テディベアの傍らに   作:こっここーまん

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44話 師匠故に

「なぁ、ゼファー」

「会議は終わったらとっとと帰れ。CP9」

「連れねェな……ちょっとした人生相談だろ。ゼファー先生♥」

「テメェの先生になったつもりはねェ」

 

 むしろ、CPにとって、七式や諜報のいろはを教えるこいつは、武の師匠みたいなものだ。

 しかし、ショカンは、俺の言葉など無視し、壁に寄りかかりながらため息混じりに話し始めた。

 

「CPに有望な新人が入った。しかも、ふたり」

「めでたいな」

 

 正直、嬉しくもなんともない。

 CP9は、一般人だろうが、政府が悪と決めれば殺す。有無を言わさずに。

 正義なんてあったものじゃない。

 

「ひとりはいい。だが、ひとりが絶望的にCPに合わねぇ性格してる」

「仲間意識が高いか? 目立ちたがり屋か? 正義感が強いか」

「仲間意識。優しすぎる。誰に対しても」

「あぁ、そりゃ、合わねぇな」

 

 適材適所ってものは確かに存在する。

 戦う能力が高くても、性格が戦いに向いていないことだってある。そういう奴に無理に戦わせれば、壊れるのが早いか、歪むのが早いか。

 CPはその性質上、能力もだが性格は重要だ。だからこそ、幼い時から”政府が正義”だと擦り込むのだから。

 ショカンの言う、そいつが本当に優しいのなら、CPには向いていない。

 心が壊れるのが先か、任務に失敗して死ぬのが先か。

 

「なら、海軍にいれろ。CPの有望なガキなら、まだ海軍の訓練生より小せぇだろ」

 

 CPから海軍なら、政府も目をつむるだろう。

 

「ムリだ」

「そんなに人手不足なのか?」

「言っただろ。有望なんだよ。あいつは」

 

 意味がわからなかった。

 CPは、仲間に関してドライだ。任務が最優先。仲間や周りの命など二の次のはず。

 

「殺しの才能がありすぎた。あいつは、自分で自分を殺す術を覚えちまったらしい」

 

 だから、政府の人形として、動き続ける。

 自分の意思も理解しないまま。ただ命じられるままに、動き続ける。

 

「どうすればいいと思うよ? ゼファー先生」

「テメェは、どうしたいんだ」

「正直な話か?」

「嘘ついたら殴るからな」

「それはそれでいいがな……まぁ、そうだな。本気で、アイツと一度死合ってみたいな」

 

 戦闘狂らしい発言だ。だが、それがショカンらしい。

 どこまで行っても、最後に残っているのは、強者との戦いだ。CPにだって、白ひげと戦える可能性があるというだけで入ったのだから。

 

「あとはま、なんとなくだな!」

「はぁ?」

 

 あの時、ショカンの理由はよくわからなかった。

 だが、それを見てようやく理解できた。

 呼吸も心臓の拍動でさえ、任務だからと、理由なく動かしているような少女の姿に、なんとなくに思ってしまう。

 もし、この少女が意思を持った時、どんな顔をするのか。

 ただの素朴な疑問だ。理由なんて”なんとなく”の一言だ。

 

***

 

「あぁ、いい顔になったじゃねぇか」

 

 あいつは、その顔を見れたのだろうか。

 きっと、見れてはない。

 いや、だからこそ、だろうか。

 

 最期の最期に、ようやく師匠らしいことをしたのだから。

 

「先生。彼女の情報は信じられるものなんですか?」

 

 アインが怪訝そうに、歩いていくテディたちを見つめる。

 CPというだけで、信じられないことは理解できる。事実、あのふたりが実は俺たちを殺すために派遣されてきたCPの人間だといわれても、「そうか」の一言で済ませられる。

 実際に、教えられた場所に向かったら、海軍が大勢待ち構えてるなんて、想像に容易い。

 

 あぁ、あいつが言ったから、あの目を見たから、信じるわけじゃない。

 

「あぁ」

 

 俺にも俺の正義がある。

 やらなきゃならないことがある。

 

 不安そうに俺を見つめる、教え子たち。

 

 全く、お前はいつだって気楽なもんだな。

 最終的に、一番楽しんだんじゃねェか?

 でもま、お互い様だな。

 ショカン。

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