テディベアの傍らに   作:こっここーまん

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38話 水面下

 ショカンが生きていると聞いて、震え上がったのは何人いたことか。

 ショカンの持つ情報ももちろん、もし革命軍に寝返っているなら、その戦闘力も驚異だ。

 

「元々、ショカンはCPでも白ひげに対応できる戦力が欲しいという理由で、傭兵をヘッドハンティングした」

 

 なんとなくではあるが、ショカンが自分たちのように幼い時からあの島で諜報員としての教育を受けてきたとは思えなかった。

 決して、できないというわけではないが、師匠は戦いに寄った部分がだいぶ強かった。

 

「それじゃあ、確かに裏切りは心配になるのぉ」

 

 もし今知っている世界を疑い、裏切るのを防ぐなら、その人物に本当の情報を与えなければいい。もしくは嘘を教えればいい。

 定着した世界観から逸脱できるのは、一部の人間。

 諜報部隊として、元傭兵は注意しなければいけない存在だ。

 裏切る要素が大きすぎる。

 

「テディからは?」

「師匠は本物。ワシらのような知り合いの顔がいたら、すぐに逃げられる。テディも慎重に周辺から調べを進めておるらしいが」

「相手もプロ。異変にはすぐに気がつく。長期的な手段も……現状では無理だろうな」

「長官もその結論じゃ。島ひとつ、事故で処理する手筈を整えておる」

 

 ショカンがどこまで情報を話したかもわからないなら、まずはその島ごと。

 そして、周辺の島に関する関わる部分を、また調査する。それはCP6が受け持つそうだ。

 

「うまくショカンの子供という少女に接触して、話を聞き出しとるそうじゃ」

 

 うまくいけば、処理する人数が減る。

 

「今のところ、一家以外に殺す必要はない可能性が高いということじゃ。家族に関しても、情報を――」

「タイムリミットは?」

 

 カクがW7に来た理由はひとつ。

 ショカンを確実に葬るため、ルッチを呼び戻すためだ。

 

「1週間後、エヌエスロビーに高速船を用意しておく。作戦はその時、長官から聞け」

「了解」

 

***

 

 海の真ん中。

 周りに船はなく、機密性も高い、船の上にテディはいた。

 

「さすがに元CP9。簡単にボロはでませんね」

「周辺の島に革命軍が潜んでいるという情報もありません。内通者はまだはっきりとはしませんが」

 

 革命軍が潜んでいるならまだしも、ごく少数の最悪切り捨てられるような情報を仲介する役目の人間が潜んでいたところで、それを発見するのは困難だ。

 革命軍としても世界政府の諜報部隊が寝返るなら嬉しいことだろうが、同時に危険なことでもある。寝返ったふりで、アジトが奇襲されては堪らない。

 故に、革命軍としても、ショカンに直接アジトを教えたりすることはないだろう。何かしらの防衛策は張っているはず。

 

「暗殺するにしても、ターゲットが絞り込めなきゃ、CP9だって動けないでしょうに」

「期限以内に絞り込めなければ、島ごと消される。長官もそのために手筈を整えているはずだ」

「はい……?」

 

 ちょうど、そのタイミングで飛んできたカモメ。

 首から下げられているバックには、スパンダムからの指令書。そこには、テディの予想通り、島ごとショカンを葬る手筈が整ったという内容。

 

「ショカンが漏らした情報の捜査に、ルートを調べる」

 

 ルートといえば、ショカンが元船の用心棒だったと偽り、この島で近隣の島へ船が出る時、高頻度で用心棒として乗り合わせている。

 

「確か、3日後、隣の島へ村長が招かれてる船に乗るはずです」

「なら、その間に手掛かりがないか調べる。ショカンについては、向こうの奴に確認させろ」

「連絡しておきます」

「それで、あの娘の方はどうなんです?」

 

 ショカンの娘であるユイ。

 接触する機会は多い。というよりも、テディは懐かれたらしい。店ではなく、テディのいる船の方にやってくる。

 悪いことではない。むしろ、ショカンに顔が割れているテディは、船の外で活動はあまりできず、好感をもたれているなら、その分口も軽い。

 

 おかげで、ショカンの逃走ルートについては割れた。

 結果、現海軍元帥や海軍の英雄の共謀も発覚し、スパンダムから猛抗議されたが、ショカンの元死体は既に供養され、存在せず、そのふたりですら、それを本当にショカンだと思ったと軽く流されてしまったらしい。

 証拠も無ければ、諜報部隊しかもCP9の容姿なんて機密事項、知っている人間が少ないおかげで、責任は逃れられてしまった。

 分も悪ければ、相手も悪い戦いだ。

 そもそも、CP9からの裏切り者など本来あってはいけない事態なのだから、速やかに収拾をつけるほうにシフトした。

 

「たまに、あの年齢にしては航海についての詳しい知識を話す時がある」

「へぇ……じゃあ、本当の子供じゃない可能性もあるってことですか? それこそ、アレで実は成人している種族が偽ってるとか」

「それはない。訓練を受けた動きにしては、ムダやブレが多い。見てマネた動きだ。

 嘘かはわからないが、黒でんでん虫に関しても、ショカンの部屋でたまたま見かけて、口止めをされたと言っていた」

 

 全てを信じたわけではない。だが、おそらくユイは、ショカンが過去にCPにいたことは知らないだろう。

 本当にただの子供だろう。

 だが、好奇心は旺盛らしい。現在のショカンに関して、勝手に知っている可能性がある。

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