「なぁ、ゼファー」
「会議は終わったらとっとと帰れ。CP9」
「連れねェな……ちょっとした人生相談だろ。ゼファー先生♥」
「テメェの先生になったつもりはねェ」
むしろ、CPにとって、七式や諜報のいろはを教えるこいつは、武の師匠みたいなものだ。
しかし、ショカンは、俺の言葉など無視し、壁に寄りかかりながらため息混じりに話し始めた。
「CPに有望な新人が入った。しかも、ふたり」
「めでたいな」
正直、嬉しくもなんともない。
CP9は、一般人だろうが、政府が悪と決めれば殺す。有無を言わさずに。
正義なんてあったものじゃない。
「ひとりはいい。だが、ひとりが絶望的にCPに合わねぇ性格してる」
「仲間意識が高いか? 目立ちたがり屋か? 正義感が強いか」
「仲間意識。優しすぎる。誰に対しても」
「あぁ、そりゃ、合わねぇな」
適材適所ってものは確かに存在する。
戦う能力が高くても、性格が戦いに向いていないことだってある。そういう奴に無理に戦わせれば、壊れるのが早いか、歪むのが早いか。
CPはその性質上、能力もだが性格は重要だ。だからこそ、幼い時から”政府が正義”だと擦り込むのだから。
ショカンの言う、そいつが本当に優しいのなら、CPには向いていない。
心が壊れるのが先か、任務に失敗して死ぬのが先か。
「なら、海軍にいれろ。CPの有望なガキなら、まだ海軍の訓練生より小せぇだろ」
CPから海軍なら、政府も目をつむるだろう。
「ムリだ」
「そんなに人手不足なのか?」
「言っただろ。有望なんだよ。あいつは」
意味がわからなかった。
CPは、仲間に関してドライだ。任務が最優先。仲間や周りの命など二の次のはず。
「殺しの才能がありすぎた。あいつは、自分で自分を殺す術を覚えちまったらしい」
だから、政府の人形として、動き続ける。
自分の意思も理解しないまま。ただ命じられるままに、動き続ける。
「どうすればいいと思うよ? ゼファー先生」
「テメェは、どうしたいんだ」
「正直な話か?」
「嘘ついたら殴るからな」
「それはそれでいいがな……まぁ、そうだな。本気で、アイツと一度死合ってみたいな」
戦闘狂らしい発言だ。だが、それがショカンらしい。
どこまで行っても、最後に残っているのは、強者との戦いだ。CPにだって、白ひげと戦える可能性があるというだけで入ったのだから。
「あとはま、なんとなくだな!」
「はぁ?」
あの時、ショカンの理由はよくわからなかった。
だが、それを見てようやく理解できた。
呼吸も心臓の拍動でさえ、任務だからと、理由なく動かしているような少女の姿に、なんとなくに思ってしまう。
もし、この少女が意思を持った時、どんな顔をするのか。
ただの素朴な疑問だ。理由なんて”なんとなく”の一言だ。
***
「あぁ、いい顔になったじゃねぇか」
あいつは、その顔を見れたのだろうか。
きっと、見れてはない。
いや、だからこそ、だろうか。
最期の最期に、ようやく師匠らしいことをしたのだから。
「先生。彼女の情報は信じられるものなんですか?」
アインが怪訝そうに、歩いていくテディたちを見つめる。
CPというだけで、信じられないことは理解できる。事実、あのふたりが実は俺たちを殺すために派遣されてきたCPの人間だといわれても、「そうか」の一言で済ませられる。
実際に、教えられた場所に向かったら、海軍が大勢待ち構えてるなんて、想像に容易い。
あぁ、あいつが言ったから、あの目を見たから、信じるわけじゃない。
「あぁ」
俺にも俺の正義がある。
やらなきゃならないことがある。
不安そうに俺を見つめる、教え子たち。
全く、お前はいつだって気楽なもんだな。
最終的に、一番楽しんだんじゃねェか?
でもま、お互い様だな。
ショカン。