「センゴクさん」
気怠げなクザンの声に、書類から目を離さず耳だけ傾ければ、クザンもそのまま言葉を繋げた。
「俺の次の副官、テディちゃんにするって言ったらどうします?」
「CPが見つけられてすらいないヤツをどうやって副官にする気だ」
だが、どこか確信に満ちているような言葉に、一度目を上げれば、手を頭にやっている。
「そうなんすよねぇ……」
完全に考えなし、という訳ではなさそうだ。
「仮に見つけられたとして、断られるのがオチだろ」
「……100回くらい殴られたらなんとかなんねぇっすかね?」
「テディに100回殴られる気か?」
「……………………さすがに死ぬな」
想像して体を震わせるクザンに、センゴクも呆れたように書類に目を落とした。
「でも、おかしいと思いません? 海賊になったってんならわかりますけど、そうじゃねぇのに組織抜けるなら命を賭けろだなんて」
海軍ならば退役して、普通に暮らすことだってできる。もちろん、海賊となれば話は別だが。
だが、CPは別だ。組織のために、生涯を捧げ、組織を抜けることが裏切り行為であり、暗殺理由となりえる。
「で、テディを殺させないために副官したいってのはわかったが、どうしてそこまでする?」
「そこは惚れたとかで、なんとかならないっすか?」
「もっとまともな理由考えてこい」
「え゛ー……」
「テメェ、歳考えろ!」
ふざけた理由以上に、歳が違いすぎる。
「愛に年齢は関係ないっていうじゃないっすか」
「親子ぐらい離れてんじゃねぇか!」
「そこまで離れてないでしょ!? つーか、テディちゃん何歳だっけ……!?」
確かに10歳以上は離れていた気がするが、親子まではいかないはずだ。
クザンとセンゴクが思い出していると、ちょうど部屋に入ってきたつる。
「ちょうどよかった! おつるさん! テディちゃんの歳覚えてないっすか?」
「覚えてないよ。なんだい……藪から棒に」
「俺の副官にする理由で、惚れたで行こうと思って」
「却下だね。歳考えな」
バッサリと切り捨てられたクザンは、肩を落とした。
書類処理も終わり、部屋を出ようとすれば、後ろからかけられる声。
「テディを副官にするって意味、わかってるんだろうな?」
重い、重い一言。
「もちろん」
わからずに発する言葉ではない。
冗談でも言えるはずのない。
世界政府諜報機関、CP9の構成員であり、リーダー格でもあった名を。
裏切り者として世界政府から狙われる、その名を。
「だから言ってんじゃないっすか。惚れたって」
あの少女に向けた優しげな表情。
政府の人形であったCP9の時には、触れることすら不可能だった、テディの感情。
「それを守ってやるのが大人ってもんでしょ」
クザンはひとり、そう呟いた。
おそらくおつるさんはテディの年齢覚えてる。
ようやくテディが元CP9ってはっきり出せました…
時代としては、原作の2、3年前くらいです。