テディベアの傍らに   作:こっここーまん

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最終回 もう必要ないな

 どこで見つかるか。

 いつ、見つかるか。

 

 この海域は、島が密集しているわけではない。

 髪の毛一本でも、流れ着いていれば運がいい。

 

 アレほど嫌いで、イヤな訓練だったが、

 この重すぎるペダルを漕ぐのには、必要だったのだろう。

 

 ないものを証明するのは難しい。

 ユイは、どうやっていなくなったことを証明するのか。

 いっそ、目の前に、ムシムシの実が現れれば、証明になるが。

 

「……」

 

 意外にも、それはあっさりと証明された。

 浜辺に打ち上げられた、紫の髪の女。

 まごうことなき、テディだ。

 

***

 

 ふわりふわりと、漂う感覚。

 

 ある日から、その感覚に触れることはできなくなった。

 だから、これは夢だ。

 海底に辿り着くまでの、短い夢。

 

 ふと、開けた視界に映った大切な少女は、見たこともない表情をしていた。

 

「――お姉ちゃん……!!」

 

 鼓膜が震えて拾った音。

 

 理解より先に、体が動いていた。

 

「ユイ……!」

 

 気が付けば、その小さな体を、抱きしめていた。

 

 感じる鼓動が、温度が、ユイが生きていることを伝える。

 

「よかった……生きてる……」

 

 少しだけ戸惑いつつも、ユイの小さな手が背中に触れた。

 

***

 

 天竜人は、ノックアップストリームを間近で見れて満足したらしい。

 おかげで、CP0との約束は果たされ、ユイに関しては、その出生については闇に葬られ、テディもCPから追われることはなくなった。

 

 本当に驚くことばかりだ。

 浜辺に体がそのまま打ちあがっていたこともそうだが、息があることもだった。

 

 すぐに医者へ見せれば、動物系能力者特有の生命力なのか、生命帰還拾得者だからか、瞬く間に回復した。

 意識こそ、海軍本部の医務室に運び込むまで戻らなかったが、体だけは危篤状態から脱していた。

 

 医者が唯一気にしたのは、固く閉じ、開くことのない右手だけ。

 最初こそ、俺もなにかと開こうとしたが、指から漏れ出ていた紐に覚えがあった。

 ユイからもらったという、お守りだ。

 

 意識が無くても、離したくないと、そう思える存在だというのに、なんで離れようとするのかね。お前さんは。

 

 目が覚めたなら、今度こそ、しがらみなんてない。

 素直になってほしいものだ。

 

 だから、目が覚めた直後、心底嬉しそうに泣きそうな顔でユイを抱きしめた時は、あのユイですら少し戸惑っていた。

 素直じゃ無さ過ぎて、いや、自分の心を理解していなかった人形が、気持ちを言葉にするなんて。

 

「ま、それは置いといて、だ。

 テディちゃん? お前さん、ついさっき意識取り戻したばっかってわかってる?」

 

 ユイが少し席を外した途端、病室がもぬけの殻になるって、どういうことだ。

 隠れる気はなかったのか、見聞色の覇気ですぐに見つけられたが。

 

「またどっかに消えようとしてないだろうな?」

「……それがとても困ってるんです」

 

 またこいつは、拗らせて――

 

「今は、ユイとずっと一緒にいたくて。なんていうか、死にかけたからか、清々しいというか」

「……」

 

 表情は、相変わらず豊かとはいえない。

 

「あの時、ユイが離れて行ってしまうみたいで、怖かったんです」

 

 だが、確かに、変わった。

 

「……そうか」

 

 怖い、か。

 自分の気持ちを殺して、命すらくだらないことに捨てようとした少女(にんぎょう)が。

 

「帰るか。”テディ”」

 

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