ユイを連れ、ショカンを確実に殺すための包囲網のひとつである島にいた。
包囲網の中で最も大きく、人も船の行き来も多い。
人が隠れるのにはよい場所だ。それは、向こうもよくわかっている。
だが、ここにルッチたちは来ない。絶対に。
「お姉ちゃん? 大丈夫?」
「大丈夫。でも、少しだけ待って」
無茶をした自覚はある。せっかくしてもらった応急処置すら、意味を成していない。
とにかく、まずは包囲網を抜ける。
それから、グランドラインを抜けて、東の海に向かう。
ひとりでなら容易いが、ユイを連れていくことを考えると、遠すぎる道だ。
だが、まだショカンの死亡が確認されていない。これが、今の一番の武器だ。
スパンダムからすれば、ショカンがやってくる可能性だって考えられる。
スパンダムならば、保身を第一にして、ルッチたちを傍に置いておくだろう。
姿を眩ませるなら、今だけ。
「……」
動こうとすれば、痛みが走る。
ゆっくりと呼吸を整えれば、ふと感じた気配に、ユイを背中へやる。
「誰かと思えば、CPの小娘か」
見覚えのある義手の右腕。
よりにもよって、この男か。
「ゼファー」
「今はZだ」
海軍にとっても、世界政府にとっても、要注意人物である、元海軍大将。現海賊。
ついでに、海軍大将時代、歴代海軍大将の中でも、特にCPを嫌った人物でもある。
任務で衝突は多かったと聞く。
「……」
「……」
敵か、それとも見逃されるか。
互いに見定めていると、ふと目の前に現れた小さな頭。
「――っ」
慌ててユイを下がらせようと、手を伸ばせば、Zは笑った。
「お前が戦うのか?」
「貴方がお姉ちゃんを傷つけるな、ら……!」
多少手荒でも、腕の中に抱え込めば、Zは呆れたようにため息をついた。
「取って食おうってわけじゃねぇ。お前の姉ちゃんとやらとは、知らねェ仲じゃねェ。
なぁ?」
その目が「話を聞け」と、言っていた。
敵、というわけではないらしい。
「そう、なの?」
「……言葉にすると、少し、難しい」
向こうも複雑な経緯を持つし、こちらも面倒な状況だ。
だが、Zは気にせず話を進める。
「状況はわからねぇが、お前たちが今欲しいものは想像がつく。
足とそいつの治療だろ」
さすがに、海軍大将であった男。的確だ。
「なら、交換条件だ。俺は、とあるブツが隠されてる場所を知りたい。
お前なら、その場所を知ってるはずだ」
ユイの耳を塞げば、Zもわかっていたように、続ける。
「ダイナ岩の研究所だ」
「あぁ……それなら」
場所は知っている。
「交渉成立だな」