テディベアの傍らに   作:こっここーまん

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33話 好みの問題

 こいつと意見が一致しないことは多い。

 

「今度はなんじゃ……」

「前と同じよ」

 

 カリファがため息をついて書類をまとめれば、呆れたような視線をこちらに向けるカク。

 

「そろそろ補充要員いなくなるんじゃないか?」

「大丈夫よ。今回はCP5だから」

「使えねぇクズがいたところで、足でまといだ」

 

 前はCP9の新入り。その前は、海軍。

 正義を守ることはできないと判断して、排除した。

 こいつとは、その辺、意見が一致したことがない。

 

「任務に支障をきたすなら構わないが」

「そいつのせいで悪が蔓延れば、それは”支障”だろ」

「……」

「甘いんだよ。お前は」

 

 昔から変わらない。

 

「とりあえず、報告書はまとめておいたわ。それから、CP5が補充要員として上げてる人物の資料も入れておいた。確認してちょうだい」

 

 カリファに渡された書類の束に視線を落とすテディ。

 全て目を通し終わる少し前、部屋のドアが開いた。

 

「ヨヨィッ! ブルーノからの報告ッダァ~~イッッ」

 

 クマドリの言葉に、全員の視線が集まる。ブルーノは一人、W7で古代兵器プルトンの設計図を持っている可能性があるアイスバーグを調べている。

 

「可能性はアッ高ェ~ってこと~よっ! しかしまァ~~隠してんのは、自室か仕事部屋か。とにかく、人を寄越せってェ~ことだ」

 

 ベテランで能力者のブルーノが要請してくるのだ。相当信憑性は高く、難しい相手なのだろう。

 アイスバーグといえば、ガレーラカンパニーの社長だ。男なら船大工として潜る込むのは容易。

 

「あぁ……あの海列車の。ワシが行こうか? 船大工見習いとして、ちょうどいいじゃろ」

 

 年齢的にも、カクなら見習いとして容易に潜り込めるだろう。少し器用で才能があるように見せれば、社長にだって近づきやすい。

 

「なんじゃ……不満か?」

 

 カリファの視線に、カクが口をへの字に曲げる。

 CP9の中で、カクは最年少であり、新人。対して、今回の任務は政府が最重要事項のひとつとして上げている、古代兵器の関係。

 暗に新人を送り込みたくないということなのだろうか。

 

「違うわよ。場合によっては、貴方に残って欲しかっただけ。クマドリ」

 

 カリファが鋭い視線を向ければ、クマドリはしたり顔で答えた。

 

「ボッキュッボンッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は……?」

 

 カクが眉を潜めれば、テディはルッチに目をやり、ルッチはため息をついた。

 

「すまん。全くついていけん。誰か説明してくれんか?」

 

 主にテディ。このメンバーで一番説明してくれそうだ。

 

「アイスバーグがW7の市長に立候補するって話だ。当選は確実。問題は、市長就任による秘書の募集」

「あぁ……それで好み」

 

 ここにはちょうど、凹凸のあるスタイル抜群の女と、スレンダーな女。

 見た目としては、男の好みのほぼ両極端に位置するふたり。

 要は、どちらがアイスバーグの秘書となり探るか。という話だったようだ。

 

「私が行くなら、テディの事はカクに任せるわね」

 

 もうひとり、もしもの時のための戦闘要因がルッチだ。

 スパンダムが言うには、CP9の本拠地が手薄になってはいけない。ということで、主戦力であるテディかルッチ、どちらかが残ることになっていた。

 

「それにしても、ずいぶん気が立っとったな。ルッチの奴」

 

 任務だからと大人しくしていたが、随分気が立っていた。

 

「古代兵器はデリケートな問題だから、それこそ年単位でかかるだろうし。なにより」

 

 戦う船大工とはいえ、今までのような戦いは、まず起きないだろう。

 

「……あぁ」

 

 妙な説得力に、カクも納得してしまった。

 

***

 

 ルッチたちが、W7に向かってから3ヶ月余り。

 カリファは予定通りアイスバーグ市長の秘書となり、調べを進めていた。それこそ、難航しているようだが。

 

「最近、あのスーパーボインのエロい姉ちゃんいねぇな」

「失せろ」

 

 自転車に乗って、司法の塔を見上げる男に、この3ヶ月で言い慣れた言葉を返せば、呆れたように見上げられた。

 

「お前さんも飽きねぇな」

「そのまま返すぞ。テディに何回ちょっかい出す気じゃ」

 

 海軍本部には、テディだけで行くことも少なくないが、たまに同行すれば絶対に絡まれているし、本部から戻ってきた時に冷たい雰囲気を放っていれば、大体この男のせいだ。

 

「だいたい、俺だって一人で海渡れるからって中将なのに雑用させられて。ちょっとくらい癒やしがあってもいいじゃないの」

「テディが癒やし……もっと別のものをおすすめするぞ」

 

 クザンと会った時のテディの表情は、正直にいえば鋭いナイフのようで、いつ刺されるかと自然と体が警戒してしまうほどだ。

 

「わかってねぇなぁ……アレで、もうひとつ、蹴りのひとつでもしてきたら、俺としてはあんし――」

 

 クザンの言葉は、けたたましい水音で掻き消え、海面に立っていた姿も、波に飲まれて消えた。

 

「なら、これで十分だな。クザン」

 

 いつの間にか、後ろに現れたテディは、凍った水面を見下ろしながら言い放った。

 

「テディ、相手は一応大将候補じゃろ……? 良いのか?」

 

 小声で聞くが、相変わらずの無表情。

 

「だから、傷はつけていない」

 

 海には沈めようとしたが。

 

「あらら……テディちゃん、冗談通じたのね」

 

 新たに凍らせた海面から見上げるクザンは、一度自転車の被害を確認するが、特に損傷はない。

 クザンは、一度息をつくと、自転車を起こした。

 

「仕方ない。今回はこれで戻るとするか」

 

 

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