テディベアの傍らに   作:こっここーまん

7 / 48
7話 探り合いと信用

 すっかり暗くなった部屋の中、明かりは特に付いてはいなかった。寝ているのかと、静かにドアを開ければ、そこにいたのは紫色の髪を持つ女。その膝には、眠っているユイ。

 

「テディちゃん……」

「お邪魔しています」

「マジで侵入したのか」

「本部よりずっとラクですよ」

「本部でも簡単に侵入するでしょうが」

 

 近づいてみれば、ユイの手はしっかりとテディの服を掴んでいて、離す気配がない。

 

「捕まったわけね」

 

 会うつもりはなかったと。

 視線を向ければ、ユイに優しげに向けるのをやめ、こちらを見た。

 

「あなたの話をたくさん聞きました。やはり、あなたを選んでよかった」

「あー……一応、言っておくが、ガープさんに歳の話、バレてるからテキトーに理由考えといたほうがいいぞ」

 

 教えておけば、テディは少しだけ目を見開き、目を逸らした。

 

「覚えてたのか……」

「でも、なんで俺だったんだ? テディちゃんと会ったのなんて任務と、数回くらいだろ」

「全て任務中です。理由……信用が置けた。ただそれだけです」

「信用?」

「任務に忠実。だが、ニコ・ロビンは殺さなかった」

「!」

 

 もちろん、バレていないとは思っていない。特にCP9はロビンを追っている主な機関でもある。あの少女がどのようにオハラから脱出したのか、運がよかっただけなのか、もちろん調べ上げただろう。

 そして、今でも追い続けている。

 

「なら、俺もCP9からは嫌われてるわけかねぇ?」

「嫌われてはいませんよ。書類上、ニコ・ロビンは、クザン中将とサウロ中将の戦闘の余派に押し流されたため、隣の島へ辿り着くのが早まり、無事渡れたものと推測されましたから」

「それって……」

「ショカンに感謝するべきでしょうね」

 

 当時のCP9のリーダー格であり、歴代で最も強いと言われた男。現在はすでに死んでいる。テディの世代の師匠にあたる人物。

 何度か話す機会はあったが、任務ともなれば冷徹。だが、話の分かる男だった。クザンも小さく口元を緩めると、テディに目をやる。

 

「それで、テディちゃん。前にも言ったけど、”海軍”に戻ってこないか?」

 

 見定めるような目。

 クザンもはっきりとその言葉を口にする。

 

「正確にいえば、俺の副官として、だ。前の副官は少佐になってな。今は副官いない状態だったんだが、大将に昇格するのに、副官がいねぇってのは問題だってセンゴクさんに言われててな。どうだ? 悪い話じゃないだろ」

「……」

「なんだよ。そんな顔して。予想通りだろ?」

 

 前に言った時から、おそらくテディも察しはついていたのだろう。眉をひそめている。

 そして、一度目を閉じて息を吐き出してから、ゆっくりと開いた目。

 

「その意味が理解できないわけではないだろ」

 

 髪と同じ、紫の目はひどく冷えきっていて、先程までの感情など消え失せていた。

 

「理解しねぇで、元CP9にこんなこと言えるほど命知らずじゃねぇよ」

「なら、その命は捨てたのか」

「それはお前さんの方だろ。テディちゃん」

 

 表情は変わらない。ただじっとこちらを見つめる。

 

「ひとりで逃げるなら簡単だろう。だが、その子を無事に連れていくなら、まずムリだ。だから、絶対にテディちゃんは何かしらの代償を支払うことになる」

「そうだ。CP9だったからこそ、お前以上にわかっている。あいつらは私を逃がしはしない」

 

 世界政府にとって不利益な情報を多々持っている人間を、野放しにしておくなど危険だ。適当な罪状と共に首に賞金がかけられるのも時間の問題だろう。

 

「俺が守る」

 

 そのための副官だ。

 

「命と引き換えなんてガキの下策より、よっぽどマシな結果にしてやる」

 

 安い挑発だ。買う必要なんてない。

 ひどく落ち着いた心、

 

「だから、もう一度だけ俺を信用してくれ」

 

 懇願にも近いそれは、テディの言葉を押さえ込むには十分だった。





補足

CP9時代は、任務内容が食い違っていたり、裏で手を回していたりなど色々な都合から、海軍を信用は1ミリたりともしていません。
そもそも任務が任務のため『信用=利用価値』感覚なので、信用なんて1ミリたりともしないテディが、「信用できた」などと言い出すので、クザンからすると割りと動揺していたりします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。