそれが、口元へ人差し指を持っていけば、口を閉じた。

 クザンもそれを見ると、あくまで自然に自転車を漕いだ。

 

「迂闊だ」

 

 その影に近づくなり鋭い言葉が刺さった。

 

「あらら……怒ってる? 一応、はっきりしてからしたんだけどなぁ」

「そうじゃない。場所が悪い」

「雑多に混ざってるいい位置だと思ったんだけどなぁ……」

「……CPが来てる」

「マジか……」

 

 全く気配を感じなかったが、言われてみれば、確かに数人、動きの怪しい奴がいる。ただ、海賊も人攫いも混じっているこの場所では、そいつらが何者かはわからない。

 

「そっちがバレてるとかじゃなくて?」

「いや、私を追ってるのはふたつ向こうの島だ。長居はできない」

 

 彼女は小さく息をつくと、今度は優しげな声色で続けた。

 

「ごめん。ユイ。またすぐに会いに来るから」

「……うん」

 

 クザンの方を一度見ると、なんとも言えない表情を返された。

 

「ユイをお願いします」

「そいつはいいが、お前さん、海軍に戻ってくる気はないのか?」

「なにいって……」

「”海軍”に、だよ」

「…………その話は、今度聞く」

 

 そういうと、その影は溶けて消えていく。

 一応、そっと周りを確認すれば、怪しい影は特に動きはない。どうやらばれていないようだ。

 

「お姉ちゃんは、悪いことをしたって言ってたんです」

「……うん」

「クザンさんは、それがなにか、知ってますか?」

 

 見上げるその目に、クザンは一度目を逸らすと、首を横に振った。

 

「知らないな」

 

 そう言って、ユイの頭に手をやると、撫でた。

 

「俺は、それが悪いことだとは思えないからな」

「!」

「なぁ、ユイちゃん。俺、もう一回お姉ちゃんに怒られると思うんだけど、一緒に怒られてくれる?」

「っ……お、お姉ちゃんに怒られるって、どんな悪いこと、言う気……ですか?」

「そ、そんな悪いこと言わねぇって! ただ、まぁ、なんつーか……アレだ。ちょっと非常識っていうか」

「…………」

 

 ひどく冷たい視線にクザンも、少しだけ早足でペダルを漕いだ。

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