「よぉ。テディちゃん」
各CPの実行部隊のリーダーは、海軍との連携を取ることもあり、本部に出入りすることも多い。
前まではショカンだったのが、今はテディを見かけることの方が多い。つまりは、そういうことなのだろう。
「今回の作戦、CP9も動くんだってな」
「お前には関係ないことだ。クザン中将」
「まーな」
最近は、より感情は読めないし、鋭いナイフみたいだ。
それに、変に声をかけまくると、大将やら先輩やらに止められる。同じ世界政府とはいえ、立場は違う。
むしろ、CPの方が天竜人に近い分、制約が多い。
「……邪魔するなら排除する」
ピタリと首筋に当てられたナイフのような冷たさ。
言葉ひとつで首が落ちる確信めいた殺気。
「警告はした」
もう言葉を交わす必要はないというかのように、立ち去ろうとするテディの後ろに続く男は、先程までのテディの殺気を感じなかったかのように笑う。
「”ちゃん”だってよ! ガキみてぇだな! テディ」
何も答えないテディに、男は笑う。
「その通りだろ」
しかし、クザンの言葉にテディよりも殺気のこもった視線で振り返った。
クザンも静かにポケットへ手をいれると、男の重心がわずかに下がる。
「やめろ。ジャブラ」
「……」
数瞬の睨み合いの後、ジャブラはため息をついた。
***
ジャブラは手早くターゲットを仕留めると、その場所から離脱した。
政府の機密事項を奪取、破棄したカリファとも合流すると、ちょうど海軍が踏み込んできたところのようだ。
「これで組織は解体。あとは海軍が繋がりを調べて終わりね」
ここでの諜報部隊としての役割は終わりだ。
「あ……」
「なに?」
「いや、あいつがいただけだ。なんでもねぇ」
「あいつ?」
「テディによく絡んでくる奴だよ」
「あぁ……クザン中将ね。彼に下手なことは禁止よ」
「あ? なんかあんのか?」
不思議そうにカリファを見るジャブラに、カリファも少し迷ったあと告げた。
「彼、次期元帥候補なのよ」
「は? 中将だろ?」
「大将は現在枠が埋まってるから、昇格してないだけで、枠が空けば大将になるわ」
少し前までは、かつてのガープのように昇格を蹴っていたのだが、心変わりすることがあったのか、もし次に枠が空けば大将に昇格すると決めたそうだ。
「それに、センゴク元帥もこのままのメンバーなら、おそらくクザンを推薦するそうよ」
「はぁ……あいつがなぁ」
「……なにかあった?」
ここ最近、カリファは今回の任務があったため、テディのことはジャブラに任せていた。
「別に。アイツ、本部に行く度、あんなに絡まれてんのかと思っただけだよ」
「そうね。クザン中将は、テディのこと気にかけているから」
小指を立てるジャブラに、カリファは首を横に振った。
すると、ジャブラは少しだけカリファに近づくと、
「テディは?」
そう、小声で聞いた。
確かに、ショカンが死んでからというもの、テディの感情は昔馴染のジャブラたちからしても、わからなくなった。
しかし、それでも、クザンを前にしたテディは露骨な程に研ぎ澄まさた気配を纏う。それこそ、殺気でクザンを押さえ込もうとするかのように。
「そんなわけないでしょ」
「だ、だとは思うけどよぉ」
「……似てるのよ」
ショカンとクザンが。だからこそ、ボロを出さないように、必死になっているだけだ。
似ているだろうかと、ジャブラは眉をひそめた。
「ハァーックションッ!」
大げさなクシャミに、折れた刃を片付けていたテディが呆れたような目をした。
「誰か噂でもしとるのかのぉ」
カクは折れた剣を傍らに置くと、新しい剣を構えた。
元はショカンに教わっていた六式だが、全て習得する前にショカンが死に、後の修行をテディが引き継いで行なっていた。
「ところで、テディ。これで、わしが一太刀でも当てられたら、即CP9配属というのは嘘ではないじゃろうな?」
「そこで嘘ついてどうする」
「まぁ、そうなんじゃが……剣が叩き折られるわ、取ったと思ったら武装色に鉄塊で刀が折れるをくり返しとったら、実はわしを入れるつもりないんじゃないかと思ってくるじゃろ」
これで剣の交換は何度目だろうか。
傍らに置かれた柄の数を数えればわかるが、正直数えたくない。
「……正直、カクの剣術が私より上だから」
「それはうれしいんじゃが、折る理由にならんじゃろ!?」
「折れないように工夫して」
「雑か!」
「私は師匠より強くないし、大丈夫。たぶん」
最後の一言がなによりも問題だ。