ゼファーとの取引もあり、ユイを東の海の孤児院へ預けることができた。
CPも、さすがにエヌエスロビーの騒動のおかげで、すぐには捜索ができなかったのか、傷を完全に癒すこともできた。
「お姉ちゃん? また出かけるの?」
傷が癒えてからすぐに、私は孤児院から離れた。
各地に存在する、世界政府へ情報を流している人間を全員把握しているわけではない。
ならば、ここに長居することも、ユイと一緒にいることも、ユイを危険にさらす行為になる。
「あぁ」
最初こそ、ユイは手を放してくれなかった。
普通なら両親を殺した人間を大切にするような行為はしないだろう。
まだ私のことが好きだといった、ユイの言葉は、正直理解できない。
今まで相手にしてきた人間は、大切な人間を殺されれば、その相手を恨むし、呪った。それに漬け込むのも、私たちの任務だった。
「……」
また腕を掴まれる。
ユイのように、好きだという人間は、見たことがない。
だけど、幸せを奪ったのなら、せめて、この子が私のせいで壊されないように。
「一緒に行っちゃダメなの?」
「ダメだ」
少しだけ不貞腐れた表情をするユイ。
海は危ないと、ここのシスターも子供たちに言い聞かせているおかげで、ユイも無理を言うことも少なくなってきた。
「ちゃんと、帰ってくるよね?」
それは、約束できなかった。
何が起こるかわからないのが海だし、なにより私が裏切ったのは世界政府だ。
適当な罪状で、賞金首として海軍から狙われる可能性だってある。
そうなれば、本格的にこの島に戻ってくることが危険になる。
だが、それを正直に言えば、ユイが怒ることも予想できた。
「約束、できない?」
「……ごめん」
どうやらバレたらしい。
「でも、約束」
座って。と、ジェスチャーされ、ユイの前に屈めば、首にかけられるなにか。
視線を降ろせば、紫色の石のついたシンプルな首飾り。
「これって……」
確か、お守りだ。
「お守りだよ。お姉ちゃんの、作ったんだ」
師匠が海に出るたびに、貸してると言っていたお守り。
そういえば、任務の最中、私のものを作ると言っていた。
さすがに、あの約束を覚えていたところで、実行するとは思っていなかったが。
「お姉ちゃんが無事、帰ってこられますように」
祈り込めるユイは、そっと手を離すと、抱き着いてきた。
「約束。約束だよ」
「……あぁ、ありがとう」
大事な人へ渡すお守りと祈り。
少しだけ、呼吸が苦しくなる。
この感覚、覚えがある。
どこで、だっけ?
わからない。
わからないなぁ。
お久しぶりです。
とりあえず、過去編終了!
次回から、元の時間軸に戻ります。