ザ・コクピット・オブ・コスモゼロ   作:島田イスケ

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二発目

「大丈夫デスカ」

 

とアナライザーが言う。森は頭を振りながら「ええ」と応えた。だがどうやら、自分が失神していたらしいと気づく。なんだか妙な感じがすると思ったら、アナライザーの機械の腕がモミモミと指を動かして自分の胸を揉んでるとわかった。

 

「ちょっと」と言った。「あんた、何やってんのよ」

 

「イエ、ワタシハ、オ体に異状ガナイカ確カメヨウト――」

 

「このロボットわあっ!」

 

油断も隙もない! 手をもぎ離して助平(すけべい)ロボをどつき倒した。そこで真田の声がした。

 

「大丈夫か、森君」

 

「え、ああ、はい」

 

応えた。どうやら眼は見える。腕の痛みも消えていた。まだ頭がクラクラとする感覚が残っているが、

 

「大丈夫です」

 

「ならいいが……」

 

と真田は言った。森はコンソールに向かい、機器をいくつか動かしてみた。

 

もう画面に〈顔〉が浮かんでくることはない。あれはただの幻覚だったと言うことだろう――まあもちろん、そうに決まってはいるわけだが。自分で自分を催眠術にかけたような状態に陥っていたのかもしれない。だから手までが動かないように感じたのだ。その金縛りが解けてしまえば、後はなんてことはない。

 

部下の船務科員から報告が入っていた。《受信》のボタンを押すと声が、

 

『報告します。被弾箇所の損害軽微! 装甲がビームを(はじ)いてくれたようです。人的な被害は皆無。ケガをした者もありません!』

 

おーっ!という歓声が艦内に響き渡るのも聞こえてきた。どうやら制動が間に合ったらしい、と森は手元のレバーを見た。操艦はすでに島に戻されているらしく、ランプの灯は消えている。

 

真田が言う。「喜ぶのはまだ早いぞ。まだ一発()けただけだ」

 

正確には避けきれたわけではないが、直撃さえ(かわ)せれば良しと言うのが元からの考えではあったのだ。とりあえずそれは達せられたはずだが、

 

太田が言う。「けれどよく間に合ったよな。ビームはまるで変な方から来たようだけど」

 

「そう――」

 

と真田が言って難しい顔をしている。変な方向? なんのことだと森は思った。今さっきはそもそも眼がおかしくなって何もわからず、ただ光を見た瞬間にレバーを引いただけだったのだが。

 

レーダー画面の冥王星とカロンを見た。敵のビームが放たれた位置を指標で表しているはずだが見当たらない。

 

あれ、おかしいなと思った。それは目立つコンテナで囲まれているはずなのに。

 

と思ったら、見つけた。冥王星ともカロンとも離れた宇宙空間に、〈敵ビームの発射位置〉を示す指標。

 

え、まさか。わたしはこれを見たと言うのか? 森は思った。真田と新見の考えでは敵のビーム砲台は冥王星かカロンの陸地に固定されているはずとなっていた。だから自分はふたつの星に集中していたつもりだった。しかし、撃ってきたのは予想とはかけ離れた場所?

 

「どういうことなんだ?」南部が言った。「移動式の宇宙ビーム砲台を敵は持っているってこと?」

 

「そうなるのか。いや、しかしそんなバカな……」と真田が応える。「そんなことがあるわけが……〈ヤマト〉を狙えるほどの威力の砲をやつらが持っているとするなら、それは相当に大きなものになるはずなんだ。いくらなんでも、レーダーに映らぬはずが……」

 

そうだ、と森も思った。いかに強い探知妨害をかけようと、大きな物体が宇宙にあれば何か映る。それも、強力なビーム砲台となれば、かなりの高熱も発するはず。次元潜宙艦の(たぐい)でも、ビームを撃つのに姿を隠せるものではない。

 

ガミラスが〈ヤマト〉を狙い撃てるほどに強力なビーム砲台を宇宙に浮かべていると言うのは、レーダー手としての森の知識や経験にも反している話だった。〈ヤマト〉の探知能力ならば、何かいれば自分に見つけられないはずがないのだ。

 

森は機器を調べてみた。しかし、

 

「特にこれと言ったものは……潜宙艦がいると言うような形跡もありません」

 

「まあ、どのみち次元の〈下〉からビームなんて……」

 

真田が言う。と、そのとき新見が叫んだ。

 

「待ってください、いま〈アルファー〉からデータが来ました! ビームを撃ってきたのはこれです!」

 

メインスクリーンに映像が出る。皆がそれに眼を向けた。画面に出たのは奇妙な物体。宇宙に四弁の花がひとつ咲いてるような。

 

「なんだ?」

 

と南部が言った。そのときにつんのめるような衝撃が来た。森は体を前に持って行かれそうになり、シートベルトが身に食い込むのを感じた。アナライザーが三つに分かれて床を転がるのが見える。

 

島が〈ヤマト〉に急制動をかけたのだ――気づいたときに、別の衝撃を森は感じた。同時に光。艦橋窓に炸裂する光が見える。

 

対艦ビームだ。今度は直撃を喰らったのだ。森は急いでレーダーを見た。新たな指標が表れている。〈ビーム発射位置〉を示すコンテナが、さっきのものとは別の宇宙空間に。

 

どうなってるの? 森は思った。また手元のレーダー画像に、嘲笑う魔女の顔が浮かびあがってきたように感じた。

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